DISASTER MEDICINE

Application for the Immediate Management and Triage of Civilian and Military Disaster Victims

Burcle FM Jr, Sanner PH and Wolcott BW

翻訳・青野 允、谷 壮吉、森 秀麿、中村紘一郎

(情報開発研究所、東京、1985)


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24.胸部外傷

 −Kenneth L.Mattox,M.D.
David V.Feliciano,M.D.


 A.定 義

1)問題の概況

 われわれは現在,胸部外傷についての治療の知識の多くを過去の戦争 から集められた広い経験に負っている.Homer,Pare,Larreyや他の米 国の過去80年間の大きな戦争における災難の記録の資料が,胸部の貫通 創,鈍的外傷についてすぐれた記載をしている.1〜7)

 最近では,市民社会でも非合法暴力やテロ,交通事故による胸部外傷 が多くなってきている8〜10).現在では,全体の損傷の25%が胸部外傷を有し ている.胸部損傷は外傷死の25%を占め,さらに他の死亡原因の25% に関与している.11)自然災害や戦時集団災害の間に,致命的な胸部外傷を もった患者は即死するか,医療センターヘの移送中に死亡するであろう. 小さな外傷をもつ多くの集団に注意が向けられるならば,致命的な緊急 性をもつ患者は最初のトリアージの間すら生存しないであろう.医師は, 低速銃弾創や異物や鈍的外傷などの小さな胸部損傷をもつ患者の85% を,チューブによる胸腔穿刺,心嚢穿刺,気管切開,滲出物や膿胸の排 膿など,簡単な手技で治療できる.

 胸壁の挫滅や肺や心臓の損傷を含むさらに重症の患者は,蘇生法と治 療法の最新の手技を必要とする.災害時に,訓練された人員,適当な設 備,抗生物質や人工呼吸のための道具がなければ,正常の事態で起こる よりはるかに多くの死者をだすであろう.

2)胸部外傷の分類

 通常,致命的でない胸部損傷やその状態には以下のものがあげられる.

(1)肋骨骨折
(2)単純性気胸
(3)単純性血胸
(4)凝血性血胸
(5)乳糜胸
(6)肺裂傷
(7)肺内血腫
(8)胸骨骨折
(9)外傷性窒息
(10)気管・気管支内誤嚥
(11)縦隔内血腫
(12)縦隔気腫

 致命的な可能性のある胸部外傷は次の六つのものである.

(1)肺挫滅
(2)心筋挫滅
(3)大動脈破裂
(4)気管・気管支破裂
(5)食道破裂
(6)横隔膜破裂

 直接的で致命的な胸部の状態は以下の六つのものを含む.

(1)気道の閉塞
(2)開放性気胸
(3)緊張性気胸
(4)動揺胸壁
(5)大量血胸
(6)心タンポナーデ


B.胸部外傷に対する野外での緊急治療

1)初期評価と蘇生法

 胸部外傷が,気道,換気の機序,中心循環を断裂する可能性を理解す れば,患者への最初の手段は蘇生法のABCを行うことである(「5.被災 者に対する評価」参照).ひとたびパイタルサインが改善したら,二次的 に,さらに慎重な,損傷患者の評価がなされるべきである.もし可能な ら,それからX線学的な検査を行う.

 気道が確保されている胸部外傷患者では,補助的に酸素を投与すべき である.野外現場では,補助的な酸素があってもシリンダーにはいって おり,火気のあるところから遠ざけなければならない.酸素は気道には いるまえに加湿せねばならないが,これは不可能であろう.そうした状 況では,酸素カテーテルは鼻腔におき,鼻介を通して加湿させる.気道 の適切な制御と管理は,「5.被災者に対する評価」に述べてある.

 気道が確保されても,患者が自分で呼吸できないか,術者が患者を換 気できなければ,それは胸腔内換気機構の破壊があることを疑わせる. 多くの胸部損傷が考えられるが,野外での単純な治療計画をここで再び 強調する必要がある.

(1)閉鎖,緊張性気胸および血胸にはドレナージを行う.
(2)開放性気胸を被覆する.
(3)動揺胸壁を固定する.

