2002年12月16日、四国がんセンター麻酔科 越智元郎
目次
Date: Wed, 07 Aug 2002 12:38:38 +0900
Subject: [ACLS:2211] FW: [acls-osaka:1340] 社会復帰率?生存退院率?救命率?
From: 小林正直(大阪医大)
・・さん,広める会の皆様,ACLS大阪の皆様,呉ACLSの皆様
(中略)
G2000を読みますとsurvival rateは1分除細動が遅れるごとに7-10%低下すると書かれ
ています(I-61)。ではsurvival rateとは何なんでしょう?生存率あるいは救命率で
す。じゃ,どんな生存率なんですか?1カ月後?1年後?それはその論文の原本を読ま
ないと判りません。(中略)
41) Larsen MP, Eisenberg MS, Cummins RO, Hallstrom AP. Predicting survival
from out-of-hospital cardiac arrest: a graphic model. Ann Emerg Med.
1993;22:1652-1658.[Medline]
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小林 正直
大阪医科大学附属病院救急医療部
〒569-8686大阪府高槻市大学町2番7号
救急医療部home page; http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/index.htm
高槻ACLSコース; http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/welcomeacls.htm
our home page http://www.osaka-med.ac.jp/deps/emm/index.htm
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From: 安田康晴
Subject: [ACLS:2214] Re: 社会復帰率?生存退院率?救命率?
Date: Wed, 7 Aug 2002 19:15:51 +0900
小林先生、みなさん、こんばんは、安田@出雲消防です。
手持ち資料にこのグラフがあり縦軸にsuccess横軸にtimeとなっており、
グラフ上に
chances of success reduced 7% to 10%
each minute.
と書かれております。
ということは除細動成功率なんでしょうか?
From: 越智元郎
Date: Wed, 07 Aug 2002 23:44:40 +0900
Subject: [ACLS:2219] Re: 2214 社会復帰率?生存退院率?救命率?
安田さん、皆様、愛媛大学の越智です。
G2000 I-61に Larsenの文献から作った図がありますが、
・縦軸― probability of survival to hospital discharge after VF
・横軸― interval between collapse to defibrillation
とありますので、success rateはこの場合、予測される生存退院率と
いうことになりますね。
Date: Thu, 08 Aug 2002 00:35:30 +0900
Subject: [ACLS:2221] Re: 2214 社会復帰率?生存退院率?救命率?
From: 小林正直(大阪医大)
越智先生アドバイスありがとうございます。
しつこくて申し訳ございません。小林正直@高槻ACLSコース@大阪医科大学附属病院救
急医療部です。
> G2000 I-61に Larsenの文献から作った図がありますが、
> ・縦軸― probability of survival to hospital discharge after VF
> ・横軸― interval between collapse to defibrillation
> とありますので、success rateはこの場合、予測される生存退院率と
> いうことになりますね。
越智先生のコメントで思い出しました。上記の越智先生のコメントがほぼ正しいと思
います。論文はまだ入手できていませんが,抄録だけは斜めに読みました。その範囲
内での知識で申し訳ありませんが,あの図はこのような線が予想されるという回帰直
線なのです。越智先生の仰るとおりなんですが,受講生の方に説明できる「生のデー
タではなく」予測される計算式の直線ということになります。
Ann Emerg Med 1993 Nov;22(11):1652-8
Predicting survival from out-of-hospital cardiac arrest: a graphic model.
Larsen MP, Eisenberg MS, Cummins RO, Hallstrom AP.
Center for Evaluation of Emergency Medical Services, Emergency Medical
Services Division, Seattle.
STUDY OBJECTIVE: To develop a graphic model that describes survival from
sudden out-of-hospital cardiac arrest as a function of time intervals to
critical prehospital interventions. PARTICIPANTS: From a cardiac arrest
surveillance system in place since 1976 in King County, Washington, we
selected 1,667 cardiac arrest patients with a high likelihood of survival:
they had underlying heart disease, were in ventricular fibrillation, and had
arrested before arrival of emergency medical services (EMS) personnel.
