災害医学・抄読会 2006/05/19

多数傷病者発生時の分散搬送

中島 康:エマージェンシー・ケア 19: 131-137, 2006


多数傷病者発生事故とは?

比較的限局した場所で発生し、また傷病者の数やその重傷度がその地域 の医療施設の能力で対応可能な事故

  • 平時の救急医療とこのような災害医療との違い→「需要と供給のアンバランス」

    救急医療では:需要(傷病者)<供給(人員・医薬品・資器材などの医療資源)
    災害医療では:需要( 〃 )>供給(       〃         )

    → 1人の傷病者に対する医療レベルは低下
    preventable death(防ぎ得た死)

    そこで多数傷病者発生時に1人でも多くの傷病者を助けるためには?

    → 多数傷病者発生時でも、傷病者一人一人に平時の高度な救急医療を提供できること
    → "3R"を満たすことが重要
    *3R:for the Right patient (適切な患者)
             in the Right time (適切な時間に)
             to the Right place(適切な場所に)

    → 十分な"3Ts"が行われることが必要

    *3Ts: 1)Triage(トリアージ)
        2)Treatment(治療)
        3)Transportation(搬送)

    1)Triage:トリアージ

     搬送順位は重傷度が傷病者数やその重傷度に応じて決められる。
     赤、黄、緑、黒の4色

     Ex).同じ赤タッグの腹腔内出血の傷病者がいて、1人は「輸液を行ってもショック状態」、もう1人 は「輸液によって血圧が保たれている状態」であれば、搬送順位はショック状態の傷病者の方が優先 される。

    2)Treatment:治療

     傷病者を安定した状態で受け入れ、搬送するためには、必要最低限の治療、処置を現場救護所で行う ことが不可欠である。

     Ex).気道閉塞→気管挿菅、気胸→胸腔ドレナージ
     出血性ショック→輸液ルートの確保 など

    3)Transportation:搬送

    i)受け入れ病院の選定
     受け入れ可能な病院数、それらの病院までの距離、現在の収容能力、救急医療レベルを考慮して選定 する必要がある。

    ii)最適な搬送手段の利用
     主な搬送手段は救急車 →しかし、多数傷病者発生事故では救急車両は不足状態!
     ⇒搬送能力、入手可能性、付随する医療設備などを十分考慮して別の搬送手段を選択する必要性

     Ex).軽傷者搬送にマイクロバス
     最重症傷病者はヘリコプターで専門医療機関へ など

    iii)分散搬送

    • 数の分散:搬送先の病院を分散することで、1病院あたりの搬送者数を減らす。
    • 時間的な分散:搬送者の数は同じでも時間差があると一人当たりの人手が増える。
  • ≪実際の災害事例から≫

    1.JR福知山線脱線事故

     2005年4月25日に起きた列車事故。乗客数約580名、死者107名、負傷者549名。 傷病者の搬送、受診は44医療機関にあったが、事故現場に近い医療機関に集中がみられた。しかし重 症傷病者の受け入れは1施設あたり平均2〜3名であり、平時の救急医療レベルの維持が可能であっ たと推測される。

    2.ドイツICE高速列車事故

     1998年6月3日に起きた高速列車事故。乗客292名、死者101名(96名即死)。 事故発生時16分後には事故現場に最初の外傷医が到着し医療処置が開始されたこと、また39機の航空 機を活用し、事故現場より150km圏内の22医療施設に87名の重中等症傷病者を分散搬送したことによ り、preventable deathは0名!

    〜まとめ〜

     多数傷病者発生時にpreventable deathを最小限にするためには 3Rのもとの十分な 3Tsが不可欠であ る。JR福知山線脱線事故やドイツICE高速列車事故の事例においても、事故現場に緊急医療チームが出 向いたことで3Tsが向上し、重症傷病者の多数医療機関への分散搬送が可能になったと思われる。今 後もそのような医療チームが事故や災害現場において活動することで、より良い分散搬送が行われ、 「一人でも多くの命が助かる」ことが期待される。


    災害派遣医療チーム(DMAT)と広域医療搬送

    近藤久禎:エマージェンシー・ケア 19: 139-146, 2006


    経緯

     阪神大震災発生時、多くの傷病者が発生し医療の需要が拡大した一方で、病院自体も被災し、建 物の被害・ライフラインの途絶・医療従事者確保の困難などによって従来の機能が発揮できず医療の 供給が低下した。24時間以内に広域搬送によって緊急医療を確保する必要があった傷病者は380名、そ の後72時間までに必要とした傷病者は120名と見積もられるが、実際にヘリコプターで搬送されたのは 震災当日が1名、72時間以内でも17名であった。

