機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議

―メーリングリストeml-nc、2006年9月―

(皆様のご意見をウェブ担当者までお寄せ下さい)



            目次 (発信者の敬称は省略させていただきます)

メーリングリストeml-ncにおける意見交換

 越智 [eml-nc6: 1563] 機内で人命救助
 A  [eml-nc6: 1564] Re: 機内で人命救助
 G  [eml-nc6: 1569] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… 
 G  [eml-nc6: 1570] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… 
 G  [eml-nc6: 1571] Re: 単純な質問〜機内で人命救助…
 平岡 [eml-nc6: 1573] Re: 単純な質問〜機内で人命救助…
 平岡 [eml-nc6: 1574] Re: 単純な質問〜機内で人命救助…
 越智 [eml-nc6: 1583] Re: 1563 機内で人命救助
 新地 [eml-nc6: 1585] Re: 1563 機内で人命救助
 小林 [eml-nc6: 1586] Re: 1563 機内で人命救助
 A  [eml-nc6: 1587] Re: 1563 機内で人命救助
 A  [eml-nc6: 1590] Re: 1563 機内で人命救助
 F  [eml-nc6: 1593] RE: 機内で人命救助
 G  [eml-nc6: 1595] 「応召義務」で過去記事を検索
 越智 [eml-nc6: 1597] Re: 1590 機内で人命救助
 A  [eml-nc6: 1607] Re: 1590 機内で人命救助
 A  [eml-nc6: 1608] Re: 「応召義務」で過去記事を検索 
 A  [eml-nc6: 1622] Re: 1590 機内で人命救助 
 V  [eml-nc6: 1641] Re:機内で人命救助 
 H  [eml-nc6: 1646] Re: 機内で人命救助
 小林 [eml-nc6: 1647] Re: 機内で人命救助
 岡野谷[eml-nc6: 1648] Re: 機内で人命救助
 青木 [eml-nc6: 1651] Re:機内で人命救助
 F  [eml-nc6: 1661] Re: 機内で人命救助
 J  [eml-nc6: 1665] Re:機内で人命救助
 H  [eml-nc6: 1666] Re: 機内で人命救助
 岡野谷[eml-nc6: 1668] 市民の応急手当て生存率上昇
 越智 [eml-nc6: 1669] Re: 1668 市民の応急手当て生存率上昇(より適切な統計処理に敬意)
 K  [eml-nc6: 1670] Re: 機内で人命救助
 L  [eml-nc6: 1674] Re: 市民の応急手当て生存率上昇
 M  [eml-nc6: 1676] Re: 市民の応急手当て生存率上昇
 G  [eml-nc6: 1677] Re: 市民の応急手当て
 N  [eml-nc6: 1679] 市民の応急手当(感謝カード)
 O  [eml-nc6: 1682] Re: 市民の応急手当て生存率上昇
 J  [eml-nc6: 1683] Re:市民の応急手当て生存率上昇
 平岡 [eml-nc6: 1684] Re: 市民の応急手当て生存率上昇
 M  [eml-nc6: 1685] Re: 市民の応急手当て生存率上昇
 G  [eml-nc6: 1687] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 
 P  [eml-nc6: 1688] Re: 市民の応急手当て生存率上昇
 越智 [eml-nc6: 1717] 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 A  [eml-nc6: 1718] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 Q  [eml-nc6: 1719] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 
 山本 [eml-nc6: 1720] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 P  [eml-nc6: 1721] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 
 青木 [eml-nc6: 1723] Re:追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 越智 [eml-nc6: 1724] 赤十字の指導法について(お詫び)、航空会社は他山の石に
 青木 [eml-nc6: 1727] Re: 赤十字の指導法について(お詫び)、航空会社は他山の石に
  中川 [eml-nc6: 1728] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 おかどめ [eml-nc6: 1729] ベトナム航空の一件…あらゆる所で「他山の石」に
 中川 [eml-nc6: 1735] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 石井 [eml-nc6: 1739] CPR についての雑感
  中川 [eml-nc6: 1743] Re: CPR についての雑感
 越智 [eml-nc6: 1748] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 越智 [eml-nc6: 1749] Re: 1729 ベトナム航空の一件…あらゆる所で「他山の石」に
 山本 [eml-nc6: 1753] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 A  [eml-nc6: 1754] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 P  [eml-nc6: 1759] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 P  [eml-nc6: 1760] Re: CPR についての雑感
 山本 [eml-nc6: 1761] Re: CPR についての雑感
 中川 [eml-nc6: 1763] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議
 中川 [eml-nc6: 1791] Re: CPR についての雑感
 大塚 [eml-nc6: 1835] Re: CPR についての雑感
 P  [eml-nc6: 1838] Re: CPR についての雑感
 大塚 [eml-nc6: 1840] Re: CPR についての雑感
 A  [eml-nc6: 1841] Re: CPR についての雑感
 P  [eml-nc6: 1842] Re: CPR についての雑感
 中川 [eml-nc6: 1871] Re: CPR についての雑感
 越智 [eml-nc6: 1873] Re: 1871 CPR についての雑感

■メーリングリストeml-ncにおける意見交換


越智 [eml-nc6: 1563] 機内で人命救助
Date: Fri, 01 Sep 2006

 eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。他のメーリン
グリストで得た情報ですが、機内でCPRを実施されたバイスタンダーがCPR中
様々なことをお感じになり、そのことをまとめた文章をそのMLにに投稿され
ました。以下、関連の情報を紹介させていただきます。

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機内で人命救助の女性 日赤から表彰

 ベトナムへ向かう飛行機の中で心肺停止状態となった男性に心肺蘇生法を
行い、救命したとしてさきごろ、・・県在住のWさんに日本
赤十字社から表彰状が贈られることが決まりました。
 Wさんは、今年2月17日、(中略)男性が発作を起こした時、
客室乗務員に救急法を学んでいることを申し出て適切な処置を施しました。
 Wさんは昨年3月、日赤の救急法指導員として認定されていました。

■――――――――――――――――――――――――――――――
From: X
Subj: [rcml:0001523] 1時間のCPR後に蘇生した事例
Date: Thu, 31 Aug 2006

RCMLの皆さん、こんばんは!  Xです。

3月の指導員研修会で初めてWさんの救護体験をお聞きして衝撃と感銘を受
けました。
でこの貴重な体験の詳細をRCMLの皆さんにもお知らせしたいと思いWさんに投稿の
許可をお願いしました。
「皆さんのお役に立てるのなら」と快くお返事頂き、わざわざ辛い経験を思い起こし
ながら原稿を書いて下さいました。

(因みにWさんは華奢な女性で救助された方は大柄な男性でした。)

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平成18年2月17日 成田発ベトナムホーチミン行きに搭乗

離陸から2時間半後、突然「ドカン」という音がしました。
慌しく動くフライトアテンダントと旅行会社の添乗員に気付きもしかしたらと思い近
くを通った添乗員に「救急法を学んでいる者ですがお役に立つことがありました
ら…」と声をかけました
「人が倒れまして」と言われ急ぎ現場へ添乗員引率のもと向かいました。
傷病者はアテンダントの男性によって手荒にも上着が脱がされ仰向けで横たわってい
ました。
アテンダント達は戸惑うばかりで傷病者は放置されたまま、添乗員はCPR経験なし、
機内には医師や看護師もおりませんでした。

「もしもし、大丈夫ですか?」3回の呼びかけにも反応が無くすぐ気道確保しまし
た。
ですが狭い機内、傷病者は通路いっぱいに横たわり野次馬が増すばかりか中には携帯
で写メを撮る者まで数多く現われました。

周りの騒がしさもあって呼吸の確認もかなり慎重に行いました。
呼吸も無い状態で、日頃携帯しているキューマスクを取り出し人工呼吸を開始しまし
た。
抵抗も無く2回の吹き込み後、脈の確認を試みましたがエンジン音や振動で分からず
耳を心臓に直接あてて聞きました。不安もあって2回繰り返して聞いたように思いま
す。
心臓の音も聞こえず迷い無く心臓マッサージを開始しました。

時間が経つにつれ床に着いた足は痛くなり、ずっと圧迫していた手は真っ赤で腰から
大腿にかけては時々つるような痛みが走りましたがとにかく続けました。

そんな中、野次馬から
「あいつが止めたら あの人死ぬのか?」という声が聞こえました。
ここでCPRを止めてしまったら『人殺し』と呼ばれるのではないかという恐怖に襲わ
れとても怖かったです。

40分CPRを続けたところで指が動き始め次第に心音も確認できるようになりました。
しかし呼吸は回復せず人工呼吸を続けました。
そして20分位たった頃に僅かな吹き返しを感じ、次第に呼吸が回復したので呼びかけ
や身体に刺激を与えながら様子を見ていました。
とりあえず反応が返ってくるのですが元気な人の反応とは違い微妙なものでした。
意識の戻らない傷病者を前にまた異変が起こるのではないかという不安でいっぱいで
した。
救助開始から3時間半後やっと目を開けましたが話しはできませんでした。

それから30分後ホーチミン空港に到着
飛行機から運び出す間際に呂律が回らない様な口調で「どうして寝ているんだ?」と
聞いてきました。
飛行機から運び出し待機していた救急車に引継ぎ4時間に及んだ救護活動は終わりま
した。
ただただ怖かったです。

今だから言える話ですが野次馬の罵声と圧力の怖さは一生忘れないと思います。
そして自分一人しかいない状況での救護活動がどんなに大変なものかも分かりまし
た。
もっと色々な救急法の勉強が必要だと思いました。

ベトナム航空への問い合わせについての返答
・搭乗した機内にもAEDは装備されていたにもかかわらず使用しなかったのはなぜか?
「心臓病の患者のみに用いると思っていたのでは…」
・アテンダントについても「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなかった」
と言われた
 ⇒ 航空会社に遺憾の意を示す手紙を送りました
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この場をお借りしてWさんのご好意に感謝すると共に素晴らしい行動に敬意を表し
たいと思います。

皆様のご意見ご感想をお寄せ下さい。

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From: K(越智への私信)
To: "Genro Ochi from UMIN" 
Sub: Re: 1時間のCPR後に蘇生した事例(転載のお願い)
Date: Thu, 31 Aug 2006

越智さんこんばんは! Xです。
(中略)

Wさんの救護事例は、応急手当を普及する者にとって諦めずに行動すれば助けられ
るのだという希望と勇気を与えてくれる奇跡に近い成功例であると共に、応急手当を
実践するにあたっての問題点=リスクを浮き彫りにする貴重な体験談だと思います。

講習会の受講者が実際の場面で『救助を実践する人』になり得ない【ハードル】が未
だに存在している現実を知らなくてはいけないと思います。

正しい事を行っているのに罪人の様な扱いを受けてしまう救助者、無力感に苛まれて
しまう救助者

救助者がもしあなただったら・・・?

   あなたが教えた受講者がそんな目にあってたとしたら・・・?

救急法指導員として今一番疑問に思う事は「救護にあたった人への心のケアをどうす
るのか?」という事です。
ただ「救急法を学んで人を助けましょう」という段階から次のステップに移っていか
なくてはいけないように思います。

色々なところで応急手当の普及が行われ、TVなどのマスコミにも多く取り上げられた
結果、CPRやAEDの理解も広がり応急手当を実行する人たちも増えてきました。
AEDの設置場所も格段に増えつつあります。
それに伴い、成功例を耳にする事も増えてきました。
しかし残念な事に救助できない事例も増えていくのも間違いないでしょう。
私はそういったリスクもきちんと伝なければいけないんじゃないかと思います。

献血でもPL法の強化に伴い、献血のリスクを明らかにして過剰とも言える対応を迫ら
れています。
救急法教本においてもCPRを実地する際のリスクである感染対策も表記されるように
なりました。
やっぱり『救助者自身を守る!』という大前提を考えると、助かる可能性ばかりを理
想とするだけではなく実際の影の部分というかリスクもはっきり伝えないといけない
んじゃないかと思います。
それを知った上でどうするかを考えてもらうのがこれからの講習の様な気がしますが
・・・

そういった意味も含めWさんの事例を投稿させて頂きました。
■――――――――――――――――――――――――――――――


A [eml-nc6: 1564] Re: 機内で人命救助 Date: Fri, 01 Sep 2006 A(医師)です Wさんは大変な経験をなされたようですね この話を読んでの僕自身の努力目標は BLSを出来る人間を増やすこと です 細かい話は皆さんの意見が出てからまた続けますが たとえば他にBLSが出来る人がいてくれれば たとえ写メをとっても良い写真が撮れたと思いますよ 堂々と新聞に投稿して救助者も傷病者も顔は写らなくて 活動はわかってって感じで


G [eml-nc6: 1569] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… Date: Sun, 3 Sep 2006 G(非医療従事者)です。 質問は、三点です。 1)この救命に至る4時間に、傷病者の体内(および脳内)でどのようなこと  (つまり反応と変化)が起こったのか。現代の医学、生命科学では分かっていない、  ということでも、あるいは何か分かっていることでも結構です。 2)関係者が「奇跡に近い成功例である」と評価されるのはなぜか。  この傷病者が示した反応の時間的経緯が、多数の事例を経験されていると  思われる関係者にとっても、予想外であり例外的(しかし貴重な実例)であった  ということでしょうか。 3)例えば、ですが、華奢な女性が傷病者で、大柄で力が強くCPRに慣れた男性  が(つまり逆の立場で)BLS を行った場合はどうなったと予測されるでしょうか。  つまり、回復までの時間は、体重に依存するかどうか、という質問です。  これもデータがないので分からない、ということかと思いますが、もし  何か分かっていることがあれば、お教え下さい。 Genro Ochi from UMIN wrote: >Wさんの救護事例は、応急手当を普及する者にとって諦めずに行動すれば助けられ >るのだという希望と勇気を与えてくれる奇跡に近い成功例であると共に命に関わる応 >急手当の問題点=リスクを浮き彫りにする貴重な体験だと思います。