METHODS: For each patient, we obtained the time intervals from collapse to
CPR, to first defibrillatory shock, and to initiation of advanced cardiac
life support (ACLS). RESULTS: A multiple linear regression model fitting the
data gave the following equation: survival rate = 67%-2.3% per minute to
CPR-1.1% per minute to defibrillation-2.1% per minute to ACLS, which was
significant at P < .001. The first term, 67%, represents the survival rate
if all three interventions were to occur immediately on collapse. Without
treatment (CPR, defibrillatory shock, or definitive care), the decline in
survival rate is the sum of the three coefficients, or 5.5% per minute.
Survival rates predicted by the model for given EMS response times
approximated published observed rates for EMS systems in which paramedics
respond with or without emergency medical technicians. CONCLUSION: The model
is useful in planning community EMS programs, comparing EMS systems, and
showing how different arrival times within a system affect survival rate.
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小林 正直
From: 越智元郎
Date: Thu, 08 Aug 2002 01:37:23 +0900
Subject: [ACLS:2223] Re: 2221 社会復帰率?生存退院率?救命率?
小林先生、皆様、愛媛大学の越智です。貴重な意見交換、深謝
します。
小林先生と私の間で認識の違いはないと思います。
少し論点を整理しますと、
〇Larsenのオリジナルのデータ:
多変量解析で重回帰式が得られる。
・その目的(従属)変数は 生存(退院)率
・その説明(独立)変数は 虚脱から一次救命処置までの時間
虚脱から除細動までの時間
虚脱から二次救命処置までの時間
〇 G2000での解説
Larsenの重回帰式において、生存(退院)率と虚脱から除細動
までの時間の関係(一次回帰式と考える)に注目
・縦軸=生存(退院)率 の切片(y=ax+b の b)を Larsenの
67%でなく、各種報告のうち最も高い値(虚脱後1分後の除
細動で約90%)に置いていますね。
・虚脱から一次救命処置までの時間がゼロ、また虚脱から除細
動以外の二次救命処置までの時間がゼロの場合を想定した場
合、Larsenの式では生存(退院)率は除細動が1分遅れるご
とに 1.1%低下することになりますね。でも G2000では、こ
の傾きを他の研究者の報告から、除細動が1分遅れるごとに
7〜10%ととっていますね。
結局、 G2000が Larsenの論文から取ったのは、生存(退院)
率が虚脱から除細動までの時間との一次回帰式で表されるという
ことのみだと思います。そして直線の切片と傾きは他のもっと除
細動の遅れの影響が大きく出ている研究から取っていると思いま
す。
私は G2000のみで Larsenの原著のみならず抄録にすら読んで
いませんでしたので、小林先生のご指摘は大変勉強になりました。
私の上記の解釈については間違いがありましたら、皆様のご教示
をよろしくお願い申し上げます。
小林正直(大阪医大) さんは書きました(ACLS:2221):
>A multiple linear regression model fitting the
>data gave the following equation: survival rate = 67%-2.3%
per minute to CPR-1.1% per minute to defibrillation-2.1%
per minute to ACLS, which was significant at P < .001. The
first term, 67%, represents the survival rate if all three
interventions were to occur immediately on collapse.
Date: Thu, 08 Aug 2002 09:43:43 +0900
Subject: [ACLS:2224] Re: 2221 社会復帰率?生存退院率?救命率?
