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理事会通信H2002

理事会通信H2002

 平成20年2月発行号のダウンロード

PDFファイル(A4×6頁、68kb)

 事務局より

2005年度より、年に一回理事会通信を発行しています。各地区各分野から選ばれた公衆衛生のエキスパートである理事の先生方から会員のみなさまへのメッセージをお届けします。ぜひ、理事会通信を通して、東海公衆衛生学会ならびに理事の先生方の活動を身近に感じていただけたら幸いです。

 平成19年度各理事からのメッセージ

医療制度改革は公衆衛生活動への追い風か(再び) 

東海公衆衛生学会理事長 名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野 教授 徳留 信寛

前回、医療制度改革に対する私見を述べたが、この4月から特定健康診査・特定保健指導が開始されるので、再度、考えてみたい。

 わが国では超高齢社会を迎え、国民医療費が高騰し、社会保障制度が崩壊している。それに対処するため医療制度改革が推進されている。それは「安心・信頼の医療の確保と予防の重視」、「医療費適正化の総合的な推進」、「超高齢社会を展望した新たな医療保険制度体系の実現」の3本柱からなる。

 第1の柱のなかで、予防重視の観点から、生活習慣病対策の推進体制が構築され、それには.瓮織椒螢奪シンドローム(内臓脂肪症候群)の概念を導入し、「予防」の重要性の理解を図る国民運動を展開し、∧欷閏圓量魍笋鯡棲硫修掘被保険者・被扶養者に対する特定健康診査・特定保健指導を義務付け、7鮃増進計画の内容を充実し、運動、食生活、喫煙などに関する目標を設定することが規定されている

 この施策は健康増進・疾病予防を目的とする公衆衛生活動にとって追い風であり、心強いプログラムのように思われる。対人保健活動のうち、健康増進・疾病予防(特に、がん、心疾患、脳血管疾患、糖尿病などの生活習慣病の予防)は肝要であり、その生活習慣病対策スローガンは「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後に薬」とされ、一次予防の重要性を示唆している。ますます、予防医学・公衆衛生啓発活動は必須であり、公衆衛生従事者の責務は大きい。

 しかし、これは医療費抑制をめざす市場原理に基づくものではないか、国の十分な予算的サポートは配慮されているか、都道府県・市町村ないし健康保険者への丸投げではないか、特に、特定保健指導者の養成・資質向上とマンパワーの確保は十分になされているか、現場が混乱するほどプログラム推進が拙速ではないか、国民の生活習慣への国家の介入になるのではないか、画一化ないしハラスメントにつながるのではないか、腹囲を前提条件とするメタボ診断基準に問題があるのではないかなど検証すべき点が多い。

 われわれ公衆衛生従事者には、何が本当に人びとの安全・安心に奉仕し、生活の質・幸福の追求に貢献し、自己実現をサポートするものであるのか、深い洞察と判断に基づき、医療制度改革およびヘルスプロモーション計画への参画が求められている。

直接人に会うということ

東海公衆衛生学会 副理事長 さきはひ研究所 所長 清水 弘之

前号の本欄で、東海公衆衛生学会は、研究結果を議論するための場というより、会員相互の情報交換・鼓舞の場としての意義があるのではないか、と書いた。
 しかし、多くの情報が簡単に手に入る現代、わざわざどこかへ出かけて行く必要はないかもしれない。パソコンの前に座ってキーワードを入力するだけで、周りの人に聞くより早く、世界の新しい情報が分かる。かなりの疑問は解けてしまう。それなら、なぜ、相集う価値があるのか。

 その分野で活躍する人に直接会って話す、聞く、ということで、パソコン画面より大きなインパクトが得られるのではないか。知識・情報以外に醸し出す何らかの魅力を含めて、“人”の存在は大きい。実際に比較した調査結果を持っているわけではないが、そう思う。こんな薄弱な根拠ではあるが、こういう“情報時代”であるからこそ、地域の公衆衛生関係者が一堂に会する機会があってもよい、と思っている。