G [eml-nc6: 1570] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… Date: Sun, 3 Sep 2006 Gです。 G wrote: >1)この救命に至る4時間に、傷病者の体内(および脳内)でどのようなこと > (つまり反応と変化)が起こったのか。現代の医学、生命科学では分かっていない、 > ということでも、あるいは何か分かっていることでも結構です。 たぶん、これは傷病者の病態に依存したことと思われますので、 不適切な質問ということになると思います。どうでしょうか。


G [eml-nc6: 1571] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… Date: Sun, 3 Sep 2006 Gです。 G wrote: >3)例えば、ですが、華奢な女性が傷病者で、大柄で力が強くCPRに慣れた男性 > が(つまり逆の立場で)BLS を行った場合はどうなったと予測されるでしょうか。 > つまり、回復までの時間は、体重に依存するかどうか、という質問です。 > これもデータがないので分からない、ということかと思いますが、もし > 何か分かっていることがあれば、お教え下さい。 この質問は、 要するに、時間当たりの拍出量は多い方が常によいのか、あるいは、 場合によっては、多くし過ぎても心臓自体に負担がかかり、頑張り過ぎれば かえって逆効果という場合もあって、単純ではない、ということなのか、 あるいは、体重によっては有意の差が(現状のデータでは)認められない ために、質問そのものが適切とは思われない、ということなのか、 そのあたりのことをお聞きしたいということです。 これによって、なぜ4時間かかって可能だったのか、というヒントが 得られるのか、あるいは、得られないのか、そのあたりが分かるかもしれない、 というのが、この質問の意図です。


平岡 [eml-nc6: 1573] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… Date: Sun, 3 Sep 2006 Gさん,平岡(医師)でーす.  とりあえず,的確な(論理的な)説明はどなたかに任せるとして...  右脳にイメージだけでも,と思いお返事させて頂きました.  4時間の間,おそらく心臓は(時々動いていたかもしれませんが) 脳に充分な酸素やブドウ糖を供給できず,脳細胞は「死にかけの状態」 「冬眠状態」 −これがまたアバウトな表現で我ながら情けなくなりますが−  何とか人工呼吸による酸素供給(自発呼吸なら21%O2→マウスtoマウス なら16%に濃度は低下しており,血液中はおそらく6,7割位の酸素濃度?) を心臓マッサージによる少ない循環(血圧50−80 mmHg位でしょうか?) {=要は酸素の薄い血液を,少量しか供給できず,質的にも量的にも不十分な酸素} により,何とか細胞死を免れていたものと思います.    通常,酸素供給が途絶えてくると,乳酸などの嫌気性代謝により生体維持に 必要なATPを産生しますが,このために乳酸アシドーシスがおこり,この酸は 当面肺から炭酸ガスを排出することで,pHを安定させる必要があります.  (腎から酸を排泄するには時間がかかるので) (ちょっとウソがあるかもしれませんが,イメージとして聞いて下さい)  4時間ものあいだ,(特に器具無しで)これらの異常を安定化させたことで 自己心拍が再開し,少なくとも(脳の高次機能は低酸素に弱いですから 今後の経過を見ないとわかりませんが)完全な脳死となることは避けられた ということで,例外的な事例だと思います.  救助者と傷病者が逆であった場合, 公衆の前で,胸をはだけて放り出していた航空会社の責任が傷病者との間で 問題になる可能性(特に写真に撮られたりしていますから),救助者が不慣れで 力任せに肋骨等を折ったり,過剰な人工呼吸で胃の膨満から換気効率が落ちたり 嘔吐,ひょっとしたら気胸等の圧損傷の等をおこしていた可能性はあると 思いますが・・・  基本的には,病態が同じであったとすれば同じ結果と考えて良いと思います. (実際には同じ体格でも,病態や状況は違うので,厳密に同じなんて事はあり得 ないと言う方が正しいのかも・・・)  今回のケースでは   アテンダントが心マを交代してくれず,華奢な女性が数時間,心マと人工呼吸を  続けていたとしたら,それこそ奇跡!(小生なんか最近10分でもへとへと(T_T))  以上,カゲロウの様なあいまいイメージです (その程度の事は,わかっとるワイ!と怒らないで下さいね!)


平岡 [eml-nc6: 1574] Re: 単純な質問〜機内で人命救助… Date: Sun, 3 Sep 2006 平岡@亀レスです (中略)  データがあるかどうかは,左脳なし星人Bは存じませぬが 先ほどのメールに書きました様に,供給する血液は酸素濃度が薄い ので,「量」として心拍出量は多いに越したことはありません. (心マでは,少なくとも心拍出量が多すぎて,心臓に負担がかかるほど 拍出量を維持することは困難です)  問題は,胸郭(肋骨や軟骨等の)コンプライアンスの違いです. 骨折等により胸郭の構造が維持できなくなれば,胸郭にかかる圧が, 効率よく陽圧,陰圧とも働かず,血液循環の維持に不利になってしまいます. ですから,「頑張りすぎれば逆効果」と言えるのではないでしょうか?  みなさんは,どのようにお考えでしょうか?


越智 [eml-nc6: 1583] Re: 1563 機内で人命救助 Date: Mon, 04 Sep 2006  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。「機内で人 命救助」をされたバイスタンダーの方への敬意とともに様々な疑問が湧い て来ます。Gさんが提示されたご質問への意見交換にはおいおい参入さ せていただくこととして、まずは私自身の疑問について皆様に聞いていた だければと思います。 〇  CPRに対する知識・理解のない周囲の人々(乗客)への疑問  恐らくは機内の何十人もの乗客が心肺停止患者の発生とCPRが行われて いることを知ったことと思います。その中の1人の方がしっかりとCPR対 応をして下さったことはすばらしいことだと思います。しかし、それに 加えてたった1人の人も、実施されつつあるCPRに対するサポートをしよ うとしなかったことは大きな疑問です。このような現象が明らかになる以 上、私共が長く取り組んできた心肺蘇生法の普及活動はまだまだ不十分な ものにとどまっていると言わざるを得ません。 〇  AEDを用いたCPRを実施しなかった航空機の搭乗員(ベトナム人?)に対 する疑問  機内で発生した、成人の突然の意識消失への対応は国際的に定着してい ます。医療関係者に依頼するか、搭乗員自らがAEDによる心電図解析と適 応があれば除細動、これに並行してCPRを実施するべきことは搭乗員の責 任です。またそれができるよう搭乗員を訓練することは飛行機会社の責任 であると思います(現時点ではそれが医学的常識だと思います)。  なぜそれをしなかったのか? 搭乗員ならびに飛行機会社は訴えられる べきであると思います。そうでなければ同じような対応が繰り返されるこ とになると思います。 〇  赤十字のCPR教育に関する若干の疑問  すばらしい対応をされたWさんが「AEDを」と一言いえなかったのは? 赤十字は長く、「意識がなければ応援を求める」と指導して来られました。赤 十字のCPR指導において、その「応援」が「119番通報とAEDの入手」である と明白に意識されだしたのは最近のことかも知れません。赤十字は山や海での人命救助 のイメージを持って来られ、AED+CPR、二次救命処置へという「早期除細動」 のイメージが薄かったのではないかと推察します。赤十字の生徒でもあるWさ んに赤十字のその弱点が影を投げかけていたと言えるかも知れません。  赤十字はWさんを讃えるとともに、ベテラン指導員に「早期除細動を 中心としたCPRのイメージ(キーワードは早期通報、AED入手)」を再度埋 め込んでいただきたいと思います。 ★追記 060920:上記の越智の意見は不十分な情報をもとに、越智が類推で  書いたものです。実際にはWさんは客室乗務員にAEDを持って来るよう要  請しておられます。Wさん並びに赤十字関係者の皆様におわび申し上げま  す(関連投稿:[eml-nc6: 1717] [eml-nc6: 1724] )。  以上、皆様のご意見はいかがでしょうか。


新地 [eml-nc6: 1585] Re: 1563 機内で人命救助 Date: Mon, 04 Sep 2006 新地@佐賀大学です。機内での人命救助された方は、大変すばらしいと思い ます。 Genro Ochi さん wrote: >  恐らくは機内の何十人もの乗客が心肺停止患者の発生とCPRが行われて > いることを知ったことと思います。その中の1人の方がしっかりとCPR対 > 応をして下さったことはすばらしいことだと思います。しかし、それに > 加えてたった1人の人も、実施されつつあるCPRに対するサポートをしよ > うとしなかったことは大きな疑問です。このような現象が明らかになる以 > 上、私共が長く取り組んできた心肺蘇生法の普及活動はまだまだ不十分な > ものにとどまっていると言わざるを得ません。 まず、感じたのが、どうして助けを呼ばなかったかということです。 一人で長時間のCPRの実施は困難を極めます。私なら、大声で助っ人を 要請するでしょう。(いつも指示、指図に慣れている医師であれば、簡単 かもしれませんが)医療従事者以外の方には難しいことでしょうかね? また、か弱い女性一人に任せておく、航空機搭乗員や傍観者も情けない。 やはり、心肺蘇生法の普及活動はこれからすべきことが多そうです。


小林 [eml-nc6: 1586] Re: 1563 機内で人命救助 Date: Mon, 4 Sep 2006 越智さん、みなさん。 小林@東消ボランティアです。 06/09/04 に Genro Ochi from UMIN さんは書きました: > 恐らくは機内の何十人もの乗客が心肺停止患者の発生とCPRが行われて > いることを知ったことと思います。その中の1人の方がしっかりとCPR対 > 応をして下さったことはすばらしいことだと思います。しかし、それに > 加えてたった1人の人も、実施されつつあるCPRに対するサポートをしよ > うとしなかったことは大きな疑問です。このような現象が明らかになる以 > 上、私共が長く取り組んできた心肺蘇生法の普及活動はまだまだ不十分な > ものにとどまっていると言わざるを得ません。 手を出さなかった人々の中に救命講習を受けた人間が何人かいるはずです。 怖くて手を出せなかった、名乗り出るのが恥ずかしい、ヘマをして訴えられたら困る、 講習を受けたことを忘れていた。。。いろいろな原因があるでしょう。 調べてみなければいけませんね。


[eml-nc6: 1587] Re: 1563 機内で人命救助 Date: Mon, 04 Sep 2006 Aです 傍観者に医師がいてあとで発覚して 司法当局から呼ばれることはないかな 外国の航空会社の単独運航便なら日本の司法権は 及ばないかしら? 日本の領空内なら日本の法律が関係しますか? ->専門の方


A [eml-nc6: 1590] Re: 1563 機内で人命救助 Date: Mon, 04 Sep 2006 Aです 医師の応召義務に反するらしいです ここのMLでも議論がありました ジュリストに載ってからのはなしです 越智さんいつころの議論かご存じでしたら 教えてください


F [eml-nc6: 1593] RE: 機内で人命救助 Date: Mon, 4 Sep 2006 From: F(医師) そこに医師がいたら、4時間もの間のCPRは行われず、30分程度で死亡診断をした かもしれませんね。 私も有る期間麻酔科医でしたが、先日挿管をしなければいけない状況に遭遇し、挿管 までのバックマスク数分間で、その後数日間の筋肉痛を経験しました。 4時間、頑張る体力はとても無いなあ。 件の女性、凄いですね。 一般人だからこそ諦める、途中でやめることは出来なかったでしょう。 医師ならば、死亡診断出来ますからね。 途中でやめたかもしれない。


