「阪神・淡路大震災」において、「巡回臨床心理活動」での経験を中心にボランティアの臨床心理士が直面した心の問題について述べてある。
「巡回臨床心理活動」は、被災地の臨床心理士がたまたま避難所を訪問し、精神科医とともに被災した人に声をかけていたことを日本臨床心理士会がサポートしたものである。全国の臨床心理士会に呼びかけてボランティアを募集して、被災した人への「心のケア」を行ったものである。
臨床心理士であるという、専門性を振りかざして避難所に入所しても、せっかくの専門性を生かす以前に抵抗にあってしまう。まずは挨拶や態度を通して伝わる人間的な側面を大切にして接し、ボランティアとは何かを理解してもらうことから始まる。
多くのボランティアは、避難した人々の驚愕した様子に圧倒され、生き残っていることや、無傷であることに対するばつの悪さ・罪の意識から、無傷の自分がのこのこ出てきて被災した人に受け入れられるだろうかとの考えが頭をよぎるのである。しかし、被災したかたがたも、分かってもらいたいという気持ちと、被災したものにしか分かりっこないという気持ちに揺れているのである。
ボランティアの中には、緊張のあまり身動きがとれなかったり、「人の家に土足で踏み入るようなことはできない」とリタイアしたりしたものもいた。しかし、心の専門家として、不安におびえたり、途方にくれている人々の傍らに寄り添い、ともに嘆き・痛みを分かち合ってほしいものである。
活動に従事したボランティアの中には、疲労困憊して休息が必要となったものや、身体の不調をきたしたものがいた。自ら休んだり、一時退去する勇気をもたなければならない。また、危機管理のマネイジメントとして、サポートシステムを整備することも必要である。
口論、酔っ払い、ペットの持ち込み、大きい話し声、睡眠困難など、夜に起こる問題が多いことは、巡回活動が昼に限られたことは改善が必要な点である。
「心のケア」とは心を痛めている人に寄り添い、ともに嘆き・苦しみを分かち合い、心を配ることをいう。筆者が経験した74歳の男性の例では、最初「何で生き残ったのかわからない、死にたい」と震災の痛手で一面しか見えなく、うちひしがれている状態から、筆者と話をすることにより、違う見方ができるようになり、生きる希望のきざしを垣間見ることができるようになった。
震災の後、すぐに喪の作業をできる人ばかりではないため、どのように関わるかを見立てること、落ち着いて話のできる隔離された場所を利用すること、さらには、最初から深く関わりすぎないことなどの、注意点を述べている。
しかし、活動のオリエンテーションでは、日ごろの各自の心理臨床活動の理念と方法論を手がかりに、「心のケア」の専門家として自ら臨機応変にやってほしいということを強調した。
ラテンアメリカから南アジアまでに及ぶ、数年ごとに大規模な洪水・暴風雨および地震に見舞われる地域は、次の大惨事が起きる前に復興を遂げることができない。しかも貧困者の中でも最も貧しい層が、危険の高い地域に押しやられ人口過密となっているために大災害を引き起こす、といった社会的・政治的・経済的なレベルでの災害と、一時しのぎだけで根本原因をそのままにする無計画な人道援助による災害、といった「人為災害」があり、これらの地域の災害は一概に「自然災害」とはいえないのである。このことをふまえ、以下に救援活動の意義について検討した。
海難事故とは航海中の船舶が何らかの災害に遭遇し、乗員の生命が危険に曝されること
1、海上災害の分類
海上災害は以下のように分類される。
2、海難の状況
要求助船舶が30年前に比べて約3割減少している。(台風および異常気象に起因する海難を除く)
減少した理由として船舶自体のハイテク化、衛星通信・位置管理システムの導入、航行管制システ
ムの整備、海難防止思想の啓蒙、気象庁による気象情報などの高度化などの海難事故に対する対策
を講じてきた成果である。
船舶の種類別の海難事故件数を見てみると漁船、貨物船は年々減少しているが、プレジャーボート
は上昇している。この理由はレジャーとしてプレジャーボートが気楽に楽しめるようになった一方