From: 小林正直(大阪医大)
みなさまおはようございます。小林正直@高槻ACLSコース@大阪医科大学附属病院救急
医療部です。
越智先生,貴重な御意見深謝致します。
Larsen論文の解釈はおそらく越智先生のおっしゃる通りでしょう。生データではなく,
あくまで計算式ですね。ありがとうございました。あとはLarsenの原著まちです。
ところで,G2000の日本語版の72ページ図1で四角で囲んだ部分に「成功の可能性が1
分ごとに7-8%低下」と書かれていますが誤りで,「成功の可能性が1分ごとに7-10%低
下」が正解ですので,皆様ご注意下さい。
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小林 正直
From: 越智元郎
Date: Thu, 08 Aug 2002 10:33:31 +0900
Subject: [ACLS:2225] Re: 2224 社会復帰率?生存退院率?救命率?
小林先生、愛媛大学の越智です。
G2000日本語版の誤植「成功の可能性が1分ごとに7-8%低下」
は気付きませんでした。ご指摘有難うございました。
小林正直(大阪医大) さんは書きました:
>Larsen論文の解釈はおそらく越智先生のおっしゃる通りで
しょう。生データではなく,あくまで計算式ですね。あり
がとうございました。あとはLarsenの原著まちです。
>
>ところで,G2000の日本語版の72ページ図1で四角で囲んだ
部分に「成功の可能性が1分ごとに7-8%低下」と書かれて
いますが誤りで,「成功の可能性が1分ごとに7-10%低下」
が正解ですので,皆様ご注意下さい。
From: akira naito
Subject: [ACLS:2226] Re: 社会復帰率?生存退院率?救命率?
Date: Thu, 8 Aug 2002 02:48:44 +0100
小林先生、越智先生、皆様、こんにちは。
内藤@ロンドンです。
BLSや除細動が大事! というVFハンターとなる一番大切な問題
の議論を提起されて、とっても嬉しいです。
専門家の先生方に対して見当違いな発言になりそうですが、少し
仲間に入れさせてください。
> 〇 G2000での解説
> Larsenの重回帰式において、生存(退院)率と虚脱から除細動
> までの時間の関係(一次回帰式と考える)に注目
>
> ・縦軸=生存(退院)率 の切片(y=ax+b の b)を Larsenの
> 67%でなく、各種報告のうち最も高い値(虚脱後1分後の除
> 細動で約90%)に置いていますね。
>
> ・虚脱から一次救命処置までの時間がゼロ、また虚脱から除細
> 動以外の二次救命処置までの時間がゼロの場合を想定した場
> 合、Larsenの式では生存(退院)率は除細動が1分遅れるご
> とに 1.1%低下することになりますね。でも G2000では、こ
> の傾きを他の研究者の報告から、除細動が1分遅れるごとに
> 7〜10%ととっていますね。
RESULTS: A multiple linear regression model fitting the
data gave the following equation: survival rate = 67%-2.3% per minute to
CPR-1.1% per minute to defibrillation-2.1% per minute to ACLS, which was
significant at P < .001. The first term, 67%, represents the survival rate
if all three interventions were to occur immediately on collapse. Without
treatment (CPR, defibrillatory shock, or definitive care), the decline in
survival rate is the sum of the three coefficients, or 5.5% per minute.
読み間違いかもしれませんが、最後の部分から、CPRも除細動もACLS
もしなかったときには、2.3+1.1+2.1=5.5%ずつ、生存率が減っていく
とのことで、除細動が1分遅れる=何もしない とすると5.5% ととっている
ように思います。いかがでしょうか?