名古屋市のエイズ対策

名古屋市千種保健所 所長 明石 都美

7(平成10)、18(平成12)、48(平成14)、51(平成16)、82(平成18)、この数字は、名古屋市におけるエイズ患者、HIV感染者の報告数である。感染経路別では平成18年12月末現在で、総数429名中、同性間の性的接触によるものが239名となっている。過去3年間(平成16〜18)の報告数の平均割合から人口10万対の報告数で表すと、愛知県で0.822、全国で0.799、東京都は3.018となっている(参考に結核の罹患率は18年度全国で10万対20.6)。全国の保健所では、エイズ対策の一つの柱である早期発見のため、無料匿名のHIV検査を実施しているが、受検者数、相談者数が伸びなやんでいる。現在、名古屋市ではエイズ対策検討会をたちあげ、効果的な検診方法(夜間、休日検査、即日診断の効果)や、啓発活動について検討をしているところであるが、何かとハードルの高い青少年への関わり、同性愛の方々への呼びかけ方法等々、なかなかクリーンヒットになりそうな案が浮かばないで苦労している。
 この課題に芽が出て育てば、性教育、ボランテイアの育成、保健所の柔軟な仕事の仕方など、今までの様々な課題にも芽が出るのでは・・と思わせてくれる程の課題ではある。 
 学会の会員の皆様からも具体的なご意見を頂ければ幸いです。

愛知県健康福祉部健康担当局 五十里 明

昨年は、全国各地で食品偽装事件が相次ぎ、国民の食に対する信頼が大きく揺らいだ一年でもありました。食品衛生の観点からは問題がない場合でも、偽ることの企業の姿勢、倫理観が問われたものと思います。我々衛生行政に携わるものとして、常に情報公開に努めるとともに、永年継続されております一つひとつの事業について、時代に合っているか、過去からの慣習に流されていないか等といった観点から検証する必要性を感じております。
 一方、近年は、救急医療や医療事故等、医療において不確実性や限界がある中で、白黒付けようとするマスコミの格好の題材に取り上げられることが多くなってまいりました。専門職である以上、科学的根拠を常に求め、慢心することなく、真摯に取り組む姿勢の重要性を痛感しております。
 東海公衆衛生学会の会員の皆様の一層のご活躍を祈念します

愛知県中央児童・障害者相談センター長  犬塚 君雄

愛知県中央児童・障害者相談センターに異動して間もなく2年が経とうとしています。相変わらず児童虐待対応に忙しく、日々薄氷を踏む思いで過ごしています。
さて、世間では団塊の世代が大量退職することによって様々な問題が起こるであろうと予測されたいわゆる2007年問題については、最近あまり耳にしませんし、あまり重要視されていないように思われます。

 行政職員は医師などの一部の職種を除いて60歳定年となっており、実質的には今年の3月末をもって退職される方々から、この2007年問題が始まります。愛知県も例外ではなく、特に衛生行政や福祉行政に従事している薬剤師、獣医師、社会福祉職などの専門職員の大量退職が続き、長年にわたって蓄積されてきた知識や経験の継承が困難になりつつあります。「公衆衛生はscienceでありartである」といわれており、知識や経験の継承は極めて重要です。いろいろな手だてを講ずる必要があり、本学会を通じ、皆さんのお知恵を拝借したいと考えております。

スクリーニングのあとにあるべきもの

多治見市保健センター 多治見市民病院副院長・眼科部長 岩瀬 愛子

特定検診が動き出す2008年4月。様々なところで、時には自己流にその対応が検討されている。今こそ、公衆衛生学の出番であろうと思ったけれども、一向に、それぞれの場への働きかけが見えてこないのはなぜだろう?健康を維持しようとする人への指導を数式で示せば、A(B+C+D+・・・)のBは医療機関、Cは保健の場、Dは検診機関とすれば、すべてに影響力をもって指導する立場、すなわち、すべての項にかかるのはAすなわち公衆衛生学ではないのか?これこそ、この学問の存在価値を世に示す時ではないのだろうか?どのように指導してどのような結果が出れば、その個人にとってどのように健康が維持されるのか?得意の「根拠」をもって臨床の場や保健の場を指導してほしい。スクリーニングはその後の疾患の発生の阻止、進行の予防の為にこそある。いたずらに疾患疑いで通院する人を増やすためにあるわけではない。スクリーニングは実施したあとが大切なのだから。

