今にでも襲う、東海地震、東南海地震、南海地震(http://www.jjjnet.com/jishin_tokai_nankai_tonankai.htmlより) |
東海地震、南海地震、東南海地震は近年その発生の可能性が指摘されている大規模地震である。過去の発生状況から、これら3つの地震は同時に発生、あるいは東海地震が先行し、その2年以内に南海地震、東南海地震が発生するということが予測されている。
東海地震、南海地震、東南海地震において震度6強以上の揺れが生じる地域が最も広範囲に及ぶ地震は東海地震であると考えられている。一方で東南海地震、南海地震では震度6強の揺れが観測されると予想される地域は沿岸部の一部にとどまるが、この違いは震源の位置にあると考えられる。東海地震の震源地は駿河湾内に存在し、他の二つの地震に比べ震源地が沿岸部に近いためである。
中央防災会議が公表したこれら3地震同時発生の想定被害は最悪の場合死者2万4700人、住宅全壊96万棟、経済被害は81兆円と予測される。阪神淡路大震災においては死傷者の80%以上の死因が建物の倒壊による窒息死、圧死であり、負傷者に関しても80%以上が建物の倒壊、家具などの転倒による負傷であった。東海地震、南海地震、東南海地震に関しても建物による圧死、窒息死による死傷者が2万人を超えると考えられる。
また地震の際には津波による被害も考慮されなければならない。近年ではスマトラ島西方沖地震などで津波による死者が多数出ている。津波は速度にして700km/hrという高速で接近し、陸地に近づくと速度は低下するものの、急激に高くなり、建物の倒壊などを引き起こす。津波に巻き込まれると、巻き込まれた様々な物体による外傷、津波が引き返す際に、津波にさらわれて沖合へ数km流されるなどの被害が生じる。スマトラ島西方沖地震では高さ10m以上、最大で34mに達する津波が押し寄せ、20万人以上が死亡した。
一般に震源地が内陸部に存在する場合には津波は発生しないが、一方で南海地震、東南海地震などの海溝型の地震では巨大な津波が発生することが予測される。高知県の太平洋沿岸部では特に津波の被害は大きく、高知市、須崎市、土佐清水市で10m〜12mを超える津波の到達が予測される。また和歌山県や三重県の太平洋沿岸部でも5m以上の津波の到達が予測される。沿岸部において津波の被害が低いと予測されるのは茨城県から静岡県、あるいは瀬戸内地方であるが、松山市を含む瀬戸内地方であっても2mの津波の到達が予測され、茨城県から静岡県にかけても2〜3mの津波の到達が予測される。
2.チームは「医師」「看護師」「薬剤師」など5人程度で組織し、被災地の医療機関では対応し切れない負傷者の治療を
現場で支援する。
3.被災地に作った基地(ベースキャンプ)から、重傷者はその度、必要に応じて、被災地以外の大病院に運んだり、その
搬送途中も治療を続ける。
筋肉組織が長時間(4時間以上)圧迫を受けている場合「クラッシュ障害」に罹っているものと判断し、救出する前に輸液、患肢に駆血帯を掛けてから、救出する。もし、何もしないで引き出してしまった場合、患肢にかかっていた圧が急速に解除され、血液の再灌流が生じるため、ショック死したりする可能性が充分に考えられる。それ故にDMATの迅速で安全で確実な処置が必要なのである。
NMDSは、大規模な災害が起きた場合のみ、「大統領の承認」によってのみ発動される。災害、戦争どちらの時に於いても、犠牲者は、全て軍の飛行機で現場より放出されて、そして安全な地域に避難するようになっている。アメリカでは、NMDSの主要な部分に「全米74ヶ所の大都市における病院、医療関係者の統括」というものがある。各々の大都市は「自分達の所に多くの患者が運ばれて来た時にどう対応するか」という事を常日頃から考えている。すなわち、このシステムは「大都市同士の相互援助システム」という事が言える。だから、NMDSというのは「全米規模での相互援助システム」なのである。
今回の日本版DMATには、本当は一番必要である「各都市の相互援助システム」という概念が抜け落ちていると考える。いざ大災害の時に「本部機能(相互連携という意味から)」が働かない。現場で、その他の医療施設でも、1チーム単位である医療スタッフ達をまとめる「本部」が絶対に必要なのである。小規模な災害ならば、1チームごとの指示で事足りるかもしれない。しかし、より緊急性を要し、大勢のスタッフが激しく動いている大規模災害では、そのやり方が、通用しないのである。日本にもそれなりの国家的な災害システムはあるのだろうが、「各都市の相互援助システム」が弱く思えるので、そこのところをより考慮していかなければならないかもしれない。