私も・・さんと同じように、復帰率と退院率、救命率をあまり意識せず
に覚えていました。
いい機会を与えていただいて、Science direct でPredicted survivalと
Cardiac arrestで引っ掛けて少し検索してみた所、他にも面白そうなも
のをいくつか見つけました。そのうち三つを紹介します。
Survival models for out-of-hospital cardiopulmonary resuscitation from the
perspectives of the bystander, the first responder, and the paramedic (2001
Resuscitation, 51, 113-122)
の方は、直線でなく、対数にして生存率を計算しようとしています。
初めの心電図が除細動ができるVFで除細動を始めるまでの時間と生存率で作ったグラ
フの切片は75%でした。10分後はほぼ10%くらいに読め、対数関数ですがほぼ直線に見
えるので、一分ごとに7.5%くらいずつ減少している気がします。。。。
Prevention of deterioration of ventricular fibrillation by basic life
support during out-of-hospital cardiac arrest (2002 Resuscitation 54,
31-36)
は、初めの記録がVFである時とAsystoleである時の可能性を見たもので、記録を始め
るまでの時間が長くなると、当然ですけどVFである率 は下がり、Asysである率は上
がるのですけど、BLSがあるとその率を減少できるという、BLSの有効性を示したもの
になっています。(心停止のときすぐに測ったとしてVFである可能性は75%
(Asystoleは10%)20分後にはほぼ15%まで下がるのをBLSありだと50%くらいまで保て
る)
Predicting survival, in-hospital cardiac arrests resuscitation survival
variables and training effectiveness (1997 Resuscitation 35, 17?22)
直後の救命率、24時間の生存率、退院生存率の三つを分けて統計を取っており、
(ACLS)トレーニングにより率を改善するというものです。区分けの一例としてみても
その数の比を見れて面白いなあと思いました。
G2000が手元になく、片手間のfull textをダウンロードできる範囲での検索だったの
で Resuscitationからばかりになり、もっと大事なものがあるだろう! と言われそ
うですが、他にも話の種になりそうな面白い論文がありましたら教えてください。
よろしくお願いいたします。
(中略)
-------------------------
Akira Naito M.D.
Research fellow, PhD student
Department of Cognitive Neuroscience and Behaviour
& Department of Immunology
Imperial College London
From: 越智元郎
Date: Sat, 10 Aug 2002 09:44:10 +0900
Subject: [ACLS:2243] Re: 2226 社会復帰率?生存退院率?救命率?
ロンドンの内藤先生、皆様、愛媛大学の越智です。
(中略)
〇
>RESULTS: A multiple linear regression model fitting the
>data gave the following equation: survival rate = 67%-2.3% per minute to
>CPR-1.1% per minute to defibrillation-2.1% per minute to ACLS, which was
>significant at P < .001. The first term, 67%, represents the survival rate
>if all three interventions were to occur immediately on collapse. Without
>treatment (CPR, defibrillatory shock, or definitive care), the decline in
>survival rate is the sum of the three coefficients, or 5.5% per minute.
>
>読み間違いかもしれませんが、最後の部分から、CPRも除細動もACLS
>もしなかったときには、2.3+1.1+2.1=5.5%ずつ、生存率が減っていく
>とのことで、除細動が1分遅れる=何もしない とすると5.5% ととっている
>ように思います。いかがでしょうか?
→ はい上記の記載もありますね。ただ「除細動が1分遅れる=何も
しない」の面を強調することは G2000の趣旨からずれると思い
ます。 G2000は(心原性心停止では)一次救命処置を早期に的
確に実施することよりも早期除細動の方が、転帰に及ぼす影響
が大きいと考えていると思います。
それゆえ
・何もしない(一次救命処置も除細動も二次救命処置も)時間
が1分経過するごとに、予測生存(退院)率が合計5.5%ずつ
低下するという統計解説を示しつつも
より強調しているのは
・一次救命処置と二次救命処置の時間差がゼロ分だとしても、
虚脱から除細動までの経過時間の遅れにより、遅れ1分ごと
に予測生存(退院)率が・・分ずつ低下してゆく、という結
果だと思います。
>私も・・さんと同じように、復帰率と退院率、救命率をあまり意識せず
>に覚えていました。
→ 病院に収容される心肺停止患者は以下の経過をとります。
・心拍再開せず
・心拍再開したが再び心停止に陥り、入院に至らず死亡
・心拍再開し、入院したが、再び心肺停止に陥り死亡
・心拍再開し、入院したが、重篤な神経学的後遺症(植物状態
など)あり
・心拍再開し、入院し、神経学的後遺症は軽く結局退院
上の4つがいかに多く、5つめがいかに稀であるかは、皆様
実感しておられることと思います。
退院できる典型パターンが
・初期心電図VF―市民CPRあり―早期除細動―現場で心拍再開?