越智 [eml-nc6: 1597] Re: 1590 機内で人命救助 Date: Tue, 05 Sep 2006  Aさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 〇 Aさんは書きました(eml-nc6: 1590): >医師の応召義務に反するらしいです >ここのMLでも議論がありました >ジュリストに載ってからのはなしです > >越智さんいつころの議論かご存じでしたら >教えてください → 「応召義務」の過去メールについてはすでにGさんから紹介いただ   いています。私からは以下の有用な論文を紹介させていただきます。 航空機内での救急医療援助に関する医師の意識調査〜よきサマリ     ア人の法は必要か?〜(旭中央病院神経精神科 大塚祐司先生) http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/04/samaritan/ 〇  上記より抜粋します。ご参照ください。 A.応招義務と機内医療について  本調査のドクターコールに医師が応じない理由にて67名中43.3%が「非番」 を理由に挙げていたが,医師法で規定されている応招義務が機内でも適用さ れるのか否かが問題となる。この応招義務の有無により,特に民事上の問題 についてその後の議論の経過が大きく変わって行くため,最初に考察すべき 重要な点である。  医師法19条1項は「診療に従事する医師は,診察治療の求があつた場合には, 正当な事由がなければ,これを拒んではならない。」と医師の応招義務を規 定している。この応招義務は,医業独占を認める免許と引き換えに医師が国 家に対して負っている公法上の義務である34)38)48)。応招義務違反に対して 刑事上の罰則を定めた規定はないが,違反を繰り返せば,医師法7条「医師と しての品位を損する行為のあつたとき」に該当する可能性もあり,医師免許 の取り消しや停止などの行政処分の対象となり得る34)43)51)。本問題に関し て上記条文の文言中において重要なのは,「診療に従事する医師」と「正当 な事由」である。 〇「診療に従事する医師」  「診療に従事する医師」とは,業として診療を行っている医師である48)。 業について通説・判例とも,反覆継続の意思をもって行うこと,とする立場 にほぼ一致している。さらに,反覆継続の意思が認められれば,一回の行為 でも業となり,本業か副業か,報酬を得たか否かは業の成否にかかわりがな いとする点でも同様に一致している34)48)。  JAL及びANAの統計によれば,機内で急病人が発生する確率は国内線で1000 便あたり0.5〜1.1人,国際線で3.4〜5.5人と稀であり55),このうちドクタ ーコールがかけられるのは国内線で25.0%〜51.4%,国際線で60.7%〜66.7 %となっている14)56)。本調査においてもドクターコールに遭遇した医師は 4.5%に過ぎず95%以上の医師がドクターコールを経験したことがなかった。 よって航空機内で急病人が発生した際に乗客として偶然居合わせた医師は, 診療を前提に搭乗しているとは推測出来ず,診療を反復継続する意思もない と思われ,診療を行っても業にはあたらず「診療に従事する医師」ではない と解釈できる81)102)。 〇「正当な事由」  診療拒否の「正当な事由」に関する具体的内容について旧厚生省は通知に て例示しており50),学説・判例もこれを支持・踏襲している48)60)。病医院 にいない医師については通知で例示がなく,当局は応招義務の対象外と解釈 しているものと思われる。学説でも同様で,平林が簡潔にまとめた「正当な 事由」の様々な議論の中で,「勤務医が自宅で診療を求められた場合」も正 当事由としてあげられている34)。ただし,緊急時は自宅にいる勤務時間外の 勤務医に応招義務が課せられるとする説もある48)。 〇応招義務についての裁判所の見解  医療過誤訴訟において,裁判所は応招義務を原則として厳格に適用してい るものの60)94)100),患者の病状,診療を求められた医師又は病院の人的・ 物的能力,代替医療施設の存否等の具体的事情を考慮している25)。ドクタ ーコールの場合のように,院外での事故・疾病発生時にたまたま居合わせた 勤務外の医師の医療過誤に関する判例はないが,応招義務が争点の一つとな った通常の医療過誤訴訟において名古屋地裁では次のような見解を出してい る63)。  「一般に医師は(中略)祝祭日または休日などの休診日あるいは診療時間 終了後においてまで常に通常の診療時間帯と全く同程度の診療業務に就くべ き義務を負うわけではない。けだし,そのように解しないと,医師に対し年 中無休の無限定の責務を課すことになり,実際的ではないからである。」  本裁判例は医師に対する無制限の義務を否定しており,この見解から推測 すると,飛行機などで移動中の医師に対してまで応招義務は課されないとの 考え方が適切と思われる。  以上により,一部の反対説はあるものの,通知・学説・裁判例の流れから, 乗客として搭乗中の医師に応招義務は生じないと考えられる。もっとも,ド クターコールで呼びかける対象は「お医者様,看護師の方」(JAL),「お 医者様,または医療関係者の方」(ANA)であり81),特定の医師に診療を依 頼している表現ではない。従って,診療依頼自体存在せず,応招義務の有無 という論点すら出ないという考え方も可能と思われる。 〇応招義務と私法の関係  応招義務に関しては,国家と個人の関係を規定する公法である医師法で規 定された義務違反により,個人と個人の間を規定する私法である民法上の責 任を問われるかという問題も生じる43)77)。かつての通説では,医師と患者 の間に診療契約が結ばれていなければ公法上の応招義務違反を理由に民事責 任を追及できないとしていた60)。しかし近年は民事上の義務を認める学説が 有力となり43),現在の通説では,応招義務は公法上の義務であるが患者の保 護のための義務でもありこれに違反する場合には医師に過失または債務不履 行があるものと推定できるとしている60)。また有力説は,応招義務違反自体 は過失または債務不履行を構成せず民事上の義務に転用されるものではない が,回避可能な結果が応招義務違反によって回避できなかった場合には過失 または債務不履行となるとしている34)。いずれにせよ応招義務違反により民 事責任が発生し得るという点においては,現在の学説は一致している94)100)。 下級審判決の動向も同様で,1982年の判決ではかつての通説を採ったものの 38), 1986年の判決では現在の通説を採っている84)。  以上のことから,応招義務を民事上の義務に転用するという通説の立場に 立つと公法上の応招義務がない場合は民事上の義務もなく,応招義務は直接 的に民事上の義務に転用されないとする有力説の立場に立つと当初より民事 上の義務自体がないことになる。従って応招義務が生じない機内急病人発生 時には,医師は患者や航空会社と別途契約を結ばなければ民事上の義務も生 じない70)。


A [eml-nc6: 1607] Re: 1590 機内で人命救助 Date: Tue, 05 Sep 2006 Aです 僕は医者だと宣告してあるので 以前は客室乗務員に渡す乗客リストに職業が書いてあったのですが 最近は書いてありません 搭乗後寝る前に医師だから急患発生時は起こすように伝えています 問答無用で起こされた以前のシステムの方が簡単ではありましたが ちなみに国際線はJALだけで61万マイル 他社も併せると100万マイルくらいは飛んでいます 呼ばれたのは1回か2回です


A [eml-nc6: 1608] Re: 「応召義務」で過去記事を検索 Date: Tue, 05 Sep 2006 Aです 過去の方が筋の通った質問をしていましたね やはり応召義務に関してはいろいろ疑問点も有るのですが 僕自身はすべての"人"にBLSを覚えてほしいという 考えです Gさん: > Aです > > 単純な疑問なのですが詳しい方お願いいたします > > 非番に関しての疑問です > 日本は非番(off duty)というのは救命士にのみ当てはまるのでしょうか > 医師の場合,応召義務の関係から常に on duty なのでしょうか? > 医師が勤務時間以外で医療行為を行う場合 > すべて記録を残す必要があるのでしょうか? > あるいは被治療者から診察の依頼あるいは > 医療行為に対する支払いを約束された場合のみ > 記録等が必要なのでしょうか?


A [eml-nc6: 1622] Re: 1590 機内で人命救助 Date: Wed, 06 Sep 2006 そうですね 自分にとって50-100万マイルに一回は 許容できる低頻度ですよね 逆に航空会社の運行マイルを考えると結構 発生してると考えられますね


V [eml-nc6: 1641] Re: 機内で人命救助 Date: Thu, 07 Sep 2006 越智さん、みなさん V@日赤関係者です。 以下、rcm(赤十字関係者のMLより)へ投稿した文章です。 eml で交わされている内容とは少しずれていますが・・・。 ・・さん、みなさん Vです。 (中略) Wさんの、勇気を持った救命活動に心から感服しました。 私は今回のWさんのように。バイスタンダーとして、CPA → C PR の経験はありませんが、交通事故現場等での応急手当経験は何度 もあります。 CPRと応急手当では状況がかなり違うので正直レスしようかどうかか なり迷いましたが、ハジをかくのを覚悟でとりあえずレスさせていただ きました。 私の場合の”強敵”はWさんの場合のような「ヤジ」ではなく「無視」 ・「無関心」でした。 室内(講習会場)において急に意識がなくなりイスから転倒された方に 応急手当を実施した際は、他の受講生の皆さんも心配そうに「見守って いる」というものがつたわって来て、また「ヤジ」等も一切なく大変や りやすかったことを覚えています。 応急手当を実施していて「やりやすかった?」経験は唯一この1件だけ です。 それ以外の事案はすべて屋外でしたが、いずれの現場でも傷病者のかた わらにかがみこんでの手当ての最中、応急手当をしている私の目に飛び 込んで来るのは、人が倒れているのもかかわらず、立ち止まることもな く、そこに何も無いかのように速度をゆるめることもはやめることもな く完全に無視して通りすぎる、「足・足・足」でした。 「もし立ち止まって見ていて『手伝って下さい』とでも言われたら・・ ・」、とでも思っているのでしょうか? 「これだけ大勢の人が無視していくということは、自分が今、目の前の 倒れている人に対してかかわった(応急手当をした)ことは本当に正し いことなのだろうか? 」 「本当に自分が選択した今の状況はただしかったのか?」 無視していくことの方が当たり前で正しいことで、かかわった自分がお かしいのか?」 「この場合の手当てはこれが最善なのか?」 手当てをしている最中、頭の中には色々なことがよぎります。  それでも気を取り直し手当てを続けますが、たいてい到着した救急隊 員に「完全無視」あるいは「じゃま者扱い」というとどめをさされます。 この最後のとどめが一番きついです。 これによってしばらくの間、寝ても覚めても悩みます。 こういう状況を今まで何度も乗り越えてきました。  Vさんの場合の「ヤジ」よりはましだとは思いますが「無視」も結 構きついです。 本当はみんな倒れている人を気にしているのに、かかわりあいになるの がわずらわしいのでしょう。 ”そういう時代”・”そういう風潮”なのだとあきらめるしかないので しょうか。 先般レスさせていただいた「・・が横断歩道を渡っているときにバイク にはねられた」ときも、 何事もなく通り過ぎてゆく人の流れがありました。 (中略) (中には、「外見上ケガがなくても、病院へ行って全身の検査しといた ほうがええで・・・」と忠告して下さる方もおられましたが、) 話しはかなりそれましたかWさんはその時に出来る最大限のことをさ れ、さらに結果もよいものが出ました。 本当によかったと思います。 同じ赤十字関係者としてWさんのことを心から誇りに思います。 Wさんも私も、「ヤジ」られようが、「無視」されようが、次回もま た一歩前に出ることでしょう。 我々は常に「赤い十字を背中にしょっている」(・・の・・さんのおっ しゃるところの)のですから・・・。 これぞアンリー・デュナンの精神です。 「赤十字は『「救急』やなくて『救”護”』や!」。 (これは先年亡くられた・・の・・さんの口癖でした)


H [eml-nc6: 1646] Re: 機内で人命救助 Date: Fri, 08 Sep 2006 H@・・消防です。 Vさん wrote: > 以下、rcm(赤十字関係者のMLより)へ投稿した文章です。 > eml で交わされている内容とは少しずれていますが・・・。 いえいえ、僕は、Vさんのご意見と同じところがとても気になっていました。 Wさんは、とても「不安」だったとおっしゃっています。 私の周りでも、そのことを思い出すと今でも涙が出るって人もいる。それほど大変なことです。 現場でがんばってる市民は、私たちが想像してる以上にめちゃくちゃ不安なんですよ。 だから、ここをしっかり受け止めて、どんな風に国民に伝えてゆくか。 Vさんが書かれてるところは絶対に大切だと思います。 「そこに居合わせたとき、何も出来なくてもいいんですよ。ただ、声でも、雰囲 気でもいいから応援してあげましょう」 「なぜって、今CPRの練習してても周りの人の視線ってきついでしょ^^。実際 に手当をしてる人にとっては、遠巻きにしてコソコソ話してる人の声や雰囲気っ てすごく辛い。だから、側にいる人が、がんばってください。応援してます。っ て気持ちを態度で表すだけで、すごく力になるものなのですよ。」って。 これからの市民指導は、消防も 「119はいつでもあなたの側にいる」というコンセプトをガンガン伝えて そういう手当の場面の心の支えになることをアピールすべきだと考えて、講習し てます。 現実は、救急隊でさえ、がんばった人に声もかけれない、まるで邪魔なものを扱 うように by-standerの目の前から患者を奪い去ってゆく・・・そんな煮え湯をかけられるよな シーンを僕らだって知らない土地では経験するのですから^^;


小林 [eml-nc6: 1647] Re: 機内で人命救助 Date: Fri, 8 Sep 2006 Hさん、みなさん。 小林@東消ボランティアです。 06/09/08 に Hさんは書きました: > 「そこに居合わせたとき、何も出来なくてもいいんですよ。ただ、声でも、雰囲 > 気でもいいから応援してあげましょう」 > 「なぜって、今CPRの練習してても周りの人の視線ってきついでしょ^^。実際 > に手当をしてる人にとっては、遠巻きにしてコソコソ話してる人の声や雰囲気っ > てすごく辛い。だから、側にいる人が、がんばってください。応援してます。っ > て気持ちを態度で表すだけで、すごく力になるものなのですよ。」って。 これは、講習会の参加者が勇気づけられるすばらしいお言葉ですね。 若い人とかの場合は、人前に出るだけでもむずかしいでしょう。 まして、ヤジ、怒号や上記のヒソヒソ話。不安でたまりません。 「○○○です!」と一言発したら、野次馬が黙る言葉でも考えてみたいです。


