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第51回大会記事の変更点

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!!第51回東海公衆衛生学会学術大会を振り返って
!佐橋 政信(多治見市保健センター)
 このたび、第51回東海公衆衛生学会学術大会が岐阜県多治見市において開催され、無事終了したことに厚く御礼申し上げます。併せて、本学術大会の概要を報告させていただきます。
今回の学術大会は、テーマを、「公衆衛生における研究と行政の連携」とさせていただきました。私ども地方都市は、地方分権が進む中、県や市町村における公衆衛生活動について大学等の研究者からのご指導、或いは、行政の実践者同士の交流を進めていかなければ、充分な成果は期待できないため、このようなテーマにさせていただきました。
今回、地方都市である多治見市での開催ということで、運営上の心配をしておりましたが、理事長の徳留信寛先生をはじめとする関係各位の絶大なご支援とご協力を得て開催できたことに深く感謝申し上げます。(大会長;西寺雅也多治見市長、学術担当;岐阜大学大学院医学研究科疫学・予防医学分野、運営担当;多治見市保健センター、実行委員会方式;委員長 清水弘之)  
今回、初めての試みとして、東海4県の約360の保健所、保健センターにも学術大会発表でのご案内をしましたが、応募が少なかったのは少し残念に思います。
多治見市での開催で、交通事情が悪いため、当日の参加者数を心配しましたが、合計166名の参加者を迎えることができました。内訳としては、会員123人、非会員43人。会員の内訳は、愛知県48人、岐阜県43人、三重県8人、静岡県4人、名古屋市20人。職種としては、医師48人、保健師29人、学生6人、教育職8人、その他歯科医師、栄養士、薬剤師等でした。
今回の学術大会では、一般口演発表前に、教育講演として滋賀医科大学医学部福祉保健医学講座の上島弘嗣教授による「行政における保健事業の評価」について、シンポジウムの基調講演では厚生労働省大臣官房の瀬上清貴参事官による「公衆衛生における研究と行政の連携」についてご講演をいただきました。シンポジウムでは、「公衆衛生における研究と行政の連携」をテーマとして、東海4県から、「公衆衛生研究者が活動実践者に望むこと」、「公衆衛生活動実践者が研究者に望むこと」、「行政における公衆衛生実践者の立場」、「大学と行政とが連携した具体例」について4人のシンポジストからご報告していただきました。時間の都合上、意見交流の時間が少ししか取れませんでしたが、有意義なシンポジウムになりました。
午前の部の一般口演では、予定数の24題の発表があり、2つの会場で活発な議論をいただきました。午後の部には、今回の新たな試みとして示説発表12題の発表をいただき、時間延長に至る議論をいただきました。学術大会の2部として、市の主催で市民や学術大会参加者対象の講演会を開催し、講師としては学会理事長の徳留先生にお願いし、「生活習慣病としてのがんの予防」のテーマで講演をいただき、約100名の聴講者がありました。
今回は、資金面での工夫として、賛助費を募り、2団体と10企業から賛助をいただき、財政的には予定の範囲内で開催できました。最後に、多治見市において開催された学術大会を機に、テーマにあるますように公衆衛生分野において研究者と行政実践者が互いに連携する大会となったことを確信し、学術大会のお礼並びに大会報告とさせていただきます。


!!教育講演「行政における保健事業の評価について」
!報告;前岐阜大学疫学・予防医学分野教授 清水 弘之
評価は定量的に行う方が理解しやすく、そのためにはある種の指標を用いるのがよいとして、次の3段階に分けた保健指標を紹介された:1)死亡率・罹患率・有病率、2)疾病発症要因を数量化したもの(喫煙率、肥満者率など)、3)知識・態度・行動を数量化したもの。このうち1)は大きな人口規模でないと安定した数値が得られないが、2)と3)は小さな市町村でも評価可能であるとして、高血圧、高コレステロール血症、喫煙、飲酒などを例にあげ、評価の実例を示された。
 また、行政が対策を考えるとき、個人に対する保健指導がある一方で、たばこポイ捨てに対する罰則の制定、食堂等での食塩含有量表示などに見られる集団全体への対策の重要性を指摘された。
 評価に当たって最も重要なことは、何を指標として評価するか計画段階から決めておくことであると強調された。しかし、まず評価をしようとする姿勢を持つことが大切であるとも述べられ、評価に向かって行政(自治体)が一歩を踏み出すことの意義を聴取者へ伝えて下さったものと理解した。