―早期二次救命処置・・ であることはよく知られています。
結局、早期除細動の目的が「生存退院」であり、統計処理の転
帰評価基準として生存退院あるいは神経学的後遺症の程度を用
いることは有意義だと思います。
〇
>いい機会を与えていただいて、Science direct でPredicted survivalと
>Cardiac arrestで引っ掛けて少し検索してみた所、他にも面白そうなも
>のをいくつか見つけました。そのうち三つを紹介します。
>
>Survival models for out-of-hospital cardiopulmonary resuscitation from the
>perspectives of the bystander, the first responder, and the paramedic (2001
>Resuscitation, 51, 113-122)
>の方は、直線でなく、対数にして生存率を計算しようとしています。
>初めの心電図が除細動ができるVFで除細動を始めるまでの時間と生存率で作ったグラ
>フの切片は75%でした。10分後はほぼ10%くらいに読め、対数関数ですがほぼ直線に見
>えるので、一分ごとに7.5%くらいずつ減少している気がします。。。。
→ 3つの仮定があり、3つの疑問がありますね。Larsenや G2000
以外の各種の報告を総合して考える必要がありそうですね。
・生存(退院)率は 虚脱から除細動までの時間の一次回帰式
で表される のかどうか
・上記一次回帰式の切片(虚脱の瞬間に除細動した場合の生存
(退院)率)が・・・であること
・上記一次回帰式の傾き(除細動の遅れ1分ごとに生存(退院)
率が・・%ずつ低下するというこ
>Prevention of deterioration of ventricular fibrillation by basic life
>support during out-of-hospital cardiac arrest (2002 Resuscitation 54,
>31-36)
>は、初めの記録がVFである時とAsystoleである時の可能性を見たもので、記録を始め
>るまでの時間が長くなると、当然ですけどVFである率 は下がり、Asysである率は上
>がるのですけど、BLSがあるとその率を減少できるという、BLSの有効性を示したもの
>になっています。(心停止のときすぐに測ったとしてVFである可能性は75%
>(Asystoleは10%)20分後にはほぼ15%まで下がるのをBLSありだと50%くらいまで保て
>る)
→ BLSはどの初期心電図の患者に対しても転帰改善効果があるで
しょうね。またBLSがあれば初期心電図のVFの率を上昇させる
結果になるのでしょうね。
数年前、わが国の病院外心肺停止患者への一次救命処置実施
率は20%を大きく下回っていました。昨年は30%にとどこう
としています。
http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/m5chusi3.htm
市民のCPR実施率の上昇はVFの頻度をあげ、早期通報により除
細動の有効性もあげることになるでしょうね。
>Predicting survival, in-hospital cardiac arrests resuscitation survival
>variables and training effectiveness (1997 Resuscitation 35, 17?22)
>直後の救命率、24時間の生存率、退院生存率の三つを分けて統計を取っており、
>(ACLS)トレーニングにより率を改善するというものです。区分けの一例としてみても
>その数の比を見れて面白いなあと思いました。
→ 二次救命処置トレーニングが院内心停止患者においても転帰
改善効果があるというデータには力づけられますね。
そしてもう一度出発点にもどりますが、 G2000は( G1992も)
・通報―市民CPR―早期除細動―早期二次救命処置という chain
of survival の確立が病院外心停止患者の転帰を改善する
と考えていること
さらに強いて言えば、 G2000(ILCOR1997年)は
・早期除細動にこそ、転帰改善の最大の鍵であり、努力目標
だと考えている
ということが言えると思います。
(後略)
From: akira naito
Subject: [ACLS:2247] Re: 2243 社会復帰率?生存退院率?救命率?