三重県立看護大学 佐甲 隆

三重県立看護大学では、二年生に保健学として、公衆衛生学とヘルスプロモーションについて、私が講義しています。が、この年次では、「公衆衛生」というものが難解で、ピンとこないようです。それも、無理もない話で、臨床経験も、社会経験も乏しい彼らに理解を求めるほうが、酷かもしれません。「公衆衛生」という社会性の強い学問は、「基礎医学・看護学」というより、「応用医学・看護学」の性格を持っていることを考えると、臨床実習などを終えてから、講義した方が効果的かも知れません。それにつけても看護大学での統合教育の困難と、かつての保健師学校への郷愁を感じているのは、私だけでしょうか? なお、小生は昨年10月より、当大学の地域交流研究センター長の辞令も拝命しました。より一層、現場の看護職の皆さんの研究支援や、研究協働などを進めていくつもりです。また大学のヘルスプロモーション化も少しずつ動きはじめています。

静岡県 東部保健所 所長 鈴木 輝康

今年、静岡市で東海公衆衛生学会が開催されます。昨年度より、日本公衆衛生学会から地域の生涯学習・研修企画活動に対する助成があり、地方会開催のお墨付きが付与されることになりました。各分野関係者の協力を得て、会長の青木一雄浜松医科大学名誉教授を中心に、実行委員会を形成し、「新しい生活習慣病対策」を中心に誠意プログラムを練っているところです。

 現場では、常時、感染症対策、特定健診、医療安全対策、医療体制・救急体制整備など政策的な業務に翻弄されていますが、市町からの要望もあり、長期の希望ある、健全な社会育成のために、街づくり計画や、市町人口推定、日本人のみならず、海外からの労働者子女を含む就学前教育プログラムの開発にも力を入れています。今年もよろしくお願いいたします。


浜松医科大学医学部看護学科 教授 巽 あさみ

保健師助産師看護師学校養成所指定規則等の一部を改正する省令が公布され、当大学でも平成21年4月からの新カリキュラム作成に忙しい。改正の主な理由として、保健師に対して虐待予防や介護予防等に加え、生活習慣病予防としての特定保健指導等における予防活動に明確な結果が期待されていること、最近の新卒保健師の実践能力低下が指摘されていること等が挙げられる。

 主な改正点は、地域及び学校保健、産業保健を含んだ公衆衛生看護活動に焦点を当てること、保健福祉行政論、臨地実習をそれぞれ1単位増やし、総計を従来の21単位以上から23単位以上にして内容を強化している。しかし、現実には学生側にも、将来看護師希望だとして地域看護学に興味が薄い者がいることや、需要と供給のバランスから全員に保健師国家試験資格を与える必要性について疑問がある。
 今後は統合カリキュラムや教育年限延長について議論が活発になってくるだろう。

一次予防における大学と現場の連携の重要性

東海公衆衛生学会 広報委員会委員長 安城更生病院 健康管理センター 豊嶋 英明

私は昨年春、名古屋大学を定年退職し、安城更生病院の健康管理センターに勤めております。退職前と同じ一次予防の仕事に携わっていますが、大学では研究を優先していたため、対象集団全体での予防の効率あるいは効果という視点で物事を見ており、対象者一人ひとりの事象には疎い面がありました。逆に、現在は対象者と絶えず1対1の立場での対応が主であり、ともすると全体を見失いがちになります。このような現場に身を置くと大学のような全体像を明らかにする研究施設の重要性が身に沁みて分かり、両者が手を携えることが予防を成功させる鍵だと実感します。
 ところで、名古屋大学では公衆衛生学分野の後任ポストが未だに埋まっていません。地域の諸問題解決の相談相手としても重要な立場にあるポストの空白期間は出来るだけ短くし、一刻も早い人事の決定を希求しております。


岐阜大学大学院医学系研究科疫学・予防医学分野 教授 永田 知里

先日もニュースで メタボ健診:自治体6割「専業主婦などに対応できない」との見出しで、4月から始まる特定健診・保健指導についての話題が取り上げられていました。特定健診・保健指導の医療保険者への義務付けは、本年度の東海公衆衛生学会総会や日本公衆衛生学会総会でも討論され、私もこれは大学で呑気に研究にかまけてはいられない事態と感じております。
この制度について賛否両論あることは承知していますが、前掲のニュース報道でも伺えるよう、いわばお上の決断に地域保健の担い手が悲鳴をあげていることは確かです。両者を引っ括めて公衆衛生行政と言うならば、内にいかに対立の構図を含むものであっても、結局は「公衆衛生」として評価され責任を問われるのかと懸念が抱かれます。