!!基調講演「公衆衛生における研究と行政の連携」
!報告;多治見市民病院副院長 岩瀬 愛子
「行政における疫学研究活用の重要性―Evidence Based Health Policyを考えるー」と題して、行政が健康課題に取り組むにあたり、根拠に基づく方法で課題の抽出と優先課題の設定をすべきであるというお話をいただいた。特に、疫学研究について、現場の立場にたった実例を交えながら、行政においての研究は、単に研究者の興味による研究ではなく、国民・行政のニーズに即した研究を行うべきであり、それには、「リスク」「確率の評価」を元にした健康施策の推進が必要であり、単なる「臨床現場の感覚」ではなく、「疫学研究」をベースにした健康課題の把握が重要であるとした。
そして、行政と研究の一層の連携が必要であると結論された。地方行政、特に自治体の保健センターにおける保健師の活動では、こうしたEBMにもとづく事業評価への取り組みは、まだまだ遅れていると常に感じている。今回の講演は、明日からの各機関の健康課題への取り組みに大いに役にたった内容であり、今回の大会テーマに即した内容の講演が頂けたと感謝している。

!!!一般口演 座長からのコメント
!!岐阜県西濃地域保健所 日置敦巳(織部会場 生活習慣病)
!A−1「静岡県における生活習慣病等のSMRとその全国順位と性差」
「静岡県における生活習慣病等のSMRとその全国順位と性差」では,静岡県で糖尿病のSMRが高く,これは一部の地域で高い結果であることが示された。この発表に対し,糖尿病の発症そのものが多いのか,コントロールに問題があるのかを調べる必要があるとの意見があった。今後,年齢階級別の死亡状況や健診結果における糖尿病関連指標等の分析へと展開されていくことが期待された。
!A−2「職域における男性の肥満と生活習慣病予防対策−事務職と現業職の肥満出現率の比較」
「職域における男性の肥満と生活習慣病予防対策−事務職と現業職の肥満出現率の比較」では,現業職で代謝指標の有所見率が高いこと,「隠れ肥満者」で有所見率が高いことが示された。現業職の内容について具体的に示すことができないということであったが,今後,勤務によるストレスの状況や飲食等の習慣,健康意識についても分析され,何らかの対策の糸口が見つかることが期待された。
!A−3「企業における生活習慣病予防活動−生活環境・行動の改善を目指して」
「企業における生活習慣病予防活動−生活環境・行動の改善を目指して」では,保健所が,健康づくりの主体である市町を巻き込んで,職域の健康づくりを支援しているという報告がなされた。現在は中規模の事業場が対象となっているが,これまでの活動をモデルとして,会場からの発言にもあったように,今後,小規模事業場およびその従業員に対する支援へと拡大することが期待された。
!A−4「フードチェーン全体の衛生管理の向上に向けて−事業者への保健所の効果的なサポート方法についての一考察」
「フードチェーン全体の衛生管理の向上に向けて−事業者への保健所の効果的なサポート方法についての一考察」では,ポテトサラダをモデルとして,製造・配送・販売・消費のフードチェーンの関係者に対し,調査・検査結果に基づいたコミュニケーションを行い,責任遂行と連携の意識づけができたとの報告がなされた。こうした取り組みが自主的に展開されていくことが望ましいが,当面は行政の関与が必要であり,消費者側の関心を高めることも重要と考えられた。
口演A全体として,演者の発表時間は守られたが,一部で,会場からの発言が多く,時間の制約で討論を深めることができなかったのは残念。