で、これらの人々の運行に関する知識・技術が十分でない事、また、海難に対する低い意識で海上
に出ることに起因していると考えられる。
乗船者のうち死亡・行方不明者は漸減しており、海難事故の発生件数減少の割合以上に死亡・行
方不明者が減少している。その理由は通信の能力などの船舶自体のハイテク化にもよるが、海上保
安庁を始めとした捜索、救助・救急活動の体制の充実によるところが大きい。
海難の種類は乗り揚げ、衝突、機関故障の順となっている。その理由として見張り不十分、操船
不適切、気象・海象不注意、機関取扱不良などの運航に関する知識・技術の不十分と不注意による
ものがほとんどである。
3、危険物などの大量流出事故の状況
原油や液化ガスなどの専用船舶が海難事故に遭った場合は、船員の危難だけでなく船舶から危険
物などが大量流出することにより海洋汚染、火災、爆発などの海上災害が問題となる。
海上災害に対する対応策として、巡視船艇・航空機の出動体制の確保、防災資機材の配備の強化
や油の拡散・漂流予測の高度化を図るため、現場の巡視船からリアルタイムに海象のデータを取得
できる「船舶観測データ集積・データシステム」を導入し、予測結果などを電子画面上に表示する
ための沿岸海域環境保全情報の整備を図っている。
4、海上災害発生時の指揮命令系統
海上事故が発生した場合は速やかに海上保安庁に連絡する。海上保安庁は自らの情報収集と関係
省庁、関係都道府県の情報を統合し官邸に連絡する。災害の規模により国は警戒本部(海上保安庁長
官が本部長)、非常災害対策本部(国土交通省)を立ち上げる。実際の救助活動は関係事業者、指定
行政機関、地方公共団体および公共機関により行われる。
5、災害医療からみた海難事故
洋上の場合、救助船などの船内で現場トリアージ、・応急処置が行われ、空路による搬送の為の搬
送トリアージが行われると考えられる。しかし、実際は捜索活動が難渋を極め、救出順に直接医療
機関へ搬送されるのがほとんどである。
今後の課題としては捜索救助(search and rescue)に医療チームも同行し、救助直後より治療を開
始する体制(SRM)が必要になってくる。
6、洋上での急患搬送
洋上救急体制:洋上の船舶内において傷病者が発生し緊急に医師の加療を要する場合に、海上保
安庁の巡視船・航空機により協力医療機関の医師・看護師などに急送し、救急処置を施行しつつ最寄の病院に搬送するものである。
過去15年の洋上の疾病構造は1番が循環器系、2番が消化器系、3番が骨折。死亡例は循環器が圧倒
的に多い。
また、大きな船舶には、応急処置ができる船舶衛生管理者が乗船している。しかしながら、注射
薬の全て、および内服薬の施行にあたっては必ず医師(または医療通信)の助言により施行しなけ
ればならない。また、船員の生命の急迫の危険がある場合でも、時間的余裕があれば必ず医師に報
告し、かつ助言を求めることを義務付けている。
7、おわりに
海難事故に対する予防策、対応策はハイテク化により格段の進歩を遂げているが、海難事故は人
為的災害の意味合いも強くこれからも完全に防ぎえないと考えられる。今後も起こることを前提に
対応策を充実すべきである。また、危険物の流出事故などに関しては、タンカーの大型化と航海の
頻度の増加を考えると、流出事故が起こる可能性はますます高く、船舶事業者、海上保安庁、関係
機関がいったいとなった対応策が必要と考えられる。
最後に群衆なだれを生み出す危険な過密状態が成立してそれが継続されると、その不安定さゆ
えに、きっかけがなんであれ群衆なだれが発生するのは避けられないのである。それゆえに問題に
すべきは、隙間がなぜできたかではなくて、なぜ危険な過密状態が作り出されたかである。
災害時において、病院は医療救護活動の重要な拠点となることから、電気、通信、上下水道など
のライフラインに大きな被害が生じても、限られた医療機能を最大限に活用して、負傷者への医療
救護活動を行うことが強く求められる。そのため、医療機能の確保に必要な施設・設備などの耐震
対策を講じるとともに、日頃から、施設・設備の自己点検を実施することが重要である。特に電