岡野谷 [eml-nc6: 1648] Re: 機内で人命救助 Date: Fri, 8 Sep 2006 皆さん 岡野谷@JFASです。 小林さん、 > 「○○○です!」と一言発したら、野次馬が黙る言葉でも考えてみたいです。 小林さんのようにまず一歩を踏み出されたところからでよいのでしたら、一度、 「応急手当の訓練をして(受けて)います。ちょっと見させて戴いてよろしいで すか。」とおっしゃってみてください。 多くの方は賛同して道をあけてくれます。 「私は医者です」というのと同じ位、市民であっても周囲の信頼と安心を得られ る魔法の言葉です。 その際、すかさず「皆さんもご協力下さい」と言うと、野次馬していた親父がい きなり「おう、何をすればいいんだ?」と豹変したりします。この人たちにとっ ては、プロが来たとの感覚になっちゃうみたいですね。 交通整理や救急車の誘導、頭部保持などをお願いしちゃいましょう。案外仕切っ てくれる頼もしいバイスタンダーになってくれたりします。 その逆もまた大切です。「誰かが応急手当をしているから通り過ぎた・・」とい う方が多いですが、そんな時は「私も応急手当の仕方を知っています。お手伝い しますね。」と申し出ましょう。スポットライトがあたるのは先行者ですし、お 手伝いというセカンドポジションでケアができるのは気持ち的にも楽です。 また、たった一人で四面楚歌のような状態で応急・救命手当をしている者にとっ て、その一言がどれだけ嬉しいか。 CPRをしているときに、周囲で一緒に数えてくれる人がいると、救われた感じ がします。 ぜひお試しになってみて下さい^-^。  岡野谷@JFAS 拝。 ========================================================= All Kids should have the opportunity to learn FirstAid. Just doing something is better than not doing anything. --------------------------------------------------------- 全ての子どもには「応急・救命手当」の方法を学ぶ権利があります。 特定非営利活動法人日本ファーストエイドソサェティ(JFAS) =========================================================


青木 [eml-nc6: 1651] Re:機内で人命救助 Date: Fri, 08 Sep 2006 06:33:16 +0900 民間救命法指導員の青木タローです。 数年前、バイスタンダーCPRを経験したときのことです。 CPRのインストラクターとして何年も講習生を指導していましたが、実際のCPRは初め てで、正直なところ体が震えていました。 現場の安全確認、野次馬のコントロール、CPRなどの流れはうまくできたかと思います。 が、最後に一つだけ後味の悪い思いをしました。 Hさんが仰っているとおり救急隊に文字通り「患者を奪い去って」いかれました。 なんの言葉もなく、励ましなりなんなりもありませんでした。 救命活動に従事した人には心のトラウマが発生することが普通であると、常々講習生 には伝えております(というかビデオに含まれているので、いやでも伝わります)。そ してその解消方法についても、解説しております。このあたりはアメリカ生まれの講 習システムなので、見事なものだと思っておりました。 しかし、自分が手痛い扱いを受け、それがしばらく心のトラウマとして残ったので、 その後の講習では、「救急隊は一刻を争うほど忙しいので、バイスタンダーのことな んか相手にしてくれないだろうが、そういうことは気にしないように」と付け加える ようになりました。 その後、地元消防署で表彰を受けましたが、その際消防署長殿に雑談の中でですが 「バイスタンダーに励ましの言葉をかけてあげていただけませんか?」とお願いをしま した。その後どうなっているかは分かりません。 -- _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_ 青木タロー ブログは毎日更新中「日本初!救命コンサルタント活動開始!」 http://tarocorporation.com/blog/ タローコーポレーション株式会社代表 http://tarocorporation.com/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_


F [eml-nc6: 1661] Re: 機内で人命救助 Date: Fri, 8 Sep 2006 > が、最後に一つだけ後味の悪い思いをしました。 > > Hさんが仰っているとおり救急隊に文字通り「患者を奪い去って」いかれました。 > なんの言葉もなく、励ましなりなんなりもありませんでした。 私は、医者だと言っているのに、無視された事が有ります。  CPRでは無く、外傷者(大腿骨折)の傍で励ましていただけですけどねえ。 白衣を着ていればずいぶん違ったかも知れませんが...


H [eml-nc6: 1666] Re: 機内で人命救助 Date: Sat, 09 Sep 2006 H@・・消防局です (引用部分省略) やだなぁ・・・・勘弁してくださいよ^^; 人間って直感的に鋭いところがあって、懐の深さを感じる言葉と含みのある言葉 があって 含みのある言葉は、人のとしての底を浅く印象づけがちですよぉ・・・・・講習 では超危険だと・・・^^;  さて、現実には、いろんな方がいらっしゃって、こまったことに、Drでもない のに、「Drです!」と言って、現場をこんらんさせるマニァ〜アな方がいるかと おもうと、(しかられるかもしれませんが)場合によっては、Drというだけで現 場をめちゃくちゃにかく乱して去ってゆく方もいらっしゃいます・・・・顔の見 える関係といいますか、それ抜きの場合、疑心暗鬼と戦いながらの苦しい現状も あるというのはご理解ください。  しかし、基本的な礼儀作法の上でということだとおもいますよ、確かに ^^: え・・、わかりにくい。 すみません<(_ _)>


岡野谷 [eml-nc6: 1668] 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Sat, 9 Sep 2006 皆さん 岡野谷@JFASです。 救急の日、救急週間、全国で多くの講習会、講演会が開催されていますね。 たった今、NHKニュースの中の坂本先生にお会いしました。 総務省消防庁によりますと、去年1年間に全国で心筋こうそくなどを起こして心 臓と呼吸が止まり救急車で運ばれた人のうち、症状が起きたとき、家族や友人な どが近くにいたのは1万8000人余りでした。このうち、家族など近くにいた 人が心臓マッサージなどの応急手当てをした場合、1か月後の生存率は8.5% で、手当てをしなかった場合の6.2%と比べて1.4倍高くなりました。ま た、119番通報の増加により救急車の現場到着までの時間が年々長くなってい ますが、症状が起きてから救急隊員が救命処置をするまで10分以上かかった場 合、生存率は4.5%にとどまっていることもわかりました。 と、アナウンサーが話していました。 坂本哲也先生からは「救急車が現場到着までにかかる時間が長くなる中で、患者 の近くにいる人が応急手当てをする重要性が大きくなっている。講習などを受け て、正しい知識を身につけてほしい」とのコメントがありました。 ご報告まで。岡野谷@JFAS 拝。


越智 [eml-nc6: 1669] Re: 1668 市民の応急手当て生存率上昇 (より適切な統計処理に敬意) Date: Sat, 09 Sep 2006  Iさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 貴重な情報、有難うございました。  平成16年の消防白書の統計 http://www.fdma.go.jp/html/hakusho/h16/h16/html/16240460.html よりも進歩していますね。発症が目撃された例に限って、市民CPRと転帰を 比較しておられます。総務省消防庁様も同じ場所にとどまっては居られま せんね。 Iさんより(eml-nc6: 1668): >総務省消防庁によりますと、去年1年間に全国で心筋こうそくなどを起こして心 >臓と呼吸が止まり救急車で運ばれた人のうち、症状が起きたとき、家族や友人な >どが近くにいたのは1万8000人余りでした。このうち、家族など近くにいた >人が心臓マッサージなどの応急手当てをした場合、1か月後の生存率は8.5% >で、手当てをしなかった場合の6.2%と比べて1.4倍高くなりました。 越智より(eml-nc6: 1659) |  第2-4-9図 応急手当の救命効果(平成11〜15年) |  ・全国の救急隊員が搬送した心肺停止傷病者数 442,846人 |    ・応急手当あり 118,477人―1ヶ月後の生存 4.2%   |    ・ 〃  なし 324,369人―  〃     3.1% | |  *応急手当ありは目撃例がより多く含まれ、生存率が高いのは当然。 |   この生存率の差(1.1%)は、ある意味 応急手当があまり貢献し |   ていないとさえ感じさせるわずかの差です。


L [eml-nc6: 1674] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Sun, 10 Sep 2006 emlの皆様 L@・・(救急法指導員)と申します 「市民の応急手当て生存率上昇」の記事のとおり ・・・家族や友人な どが近くにいたのは1万8000人余りでした。このうち、家 族など近くにいた    人が心臓マッサージなどの応急手当てをした場合、・・・・ あかの他人に手当てをするのは勇気がいりますよね、この記事では家族や友人です が、実際一般市民には 知らない人には手当てをしない(見過ごす)意識が強い気がします。 やはり、目の前で他人の子供を注意せず見て見ぬふりをする と同じような「かかわ りあいたくない症候群」なんでしょうか・・・ 昨今、皆様からのメールを拝見し、つくづくおもいます。民間の大半は応急手当は他 人事なんでしょうね。 市民の意識がまだまだ低い気がします。だから、行政も動かない。 声が上がるのは処置の現場(医療機関)からがほとんどなんですね。 市民も結果が悪いのは医療機関のせいにする風潮も・・・ それまでに何かできなっかたの?って居合わせた家族に聞きたくなるんじゃないです か。 なんか、一生懸命emlメンバーの皆さんのように「良くしなきゃ」ってがんばって いる人と 「誰かがやってくれる」的な”何とかなるさ人間”に2極化しそうな危機感を感じま す。 救命の連鎖 ではなく 救急の連鎖(民間→救急→医療)を構築しなきゃっておもい ます。 思うだけで無力ですが・・・ 個人的には義務教育に命の尊さや手当ての講義を入れてほしいのですが・・・・ 話は変わりますが、私は日赤の救急法の講習を行う際、参加者の構成が ・40歳代以降の体かまだ動く方、 ・子供ができて自分の子供の手当てのために来られる方、 ・就職のために、、または業務のために受講される方  が多く、20代30代の体力判断力にもたけている世代の受講が少ないと感じま す。 年配の方でも、受講動機を聞くと親が同居で救急法を習いに来た・・・ 健康そのもので病気と無縁な世代は受講されない気がします。 講習をされている皆様はどのように講習生を募集しているんでしょうか どんな参加者構成なんでしょうか。 教えていただければ幸いです。


M [eml-nc6: 1676] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Mon, 11 Sep 2006 安行@・・看護師です。 応急手当の現場にはなかなか遭遇しないものだなぁと思っていたところ、 先日、バイクと自動車の衝突事故の現場に出会いました。 すでに警察の方が見えており、傷病者は安全な場所へ移動してありましたが、 渋滞の交通整理で大変な様子でしたので、傷病者のそばで救急隊が来るまで 励ましていました。 意識はしっかりされていましたが、疼痛が強く、顔面蒼白でした。 数分後、救急隊の方がこられ、状況を把握されたあと、私が傷病者と無関係の バイスタンダーだとわかると、頭を下げて 「ありがとうございます。ここからは我々が引き継ぎます。」と おっしゃってくださいました。そして、 「応急手当を行なっていただき、ありがとうございました。  勇気ある行動に心から感謝いたします。」 と記された名刺大のカードをいただいました。 なんだか、素直に嬉しかったです。 傷病者の彼は、意識もはっきりしていたので、バイスタンダーが励まして 傍にいようがいまいが、生存率には関係しなかったように思います。 それでも彼にとっては、一人で苦しんでいるよりも心強かったのではないかな と思いました。 L@・・さんのおっしゃる > 救命の連鎖 ではなく 救急の連鎖(民間→救急→医療)を構築しなきゃっ > ておもいます。 は、とても大事だと思います。 救命っていうとものすごく大きなハードルがある印象です。 一般市民にはとっかかりとして大きすぎるのかなと。 そこよりももっとレベルを落として、倒れている自転車があって歩行者が 通行しにくいので自転車を起こしておこうとか、雨上がりに干してあった 傘が風で道路に飛んできたのを、たたんでわかりやすいところに置いておいて あげようとか、そういう「チョボラ(ちょっとしたボランティア活動)」が 自発的にできる国民・社会を育てていく延長線に、国民相互による 「救命の連鎖」が育つのではないかと思います。


平岡 [eml-nc6: 1684] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Tue, 12 Sep 2006 Oさん! お久しぶりです. (引用部分省略)  さすがは,ボランティアのプロ!(言葉が矛盾していますが・・・) おっしゃることに,いちいち改めて納得してしまいます. (ましてや,いやしくも職としておこなうものは,心しておかねば・・・)  しかし,市民への蘇生講座や,職員へのACLSを指導する際,(他にもありますが) 1)と2)が不適切にこんがらがることが多いんです.  うまく,伝わらないと,「とてもできない!」「専門家に任すしかない!」と言う感じだけ が相手に残ってしまうことがあるように思います. (ちなみに・・・  小学生の頃から,真面目で融通が利かず,自分には甘く他人には厳しい性格の  小生が選んだ回答は,現在の「感覚キャラ」です.  理論をしっかり語ってくれる人,熱い思いを語ってくれる人は集団の中には必ず  存在するのですが,逆にそれを聞く市民の方には,聞いた知識をわかりやすく  解釈しそれほど熱くはなくとも,暖かい心を持つヒトに「あなたにもできること」を  整理してあげることも必要と感じました.その役目として小生の「小市民的な発想」  「感覚的な表現」は,共感するにも反発するにも,手頃な大きさではないかと・・・)


M [eml-nc6: 1685] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Tue, 12 Sep 2006 M@・・看護師です。 私の経験・つたない投稿にレスを頂き、ありがとうございます。 お目汚しついでにもう一点、 (引用部分省略) 私たちが小さかった頃、背中を押してくれたものがありました。 ほぼ、毎日、テレビのCMで流れていた 「戸締り用心・火の用心・・・。一日一善!!」 今思うと、子供心に対して相当な刷り込み効果があったように思います。 ちっちゃなことでも人の役にたつことをしようよ。 周囲の大人はそれを認めてあげようよ。 今、こういったたぐいのCMはほとんど見かけなくなりました。 個々の目的への協力呼びかけ(献血、臍帯血・・・)のCMはありますけど。 朝のニュース番組で「今日のワンコ」とか放送していますが、同じように 「今日のええ話やなぁ」のコーナーがあったら、一般市民への動機付けに なるのかなぁなんて思っています。 もちろん、政府広報でいいCMをばんばん放送してくれることが一番。