Date: Sun, 11 Aug 2002 09:02:06 +0100
越智先生、皆様 こんにちは。
内藤@ロンドン です。
丁寧なレスを頂き、ありがとうございます。
> >読み間違いかもしれませんが、最後の部分から、CPRも除細動もACLS
> >もしなかったときには、2.3+1.1+2.1=5.5%ずつ、生存率が減っていく
> >とのことで、除細動が1分遅れる=何もしない とすると5.5% ととっている
> >ように思います。いかがでしょうか?
>
> → はい上記の記載もありますね。ただ「除細動が1分遅れる=何も
> しない」の面を強調することは G2000の趣旨からずれると思い
> ます。 G2000は(心原性心停止では)一次救命処置を早期に的
> 確に実施することよりも早期除細動の方が、転帰に及ぼす影響
> が大きいと考えていると思います。
>
> それゆえ
> ・何もしない(一次救命処置も除細動も二次救命処置も)時間
> が1分経過するごとに、予測生存(退院)率が合計5.5%ずつ
> 低下するという統計解説を示しつつも
>
> より強調しているのは
> ・一次救命処置と二次救命処置の遅れがゼロ分だとしても、
> 除細動の遅れにより、遅れ1分ごとに予測生存(退院)率が
> ・・分ずつ低下してゆく、という結果だと思います。
そうですね。他のBLSやACLSでの薬液の投与があっても、除細動が行わ
れないと1.1%ずつ予測生存率が低下する。と言うことですね。
BLSやACLS内の他の処置の方が単独でない場合に 2.3 or 2.1% と
予測生存率の低下率が除細動よりも大きいのは、興味深いです。
少しでも早い時期の除細動の重要性と一見反しているように見えますが
あくまでも計算上での数値で、実際に除細動しか行わないことはなく
BLSの「鎖」「連携」の上での除細動等の処置。という点を強調するのに
使えるでしょうか?
> >私も・・さんと同じように、復帰率と退院率、救命率をあまり意識せず
> >に覚えていました。
>
> → 病院に収容される心肺停止患者は以下の経過をとります。
> ・心拍再開せず
> ・心拍再開したが再び心停止に陥り、入院に至らず死亡
> ・心拍再開し、入院したが、再び心肺停止に陥り死亡
> ・心拍再開し、入院したが、重篤な神経学的後遺症(植物状態
> など)あり
> ・心拍再開し、入院し、神経学的後遺症は軽く結局退院
>
> うえの4つがいかに多く、5つめがいかに稀であるかは、皆様
> 実感しておられることと思います。
統計を取るときには、時間軸で分けているものが多いように思っていました。
結果的に上から2つずつまとめて、最後の5つ目とで、3つに分けて
考えてると、直後、24時間、退院 の3つの区分とほぼ等しくなると考えても
よろしいものでしょうか? (実際にインストラクトするときの説明で)
> 退院できる典型パターンが
> ・初期心電図VF―市民CPRあり―早期除細動―現場で心拍再開?