     この教訓から広域搬送の必要性とそれを行うための医療チーム派遣の必要性が強く認識され、拠 点となる病院の整備を行うことになった。

     国は、県に若干数の基幹災害拠点病院を、二次医療圏を目安に災害拠点病院を指定した。これら の病院は高度の診療機能・地域医療機関への応急用資材貸し出し・自己完結型医療チームの派遣機 能・傷病者の広域輸送への対応、といった機能を持つよう期待され、基幹災害拠点病院はさらに、要 員の訓練・研修機能も持つ必要があるとされた。

     また、新潟県中越地震の教訓も踏まえて災害時の医療支援を行うために訓練された医療チームの 必要性が繰り返し認識され、国によるDMATの整備が開始された。

    DMATとは

     DMATとは、災害急性期(48時間以内)に活動できる機動性を持った医療チームのことで、独立行政 法人国立病院機構災害医療センターにおいて実施されるトレーニングである日本DMAT隊員養成研修の 修了者より構成される。

     その活動内容は、災害急性期(おおむね48時間以内)における医療救援活動であり、被災地から被 災地外へ患者を搬送する広域搬送や被災地内の医療活動支援を行うものである。

     DMATは防災基本計画上、以下のように位置づけられている。

    1. 国は災害発生時に迅速な派遣が可能な災害派遣医療チーム(DMAT)に参加する医師・看護師な どに対する教育研修を推進するものとする。

    2. 厚生労働省・文部科学省・日本赤十字社及び被災地外の地方公共団体は、医師を確保し、 DMATを編成するとともに、必要に応じて公的医療機関・民間医療機関からのDMATの派遣を要請するも のとする。

    広域医療搬送

     震災時には被災地内は前述のように多くの重症患者が発生する一方で医療機関の機能が低下して いる。だが日本全国で考えれば、被災地外においては平時と同様の医療を提供できるものと考えられ る。そこで、被災地の重症患者を被災地外に搬送し、医療を提供するという合理的な発想が生まれ た。これが広域医療搬送である。

     広域医療搬送では、被災地内で広域医療搬送の対象となる患者を広域搬送拠点に集約し、そこか ら自衛隊機などによって被災地外へ航空輸送を行う。

     広域搬送拠点には広域搬送拠点医療管理所(SCU)が設置され、集約された患者の搬送優先順位を決 定するトリアージや航空輸送に耐えうるような応急処置が行われる。

     DMATはSCUにおける医療スタッフとしての役割を果たすことが期待されており、患者搬入・応急処 置・トリアージ・患者搬出などに携わる。また、航空搬送時には患者の搬送介助を行う。

    被災地内の活動

     一方、被災地内でのDMATの活動としては、重症患者の殺到している病院における診療の支援・消 防ヘリや救急車による近隣や域内への患者搬送の介助・被災現場における活動などが挙げられる。

    DMATの研修

     現在は、独立行政法人国立病院機構災害医療センターにおいて実施されている。医師・看護師・ 調整員を含む5名を1チームとし、災害時の医療活動についての基本的な知識習得のための講義・災害 医療活動の机上演習・トリアージ・応急処置や通信の実技・SCUの運営実習などが行われる。

    今後の展望

     DMATの整備については2004年度から開始され、2005年度からは本格的な研修が開始されたばかり である。

     今後、訓練や研修における議論を通じて課題を明らかにし、災害時に1人でも多くの救える命を救 うべく、さらなる体制整備を目指しているところである。


    放射線管理面から見た放射線物質による汚染傷病者のトリア−ジの提案

    古賀佑彦:平成17年度緊急被ばく医療全国拡大フォーラム講演録集 p.4-16


    放射線管理面でのトリアージとは

     トリアージとは一般に救急医療のときに使われる言葉である。被災者の緊急度や重症度に応じて治療 の優先順位を設定し、4色のトリアージタッグを使って被災者を色分けするもので、医療従事者はそれ を見て直ちに次の行動に生かすことができる。この提案は放射線管理面からもそのトリアージに似た ことをしてみようというものである。