!!岐阜市保健所 臼井曜子(織部会場 健康診査・健康意識)
!B−1 高齢者の健康に関係する要因について
岐阜県内の2地域住民(対象A:山間の過疎地域、対象B:岐阜市)およびカナダ在住の日系人(対象C)の3グループを対象に、生活状況、悩み事、幸せ感、健康意識などについてアンケート調査をした結果を報告された。調査の結果、日本とカナダでは自立と健康の考え方が違うこと、カナダの日系人では自立度が低くても自覚的な健康度は高く、悩みが少なく、家族がいても公的サービスを求める傾向が強いことがわかった。フロアからの質問で、調査対象はカナダのどの地域か、北欧レベルのサービスが提供されているのかというお尋ねがあり、それに対して対象はバンクーバー在住者で、北欧レベルというのではないが日系人同士の互助組織が充実しているとのお答えであった。今後は、地域の特性にあった公的サービスや社会的ネットワークの構築が重要な課題である。
!B−2 基本健康診査受診者の主観的健康度とその関連要因
名古屋市の基本健康診査受診者を対象に、主観的健康度と健診結果、生活習慣等との関連を検討された。また、健康日本21のために実施した市民アンケート調査を対照として比較検討された。健康診査受診者は市民アンケート回答者に比べて主観的健康度はよい者が多く、通院している者は少なかった。また、自覚症状がなければ、服薬をしていても、健診結果が要指導や要医療であっても、主観的健康度は高く、むしろ精神的な「睡眠不足」「ストレスの自覚」などで主観的健康度が低くなるという結果が得られた。フロアからの質問はなく、座長より健診の形態(集団・個別)、要指導・要医療者への有効なアプローチについてお尋ねした。名古屋市では集団・個別双方の健診方法をとっているが今回の対象者は集団健診受診者であること、生活習慣改善や受診に結びつけるための有効なアプローチについては検討中であり、今後の重点課題というお答えであった。
!B−3 保健所成人基本健康診査
名古屋市の「成人管理システム」の運用によって蓄積された延べ352,000名の健診データをもとに、市民健康診査受診者の動向と評価検診(生活習慣指導と検査)の効果について検討された。結果は、受診者数は女性が約7割、男女とも60代が最も多く、有料化した2003年度では受診者数の減少が見られた。評価検診の効果については、受診者において総コレステロール、血糖、BMIの低下が有意であったが、選択バイアスの可能性も否定できず、また前もって目標設定してそれを実現できるプログラムの検討も必要である。フロアからの質問はなく、座長より評価検診の効果の持続についてお尋ねしたところ、今後の検討課題であるとのお答えであった。
!B−4 異なる判定量食物摂取頻度調査結果の関連性
2種類の食物摂取頻度調査票(栄養君:所要時間5分、実寸法師:所要時間20分)を用いて、栄養素の値の関連性を調査した。総エネルギーや三大栄養素の摂取量では両者の間に有意な関連性はなかった。栄養素別では特にカルシウムで相関係数が高く、ビタミンA、B1では顕著に低かった。この理由として、カルシウムは乳製品や小魚での摂取が大部分であり、プログラムによる推定がしやすい一方で、ビタミンA、B1は料理によるバリエーションなど調理の影響を受けやすいためと思われる。フロアから、調査の目的および調査票の実用性について質問があり、生活習慣病予防のため簡便な調査で摂取栄養素を大まかに知ることが目的とのお答えであった。簡便な調査票については誤差も大きいが、実用性としては自分で自分の食生活を大まかに知って、改善に役立てることは可能である。
なお、各発表および質疑は制限時間内に収まり、時間配分は適正であった。