> ―早期二次救命処置・・ であることはよく知られています。
> 結局、早期除細動の目的が「生存退院」であり、統計処理の転
> 帰評価基準として生存退院あるいは神経学的後遺症の程度を用
> いることは有意義だと思います。
ありがとうございます。
> 〇
> >いい機会を与えていただいて、Science direct でPredicted survivalと
> >Cardiac arrestで引っ掛けて少し検索してみた所、他にも面白そうなも
> >のをいくつか見つけました。そのうち三つを紹介します。
> >
> >Survival models for out-of-hospital cardiopulmonary resuscitation from the
> >perspectives of the bystander, the first responder, and the paramedic (2001
> >Resuscitation, 51, 113-122)
> >の方は、直線でなく、対数にして生存率を計算しようとしています。
> >初めの心電図が除細動ができるVFで除細動を始めるまでの時間と生存率で作ったグラ
> >フの切片は75%でした。10分後はほぼ10%くらいに読め、対数関数ですがほぼ直線に見
> >えるので、一分ごとに7.5%くらいずつ減少している気がします。。。。
>
> → 3つの仮定があり、3つの疑問がありますね。Larsenや G2000
> 以外の各種の報告を総合して考える必要がありそうですね。
>
> ・生存(退院)率は 虚脱から除細動までの時間の一次回帰式
> で表される のかどうか
> ・上記一次回帰式の切片(虚脱の瞬間に除細動した場合の生存
> (退院)率)が・・・であること
> ・上記一次回帰式の傾き(除細動の遅れ1分ごとに生存(退院)
> 率が・・%ずつ低下するということ
(75-10)/10= 6.5% per minute の計算間違いでした。訂正します。
3つの仮定は、一つ目の仮定が正しいとした時には、種々のリサーチの
結果をメタアナライシスすることで、切片や傾き(もしくは対数関数の係数)
を割り出すことができるように感じています。(実際にメタアナライシスや、
その計算方法は知りませんけど・・・)
しかし、3つに分けて考慮するのは 非常に整理しやすくわかりやすい
ですね。ありがとうございます
> >Prevention of deterioration of ventricular fibrillation by basic life
> >support during out-of-hospital cardiac arrest (2002 Resuscitation 54,
> >31-36)
> >は、初めの記録がVFである時とAsystoleである時の可能性を見たもので、記録を始め
> >るまでの時間が長くなると、当然ですけどVFである率 は下がり、Asysである率は上
> >がるのですけど、BLSがあるとその率を減少できるという、BLSの有効性を示したもの
> >になっています。(心停止のときすぐに測ったとしてVFである可能性は75%
> >(Asystoleは10%)20分後にはほぼ15%まで下がるのをBLSありだと50%くらいまで保て
> >る)
>
> → BLSはどの初期心電図の患者に対しても転帰改善効果があるで
> しょうね。またBLSがあれば初期心電図のVFの率を上昇させる
> 結果になるのでしょうね。
>
> 数年前、わが国の病院外心肺停止患者への一次救命処置実施
> 率は20%を大きく下回っていました。昨年は30%にとどこう
> としています。
> http://plaza.umin.ac.jp/~GHDNet/02/m5chusi3.htm
>
> 市民のCPR実施率の上昇はVFの頻度をあげ、早期通報により除
> 細動の有効性もあげることになるでしょうね。
>
> >Predicting survival, in-hospital cardiac arrests resuscitation survival
> >variables and training effectiveness (1997 Resuscitation 35, 17?22)
> >直後の救命率、24時間の生存率、退院生存率の三つを分けて統計を取っており、
> >(ACLS)トレーニングにより率を改善するというものです。区分けの一例としてみても
> >その数の比を見れて面白いなあと思いました。
>
> → 二次救命処置トレーニングも転帰改善効果があるというデータ
> には力づけられますね。
>
> そしてもう一度出発点にもどりますが、 G2000は( G1992も)
> ・通報―市民CPR―早期除細動―早期二次救命処置という chain
> of survival の確立が病院外心停止患者の転帰を改善する
> と考えていること
>
> さらに強いて言えば、 G2000(ILCOR1997年)は
> ・早期除細動にこそ、転帰改善の最大の鍵であり、努力目標
> だと考えている
>
> ということが言えると思います。
賛成です。
> それでは内藤先生、皆様、引き続き意見交換をよろしくお願い致します。
> (★内藤先生、今回の意見交換を救急医療メーリングリストへ転送させて
> いただきたいのですが、ご許可いただけますでしょうか。
どうもありがとうございます。若輩者の専門外の人間の意見ですが、何かの
参考になれば幸いです。
今後も引き続き、ご指導よろしくお願いいたします。
内藤。