 以上の損傷は野外でも,視診,触診,打診,聴診で診断される.肋骨 骨折がある側に閉鎖性の気胸がしばしばみられる.視診で.皮膚の挫傷 を見出すかもしれない.触診で,多くの捻髪音や気腫に気づくかもしれ ない.打診は,鼓音の減弱を明らかにするであろうし,聴診は,呼吸音 の減弱を聴取するかもしれない.緊張性気胸の存在はさらに劇的で,空 気の欠乏,チアノーゼ,緊張による気管の偏位,打診上過気音,無呼吸 音が聴かれる.血胸があれば単なる気胸とは異なり,打診上濁音とたぶ ん低容量性の徴候がみられるであろう.

 空気,水分,血液を胸膜腔から排出することは,外傷を扱うすべての 人に必要な手技である.この手扱ができる人は,大災害や災害状況下で 生命を救えるだろう.第2か第3肋間で肋骨中央部から細いカテーテル をいれ,一方向弁に接続すれば,単純性気胸や緊張性気胸を助けられる. 多くの患者では,側方のチューブにより胸腔ドレナージ(36番のフレンチ チューブを腋窩中央線で挿入)が望ましい.

 局所麻酔薬を第5肋間に浸潤したあとに,小さな切開をいれ,手袋を した指で鈍的に剥離して第4肋骨の上縁に至る.大きな鉗子で肋間筋を 分けてから,胸膜腔に達する.胸膜の癒着の有無を確かめ,最初の小さ な穴を少し大きくする.鉗子を用いて大きな胸腔内チューブをつかみ, 後上方に向けねばならない(図III-3).それからチューブを水面下シール か,ハイムリッヒ弁か,自動輸液装置か市販の胸膜腔採集管に一方向弁 でもって空気が胸膜腔に逆流するのを防ぐようにしなければならない. もし,持続的に空気,液体,血液が貯留することが予測されたら,採集 管は吸引器に接続しなければならない.さらに貯留しないと予測された ら,単純な水面下シールで十分である.トロッカーカテーテルの挿入は, 胸腔や腹腔臓器への貫通によってさらに新たな損傷を引き起こすかもし れないので避けるべきである.

 開放創,以前は外傷性開胸とか吸引性胸壁外傷とよばれたものは,野 外の緊急医療ではよくみられる.この損傷は野外や蘇生法の間は閉じて おかなければならない.いったん医療センターに運ばれたら,さらに注 意深いデブリドマンと閉鎖をする必要がある.

(1)患者に咳をするようにいう.開放創を通して凝血塊が喀出される.
(2)閉鎖性のガーゼ(ワセリンガーゼ,プラスチックラップ,その他)を 用いて開放性の吸引創を閉じる.
(3)開放創に近い別のところから胸腔内チューブをいれて,一方向性か 野外用の減圧チューブ(McSwain槍)につなぐ.11)

 図III-3 胸腔ドレナージの手法

 骨の捻髪音,奇異呼吸,そしてしばしば重症の右→左短絡を伴う肺挫傷の二次的な呼吸不全は,動揺胸壁の特徴である.骨片に対する加圧は 奇異呼吸を防ぐかもしれない.制限のある災害状況下では,気管内挿管 なしでも肋間神経のブロックや肺気管洗浄や水分制限が,呼吸不全の改 善には十分であるかもしれない12).多発災害で医療人員が少なくても,気 管内挿管は動揺胸壁に必要となるかもしれない.

 ひとたび気道と正常の呼吸機能が確保され改善されても,胸部外傷患 者で低血圧があれば,重度の血胸や腹腔内大出血や心タンポナーデなど による循環血液量の減少が疑われる.

 出血が低血圧の原因に関与しているなら,大きな口径の静脈カニユー レによる補液が必要であるが,その後も注意深い観察が必要である.広 い下頸部の損傷や片側の広い上部胸部損傷では,外頸静脈や上大静脈を 損傷することがあるので,輸液には下肢の静脈が用いられる.低循環血 液量の貫通創患者では,平衡電解質液(細胞外液(血漿を含む)と電解質組 成が似ている晶質輸液剤,乳酸加リンゲル液など)を出血予測量1mlに 対して3mlの割合で投与すれば,30%かそれ以上の出血症例でも救命で きる.この場合,酸素を輸送できるような血液,フルオロカーボン,間 質を除いたヘモグロビンも考慮されるべきである.もし,出血源が胸腔 内にあれば,胸腔ドレーンと自家輸血が適応となる.一側胸腔から一度 に1,000〜1,500mlの持続性の出血がみられたら,そのことは心臓,大血 管肺門部,内胸動脈や肋間動脈が損傷されていることを意味する.開胸 手術が可能でなければ,これらの患者は生存しえないであろうし,その ことを念頭においてトリアージに際しては,待期治療部門に移送して治 療することが必要である.