学会加入のメリット

岐阜県西濃保健所 日置 敦巳

理事会に参加させていただくようになって,事務局などで学会を支えていただいている先生方のご尽力に,ひたすら頭の下がる思いをしています。さて,理事会でいつも頭を悩ませていることは,学会の活性化方策,学会加入によるメリットです。東海公衆衛生学会の会員は,主として,研究者と行政の人間から構成されます。研究者は,ひたすら業績をあげるということではなく,地域の公衆衛生に寄与しようと考えておられる方々が,行政の人間は,サラリーマンから一歩踏み出して,技術者としてのレベルアップを目指している人たちが会員となっておられると思います。目的が少しでも達成できれば,その人にとって学会は有意義といえるでしょう。でも,それだけでは学会の規模拡大は図れません。情報,支援,人脈,資格など,皆さんが学会に何を期待されるのか,さらに会員増を図るためにも,皆さんからのご意見をお寄せください。

特定健診・保健指導始まる

(財)愛知県健康づくり振興事業団 藤岡 正信

いよいよこの4月から、新しい健診制度が開始されます。私どもは受託機関として、着々と準備を進めていますが、新聞紙上では未だに判定基準の問題、お腹の周囲の大きさだけが注目を浴びているようです。今回の改正の本質は、統一した基準で健診結果を見る、リスク者に保健指導を確り行う、指導効果を後々評価する、その結果を次の健診・健康管理に繋げていくことだと思います。

 この方法は、公衆衛生の基本的な手法となんら変わりないと考えます。国から言われたからやるのではなく、前向きにチャレンジしましょう。また、保健所や保健センターには、健診以外にも日々の業務で得られた情報が多数蓄積されています。この際それらをまとめ、当学会でその成果を発表し、同じ仲間と議論してみませんか。きっと良い結果が得られると思います。

三重大学大学院医学系研究科公衆衛生・産業医学分野 教授 横山 和仁

 早いもので三重大学に着任してから丸5年になろうとしているところです。この間、文部科研費や厚生労働科研費で、化学物質の健康影響の個体差、発展途上国 における環境汚染の生殖影響、メンタルヘルス領域での職域・地域の連携のあり方などについて研究を進めてきました。また、概算要求による地域医療再生プロ ジェクト事業を進め、20年度からは「特殊要因経費」を受けて職域・地域保健医療支援事業を展開する予定です。こうした活動に対する皆様のご協力とご支援 に改めてお礼申し上げます。一方では、三重県には三重県公衆衛生協会という、県内の保健福祉担当者などを中心とする団体があり、年に1回学会を開いております。地域の実践に根ざした研究にも関わりながら、東海地域の公衆衛生の発展に努めるつもりです。どうかよろしくお願いします。

 事務局通信 

その1

 最近よく耳にする「やさしい」という言葉。地球にやさしい、人にやさしい、など、エコ生活への取組みが重要課題となる中、やさしさの持つ真の意味を問い直しながらも大切な事だと実感します。東海公衆衛生学会事務局でのお手伝いは、会員の皆様と直接お話しさせて頂く機会はほとんどありませんが、たとえ顔の見えない事務作業であっても、人と人を繋ぐやさしい気持ちを忘れずに務めていきたいと思っています。
(樋口慶子)

その2 社会が激変する中で

 名大より事務局を引き次いで早5年目に。その間の社会情勢の変化は驚くばかりです。特に医療に関しては、産科・小児科・救急医療の危機的状況が連日のように報道されますが、これらの科に限らず現場は厳しさを増しており、悲痛な声を耳にします。

 わが国の医療・福祉サービスの在り方について、すべての国民が真剣に考え、議論し、改めるべき時が来ていると感じます。しかしながら多くの人は健康で、改めて医療について考える必要性を感じておらず、一方現場の医療者は目の前の患者の治療に文字通り手いっぱいで、将来の医療について語る余裕はありません。
 公衆衛生に関わる私たちこそ、今、国民と医療、行政とをつないで、必要な情報や議論の場を提供し、未来を切り拓くことができるのではないか。

 東海4県の公衆衛生関係者が集う本学会が、是非活発な意見・情報交換、議論の場として多くの方に役立てていただければと願います。(事務局 小嶋 雅代)

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