G [eml-nc6: 1687] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Tue, 12 Sep 2006 Oさん、Mさん、平岡さん、Jさん、皆さん、Gです。 「…自発的にできる国民・社会を育てていく延長線に、国民相互による…」 という部分が名言ですね。災害救援は文化である、という言い方もありますが、 結局のところ、市民レベルの文化状況が他者依存的であり過ぎるのかな。 ボランティア精神がなかなか育たない。 ボランティアとは。言われなくてもやる、言われてもやらない。とか ほっとかれへん、とか。この分野にも名言があると思いますが、とにかく ボランティア・スピリット。こういう部分を育てるにはどうすればいいのかな。 どんなことでも、これがなければ、ダメだと思うのですが…。言われたことしか やらない、言われてもやらない、なんてシャレにもならないから…。 Oさん wrote:(引用部分省略) 自分ではあまり意識しないことが多いかもしれませんが、 そういうこと、あるんでしょうね。 (引用部分省略) 目的は、救えるハズの命を救うこと、でしょうか。手段というか、 そういう社会であって欲しい、というような、でしょうか。 平岡さんと同じく。「一歩前へ出る勇気を市民が持つように」。これもいい言葉です ね。


P [eml-nc6: 1688] Re: 市民の応急手当て生存率上昇 Date: Tue, 12 Sep 2006 From: P(医師) Gさんは書きました: > 「…自発的にできる国民・社会を育てていく延長線に、国民相互による…」 > という部分が名言ですね。災害救援は文化である、という言い方もありますが、 > 結局のところ、市民レベルの文化状況が他者依存的であり過ぎるのかな。 > > ボランティア精神がなかなか育たない。 日本(に限らず、中国、韓国など儒教思想圏)は、お上が庶民の気持ち を察して善政を敷くのを理想とする歴史があり、西欧の市民社会の流れ を汲むボランティア精神と文化が異なりますからね。 困っている人を助けるのは、お上の一員である水戸黄門様とその配下の 助さん格さんであって、村人はただ見ているだけなんですよね。 Oさんは書きました:(引用部分省略) 一般の人は、救急の現場に居合わせても何をして良いか判らない、のも あると思います。「《誰か》手伝ってください」では、誰も動きようが ないのです。私は『周りの野次馬、見物人の誰でも良いから手近な人の 目を見て指さして「そこの貴方、119番してっ」「貴方、こっち来て 手を貸して!」と具体的に命令するように』と習いました。 医者はスタッフに指示するのに慣れっこになっている横柄な人種(^^;) ですが、救急ボランティアを任ずるなら「今こそリーダーシップを発揮 する場面だ」と念じて横柄な態度を演じるぐらいでちょうど良いのかも 知れません。 追伸 [eml-nc6: 1563] 機内で人命救助の女性、日赤の救急法指導員とのこと ですが、周りにいた乗務員や乗客に具体的な指示を与えるまでは流石に 出来なかったのかなぁ、と思いました。どれほど屈強な人であっても4 時間ものCPRに体力が持つはずもなく、最後は胸を押す力も入らなかっ たでしょう。救助の女性の勇気と御努力を讃えつつ、詰まらぬ感想です。


越智 [eml-nc6: 1717] 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Tue, 19 Sep 2006  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。  今回の情報を中継してくださったXさん(日赤関係者)に上記ウェ ブを通じて私共の論議を読んでいただきましたが、以下のような追加情報を いただきました。 ×さんから越智へ ―――――――――――――――――――――――――――――― Subj: Re: 1時間のCPR後に蘇生した事例(転載のお願い) Date: Tue, 19 Sep 2006 越智さん、こんにちは!  ×です。 この度は救護事例の件でご尽力頂きましてありがとうございます。 emlにおいても活発な意見交換がなされているようでうれしく思います。 Wさんもこの体験が色々な形で花を咲かせて行くのを望んでいると思います。 (中略) 気になった部分がありましたので書いてみます。 越智 [eml-nc6: 1583] Re: 1563 機内で人命救助 > すばらしい対応をされたWさんが「AEDを」と一言いえなかったのは? この件に関しましては、文章に書かれておりませんでしたが何度もフライトアテンダ ントに言ったそうです。 しかしはっきりした返答も無くうやむやな対応だったらしいです。 救護が終わった後にAEDが搭載されていた事実を知り、とても憤りを感じて手紙、電 話、FAXで何度も抗議したそうです。 そしてベトナム航空から以下の返答を引き出したとの事です。 ------------------------- ベトナム航空への問い合わせについての返答 ・搭乗した機内にもAEDは装備されていたにもかかわらず使用しなかったのはなぜか? 「心臓病の患者のみに用いると思っていたのでは…」 ・アテンダントについても「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなかった」 と言われた ------------------------- ――――――――――――――――――――――――――――――  以上、機内でAEDを使用しなかった状況に関してはより詳しい情報が得られ ました。皆様のご意見などよろしくお願いいたします。


A [eml-nc6: 1718] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Tue, 19 Sep 2006 です なかなか興味深い真相が明らかになってきましたね 今後の議論を待つまでもなく僕個人として この航空会社には乗りたくないですね


Q [eml-nc6: 1719] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Tue, 19 Sep 2006 Q(医師)です。 > ベトナム航空への問い合わせについての返答 > ・搭乗した機内にもAEDは装備されていたにもかかわらず使用しなかったのはなぜか? > 「心臓病の患者のみに用いると思っていたのでは…」 > ・アテンダントについても「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなか った」と言われた  このような市民のBLSの話題は以前、自分の発言が曲解され誤解されたことがありましたので、 なるべく参加しないようにしてましたが、尊敬するA学兄も参加してますので、つい出てきまし た。  やはり「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなかった」というくだりがひっかかりま す。本当にまなんだのであれば、どのような講習内容であったか気になります。  昔から自分の属する団体が提供するBLSでは、「why CPR」(なぜ居合わせた人がCPRしなけれ ばならないのか?)」というmotivationをきちんと受講生に理解してもらいます。これがないと 人はその一歩が踏み出せません。  また同時に市民の応急手当における法的擁護についても補完的に話すことも多いです。  だから「市民が一歩が踏み出せない」というのは、きちんと講習(受けた団体によっても異な るでしょうが)を受けたのであれば、「踏み出せる」はずなのですが・・・。  とにかく最低限のmotivationはクリアしてないと、いくら手技を憶えていても「絵に描いた餅」 状態であるのは明白です。  講習を受けた人が「踏み出せない」のは講習の内容や指導者に問題があるのでは?と勘ぐって しまいます。  話はそれましたが、今回は客室乗務員ですので、特別な空間であり、ある意味「一定頻度者」 です。  彼らは一般市民と一線を画するということで、自分も詳しくはありませんが、BLSの施行がある 程度義務となってきたり、市民よりも法的に擁護される割合が高くないなど、もしかしたら、そ んな理由があってこの乗務員は施行するのを躊躇したのであれば、とても興味深いところです。  今回は外国の客室乗務員ということで、外国の方の一定頻度者と日本の一定頻度者との区分け もはっきりしませんし、法的擁護も自分ではあきらかではありません。  最近までは自分でも知りませんでしたが、「Good Samaritan Law」と日本の「緊急非難」がほ ぼ別物であることを知りました。  市民であれ一定頻度者であれ応急手当における救助者の法的擁護の問題も含めてクリアにしな いと、救助者はその一歩が踏み出せないのかも知れません。  また「認識不足」とお叱りをうけそうなのでこの辺にします。  以上の内容は個人的見解ですので、この件についてはディスカッションしません。


山本 [eml-nc6: 1720] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Tue, 19 Sep 2006 山本(非医療従事者)です。 > やはり「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなかった」というくだりがひっかかります。  本当にまなんだのであれば、どのような講習内容であったか気になります。 もし、その講習が完全無欠の理想的なものであったとしても、一定の割合で「躊躇して手を出せな い」人や、「知らん振り」する人はいると思います。 むしろ、「颯爽ときびきび手を出す」人の割合は限られているんじゃないかなあ。。 反対に、いい加減な講習、テレビで見ただけとか、うわさで聞いただけ?というのでも、ある程度 は「手を出す」人がいるんではないでしょうか? だとするとこのスキルはどれだけ多くの人に伝えられるかどうかが、鍵になるんじゃないかなあと。


P [eml-nc6: 1721] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Tue, 19 Sep 2006 Qさんは書きました: >  だから「市民が一歩が踏み出せない」というのは、きちんと講習(受けた団体によ > っても異なるでしょうが)を受けたのであれば、「踏み出せる」はずなのですが・・・ 。 >  とにかく最低限のmotivationはクリアしてないと、いくら手技を憶えていても「絵 > に描いた餅」状態であるのは明白です。 >  講習を受けた人が「踏み出せない」のは講習の内容や指導者に問題があるのでは? > と勘ぐってしまいます。 いや、今回のことで学ぶべき教訓は、「市民救命講習でリーダーシップ について教えていなかった」ことにあると思います。 救急の現場で取り巻いている野次馬の誰かが何となく助けに出るだろう、 手伝うだろう、ではダメで、救助者の一人がその場のリーダーシップを 執って「あなた、119番して」「そこのあなた、こっち来て胸を押す のを手伝って」「あなたたち、AEDを探して持って来て」と個別に具体 的に指示を出す必要があります。 今回の事例は、(決して嫌みの意味で申しているのでありませんが、) 日赤救急法指導員ほどの技能を持つ人であってもリーダーシップを執れ ず、周囲の野次馬に指示を出せず、何時間もの間、孤軍奮闘せざる得な かった点に、現在の救急救命講習の指導法の盲点が露呈したと思います。 救急法指導の関係者の皆様は、その盲点を貴重な教訓として受け止めて 戴きたいと願います。


青木 [eml-nc6: 1723] Re:追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Wed, 20 Sep 2006 民間救命法指導員の青木太郎です。 市民レベルの救命法の指導をしていますが、この女性の数時間にわたるCPRというのは、 全くもって想定外の事態です。少し雑感を述べさせていただきます。 たった一人で長時間CPRを行うというシチュエーションに対応できる訓練を施すことは、 半日から長くても2日間の講習が精一杯の市民向け講習では不可能です。また、医師な らそもそも(死亡宣告が出せますから)30分程度で(たぶん)止めているでしょう。 我々はあくまで自分より訓練レベルが上の他の救助者(普通は救急隊)が来るまでの中 継ぎとして、蘇生の連鎖を繋ぐことを目的にした講習をしています。 講習中でも、「救急車が来るまでの約10分間、CPRを頑張って続けてください」という 風に指導しています。 今回の事例で気づくのは、(日本文化が生み出す?)野次馬のコントロールの難しさです。 アメリカ発祥の救命法指導団体の内、以下の三団体、 AHA(アメリカ心臓協会) MFA(メディックファーストエイド社) EFR(エマージェンシーファーストレスポンス社) は、国内で1000名以上のインストラクターを有するそうです。たぶん、日本三大民間 救命法指導団体と言っていいでしょう。しかしながら、これらの教育カリキュラムの 中で、野次馬のコントロール・現場のリーダーシップについて触れている部分は、そ う多くはありません。せいぜい「あなた119番して下さい」とか「あなたAEDを捜して 来てください」と人を特定して指示を出すと良いという程度でしょう。 理由を考えて思い当たったことがあります。ひょっとしたらアメリカなどでは誰か がCPRをしていたら気軽に「お手伝いしましょうか?」などと気安く(?)声をかけてくれ るのではないでしょうか。 そもそもが、バイスタンダーCPRの実施率の高い国なら、誰かがCPRをしていたら交代 を申し出てくれることが多そうな気がします。それ故、アメリカ発祥のプログラムの 中ではあまり強くこういったことに触れられていないのかも知れません。 だから彼の国のプログラムの中でもし野次馬のコントロール・現場のリーダーシップ について大きく取り扱うことがあったとしたらそれは、「救助や交代を申し出てくれ る人たちをどうさばくか」であって「回りで漫然と見ている人をどのように救助者と して活用するか」という観点は薄いかも知れないと思いました。 さて、しかしながら、困っている人には見知らぬ人でも手助けをするという文化が日 本には他国に比べてあまりありません。未だに「良きサマリア人」法の無い国です。 同乗した乗客が何人かは明記されていませんが、飛行機が成田発であったこと、 >そんな中、野次馬から >「あいつが止めたら あの人死ぬのか?」という声が聞こえました。 の部分などから日本人が中心だったのかも知れません。もしそうなら、「技術的に はCPRが出来るはずの人」が複数名いておかしくなかったと思いますが、日本の文化に 根強く残っている「君子危うきに近寄らず」精神(?)が発揮されてしまったのかもしれ ません。 赤十字社の講習はその昔受けたことがありますが、当時は発見直後の「救急車を呼ん でください!」というプロセスがありませんでした。最初は驚きましたがすぐに「赤十 字はそもそもチームで動いているからそばにチームの誰かがいることが前提なんだな」 と思い、また「被災地に行く前提の講習をしているんだから、救急車どころじゃない んだな」とわかり、妙に納得した覚えがありました。 眼前でCPRを施している人を見る機会というのはそう多くはありません。機内の女性は、 少なくとも一般市民によるCPR活動を数時間に渡って100名以上の人に見せ続けたわけ です。この活動が、市民の救命意識の向上に役立ったであろう事を願ってやみません。 -- _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_ 青木タロー ブログは毎日更新中「日本初!救命コンサルタント活動開始!」 http://tarocorporation.com/blog/ タローコーポレーション株式会社 http://tarocorporation.com/ _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_