    トリアージの目的

     その目的は、被爆医療関係者に「汚染状況・二次被爆の可能性」に関する正確な情報を提供すること で、状況に対応した準備を可能にすることである。すなわち、患者さんをレベル分けする際には患者 の重症度によるのではなくて、あくまで放射線管理面から選別することになる。その選別は原子力事 業所の場合は放射線管理要員が放射線測定によって行う。

     また、そのときの患者の被爆線源はγ線である。なぜなら、α腺、β線というのは仮に存在していた としても二次被爆線源としてはほとんど考慮しなくて良いからだ。

    レベル分けをするために必要な情報

     汚染傷病者の処置の流れとしては、事業所で事故が起きた直後事業所で一時処置(ある程度の除染) が行われ、その上で放射線測定をして患者の選別をし、病院へ搬送され処置を受け、社会に復帰する という流れになる。レベル分けの時点で放射線管理面からどのような情報が必要なのかというと、放 射線物質の汚染密度と汚染面積あるいは総量、作業者の二次被爆予測のために患者の汚染部位から一 定の距離におけるγ線の線量率、および再処理施設等においてプルトニウムやアメリシウムなどのα 核種による汚染が生じた場合は生じたという事実(この場合γ線による二次被爆はないので、汚染拡 大防止が重要)、以上が必要である。

    レベル分類

     そこで汚染のレベル分けであるが、レベル0〜4に分類した。

    安全宣言のレベルをどこにひくか?

     安全宣言を現状復帰宣言ということに当てはめると、処置室を治療に使って治療が完了して患者が退 院したあとそこに汚染が残っていない状態のことを安全ということになるが、これを当てはめるとレ ベル0となる。ただし、そのときの患者本人はレベル1となる。

    まとめ

     このような放射線管理に必要な情報は事故発生元から搬送(消防)、あるいは病院に正確に伝達され なければならない。正確に伝達するときにできるだけ単純な言葉で言ったほうが情報の伝達は正確に 行くと思われる(搬送関係者や医療従事者のような放射線の専門家以外の人を介する場合は特に)。 したがって、このような測定の上でトリアージタグのようなタグにラベルを明記すると言うことを提 案したい。また、このような測定結果が信用されるためには、関係者相互の信頼関係を日ごろから構 築しておくことが非常に重要になってくると思われる。今後このレベル分けが定着すれば将来核テロ などが起こったときにも安心だ。核テロの場合は放射線管理要員というわけにはいかないので、放射 線取扱主任者や日本放射線技師会が定めている放射線管理者の方々をあらかじめ登録しておくなどの 方法を検討していけばいいのではないか。

    □参考

    (レベル分類と放射線測定値)

    レベル0 0(表面密度限度の1/10未満の放射能―線量率は測定不能)
    レベル1 〜0.02mSv/h未満の放射能を出す放射能(50時間作業で0.1mSv未満)、α核種は表面密度限 度未満
    レベル2 0.002mSv/h以上〜0.1mSv/h未満の放射能を出す放射能(50時間作業で5mSv未満)、α核種は 表面密度限度以上
    レベル3 0.1mSv/h(50時間作業で5mSv)以上の放射線を出す放射能。線量率を記載すること

    (レベル分類と作業者の二次被爆)

    レベル0 作業者の二次被爆は0(測定不能)
    レベル1 50時間作業でも年間自然放射線の約1/20、公衆の年限度の1/10未満。Alpha核種では0
    レベル2 50時間作業で自然放射線の2年分。胸部CTの実効線量程度。アルファ核種では0
    レベル3 レベル2を超える線量