!!岐阜県飛騨地域保健所 中島正夫(織部会場 介護・各種療法)
!C−1「音楽療法における反応性の研究」
「音楽療法における反応性の研究では、静かで落ち着いた曲、にぎやかで勇壮な曲、悲しみのこもった荘重な曲といった曲調で反応が異なること、全ての人が同じように反応するわけでなく、性格特性、心身の状態などによって反応は異なる。音楽療法を行うには、どこで、どのような方法で、何を目的として行うかを考え、対象者の音楽歴や好み、性格などをあらかじめ知っておくことが大切である。質問は音楽のジャンルによっても反応などが異なるのでは?に対し、回答は異なると考えている。説明に時間がかかるので後ほどフロアでお話ししたい。
!C−2「NPO法人との協働による動物介在活動」
「NPO法人との協働による動物介在活動」では、平成13年度から16年度に、NPOと協働で実
施してきた動物介在活動や「しつけ方教室」などの報告。 動物介在活動の継続実施には、地域ボランティアとボランティア犬が必要であり、彼らの成長過程をどのように支援するかが行政の課題。また、今後は地区懇談会等を開催し、住民や市町村と連携した「人と動物が共生できる地域づくり」を進める。 質問はボランティアとして育成された方々の活動状況は?に対し、回答は2組がNPO法人に参加し、活動している。
!C−3「介護予防教室の指導効果の検討」
「介護予防教室の指導効果の検討」では、教室を通した対象者の運動能力や主観的健康観の変化及び有効な介入方法を検討。日記による歩数記録の習慣化により、ある程度の歩数を維持して距離を長く伸ばした人ほど歩行能力の向上につながることが示唆されたが、ウオーキング以外の運動が習慣化している人は少なかった。身体的・心理的高リスクの人も心身への健康観の高まりを自覚できており、今後は、高リスクの者を対象としたシステム作りが必要。質問は、教室終了後、習慣の維持を促す機会の設定は?に対し回答は、現時点では未設定。質問は、日記による歩数記録の習慣により効果がもたらされた、という根拠は?に対し、回答は、担当者の感覚。
!C−4「地域筋力強化教室の効果に関する研究」
「地域筋力強化教室の効果に関する研究」では、「地域筋力強化教室」と「いきいき教室(筋力強化プログラムを含まない。)」の参加者を対象に、初回時と3ヶ月後の終了時に質問紙調査・体力調査等を実施し、下肢筋力及びそれらに及ぼす影響等を検討。下肢筋力を中心としたレジスタンストレーニングを含むwell-rounded trainingを継続することは高齢者の体力向上に寄与することが示唆された。 質問は、2つの教室の参加者に質的な差があるのでは?に対し、回答は、差はないと考えている。

!!岐阜市保健所地域保健室 中村こず枝(志野会場 乳幼児保健)
私が担当いたしましたセッションEは乳幼児保健がテーマでした。
!E−1「実施報告データに基づいた乳幼児健診結果の変遷」
「実施報告データに基づいた乳幼児健診結果の変遷」では、愛知県では昭和60年から共通形式で各市町村の乳幼児健診の事後データの管理が行われており、あいち小児保健医療総合センターでは、その膨大なデータを分析・評価を行っておられました。その結果として、昭和60年ごろよりも平成14年においてすべての乳幼児健診の受診率が大きく上昇し、特筆すべきは1歳6か月健診での発達機能障害、精神発達障害が大幅に増加していたことでした。同様の傾向が3歳児健診の家庭養育環境にも認められていました。疾患別では先天性股関節脱臼と脳性麻痺が減少傾向でした。会場からの質問では、年代による疾患の増減の要因について質問が多く出ていましたが、今後もデータを蓄積し本発表のように定期的に評価することが必要であると思われました。
!E−2「周産期医療・助産施設における子育て支援の実態―支援に肯定感・不全感を持った事例の分析から―」
「周産期医療・助産施設における子育て支援の実態―支援に肯定感・不全感を持った事例の分析から―」では看護職に対しての子育て支援の肯定感・不全感のアンケートでしたが、乳幼児に接する機会の多い職場の助産師・看護師の方が、肯定感・不全感とも多く持っている結果が得られていました。不全感のみは回答者876人中36人認められ、不全感の内容は、「家族問題」「母との意思疎通がない、拒否的態度」「病院の枠組みでの支援の限界」でした。子育て支援を現場で担っている看護職の不全感は保健機関がカバーしなくてはならないという結語でしたが、行政機関がどれだけ係われるのかこれからの課題であると思いました。
!E−3「愛知県内の地域中核病院の児童虐待への取り組みと保健・医療連携」
「愛知県内の地域中核病院の児童虐待への取り組みと保健・医療連携」では、児童虐待対策に積極的に取り組んでおられるあいち小児保健医療総合センターの山崎先生が発表されました。愛知県内の中核病院77病院のうち22施設が虐待予防ネットワークを設置しており、院内ネットのある病院の方が、虐待事例の通告だけでなくハイリスク症例を保健機関に相談する頻度が高く、予防的係わりが積極的に行われる傾向があることが示されました。会場からの質問では、虐待予防は地域の一次医療機関との係わりの中で考えるべきでは、との質問に対し一次医療圏、二次三次医療圏間の医療連携を利用して虐待予防ネットワークを築いていけたらとの回答があり、また院内虐待ネットが法定の院内感染対策委員会や医療安全管理委員会などと同じ位の社会的地位を得られるよう体制づくりをしていきたいとの演者からの発現もありました。質疑応答も盛んに行われ、セッション全体が大変盛り上がりました。あいち小児保健医療総合センターでの取り組みが各地域に広がるように各保健機関でも取り組みが持たれることを望んでやみません。