 CVPが低血圧にかかわらず上昇したままで心雑音があるならば,心タ ンポナーデとして治療する.野外では,針による心嚢穿刺が,16Gのプ ラスチックの外筒つきの針で剣状突起下部から右肩に向けて行われる. もし,治療施設が遠ければ,針をいれたままにして数分ごとに貯留する 血液を吸引する(図III-4).

 最初の評価に基づいた優先権を参考にして.二回めの評価がなされる. 二回めは当初の所見の有無,他の変化,改善,増悪について評価する.

 図III-4 心嚢穿刺の方法

 心柏数,予測心拍,拍出量,尿量,呼吸音の有無,胸腔ドレナージからの量 を含む循環動態を計測表に記録する.この二次的評価の間に,どうして も必要なら動脈造影や胸膜腔開放がなされ,もし以前に胸腔ドレーンが してなければチューブによるドレーンを行う.胸壁の骨折のある患者は, 当初は動揺胸壁を示さないかもしれない.低酸素血症や過剰輸液が起こ ると,奇異な胸壁の動きをもつ呼吸障害が起こりうる.そのような症例 では,気管内挿管が適応とされる.

 野外や災害医療の現場では,検査やX線学的評価は制限される.胸部 外傷患者において有用な検査やX線検査は,ヘモグロビン,へマトクリ ツト,動脈血ガス分圧,尿検査,胸部X線写真である.X線写真と検査 所見とを含めた患者の記録は,まとめて一袋に詰め,患者につけて次の 治療の場に送る.縦隔内血腫の症例では,動脈造影による検査が適応と なる.もし,そのような設備がなく,食道や胸部の漏出性の外傷が疑わ れたら単純写真が有用である.この最初の把握と治療上の優先権が確定 したら,次にすることは損傷の病歴,最初の評価までの時間,以前の治 療内容,アレルギーの有無,血液型(もしわかれば),外出血の予測量や 内腔への出血量,骨折のある側などの病歴を得ることである.

2)特殊な損傷の治療

 a)致命的でないもの

(1)肋骨骨折
 第1肋骨骨折のある患者は通常,重症にみえなくても綿密な評価を要 する.なぜならば,頭蓋内,胸腔内,腹腔内の合併症を高率で有してい るからである.13)肋間神経ブロックは,多発肋骨骨折の患者において深呼 吸,咳嗽が可能となり気道清浄化を促進するので有効である.合併する 失血や潜在する肺挫滅は必要に応じて治頼する.無気肺を促進するよう な全周性の包帯は避ける.補助的な酸素を与える.

(2)単純性気胸,単純性血胸
 前述のように,チューブによる胸腔ドレナージを行う.

(3)凝血性血胸
 もし発熱や膿胸が起こったら,早期の正式の開胸による排出を行う.

(4)乳糜胸.肺裂傷(血胸か気胸を伴う)
 前述のごとくチューブによる胸腔ドレナージを行う.

(5)肺内血腫
 観察,水分制限を行う.もし悪化したら,換気を補助する.

(6)胸骨骨折
 早期に心筋損傷を鑑別するために心電図を撮り,続いて縦隔の拡大を 鑑別するためにX線写真を撮る.

(7)外傷性窒息
 あらかじめ定められた方法で呼吸を補助する.

(8)気管・気管支内誤嚥 もし可能なら早期に気管支鏡を行い,大きな異物は除去する.続いて 生理食塩水で主気管支を洗浄する.広域性の抗生物質やステロイドの使 用を考える.

(9)縦隔内血腫
 二次的にX線写真で縦隔の拡大を鑑別する.もし可能なら大動脈造影 を行う.

 b)致命的な可能性のあるもの

(1)肺挫滅
 蘇生法施行に当たって補液を晶質液の1,000ml以下に制限する.低循 環血液量であれば膠質液を用いる.早期のステロイドやラシックス(R)の 使用は論争のあるところである14)

(2)心筋挫滅
 心電図と心筋酵素の測定が可能なら行う.野外状況では晶質液の使用 を制限する.うっ血性心不全が起こったら必要に応じて心筋陽性変力性 薬剤を用いる.不整脈は起こるものと考えたほうがよい.