気、ガス、水道については設備の点検を定期的に行い、可能な限り耐震設備を備えておく必要があ
る。
1. 水
平常時の1日平均使用量を確認し、自院の給水方式、給水方法も確認しておく。
2. 受水槽および高置水槽
水を一時的に蓄える受水槽は、ライフライン途絶時に有効である。また、飲料水のほか、雑水に
分けた複数の受水槽が確保されていればさらに有用である。新耐震基準以降の設置か否か、耐ス
ロッシング現象構造になっているか確認する。
3. 水道の代替
井戸水供給は可能か、既存の井戸水の水量・水質、受水槽簡易タンク、防火用貯水層・雨水など
の注水設備、簡易浄水器などの保有、独自輸送手段、行政からの給水を確認する。
4. 電気
受電方式、配電方式、据え付け、自家発電、非常用コンセントの識別、ポータブル発電器、蓄電
池設備、無停電電源設備、配電車の契約を確認する。
5. 医療ガス
医療ガス会社との優先供給契約、酸素・笑気・窒素の備蓄量を確認する。
6. 通信
厚生省が推進している広域災害情報システムへのアクセスが重要である。機関コード、所属、パ
スワードは一度登録しておくことが必要で、日頃からアクセスしておくことが重要である。
7. 輸送手段
病院救急車の確保、民間救急搬送会社の救急仕様車の活用、ヘリコプターの使用、水路、列車を
確認する。
8. マンパワー
職員非常召集、地区医師会災害時連絡網、病院周辺在住の自病院以外の病院勤務医師らの支援態
勢、NGOの受け入れ、町会・自治会等相互応援協定書を確認する。
9. 酸素配管図
酸素配管図は、全部署にわたり把握が必要である。中央配管が亀裂を起こした場合は、酸素ボン
ベに切り替えが必要であり、部分的に損傷を受けた場合には、シャットオフバルブの閉鎖が必要で
ある。よって、各部署の担当者が個々のシャットオフバルブ閉鎖でどの範囲が供給停止となるかを
把握しておく必要がある。
第1部 救援、復興および根本原因
(国際赤十字・赤新月社連盟:世界災害報告 2001年版、p.8-33)I.根本原因について
II.復興・開発と救援とは
III.資金援助について
IV.まとめ
D 海難事故
(小井土雄一:山本保博ほか・監修:災害医学、南山堂、東京、2002、p.125-132)
海上事故
1)海難事故
a.船舶自体に起因:船舶の衝突、乗り揚げ、転覆、爆発、浸水、機関故障など
b.船舶以外に起因:台風および異常気象による二次的な遭難、転覆など
2)危険物等の大量流出事故:海洋汚染、火災、爆発などの発生
通常の災害医療の流れ 洋上の災害医療の流れ
発災 海難発生
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救出 捜索
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現場トリアージ 救出
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現場応急処置 搬送
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搬送トリアージ後方搬送 医療施設治療
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医療施設治療
第5章 群衆転落の事故のメカニズム
(明石市民夏まつり事故調査委員会:第32回明石市民夏まつりにおける花火大会事故調査報告書 2002年1月、p.106-114)I.群衆なだれの発生
II.群衆なだれの誘因
III.群衆なだれの発生時刻等
W.群衆なだれのメカニズムからの原因考察
II 病院の施設・設備自己点検
(石原 哲・編著:病院防災ガイドブック、真興交易医書出版部、東京、2001、p.13-14, 21-27)
わが国における化学災害対応の現状と問題点
(奥村 徹ほか、救急医学 26:211-214, 2002)【近年の化学災害・事故】
【化学災害対策の現状】
【医療機関における化学災害対策の現状】
【化学災害対策の基本】