    原子力発電所等の労災事故のほとんどはレベル1以内に収まると考えられる。


    武蔵野赤十字病院防災救護対策マニュアル 2.地震対策

    武蔵野赤十字病院、病院防災の指針、日総研出版、1995、p.130-145


    I. 地震対策

    1.地震の知識

     大地震発生時には電気・水道・ガス・電話が使用不能になり、交通機関は途絶し、火災が発生するこ とが想定される。ゆえに以下の地震用語を理解しておくことが必要である。

    (1)震度

     震度は、地震動の強さの程度を表すもので、震度計を用いて観測する。現在は次の十段階に分類さ れる。

    震度0:人は揺れを感じない。
    震度1:屋内にいる人の一部がわずかな揺れを感じる
    震度2:屋内にいる人の多くが、揺れを感じる。眠っている人の一部が、目を覚ます。電灯などのつ り下げ物が、わずかに揺れる。
    震度3:屋内にいる人のほとんどが、揺れを感じる。恐怖感を覚える人もいる。棚にある食器類 が、音を立てることがある。電線が少し揺れる。
    震度4:かなりの恐怖感があり、一部の人は、身の安全を図ろうとする。つり下げ物は大きく揺れ、棚 にある食器類は音を立てる。電線が大きく揺れる。歩いている人も揺れを感じる。自動車を運転して いて、揺れに気付く人がいる。
    震度5弱:多くの人が、身の安全を図ろうとする。棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。 窓ガラスが割れて落ちることがある。電柱が揺れるのがわかる。建物の壁に亀裂が生じる。ガスの遮 断、断水、停電がまれにおきる。
    震度5強:非常な恐怖を感じ、多くの人が、行動に支障を感じる。食器類、本の多くが落ちる。変形 によりドアが開かなくなる。ブロック塀の多くが崩れる。自動車の運転が困難となり、停止する車が 多い。建物の壁に大きな亀裂が生じる。ガスの遮断、断水、停電が起きることもある。
    (深度5共通:脆弱な地盤に亀裂が入ったり、落石や山の小崩壊が起きる。
    深度6弱:立つのが困難になり、多くのドアが壊れる。建物内の多くの壁や窓ガラスが破損、落下す る。建物が倒壊することもある。ガス、水道が一部でとまり、停電することもある。
    深度6強:這わないと動けない。ドアが吹き飛び、耐震性の高くない建物は倒壊することが多々あ る。一部で停電、広範域でガス、水道が止まる。
    (深度6共通:地割れや山崩れが発生するがある。)
    深度7:揺れに翻弄され、自分の意思では動けない。ほぼ全ての家具は移動し、飛ぶものもある。耐 震性の高い建物でも、大きく傾いたり倒壊する。広範囲にガス、水道、電気が止まり、地形が変わる ほどの地割れ・地すべり・山崩れが起きる。

    (2)マグニチュード(M)

     地震そのものの規模や大きさを表す。Mが大きいほど規模が大きい。これに対し震度は観測場所ごと の強弱間の度合いで出すため、場所により異なる。Mの大きさで以下のように分類される。

    大地震…M7以上
    中地震…M5以上M7未満
    小地震…M3以上M5未満
    微小地震…M1以上M3未満

    2.地震警戒宣言発令時の措置

     地震発生による被害を最小限にとどめ、防火活動を円滑に行うため、次の措置を講ずる。

    (1)全職場に共通の措置

    1. 正確な情報の収集と伝達。
    2. 患者の安全対策と避難について指示する。
    3. 手術中・分娩中の患者の安全策をとる。
    4. 自衛消防本部を設置し、その場所を院内放送で知らせる。
    5. 応急救護所の設置準備。
    6. 建物、付属施設、各種設備、器具などの倒壊、転落の防止措置。
    7. 発火性、引火性物質、薬品、放射性同位元素など危険物の安全確保。
    8. 救護斑の出動準備。
    9. 避難、消防設備器具の点検整備。
    10. 非常持ち出し品の確認。
    11. 災害備蓄品の在庫確認と点検整備。
    12. 避難通路上の障害物品を片付けておくこと。
    13. 地震発生時の行動の確認。
    14. 職員非常招集計画の確認。
    15. 各職場でそれぞれ独自の防災措置について話し合い、必要な措置をとる。

    (2)警戒発令時診療

    1. 外来患者は出来るだけ平常通り行う。
    2. 入院患者は退院及び一時帰宅を希望するものには担当医師の判断により、許可する。
    3. 手術は医師の判断により、日程変更の可能な手術は延期する。

    (3)病棟における措置

    1. 軽症患者へはインターフォンを通じて指示。
    2. 重傷者へは看護師がベットからの転落防止や酸素ボンベの切り替え、点滴の切り替えを行う。
    3. 婦長は報告書をまとめ、本部に電話で報告する。
    4. 火気の点検を行う。
    5. 器械類の転倒、落下、移動を防止する。