(3)大動脈破裂
 胸部から出る主要な血管や下行大動脈に対する損傷は,一般には野外 治療および第一トリアージサイトにおける治療範囲を超えている.この 疾患をもってなおかつ治療能力のある施設に生きてたどり着いた患者の 10%中の5%が,治療されずにおかれると慢性の大動脈瘤になる.この 可能性のために著者の一人はこの病気の初期に後負荷を軽減するニトロ プルシド,トリメタファン,レセルピンなどの薬剤で治療されるべきこ とを強調している14)

(4)気管・気管支破裂
 おもな気管・気管支破裂は,喉頭から1cm以内に生じる.これはまれ ではあるが鈍的外傷(オートバイの事故,胸骨正中部への殴打など)では よくみられ,胸骨,肋骨骨折の合併症として一般的である.この破裂の 患者の多くは,気胸,気縦隔,頸部皮下気腫などを示す.その他は無気 肺や肺炎の発症のあるまで破裂が見つからないことがある.一般には, 初期のトリアージの段階では,合併した気胸のための胸腔ドレーン以外 は,気管・気管支の破裂は野外では治療されるべきではない.鈍的外傷 によって生じる気管食道瘻は外傷後3〜5日間に起こる.

(5)食道破裂
 きわめてまれで,50%の死亡率がある.第三次医療施設における治療 では,複雑な特別の手技を要する15)

(6)横隔膜破裂
 横隔膜への損傷は,胸部X線写真で,たとえば胃のようなヘルニア内 容となった腹腔内臓器が左肺野に見つかって,はじめて診断される.重 大な血胸が存在しない限り,ドレーン管は挿入する必要はない.もし必 要なときは,胸壁の切開口を通して,左胸腔にはいりこんだ脾,胃,結 腸,大網を注意深く触診する.なぜなら,これが診断を確定するからで ある.横隔膜破裂は併発する腹腔臓器の損傷が80%も存在するので,経 腹壁的な外科的修復が必要となる.

3)早期の開胸術の役割

 胸腔損傷の制御のために患者の15%が開胸術を必要とする.開胸術を 行うか否かの決定は,次のような特殊な状態に基づく.

(1)低循環血液性の心肺停止の証拠があること
(2)心タンポナーデ
(3)銃弾が縦隔を横断して難治性ショックを起こした場合
(4)外傷性開放創
(5)制御不能なまたは持続する血胸(1,500ml/以上)
(6)大量の空気の漏れ
(7)X線写真上か内視鏡的に気管・気管支破裂の存在するとき
(8)X線写真上か内視鏡的に食道損傷の存在するとき
(9)貫通創か鈍的外傷による肺損傷
(10)X線写真上の大血管の損傷の存在
(11)心や肺動脈への銃弾の塞栓
(12)外傷性の横隔膜破裂
(13)産業用コールタールの肺内への流入
(14)持続性乳糜胸
(15)血胸の凝血塊の排出
(16)感染を起こした外傷性膿瘍除去


 C.胸腔損傷の遷延性治療における問題点

 生命をおびやかす胸部外傷性損傷の治療を最初に受けなかった生存者 の15%以下に外傷による慢性の後遺症が生じる. この状態は,以下のよ うなものである.

(1)慢性仮性大動脈瘤
(2)慢性の気管・気管支の破裂
(3)心膜腔内液体貯留
(4)慢性横隔膜ヘルニア
(5)治癒した胸壁骨折
(6)慢性動静脈瘻
(7)凝血性,繊維化性血胸
(8)慢性気管支内膜皮膚瘻
(9)その他

 このうち一つでも,あるいは二つ以上の組み合わせがあると患者は状 態の悪化を起こすかもしれない.それらは,大動脈瘤の破裂,収縮性心 膜炎と低心拍出量,壊疽,敗血症を伴い,時に死に至る.慢性の横隔膜 ヘルニアを通して腹腔内臓器の絞扼が生じたり,繊維化血胸による肺不 全などによる.慢性の膿胸が起こったら,空洞を形成したものではチュ ーブによる胸腔ドレナージは無効かもしれない.できるだけ大きな胸腔 管をいれることと,膿瘍腔の最下部で肋骨を切除することは空洞切開や 慢性の排膿洞をつくる.

