ごあいさつ
当番世話人関谷 務(吾妻郡医師会 会長)
この度、令和最初となる第27回群馬県救急医療懇談会を吾妻郡にて開催する運びとなりました。当地での開催は第13回以来、2度目となります。30年余り続いた平成を振り返りますと、政治経済面はさておき、地震、風水害や噴火といった沢山の犠牲者を出した数々の自然災害が想起されます。
一方、平成30年8月10日に県防災ヘリコプター「はるな」が中之条町の山中に墜落し、県の救急医療に携わる7名の消防隊員を含む9名の尊い命が失われましたことは痛恨の極みです。改めて心よりご冥福をお祈りします。
さて、吾妻郡は県内でも少子高齢化の進んだ地域で、救急医療体制も都市部のように整備されてはいません。幸いなことにドクターヘリが整備されているおかげで郡内の救急医療体制がかろうじて破綻しないで済んでいるように思います。
さて、救急医療というと担架で運ばれるような重症な身体疾患患者を思い浮かべるのではないでしょうか。実は群馬県は全国的にも早期に精神科救急システムを構築しています。私が勤務する病院も精神科救急システム発足当初より輪番病院として参加し、今も私が輪番当番日に当直することがあります。その際、身体疾患が救急の対象となる疑いの強い精神障害の患者につき、時に救急隊員の方が対応に苦慮されている事例を経験しています。今回、救急医療全体のより円滑な運営がなされることを期待して精神科救急のセッションを設けました。是非沢山の演題をお寄せください。
当番世話人竹澤 二郎(原町赤十字病院 院長)
この度、第27回群馬県救急医療懇談会を14年ぶりで吾妻の地で開催する運びとなりました。この間に、2011年東日本大震災、2016年熊本地震など大規模な地震災害に加え、茨城県常総市の洪水や、広島県の集中豪雨災害など大きな災害が頻発しております。また県内の高速道路や主要幹線道路においてもバス事故等大きな事故も起きており、昨年1月には草津本白根山噴火により、死傷者が発生しております。比較的自然災害の少ない群馬県においても、今後予想できない大規模災害が起こる可能性もあります。そこで、今回は群馬県における災害救護体制について、群馬県基幹災害拠点病院である前橋赤十字病院の院長であり、群馬県災害医療コーディネーターでもある中野実先生に特別講演をお願いしております。
一方、日々発生する救急患者に対応する二次医療圏での救急医療体制も医師の高齢化や医師の偏在により地域格差が拡大しており、医療過疎地域の救急医療現場での様々な課題についても議論したいと考えております。また高齢者の増加により、救急搬送時の本人の意思確認や、治療の範囲などACP(人生会議)に関連する諸問題についても議論の場を設ける予定です。
救急医療に携わる多職種の方々の多数の演題発表と参加者による活発な討論を期待しております。
実行委員長内田 信之(原町赤十字病院 副院長)
この度、第27回群馬県救急医療懇談会を吾妻で開催する運びとなりました。吾妻は他の医療圏に比べ、いくつかの特徴があります。人口が少ないこと、人口減少が著しいこと、広大な面積を有すること、少子高齢化の進行が速いこと、医師の数が少ないこと、特に救急医療に欠かせない循環器や脳神経領域を専門とする医師が極めて少ないこと、地域医療を支えている医師会の先生方の高齢化が進み新たに開業する医師が少ないことなどです。
日本全体を見れば東京一極集中が進み、群馬県を眺めても前橋、高崎を始めとした大都市を中心とした社会構造になってきています。特に医療の分野ではその流れが顕著なのではないでしょうか。そこで今回私たちは、二つのメインテーマを考えました。
一つは「救急現場における都市部と地方の違いについて考える」というものです。この問題は、今後の日本の医療を考える上で極めて重要なポイントです。もう一つは「救急現場での蘇生拒否時の対応について考える」です。アドバンス・ケア・プランニングやリビング・ウィルの重要性が叫ばれる中、このテーマは都市部、地方にかかわらず重要であり、救急医療の視点からこの問題を考えることとしました。他にも精神疾患の救急医療の問題など、様々な内容のセッションを予定しています。有意義な懇談会になるよう、参加される皆様の活発な討論を期待しております。