次に救急救命士の再教育体制ですが、同じく昨年4月の段階で、就業前の 病院実習は中国四国地方のほとんどの地域で実現していました。
生涯教育としての救急救命士の病院実習は国から推奨されていますが、中 国四国地方ではこれが実現している消防本部は鳥取県を除いては半数に過ぎ ませんでした。
特に第3次救急医療機関での病院実習はこれも国から推奨されていますが、 20〜30%の消防本部で実現しているに過ぎませんでした。これらは第三次救 急医療機関に日常的に患者を搬送している本部であり、地域内での調整はほ とんど行われてこなかったと考えられます。
第3回中国四国救友会アンケート調査より、昨年春の段階で愛媛県の病院 前救護のまとめをしますと以下のようになります。
次に、3番目の話題として、救急救命士業務の高度化に向けての行政の 動きについてまとめてみます。
まず、平成3年にできた救急救命士法では、救急救命士は医師の具体的 な指示の下に、心肺停止状態の患者に次の3つの特定行為を実施すること が認められました。それは
次に、平成7年に総務庁から出た「救急業務及び救急医療業務に関する 行政監察結果報告書 」では救急救命士による気管挿管、救急救命士の判断 による除細動の実施、心肺停止前の静脈路の確保、昇圧剤等の薬剤投与な どの特定行為の範囲の拡大が提案されました。
次に、平成9年に厚生省が出した「救急医療体制基本問題検討会報告書」 では、救急医療機関と救急隊との緊密な連携が必須とされました。しかし、 さきほど述べましたように地域救急医療対策協議会や二次医療圏ごとの協 議会はほとんど動いていませんでした。
また救急救命士制度の短期的な課題として、特定行為の指示体制や救急 救命士の病院実習の充実が求められましたが、これらについても十分とは 言えませんでした。
中長期的課題としては、救急救命士の全般的な活動について科学的な評 価・検証を行い、業務のあり方等につき検討する必要があるとされました。 しかし実際には救急救命士活動の評価・検証がなされるより先に、救急救 命士の挿管問題を契機に、救急救命士の業務拡大の道が開かれたように思 われます。
平成12年に厚生省が出した「病院前救護体制の在り方に関する検討会報 告書」では、病院前救護における医療の質を確保するためにメディカルコ ントロール体制の整備が必要と提案されました。また除細動に関してはメ ディカルコントロール体制が確立した段階では、同時進行性の指示は必要 ないとされました。気管挿管と薬剤投与は時期尚早と結論されています。