    3.地震発生時の行動

     地震時には火災が多く発生する。それは震動に動転して火を消さずに逃げる人が多いからである。地 震発生時はより冷静な行動が必要である。

    (1)出火防止措置
     手近の火を声を掛け合って消す。

    (2)消火活動
     全力を挙げる。余力があれば周辺地域の消火も行う。

    (3)入院患者の避難誘導
     避難路の確保に支障となる物品を排除し、非常口の鍵を開けて本部の指示を待つ。被害状況の確認を 速やかに行い、本部の指示を待つ。

    (4)情報の収集と伝達
     ラジオや消防機関から積極的に情報を収集し、正確な情報を周囲に伝える。

    (5)地震後の設備・器具の点検整備

    (6)震災時の患者避難場所の確保

    (7)患者の帰室
     安全を確認してから部屋へ帰す。

    II.患者避難対策

     平素より、各病棟に適した避難方法を修得しておくことが大切である。

    1.避難方法

    (1)水平避難
     同一階の安全な他の防火区画内へ、火元から遠ざかる方向へ避難する。

    (2)上下方向避難
     当該階にいることが危険になった場合は、原則として本部の指示により階段を利用して避難する。出 火階とそれより上の階を優先的に避難させ、エレベーターは使わない。

    2.避難誘導時の注意事項

     拡声器、メガホンなどで患者全体に火災状況を知らせ、混乱防止に留意し、勝手な行動をとらせない ようにする。

    III.救急診療体制

    1.大規模災害への対応

     災害時には建築物の損壊、物品の落下、火災の発生などで骨折・創傷・熱傷などの救急患者が多数来 院し、非常に混乱することが予想される。ゆえにいつでも救急診療体制がとれるよう、応急救護所の 設置、医薬品の確保、診療担当者の任務分担を明確にしておくことが必要である。特に夜間、休日は 人員の確保に全力を注ぐべきだ。

    2.災害時の外来患者の診療

     大規模な災害で患者が多数来院し、通常の体制では処理しきれない場合は増員して診療に当たる。

    3.救護班の派遣

     市区町村長より知事を経由して日赤都支部に救護班の要請があった時は支部長の指令で救護班を派遣 する。救護班は医師1、看護師長1、看護師1、助産婦1、主事1、補助員1の6名からなり、主に 薬剤や治療材料の支給、処置、小手術、病院などへの搬送を行う。出動期間は14日となっているが状 況により、増減する。

    IV.職員非常招集計画

     夜間、休日の当直勤務時間帯では職員数が極端に減少しているため、災害時の緊急を要する諸活動に 大きな支障を来たすことが予想される。このような時間帯でも人員を迅速に十分数確保するため、予 め体背を確立しておく必要がある。ゆえに緊急電話連絡網やその他のあらゆる手段を用い、すぐに連 絡をとるようにする。職員も被害が予想される場合は連絡が来る前に自主的に登院し活動を再開する のが望ましい。

    V.予防管理体制の確立

     病院内の全ての物品を、常に安全に使用できる状態を維持できるように努める。異常を認めたら早 急に必要な措置を講ずる。主には建物・設備、機械器具、危険物・施設、消防用設備用具、災害用備 蓄物質の点検整備である。特に危険物、火気取り扱い器具などは職員各自の日常からの注意深い点検 整備が必須である。

    VI.自衛消防組織

    1.自衛消防隊

     災害が発生した時に必要なあらゆる活動を能率的かつ組織的に遂行する。人命救助がもちろん最優先される。消防・緊急点検・避難・救護・給食・庶務の6部門よりなる。状況により、臨機応変に対応することが必須である。

    2.火災予防のための組織

     平素における火災予防及び地震時の出火防止を図るため各病棟ごとに防火責任者、各部屋ごとに火元責任者をおいている。

    VII.防災訓練と教育

    (1)防災訓練
     災害時に患者の命、そして自分自身の命を守るために、日頃から防災の重要性を認識し、いざというときには迅速に行動できるように心がけるべきである。そのため、総合訓練・部分訓練・基礎訓練・震災訓練を定期的に行っている。

    (2)防災教育
     防災の意識高揚のために映画上映や講演会などを行っている。

    抄読担当学生の感想

     ほとんどの人は大震災に対しての意識は薄く、人事のように考えている。しかし、実際に今までも大きな地震は何度も起こり、大きな被害を出してきた。だからこそ病院はいざというときにでも人命を保護し救えるように職員一人ひとりが心がけ、状況を体系的に解決していく必要があるのだと、この対策マニュアルを読み、ひしひしと感じた。


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