集団災害時における医療対応は、まず、救助を要する対象者の存在を知り、探し出し、救出することから始まる。次に救出された傷病者の重症度と緊急性を速やかに判断し、処置や搬送の優先度を決め、さらに傷病者の医療機関への搬送、そして医療機関での治療という順になる。
災害初動期の基本的な流れの中で、特にキーワードとなるのはTriage、Treatment、Transportationの三つで、災害医療活動の3Tと言われる。
1.Triage
災害時におけるトリアージの概念は、「限られた人的物的資源のなかで最大多数の傷病者に最善を尽くすために、傷病者の緊急度と重症度により治療優先度を決める」ことにある。トリアージは限られた医療資源を最大限有効に使って、1人でも多くの傷病者を助けようとする集団災害医療に欠かすことのできない重要な仕事である。
トリアージには、トリアージタックが使われる。このタックを患者に付けることによりその傷病者の緊急度、重症度が一目で判別でき、カルテとしても利用される。また傷病者の整理・集計にも役立つ。トリアージタックは三枚複写となっており、一枚目は災害現場のトリアージポストではずして保管する。二枚目は搬送機関用で、三枚目はカラーコードが付いており収容された医療機関のためのものである。タッグには通し番号が付いている。傷病者の氏名、性別、住所、分かれば電話番号とトリアージ実施者の名前を記載し、また所見も簡単に記しておく。トリアージの分類を決めたら、その色を残し余分なカラーコードをちぎり取る。タックを付ける部位は原則として右手関節、外傷等で付けられなければ左手関節、足関節、頸部の順となっている。トリアージ分類を変更するときは古いタックを捨てず大きな×印を付け、その上に新しいタッグを付ける。
トリアージの行う際の留意点としては、災害時におけるトリアージではきわめて早い判断が要求されることが挙げられる。1人の患者につきおよそ30秒以内に、搬送・治療優先順位決定のための評価を行う。腹腔内出血のような生命予後にかかわる損傷は、四肢骨折のような機能予後にかかわる損傷に優先する。原則としてトリアージの際に治療は行わないが、気道障害と出血に関するものは緊急的に致命的であるため、その場での治療が要される。
大量の傷病者を迅速にトリアージするひとつの方法として、STARTという方式が提唱されている。START法はsimple triage and rapid treatmentの頭文字をとっており、医学的知識があまりなくても、呼吸、循環、意識レベルで緊急治療群と非緊急治療群の二群に分ける方法である。START式トリアージを右に示す。
2.Treatment
災害医療の3Tの2番目はTreatmentを示す。現場応急救護所での傷病者に対する医療行為は、あくまで安定化(stabilization)のための治療であり、確定的な治療ではない。
実際の治療は気管挿管や気管切開等を含む気道確保、止血、胸腔ドレナージ、ショック患者への輸液路確保、投薬、骨折が疑われる部位の固定等に限定される。
3.Transportation
3Tの3番目はTransportationを示す。搬送については救急車等の搬送手段、後方医療機関の状況に規定される。どういった搬送手段があるか、後方医療機関の機能、能力、搬送にかかる時間等を常に把握する必要がある。
搬送手段としては、担架搬送、救急車、ヘリコプターなど様々な方法がある。確保しうるあらゆる手段を考慮に入れるべきである。また、Mass−gathering※における災害時にはこれらの搬送のために搬送経路を確保することが重要となる。
搬送においては後方医療機関の能力、傷病者の重症度、時間、搬送中診療の可否等を考慮しなければならない。必ずしも重症例から直近病院に搬送することが適切であるとは限らない。
現場における一般医の役割は、トリアージとトリートメントすなわち応急処置となる。トリアージは、救急隊と協力して行ってもよい。また、トリアージに長けた医師が到着すれば、その時点で交代する。
トリアージに係わらない場合には、応急救護所においての応急処置が役割となる。応急救護所の応急処置の目的は、全身状態の安定化をはかることである。準緊急群にトリアージされた患者が病状の進行により緊急群となることもあり得るため、緊急群の応急処置をしながら、準緊急群の悪化にも注意することが必要である。傷病者の状態を充分に把握し、搬送の責任者である救急隊と十分に連係して最終的な搬送優先順位に関して、アドバイスする。また、応急救護所で行う応急処置は医療行為なので、行った処置はトリアージタックの特記事項の欄に時間とともに記載する。