 遺残した抑制可能な気管支胸膜皮膚瘻は生きて いくのにさしつかえがない.胸壁の皮膚の感染はデーキン溶液(クロロッ クスの4倍液)やヨウ素薬(ベータタイン)や肉芽組織の促進作用を有する 他の液で浸したガーゼで頻回に包帯交換することで治療する.収縮性心 外膜炎が存在しなければ,心摸腔の貯留液を繰り返して穿刺治療する. 慢性の乳廉胸は中鎖脂肪酸とトリグリセリドを除いた食事とチューブに よる胸腔ドレナージや穿刺で治療すべきである.乳糜は本来無菌で,膿 胸はまれにしか乳糜胸には起こらない.挫滅したり,実質の損傷した患 者は水分制限と補助的な加湿した酸素投与による呼吸系の補助が必要で ある.もし低酸素血症があれば,挿管と従量式の呼吸補助や換気補助が 適応となる.


D.胸部外傷におけるトリアージ

 頭蓋,脊椎,主要な腹部の損傷や大四肢の骨折のごとき胸部以外の損 傷は,高い罹患率があり,入院加療が遷延する.胸部損傷患者の多くは, 回復の可能性と機能の早期回復の可能性をもっている.それゆえ.最初 のトリアージ点に到達しえた胸部損傷患者は,待期治療群にいれるべき ではなく,状態を安定させるような治療を受けるべきである.

 六つのただちに生命をおぴやかす胸部外傷(p.361)をもつ被災者のグ ループは,皮肉にも気道の確保,心膜腔穿刺,胸腔ドレーンのごとく野 外処置に劇的に反応する.大災害の状況下では,大量血胸と大きな心臓 の損傷は,第三次医療施設へたどり着かないかもしれない.動揺胸壁の 患者を安定させ,可能なら救出するべきである.12の非致命的な条件の 一つをもつような患者は,生存しうると予測される.比較的簡単な手技 を用いて,第一次医療施設で治療されうるだろう.

 六つの生命をおびやかす胸部外傷のうち一つかそれ以上をもつ患者は, 大災害において医療チームに複雑な問題を起こす.このような患者はで きるだけ早期に,施設があれば胸部外科治療施設に搬送すべきである. 外科的な能力が欠如し,資材が制限されていれば,このカテゴリーには いる患者は高い死亡率をもつだろう.

 予後に対するこの勇気を起こさせるようなすべての情報は,被災者を 評価し状態を安定させる責任のある人には受けいれられるべきであり, この稿に述べられた簡単な手技を知っておくべきである.


 引用文献

 1) Homer : The Iliad. Translated by Alexander Pope. New York, Heritage Press, l934.

 2) Hamby WB : Ambroise Pare. Surgeon of the Renaissance. St. Louis, Warren H. Green, Inc., 1967.

 3) Larrey, Baron Dominique-Jean : Memoirs of the Military Surgery and Campaigns of the French Armies. Translated from the French of D. J. Larrey by Richard Willmott Hall. Two vols. Baltimore, Joseph Cushing, 1814.

 4) U. S. Government : The Medical and Surgical History of the War of the Rebellion. Surgical History. Pt I, Vol. II, pp. 466-650. Washington, Government Printing Offfice, 1879.

 5) Betts RH : Initial surgery of thoracoabdominal injuries. J Thorac Surg 15 : 349, 1946.

 6) U. S. Government : The Medical Department of the United States Army in the World War. Vo1. XI, XV. Washington, Government Printing Office, 1925.

 7) U. S. Government.. The Medical Department of the United States Army Surgery in World War II-Thoracic Surgery. Vo1. I. Washington, Office of the Surgeon General, Department of the Army, Government Printing Office, 1963.

 8) Jones KW : Thoracic trauma. Sure CIin North Am 60 : 957, 1980.

 9) Reul GJ, Mattox KL, Beall AC Jr et a1.: Recent advances in the operative management of massive chest trauma. Ann Thorac Surg 16 : 52, 1973.

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 15) Defore WW Jr, Mattox KL, Hansen HA et a1. : Surgical management of penetrating injuries of the esophagus. Am J Sure 134 : 734, l977.

 -訳 中村紘一郎


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