川上憲人教授からのメッセージ

公衆衛生の精神保健とは

 精神保健学に関心をお持ちの皆様、ホームページにようこそ!精神保健学分野の教授であり、精神看護学分野の教授を兼担している川上です。私がこの分野に着任してから10年になりますが、精神保健学の研究、教育、実践はきわめて大きく発展しました。この教室が担当する「公衆衛生の精神保健」(Public Mental Health)を、私は次のように定義しています。

「公衆衛生の精神保健」(Public Mental Health)とは、人々のこころの資源(mental capital)、精神健康(mental health)および幸福(well-being)の維持、回復および向上を目的とし、個人と集団の双方へのアプローチから、ライフステージ、障害の有無、その他の属性(性別、人種、国籍など)を問わず全ての人々を対象とし、公衆衛生学の他にも医学・生物学、心理学、社会学、政策科学などを広く応用する学際的な学問・技術体系である。(川上, 2013)

今後5年間の精神保健学分野3つの重点領域

 これまでの10年間の研究成果を基盤にして、次の5年間に、次のような研究テーマに特に力を入れ、 研究および人材養成を進めたいと考えます。

 第1は、精神保健疫学です。精神保健・精神疾患の疫学は、精神障害の頻度や関連要因、受診行動を解明する研究であり、精神障害の診断、関連要因、精神保健のニーズ評価と政策立案のために重要です。特に本分野では、国際共同研究であるWHO世界精神保健調査(World Mental Health Surveys, WMHS) 、その日本調査(WMHJ, WMHJ2)に基づく研究を進めています。さらに被災地の精神保健調査も行っています。

 第2は、職場のメンタルヘルスです。働く人のストレスや心の健康問題を扱う職場のメンタルヘルスでは、研究と実践技術の双方が必要とされる領域であり、国際的な研究者と同時に、研究を実践につなぐ高度な専門家が求められています。この分野では、働く人のうつ病予防の研究およびポジティブな心の健康(ワークエンゲイジメント)に関する研究で世界を牽引すると同時に、現場での実践技術のイノベーションに絶えず努力しています。現場の担当者向け研修である「東京大学職場のメンタルヘルス専門家養成プログラム」(TOMH)は産業保健スタッフや人事労務担当者が職場のメンタルヘルスの技術を体系的に学ぶ実践のリーダーとなる機会を提供しています。

 第3は、国際精神保健です。世界には精神科医がほとんどいない国もあります。低所得で医療資源のない国においてどのように心の健康を守るかは公衆衛生の精神保健の大きな挑戦です。一方こうした国々における実践を学ぶことで日本の精神保健のあり方に着想が得られることも多くあります。このテーマの研究を推進するために当分野では、ミャンマーとの二カ国間共同研究、東アジア各国での多国間研究、30カ国の国際共同研究に着手しています。 またThe University of Tokyo Global Mental Health & Well-being Partnership (GMHWP)という研究会を立ち上げました。関心のある方には自由にご参加いただけます。

大学院の受験をお考えの方へ

 川上の教授としての在勤期間は2022年3月までになります。この間に、以上の3つの研究テーマにしぼって、高度な専門性と技術力を持つ国際的な研究者を育成したいと考えています。こうしたテーマに関心のある方にぜひ大学院を受験いただきたいと思います。精神保健学分野が担当する大学院のうち、公共健康医学専攻(専門職学位課程)では公衆衛生の精神保健を学び実践に役立てようとする方と研究者の基礎を学びたいという方の双方を、健康科学・看護学専攻(博士後期課程)と社会医学専攻(医学博士課程)では、国際的なリーダーシップをとれる研究者を明確に目指される方を歓迎します。ご関心のある方は川上までお問い合わせください。その際、志望動機、関心のあるテーマ、略歴を添えていただけるとありがたく思います。

川上教授の連絡先

メールアドレス: (画像ファイルとなっておりますのでご注意ください)

住所:〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
東京大学大学院医学系研究科 精神保健学分野
(東京大学医学部3号館3F S306号室)
電話:03-5841-3521 / FAX:03-5841-3392

川上教授の略歴

  • 1975年3月 岡山県立津山高等学校卒業
  • 1981年3月 岐阜大学医学部卒業(医師免許取得)
  • 1985年3月 東京大学大学院医学系博士課程(社会医学専攻)単位取得済み退学。
  • 同年4月   医学博士取得(東京大学博医598号)
  • 1985年4月 東京大学医学部助手(公衆衛生学講座)
  • 1990年1月~1991年8月 米国テキサス大学公衆衛生大学院(行動科学部門客員研究員)
  • 1991年9月 東京大学医学部客員研究員(公衆衛生学講座)
  • 1992年10月 岐阜大学医学部助教授(公衆衛生学講座)
  • 2000年7月 岡山大学医学部教授(衛生学講座)
  • 2001年4月 岡山大学大学院医歯学総合研究科教授(衛生学・予防医学分野)
  • 2005年4月 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科教授(衛生学・予防医学分野)
  • 2006年4月 東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻教授(精神保健学)、精神看護学教授兼担
  • 2007年4月 東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻教授(精神保健学)
  • 2013年4月 東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻専攻長
  • 2015年4月 東京大学大学院医学系研究科副研究科長・副医学部長

所属学会

  • 日本産業衛生学会(副理事長)
  • 日本衛生学会(評議員)
  • 日本公衆衛生学会
  • 日本行動医学会(理事)
  • 日本疫学会(理事)
  • 日本産業ストレス学会(副理事長)
  • 日本産業精神保健学会(理事)
  • 日本ストレス学会(理事)
  • 国際産業保健学会(前理事)
  • 国際行動医学会(元理事長)
  • 世界精神医学会(公衆衛生・疫学セクション副委員長)

2016年04月30日更新