越智 [eml-nc6: 1724] 赤十字の指導法について(お詫び)、航空会社は他山の石に Date: Wed, 20 Sep 2006  eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 〇  「機内での人命救助」に関する意見交換ですが、対応されたWさんが「AED を」という要請をされたということが明らかになりました。[eml-nc6: 1583] での私の、Wさんの対応内容とWさんが訓練を受けられた赤十字のCPR訓練内 容への批判は根拠のないものでした。Wさんそして赤十字関係者の方々には 不快に思われたことと思います。ここにおわび申し上げます。 越智より(eml-nc6: 1717) |越智 [eml-nc6: 1583] Re: 1563 機内で人命救助 | |> すばらしい対応をされたWさんが「AEDを」と一言いえなかったのは? | |この件に関しましては、文章に書かれておりませんでしたが何度もフライトアテンダ |ントに言ったそうです。 |しかしはっきりした返答も無くうやむやな対応だったらしいです。 〇  一方で、ベトナム航空の低レベル(乗客の安全管理という面で)かつ不誠 実な対応内容が明らかとなりました。AEDがまさにそのために用意されている その状況で、AEDを用いようとする知識がなかったということは、世界的に必 要とされる、CPR+AEDの乗務員訓練が適切に実施されていなかったというこ とになります。また「CPRを代わりましょうか」「胸骨圧迫(または人工呼吸) の方を担当しましょうか」というような申し出や、蘇生場面をカーテンなど で野次馬(他の乗客)の眼から遮るというような、より一般的な対処もされ ませんでした。  同様のことが起こった場合にわが国の航空会社が適切な対応をできたかど うかはわかりません。なぜなら、恐らく日本国籍の機内での心肺停止事例は この1年ほどほとんど起こっていないと推測するからです。ただ、日本人乗 客が遭遇した今回の事例が広く伝えられ、日本の航空機会社が自らのえりを 正すきっかけになればと希望します。 越智より(eml-nc6: 1717) |救護が終わった後にAEDが搭載されていた事実を知り、とても憤りを感じて手紙、電 |話、FAXで何度も抗議したそうです。 |そしてベトナム航空から以下の返答を引き出したとの事です。 |------------------------- |ベトナム航空への問い合わせについての返答 |・搭乗した機内にもAEDは装備されていたにもかかわらず使用しなかったのはなぜか? |「心臓病の患者のみに用いると思っていたのでは…」 |・アテンダントについても「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなかった」 |と言われた |-------------------------  以上、皆様のご意見はいかがでしょうか。


青木 [eml-nc6: 1727] Re: 赤十字の指導法について(お詫び)、航空会社は他山の石に Date: Wed, 20 Sep 2006 民間救命法指導員の青木タローです。 国内航空会社の応急手当トレーニング状況について昔少しだけ調べたことがありまし た。 その結果、各社が採用していたプログラムは以下の通りでした。 JAL:アメリカ心臓協会 ANA:メディックファーストエイド社 ADO:エマージェンシーファーストエイド社 たまたまか必然か分かりませんが、今朝私が「1723」で書き込んだ日本を代表する三 救命団体のプログラムが採用されているようでした。 AirDo:エマージェンシーファーストエイド社に関しては、乗客として乗ったときに客 室乗務員に聞いたものです。 ANA:メディックファーストエイド社に関しては、メディックファーストエイド社の広 報に掲載されていたのを見ました。全客室乗務員が同社のトレーニングを受けている ようです。 JAL:アメリカ心臓協会に関しては、何で聞いたのか忘れてしまいました(^_^;)。 またAirDoに関しては、全社で統一したプログラムなのかどうかはわかりませんでした。 客室乗務員の口ぶりからは、ひょっとしたら各個人が個々に受けているような印象も 受けたからです。 以上のように、ANA意外は調査方法がはなはだ心許ないので、参考程度に。


中川 [eml-nc6: 1728] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Wed, 20 Sep 2006 eml の皆さんこんばんは 福島の中川(非医療従事者)と申します 『機内で人命救助の事例』を投稿した者です。 Wさんにお願いをして投稿させて頂いた経緯から最後まで見届けるのが筋と思い emlに参加させて頂く事にしました。 皆さんには色々なご意見ご感想を頂きましてありがとうございます。 私はWさんの体験を聞いた時に衝撃的な感動を覚えました。 と同時にいくつもの疑問を投げかけられました。 ・長時間、一人でCPRをやり続けたこと ・長時間の心肺停止後に見事蘇生したこと ・頼れるはずのアテンダントが何ら機能せず傍観者と化したこと(添乗員も) ・AED の搭載があったにも関わらず使用されなかったこと ・周りの乗客の反応が余りにもひどかったこと(罵声、写メール、ひやかし) ・そのためにWさんがPTSDの様な状態になってしまったこと ・Wさんに何て言葉をかけたらいいか分からなかったこと ・私だったらどうなっていただろうか? その数々の疑問のヒントを皆さんに教えて頂きたいと思いました。 なぜそうなったのか? どうすれば改善されるのか? いくつかのヒントを頂きましたがもう少しお話いただけないでしょうか? よろしくお願い致します。 ============================== 中 川 達 也 ==============================


おかどめ [eml-nc6: 1729] ベトナム航空の一件…あらゆる所で「他山の石」に Date: Thu, 21 Sep 2006 eml-ncの皆様, おかどめ@JR西日本です。 福知山線列車事故後,弊社はこのMLでも今回のベトナム航空と同様の 批判を受けました。 現在弊社では,駅社員を中心に消防機関の普通救命講習(一部社員 は上級講習)を受講させたり,主要駅にAED設置といった取組みが行 われています。弊社エリアの消防機関の皆様,弊社社員への講習実施, ありがとうございます。 多くの人命を預かる職業にある人間は,救命のためのスキルも身に つけておき,万が一の時は迅速に適切な対応をすべきです。しかし不特定 多数の人が出入りする箇所でのCPRは,CPRのスキルだけでなく,救護行 動のリーダーシップや,野次馬のヤジに負けずにCPRを実施するモチベー ション(責任感・使命感),プライバシー確保のための遮へいのスキルなど 望まれることは多く,そのための教育訓練も必要と思います。 今回のベトナム航空の事例は航空会社だけでなく,病院等を除いたあら ゆる公共的な場所で発生しうる事象であり,えりを正して取組んでいきたい と思います。 JR西日本勤務 おかどめ 応急手当普及員(平成7年大阪市消防局認定) 気象予報士


[eml-nc6: 1735] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Sat, 23 Sep 2006 中川@福島ボランティアです --------------------------------------- 追加情報 <ウェブ担当者による要約:機内で心肺停止に陥られた傷病者は重度の神経学的後  遺症なく回復された由> --------------------------------------- 先日投稿した『長時間一人でCPRをやり続けたこと』について意見を書いてみたいと 思います。 まず私的には、今回の様な緊急事態において最寄の空港に緊急着陸するのが常識と 思っておりました。 (私は飛行機に乗った事がありませんのでドラマなどでの知識しかありません) 1機の飛行機にどのくらいの数のアテンダントがいるかわかりませんが、非常事態で ドクターコールなどがあったにも関わらず誰一人として、CPR、野次馬の整理、W さんの補助として手伝う事もなかったという事態が信じられません。 少なくても一人ぐらいは、と希望をもっておりましたが・・・ また AED の搭載があったにも関わらず使用されなかったことに関しても 「心臓病の患者のみに用いる」と教育をしている航空会社あるのも信じられなかった です。 ベトナムの救急医療の現状は分かりかねますが、世界の航空業界スタンダード、航空 業界基準みたいなものがある様に思っておりました。 先日、Wさんが・・の方とお話されたそうで、 「大手の航空会社はそれ相応の教育をしているが、それ以外の航空会社では中々そう はいかないのが現実らしい」と言っていたそうです。 ◎青木さんのお話で各航空会社でトレーニング状況も異なるのを知りました。 今回の飛行機にはアンビューバッグとかも備えてなかったみたいですし何か腑に落ち ません。 この件に関しては個人の問題よりも企業倫理の問題かなぁなんて思いました。 (当事者が反論する機会の無いところでこういった発言をするのはフェアでない気も しますが…) ◎おかどめさんの発言、そのとおりだと思いました。 > 多くの人命を預かる職業にある人間は,救命のためのスキルも身に > つけておき,万が一の時は迅速に適切な対応をすべきです。しかし不特定 > 多数の人が出入りする箇所でのCPRは,CPRのスキルだけでなく,救護行 > 動のリーダーシップや,野次馬のヤジに負けずにCPRを実施するモチベー > ション(責任感・使命感),プライバシー確保のための遮へいのスキルなど > 望まれることは多く,そのための教育訓練も必要と思います。 ============================== 中 川 達 也 ==============================


石井 [eml-nc6: 1739] CPR についての雑感 Date: Mon, 25 Sep 2006 皆さま 岡山赤十字病院の石井です 赤十字指導員のWさんの長時間にわたる航空機の中でのCPRのお話を伺い、感銘を 受けております。長時間もすごいですがその間有効な心肺蘇生をされたということ 本当に素晴らしいと思います。またいろいろ考えさせられました。 少し議論がずれますので題名を変えさせて頂きました。疑問は2点あります。 まずCPRはいつまでするか?についてです。 明らかな体動・呼吸が見られた時、他のより専門的な救助者に引き継いだ時、に加 えて救助者が疲弊して(危険が及んで)続行不可能になった時と思っていたのです が新しい指針にはその記載がないようです。救助者が倒れないようにするというこ とは重要なことですので(幸いWさんは倒れずに蘇生に成功という快挙を成し遂げ られたのですが)、倒れるまでCPRを続ける必要は無いことを明記しておいた方が 親切なのではと思っています。 もうひとつは30:2の比率の事です。もちろん最も有効と思われる比率に決定し たと理解していますが、実際に施行するとなると体力的な負担が以前より大きいと 何人かの方から聞きました。私もそう感じています。人手がある場合は代わればす むことですが一人しかいないとすればその事も考慮して回数を決定することも今後 は必要なのかもしれないと思いました。いずれにせよ5年先の話かも知れませんが・・・ 5年先には心マだけになっているのかもしれませんね。 岡山赤十字病院救命救急センター 石井史子


中川 [eml-nc6: 1743] Re: CPR についての雑感 Date: Tue, 26 Sep 2006 石井さん、皆さん こんばんは!  中川@福島ボランティアです まずもう一度 Wさんの体験をまとめてみますと 人工呼吸+心臓マッサージのCPRが 約40分 人工呼吸のみのCPRが 約20分 トータル 約1時間のCPRを行った事になります。 CPRはいつまでするか?について 『救助者が疲弊して続行不可能になった時』の条件を考えるとWさんは肉体的限界 を通り越し、本来なら続行不可能な状態にあったと思います。 野次馬の「あいつが止めたら あの人死ぬのか?」の一言により 「私が止めれば人殺しになる!」という強迫観念にとらわれ、一心不乱にCPRを続け たのだと思います。 『救助者が疲弊して続行不可能になった時』をWさんの事例であてはめて考えると どの時点なら止めても良かったのでしょうか? もちろん 止める=死 を意味しますが・・・ 皆さんは『救助者が疲弊して続行不可能になった時』をもっと具体的にどう考え、ど こで線引きするのでしょうか? 色々な面で、救助者の保護についてもっと策を立てなくてはと思います。 <中略> ============================== 中 川 達 也 ==============================


越智 [eml-nc6: 1748] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Wed, 27 Sep 2006  山本さん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。少し 忙しくてレスポンスが遅くなりました。 〇 山本さんより(eml-nc6: 1720) |> やはり「CPRを学んでいても躊躇してしまい手が出せなかった」というく | だりがひっかかります。本当にまなんだのであれば、どのような講習内容 | であったか気になります。 | |もし、その講習が完全無欠の理想的なものであったとしても、一定の割合で |「躊躇して手を出せない」人や、「知らん振り」する人はいると思います。 |むしろ、「颯爽ときびきび手を出す」人の割合は限られているんじゃないか |なあ。。 |反対に、いい加減な講習、テレビで見ただけとか、うわさで聞いただけ?と |いうのでも、ある程度は「手を出す」人がいるんではないでしょうか? | |だとするとこのスキルはどれだけ多くの人に伝えられるかどうかが、鍵にな |るんじゃないかなあと。  どの位のバイスタンダーがCPRをしてくれるかは統計が出ています。例えば 平成13年までのデータですが(図1)、市民CPR実施率が20%を超えたのはほ んの最近のことです。 http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/m5chusi3.htm  また以下のデータから計算すると最近の、目撃例での市民CPR実施率は 118,477x100/(118,477+324,369) = 26.8%ということになります。 越智より(eml-nc6: 1659) |  第2-4-9図 応急手当の救命効果(平成11〜15年) |  ・全国の救急隊員が搬送した心肺停止傷病者数 442,846人 |    ・応急手当あり 118,477人―1ヶ月後の生存 4.2%   |    ・ 〃  なし 324,369人―  〃     3.1%  応急手当を受けたことのある市民が増加していることは確かなのでしょうが、 いまだ半分以上の心肺停止傷病者が何ら処置をされずに救急車の到着を待って いることになります。今回の機内でのできごともその一つの表れと言えるかも 知れません。  もっともっと有効な講習や情報発信をして多くの市民が心肺蘇生法をしてく れるようにしたいですよね。