※Mass−gathering:共通した目的で、1,000名以上の方が同一時間、同一地域に集合するもの。
【参考】http://www.fukui.jrc.or.jp/news/h19/200711q5kensyu.html
広域災害救急医療情報システム EMIS(Emergency Medical Information System)というのは、阪神淡路大震災における教訓から構築されたシステムである。災害時に被災した都道府県を超えて医療機関の稼働状況など災害医療にかかわる情報を共有し、被災地域での迅速かつ適切な医療・救護にかかわる各種情報を集約・提供することを目的としている。
各都道府県システムにおける全国共通の災害医療情報の収集や医療機関の災害医療情報を収集、災害時の患者搬送などの医療体制の確保を可能としている。また、そのために東西2センターによる信頼性の高いネットワークを構築しており、平常時、災害時を問わず災害救急医療のポータルサイトの役割をしている。DMATの要請や、ヘリでの患者輸送などのときにもこのシステムが使われる。また、大地震の際には地震防災情報システム(DIS)など、ほかのシステムとの連携が想定されている。
このシステムは24時間稼動可能なインターネットによるWEB形式となっており、一般市民にむけては災害救急医療に関わる一般向け各種情報の提供を行っている。また、関係者用として、それら災害医療情報の入力や検索、災害時の速報やシステム運用状態の切り替えが可能となっている。
各県ごとにシステムが違っており、その中でも兵庫県は阪神・淡路大震災での教訓から平成8年にシステムを導入。2004年時点で、参加機関は計426施設となっている。
兵庫県では年1〜2回災害モードで入力訓練を行っているが、実際に発令されたことはなく、そのため現実に災害モードとするような状況に陥った場合にどのくらいの入力率があるのかは不明である。一方、日ごろから頻繁に起こっている多重衝突事故や集団災害での対応では、消防・救急隊などの傷病者と医療機関の間に認識の差やタイムラグがあり、その結果、どの病院に搬送すればいいのか判断できなくなり、傷病者の局在が起こり現場が混乱。それによって院内体制や他の医療機関への応援が遅れ、結果的にタイムラグが発生するといった悪循環が起こっていた。
これは、災害モードにするほどではないといった認識で、なかなか災害モードにされなかったことにある。その教訓より、兵庫県は緊急搬送要請モードという新しいモードを設立。最大の特徴は傷病者の搬送機関である消防機関が直接モード切替、要請をできることで、消防本部が発動することができる。
このモードは災害モードと、いわゆる「敷居の高さ」が違うため、昨年度は訓練で5回。実際の現場では2回発動されている。このモードでは消防機関の中での情報が医療機関にスムーズに反映され、個々の医療機関の体制確立が早くなるメリットがある。救急隊もどの病院に搬送すればいいのか、というのが判断し易くなると思われる。
これからもシステムの構築について、兵庫県だけでなく各都道府県で創意工夫がされ、また情報の共有がされていけばより良くなるだろう。
【参考】遂に始動!!日本版DMATの中身とは!?
(http://www.unlimit517.co.jp/medi105.htm
より)
【DMATとは?】
【目的】
【DMATの実際の動き】
【この様な体制を引くことに至った理由】
【DMAT活動のための準備】
【アメリカと日本のDMATの違い】
集団災害時における一般医の役割
(長岡市医師会ホームページ、http://www.nagaoka-med.or.jp/M-G_Medicine/2.htmlより)
Mass−gatheringでの集団災害発生の場に居合わせた場合、まず現場に対策本部が立ち上がっている場合は、対策本部で医師である旨を伝え指示を受ける。救出・救助の役割は、消防が基本的に行う。また、搬送も救急隊によって行われる。災害時の医療情報システム
(兵庫県災害医療センターホームページ、http://www.hemc.jp/disaster/infosys.htmlより)
・兵庫県災害医療センター http://www.hemc.jp/disaster/infosys.html
・広域災害救急医療情報システム http://www.wds.emis.go.jp/