越智 [eml-nc6: 1749] Re: 1729 ベトナム航空の一件…あらゆる所で「他山の石」に Date: Wed, 27 Sep 2006  おかどめさん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 〇 おかどめさんより(eml-nc6: 1729) |福知山線列車事故後,弊社はこのMLでも今回のベトナム航空と同様の |批判を受けました。 → 以下の意見交換ですね。そのせつはおかどめさんにも意見交換に加わっていた   だき有難うございました。   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   050517. 尼崎JR事故に建設的な批判・提案を(救急医療メーリングリスト   からの提言) http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/05/p5-JR.htm   ・科学的な原因究明・立証と、今後に繋がる防止策の立案   ・JR客室乗務員への一次救命処置(BLS)+除細動教育   ・主要駅や新幹線に自動体外式除細動器(AED)を備えること   ・鉄道(特に新幹線)と関連施設のテロ対策も急務   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 |現在弊社では,駅社員を中心に消防機関の普通救命講習(一部社員 |は上級講習)を受講させたり,主要駅にAED設置といった取組みが行 |われています。 → 昨年の段階ではJR内でおかどめさんのように構内での心肺蘇生対応に理解関心   を持ってくださっている方は非常にわずかであったと思います。現時点で   はAEDの配備やCPR訓練を含め、安全対策が大きく前進したと拝察しており   ます。おかどめさんをはじめ関係者のご努力に敬意を表します。 〇 |多くの人命を預かる職業にある人間は,救命のためのスキルも身に |つけておき,万が一の時は迅速に適切な対応をすべきです。しかし不特定 |多数の人が出入りする箇所でのCPRは,CPRのスキルだけでなく,救護行 |動のリーダーシップや,野次馬のヤジに負けずにCPRを実施するモチベー |ション(責任感・使命感),プライバシー確保のための遮へいのスキルなど |望まれることは多く,そのための教育訓練も必要と思います。 |今回のベトナム航空の事例は航空会社だけでなく,病院等を除いたあら |ゆる公共的な場所で発生しうる事象であり,えりを正して取組んでいきたい |と思います。 → まさにその通りと思います。今回の事例をあらゆる所で「他山の石」と   するべきですね。  それでは引き続き意見交換を宜しくお願いいたします。


Date: Wed, 27 Sep 2006 [eml-nc6: 1753] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 山本です。 ご返信ありがとうございます。 >〇 (中略) > どの位のバイスタンダーがCPRをしてくれるかは統計が出ています。例えば >平成13年までのデータですが(図1)、市民CPR実施率が20%を超えたのはほ >んの最近のことです。 >http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/m5chusi3.htm > > また以下のデータから計算すると最近の、目撃例での市民CPR実施率は >118,477x100/(118,477+324,369) = 26.8%ということになります。 >越智より(eml-nc6: 1659) >|  第2-4-9図 応急手当の救命効果(平成11〜15年) >|  ・全国の救急隊員が搬送した心肺停止傷病者数 442,846人 >|    ・応急手当あり 118,477人―1ヶ月後の生存 4.2%   >|    ・ 〃  なし 324,369人―  〃     3.1% > > 応急手当を受けたことのある市民が増加していることは確かなのでしょうが、 >いまだ半分以上の心肺停止傷病者が何ら処置をされずに救急車の到着を待って >いることになります。今回の機内でのできごともその一つの表れと言えるかも >知れません。 > 実は。きっとそんなデータはあるんだろうなと、思っていました。なんらかのアク ションをする人は半数位だろうか。。。と思っていましたが、そんなに少ないんで すね。 > もっともっと有効な講習や 講習は十分有効だったんじゃないかなあ。。。とヘナチョコ市民としては思います。 だから、、この数字、しようがないのかなあとも。 訓練の内容のせいじゃないと思います。やらない人はやらない。できない。うんと 働きかけをして、せいぜいあと、10%伸びるかどうか。 けれど、 >情報発信をして多くの市民が心肺蘇生法をしてく >れるようにしたいですよね。 本当に同感です。 情報発信としてはもっといろんなチャンネルがあると良いと思います。 もっと受講者が増えれば、受講者中の実施率は増えなくても、結果としての実施数 は増えるでしょう? っと、 思いついたのが、テレビでよくやってる公共広告機構。 アレでAEDとかCPRのデモンストレーション、やってくれないでしょうか? で、調べてみました。 http://www.ad-c.or.jp/campaign/rule.html 支援キャンペーンっていうのがあるんですね。 でも、今年の締め切りは8月末だったんで、来年ですけれど。 NPOとかの団体を支援してるれるとか。 EMLとして、来年、応募してみるっていうのはどうでしょうか? (NPOでなければならないなら、どこかの団体さんの軒先をお借りしても。。。)


Date: Wed, 27 Sep 2006 A [eml-nc6: 1754] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Aです ただで広告できるんだ NPOで活動実績のあるところが合同で 申し込むと良いかもしれませんね


P [eml-nc6: 1759] Re: 1720 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Wed, 27 Sep 2006 越智さん >  どの位のバイスタンダーがCPRをしてくれるかは統計が出ています。例えば > 平成13年までのデータですが(図1)、市民CPR実施率が20%を超えたのはほ > んの最近のことです。 > http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/m5chusi3.htm > >  また以下のデータから計算すると最近の、目撃例での市民CPR実施率は > 118,477x100/(118,477+324,369) = 26.8%ということになります。 私のあまり根拠のない推定の数字を出して恐縮ですが、市民救命の講習 を受けたことのある人は100万人ぐらいかな、と思います。そうする と、日本の人口1億2千万人のおよそ1%足らずとなり、目撃例の市民 CPR実施例26.8%というのは、驚くべき高い数字に感じられました。 問題は、非救助者、怪我人を動かしてはいけないという考えが一般的に 広く浸透していることで、その点については以前に交通事故の事例が話 題になったときに、私が「もし頸損していたらどうする」というような 議論を越智さんに吹っ掛けたこともありましたね。 とまれ計算上は実施例26.8%-1%≒26%の人々は、CPRの講習を受けたこと がないまま見よう見まねで勇敢にも蘇生術を行ったと考えられるわけで、 講習会の普及が望まれますね。 田島 康夫 拝


P [eml-nc6: 1760] Re: CPR についての雑感 Date: Wed, 27 Sep 2006 "T.Nakagawa" さんは書きました: > CPRはいつまでするか?について > > 『救助者が疲弊して続行不可能になった時』の条件を考えると横山さんは肉体的限界 > を通り越し、本来なら続行不可能な状態にあったと思います。 > 野次馬の「あいつが止めたら あの人死ぬのか?」の一言により > 「私が止めれば人殺しになる!」という強迫観念にとらわれ、一心不乱にCPRを続け > たのだと思います。 > 『救助者が疲弊して続行不可能になった時』を横山さんの事例であてはめて考えると > どの時点なら止めても良かったのでしょうか? > もちろん 止める=死 を意味しますが・・・ > > 皆さんは『救助者が疲弊して続行不可能になった時』をもっと具体的にどう考え、ど > こで線引きするのでしょうか? 学生時代に読んだ渡辺淳一氏の短編小説にそのような題材を扱ったもの がありました。病室で蘇生術に反応しない患者に心マを続ける当直医は、 いつまでこれを続けなきゃいけないんだ?と自問します。そして、患者 の少女が枕元で飼っていた虫籠の虫が鳴いた時、心マを止めようと決め ます。そして医師の指先が痺れ精根尽きたとき、静かに虫が鳴いた、と 云う話です。 私は、[eml-nc6: 1721]で『その盲点を貴重な教訓として受け止めて戴 きたいと願います。』などと僭越にも書きましたが、しかし、よく考え 直してみると今回の機内の事例は、よくよく特殊な事例ではないか、と 思うようになりました。 一般市民による救命処置は、救急の命の連鎖の第一環を担うことが期待 されており、一般的には救急隊が到着するまでの5分ないし10分間を 想定したものだと思います。機内という周囲と隔絶された状況で長時間 のCPRは、市民救命の想定外の事態であると考えられます。先ず第一義 的に良く訓練された乗務員が処置に当たるべきであり、乗客は乗務員の 指示に従い必要ならお手伝いをする立場でしょう。 当該機の乗務員のほとんど何もしていないことについて道義的に非難さ れるべきであろうと思います。しかし、一つ留意すべきは、当該国の法 制として乗務員の救命処置が認められているか調べる必要があります。 乗務員個人あるいは航空会社の責任だけではなく、法制上の不備のため 乗務員がCPRを行わなかった(その国の法律で違法行為となってしまう) 可能性もあり得ると思います。日本でも救急隊員や乗務員の救命行為が 合法かどうか議論されていたのは、そう遠い昔の話ではありません。 とまれ乗客が1時間に渡って一人でCPRを続けたのは想定外の特殊な事 例ですが、もし医師あるいは医療従事者を名乗って救命に当たった場合、 乗務員から全権を託されることが想定し得ます。『救助者が疲弊して続 行不可能になった時』になって、『医師は死亡宣告が出来ますからね』 と割り切れるだろうか。ふと、昔、読んだ小説を思い出しながら思いま した。 田島 康夫 拝


山本 [eml-nc6: 1761] Re: CPR についての雑感 Date: Thu, 28 Sep 2006 ちょっとだけレスの山本です。 On 2006/09/27, P wrote: > 学生時代に読んだ渡辺淳一氏の短編小説にそのような題材を扱ったもの > がありました。病室で蘇生術に反応しない患者に心マを続ける当直医は、 > いつまでこれを続けなきゃいけないんだ?と自問します。そして、患者 > の少女が枕元で飼っていた虫籠の虫が鳴いた時、心マを止めようと決め > ます。そして医師の指先が痺れ精根尽きたとき、静かに虫が鳴いた、と > 云う話です。 私も、この小説、記憶に残っています。 たしか、きりぎりすでしたよね。 題名もそんな感じだったかも知れません。 その後もいろいろと考えさせられました。


中川 [eml-nc6: 1763] Re: 追加情報・機内での人命救助(心肺蘇生法の普及)に関する論議 Date: Fri, 29 Sep 2006 皆さん こんばんは!  中川@福島ボランティアです 返信ありがとうございます。 [eml-nc6: 1719] wrote: Qさん > 昔から自分の属する団体が提供するBLSでは、「why CPR」(なぜ居合わせた人が > CPRしなければならないのか?)」というmotivationをきちんと受講生に理解して > もらいます。これがないと人はその一歩が踏み出せません。 > また同時に市民の応急手当における法的擁護についても補完的に話すことも多いです > 市民であれ一定頻度者であれ応急手当における救助者の法的擁護の問題も含めて > クリアにしないと、救助者はその一歩が踏み出せないのかも知れません。 私も同感です。 一般人のバイスタンダーが救護をためらう大きな理由に『責任の所在』があると思い ます。 講習会では命の大切さに加え『声をかけ手を差し伸べる勇気を養う=実践する!』と いう事を伝えていくようにしています。 それが赤十字で行う救急法の核だと思っております。 でも動機付けの補助として「よきサマリア人法」といった抽象的なものを聞いた時に は正直違和感を感じました。 なぜはっきりと【民法 第698条】を口にしないのか? 応急手当を実地する者にとっては『錦の御旗』の様な存在だと思いますが… 世間にこの法律が知れ渡れば、野次馬から罵声を浴びる事も少なくなり、CPR中断の 決定においても理解を得られるのではないかと思います。 全ての人が「応急手当を行うのは素晴らしい事!」という認識を持てればいいですね ============================== 中 川 達 也 ==============================


中川 [eml-nc6: 1791] Re: CPR についての雑感 Date: Tue, 3 Oct 2006 22:50:50 +0900 皆さん こんばんは!  中川@福島ボランティアです 今回『救助者が疲弊して続行不可能になった時』について深く考えさせられました。 私は CPRを中止してよい条件に関して長年の間書かれている文章を何も考えず受講者 に指導してきました。 しかしWさんの事例にあてはめて考えてみたらすごく無責任だった様に感じまし た。 今回のケースに限って言えば、 1時間のCPRが出来なったとしたら傷病者が回復しないままCPR中断の判断をしなけれ ばいけなかったわけです。 1時間のCPRを出来る人はそうざらにはいないでしょうからほとんどの人が CPR中断 をしたはずです。 そうなった時、周りの反応や遺族になってしまうであろう家族の言葉・・・など 想像を 絶するような事態を引き起こし、救助者を傷つけてしまうのが想像されます。 そう考えると講習の中でさらっと流せる話ではなかったんじゃないかと思いました。 石井さんの仰っている指針の明記は絶対に必要だと思います。 [eml-nc6: 1739] 石井さん wrote: > 明らかな体動・呼吸が見られた時、他のより専門的な救助者に引き継いだ時、 > に加えて救助者が疲弊して(危険が及んで)続行不可能になった時と思ってい > たのですが新しい指針にはその記載がないようです。救助者が倒れないように > するということは重要なことですので(幸いYoさんは倒れずに蘇生に成功とい > う快挙を成し遂げられたのですが)、倒れるまでCPRを続ける必要は無いこと > を明記しておいた方が親切なのではと思っています。 ============================== 中 川 達 也 ==============================


大塚 [eml-nc6: 1835] Re: CPR についての雑感 Date: Wed, 11 Oct 2006 > 当該機の乗務員のほとんど何もしていないことについて道義的に非難さ > れるべきであろうと思います。しかし、一つ留意すべきは、当該国の法 > 制として乗務員の救命処置が認められているか調べる必要があります。 > 乗務員個人あるいは航空会社の責任だけではなく、法制上の不備のため > 乗務員がCPRを行わなかった(その国の法律で違法行為となってしまう) > 可能性もあり得ると思います。 ベトナムの法律が気になったので調べてみました。 結論から言うとベトナム民法にも事務管理があります。 従って,日本法に従ってもベトナム法に従っても 当該乗客にCPRを施すことは違法ではありません。 尚,ベトナムの事務管理の条文が日本の事務管理の条文に似ているのは JICA及び日本人法学者がベトナム民法改正を支援していたからだそうです。 鈴木康二:ベトナム民法,日本貿易振興会(ジェトロ),1996. より抜粋 323ページ ベトナム民法第599条 委任のない事務管理 委任のない事務の行使とは,事務行使の義務のない人が, 行使される事務のある人が知らないか,または知っているが 反対しないとき,その人の利益のために自主的にその事務を 行使することである。 ベトナム民法第600条 委任のない事務行使の義務 1.委任のない事務を行使する人は,自分の能力,条件に符合する 事務を行使する義務がある。 2.委任のない事務を行使する人は,自分の事務のように事務を 行使しなければならない。委任のない事務を行使する人は, 事務のある人の意図を知っているか,または判断できるならば, その意図に符合するように事務を行使しなければならない。 (以下略) 4ページ ベトナム民法典は日本の民法典に非常に良く似ており日本人に 親しいものである。しかもそこには日本の民法学の成果が条文となって 取り入れられている。(中略)ベトナムが大陸法系の民法典を採用したのは, 1)旧宗主国フランスにあった近代民法典の原点であるナポレオン法典に 親近感を持ったからではなく,2)社会主義法体系が大陸法系に属する ものであり,3)立法にあたって検討した日本民法典,中国民法典, 旧ソ連民法典,ロシア民法典,スイス債務法典等がすべて大陸法系であり, 4)英米法系のような体系をもたない私法は専門化を招きベトナム国民に 身近なものになりにくく,5)英米法の判例重視の態度はいたずらな 裁判主義を招き,国民経済にマイナスだと考えた,ことによるものだろう。 総合病院国保旭中央病院神経精神科 大塚 祐司 http://www.hospital.asahi.chiba.jp/


P [eml-nc6: 1838] Re: CPR についての雑感 Date: Thu, 12 Oct 2006 P: > 当該機の乗務員のほとんど何もしていないことについて道義的に非難さ > れるべきであろうと思います。しかし、一つ留意すべきは、当該国の法 > 制として乗務員の救命処置が認められているか調べる必要があります。 > 乗務員個人あるいは航空会社の責任だけではなく、法制上の不備のため > 乗務員がCPRを行わなかった(その国の法律で違法行為となってしまう) > 可能性もあり得ると思います。 "YUJI OTSUKA" さんは書きました: > ベトナムの法律が気になったので調べてみました。 > > 結論から言うとベトナム民法にも事務管理があります。 > 従って,日本法に従ってもベトナム法に従っても > 当該乗客にCPRを施すことは違法ではありません。 > > 尚,ベトナムの事務管理の条文が日本の事務管理の条文に似ているのは > JICA及び日本人法学者がベトナム民法改正を支援していたからだそうです。 大塚さん、お調べいただきありがとうございました。 たまたま乗り合わせた一般の乗客が救命行為を行う場合は、おっしゃる 通り民法の「事務管理」の法理が当てはまるかも知れません。しかし、 法学上は事務管理は「契約に由らない債権発生」と考えるのだそうで、 もし、万一、救命に失敗した場合、救助者が賠償責任を負ってしまう可 能性も法律論上あり得ると思います。「緊急事務管理」あるいは「緊急 避難」の法理を当てはめた方が、責任問題を回避できると思います。 日本も「良きサマリア人法」はまだなく、一般市民の善意善行を法律的 に護る仕組みは不完全ですね。 一方、行政法上の問題もあります。救急隊員、客室乗務員のように一定 頻度で救命処置を行うことが予想される職業の場合、救命行為が医師法 の無資格医業の禁止規定に抵触するおそれがあります。「医業」はお金 を貰う貰わないは関係なく、繰り返して行えば「業」と見なされるそう です。この点について日本でも種々の議論があり、救急救命士などの法 制度が整備されたのは比較的最近のことです。 当該機の乗務員が救命行為をしなかったと聞き、ベトナムの行政法規で 乗務員の救命行為と無資格医業を整合する法規が整備されていなかった のか、疑問に思いました。いずれにせよ当該機の乗務員の個人的責任と して片付けてはなりません。


大塚 [eml-nc6: 1840] Re: CPR についての雑感 Date: Fri, 13 Oct 2006 Pさんこんにちは > たまたま乗り合わせた一般の乗客が救命行為を行う場合は、おっしゃる > 通り民法の「事務管理」の法理が当てはまるかも知れません。しかし、 > 法学上は事務管理は「契約に由らない債権発生」と考えるのだそうで、 > もし、万一、救命に失敗した場合、救助者が賠償責任を負ってしまう可 > 能性も法律論上あり得ると思います。「緊急事務管理」あるいは「緊急 > 避難」の法理を当てはめた方が、責任問題を回避できると思います。 ベトナム民法に緊急事務管理はありませんが, 実質的に事務管理者の注意義務を軽減する条文があります。 ベトナム民法602条 損害賠償義務 1.委任のない事務を行使する人が,事務行使中に,故意に 損害を起こしたとき,行使される事務のある人に,生じた 損害を賠償しなければならない。 2.委任のない事務を行使する人が,事務行使中に,故意なく 損害を起こしたとき,その事務を担当する条件に基づいて, その人は損害賠償を減額することができる。 > 日本も「良きサマリア人法」はまだなく、一般市民の善意善行を法律的 > に護る仕組みは不完全ですね。 今回の事例では,日本の法律が適用されるなら 緊急事務管理でしょうが,救助者が医師の場合は 緊急事務管理が適用されるとは限らないと思います。 勿論,最終的には注意義務が争点となり,損害賠償の 認定に際して適用される法律による差はないとは思います。 しかしながら救助者側に対する法的保護に曖昧な点があるためか, 今春ケアネットで医師対象に行われたアンケートでは 以下のような結果が出ています。 「もし機内で急病人が出て医師を呼ぶアナウンスがあったら、 先生はどうしますか?本音を聞かせてください!」 すぐにアナウンスに応えて病人をみにいく 6.2% ちょっと悩むが、やっぱり病人をみにいく 11.4% アナウンスには応えない 82.5% 回答総数 1832 この結果を見る限り,米国のように先手を打って 「よきサマリア人法」を作らなければ航空機内の救急医療が 一気に崩壊する可能性があると考えています。 > 一方、行政法上の問題もあります。救急隊員、客室乗務員のように一定 > 頻度で救命処置を行うことが予想される職業の場合、救命行為が医師法 > の無資格医業の禁止規定に抵触するおそれがあります。「医業」はお金 > を貰う貰わないは関係なく、繰り返して行えば「業」と見なされるそう > です。この点について日本でも種々の議論があり、救急救命士などの法 > 制度が整備されたのは比較的最近のことです。 日本航空の試算では一人の客室乗務員がAEDを機内で使用するチャンスは 123年に1度くらいであり,この試算を基に「反復継続」の意思が なく「業」ではないと解釈され,客室乗務員のAED使用が解禁となりました。 (三田村秀雄,飛鳥田一朗,岡田和夫,樋口範雄:座談会AEDは非医師でも 積極的に使うべきか.カレントテラピー,21,404-415,2003.他) > 当該機の乗務員が救命行為をしなかったと聞き、ベトナムの行政法規で > 乗務員の救命行為と無資格医業を整合する法規が整備されていなかった > のか、疑問に思いました。いずれにせよ当該機の乗務員の個人的責任と > して片付けてはなりません。 ベトナムの刑法,行政法についてはわかりませんが, 「ベトナム民法」の128ページに以下のような記述があり 参考になるかも知れません。 「事務管理は社会扶助・社会的連帯の精神からでた,他人の 領域への干渉を一定の要件の下に適法なものとし,一方で 一度干渉を始めた者に最後までその管理を全うすることを 義務付け,他方で本人に管理費用の償還を義務付ける制度である。 ベトナムはこのようないわばお節介を歓迎する社会である。 隣近所付き合いが多く,社会的連帯を強調する社会主義国家だからである。」 尚,私は発展途上国のエアラインであるベトナム航空の航空機に本当に AEDが搭載されているのか疑問に思っていました。CPRを続けた救助者の 言葉は真実だと確信していますが,当該機の乗務員及び日本支社の社員が 機内搭載医療品を把握しておらず,AEDが搭載されて「いない」ことを知らなかった, 可能性もあると考えたのです。 そこで,先日所属と名前を名乗ってベトナム航空日本支社に電話突撃取材を試み, AEDの搭載の有無について尋ねました。その結果, 「ベトナムの本社に問い合わせてみなければわかりません。」 との回答でした。どうやら会社の体制にも問題がありそうです。 ベトナムには機内搭載医療品が充実し,客室乗務員が 定期的に訓練を受けているJALもANAも運航しているので,自分が 病気になった時や治療する側に回ったときのことも考えて,少々運賃が高くても 両社を利用する方が良さそうです・・・。 総合病院国保旭中央病院神経精神科 大塚 祐司


Date: Fri, 13 Oct 2006 A [eml-nc6: 1841] Re: CPR についての雑感 Aです JAL 便ハノイ行きのうち成田発月金と関空発は自社運行ですけど ホーチミンはヴェトナム航空とのcode shareですので 要注意です


[eml-nc6: 1842] Re: CPR についての雑感 Date: Fri, 13 Oct 2006 大塚さん、レスありがとうございました。 "YUJI OTSUKA" さんは書きました: > 今回の事例では,日本の法律が適用されるなら > 緊急事務管理でしょうが,救助者が医師の場合は > 緊急事務管理が適用されるとは限らないと思います。 > 勿論,最終的には注意義務が争点となり,損害賠償の > 認定に際して適用される法律による差はないとは思います。 (中略) > この結果を見る限り,米国のように先手を打って > 「よきサマリア人法」を作らなければ航空機内の救急医療が > 一気に崩壊する可能性があると考えています。 おっしゃる通り、いかなる場合であっても医師として名乗り出れば責任 の二文字が肩に重くのし掛かります。その上、使い慣れた医療器具を持 たず、薄暗い機内、周囲の雑音、野次馬…。この上ない悪条件で過失を 問われたりしたら酷でしょうね。 > 日本航空の試算では一人の客室乗務員がAEDを機内で使用するチャンスは > 123年に1度くらいであり,この試算を基に「反復継続」の意思が > なく「業」ではないと解釈され,客室乗務員のAED使用が解禁となりました。 > (三田村秀雄,飛鳥田一朗,岡田和夫,樋口範雄:座談会AEDは非医師でも > 積極的に使うべきか.カレントテラピー,21,404-415,2003.他) この数字について疑問ですが、通常、ジャンボジェットであれば20名程 の乗務員がいると思います。そこで123年に1回という数字が機内の乗務 員の誰かが救急の現場に居合わせる確率と考えると、仮に1機に20名の チームで乗務するとして、123年×20名=1機あたり2460年に1度となり、 いくら何でもこれはおかしな数字です。 一方、もし、乗員1人当たり123年に1度と仮定すると、123÷20=6.2年と なり、およそ6年に1度は乗員チームの誰かがAEDを使う計算となりま す。 これは、一般市民が一生に一度AEDを使うか使わないかの確率であろう ことに比べれば、十分に高いような気もします。まぁ乗員がAEDを使え るようにするために法令解釈を柔軟に運用する必要性もあるでしょう。 田島 康夫 拝


中川 [eml-nc6: 1871] Re: CPR についての雑感 Date: Fri, 20 Oct 2006  中川@福島ボランティアです 昨日1時間のCPRにチャレンジしました。 苦労の末、長時間CPRのコツを見つけましたので聞いて下さい。 日頃の状況をと思いコンクリートの床に薄い敷物一枚、GパンにTシャツでチャレン ジしました。 1時間の壁は想像以上に高かったです。 全身の痛みが出ましたがその中でも傷病者の頭側の手足にダメージが大きかったで す。 圧迫する下側の手 → 右手 移動の度に動かす足 → 右足  (傷病者の左に位置して行いました) 昨夜アイシングしましたが手が握れないくらい腫れています。 右膝は水ぶくれが破れて皮がずるむけてしまいました。 (ToT) Wさんは全身の筋肉痛で10日は辛かったと言っていました。 でその経験で気づいたのですが、長時間のCPRを行うには辛くなったら反対側に位置 を変え負担のかかる傷病者の頭側の手足を交互に使えば限界点を伸ばせると思いまし た とはいえ 予め1時間で止める事を前提にしたからやり通せたわけでこれが実践の場合でそれも 自分一人しかいなくて先の見えない状況だったらはたして1時間も出来たか疑問で す。 <中略> 「救助者に危険が迫ったり、重度の疲労により継続が困難になった時」は思っていた より短い時間でやってくると思いました。 ましてこれから 30:2 のCPRに変われば救助者の負担も大きくなります。 指針にも『救助者が疲労を自覚するかどうかに関わらず、胸骨圧迫の役割は2分を目 安に交代したほうがよい』と出ています。 ということで、私の突撃レポートを終わります  m(_ _)m ============================== 中 川 達 也 ==============================


Date: Sat, 21 Oct 2006 [eml-nc6: 1873] Re: 1871 CPR についての雑感  中川さん、eml-ncの皆様、市立八幡浜総合病院麻酔科 越智元郎です。 壮絶な実験をなさいましたね。中川さんからお伝えいただいたご感想から も、今回の救助者が機内でいかに厳しい経験をされたかがわかります。あ らためて敬意を払いたいと思います。


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