!!愛知県健康福祉部 五十里 明(志野会場 障害者・健康支援活動)
!F−1愛知視覚障害者援護促進協議会に於ける中途視覚障害者支援活動の現状と課題
口演内容では、演者は、長年眼科医として、視覚障害者に係る多くの不利益に対し、それらの改善に向けた取り組みをされているが、今回、その推進母体ともなる四半世紀に亘る協議会の紹介、活動のまとめ、眼科リハビリテーションの重要性、視覚障害リハビリテーションワーカーの役割の重要性を述べられた。質疑としては、糖尿病性網膜症の推移、職場復帰の確認に関する質疑がなされた。
!F−2健康日本21推進のためのボランティア育成のために−行動指標の定着を目指した養成カリキュラム作成−
口演内容では、愛知県における健康づくりリーダーの養成は昭和62年から始められ、健康日本21あいち計画では、リーダー登録者2,000人を目標にしている。その研修会における参加者の意識調査から養成に関する諸課題が明らかとなり、養成カリキュラムの見直しに反映されたことが報告された。質疑としては、ボランティアの責任に関する意見と確認の質疑がなされた。
!F−3地域福祉ネットワークのための危機情報共有システム−開発と運用の可能性について
口演内容では、社会福祉分野におけるヒヤリハットや事故を未然に防ぐためのASPインシデントレポートシステムの紹介と、その有効性、安価な開発経費による普及の可能性に関する報告がなされた。質疑としては、本システムの使い勝手に関する質疑がなされた。
時間配分については、 担当演題開始前で既に20分の時間延長のため、フロアーからの質問は一件に限定させていただいた。その点では、十分な、活発な議論の時間が取れなく残念であった。今後の課題としては、 十分な討論の時間を確保するとするならば、一題12〜15分とするか、あるいは発表時間を5分にまとめるか、一度ご検討をお願いしたい。

!!名古屋市北保健所 勝田信行(志野会場 感染症)
感染症の2題の座長を担当した。結核家族検診に関する研究では、初回検診は二ヶ月以内に行い少なくとも一年間は経過観察が必要で特に45歳未満の濃厚暴露群でリスクが高いとの発表であった。家族検診に関する研究は、近年は結核罹患率の低下もあって少なく貴重な発表であったが、発見患者数が9例なので結論を出すには共同研究などで症例数を増やす必要があると思われた。ピロリ菌除菌自由診療の演題は、疾病予防のため、ピロリ菌除菌を積極的に実施すべきという主旨の発表であった。受診者の募集方法、除菌後の感想などについて質疑が行われた。消化器症状があり、除菌により症状が改善した受診者からは大変感謝されているとの回答があった。また、医療法により医療機関の広告は制限されており、受診者を増やすためにインターネットの活用や口コミなど現在努力しているとのコメントがあった。

!!名古屋大学大学院医学系研究科公衆衛生学 玉腰浩司(黄瀬戸会場 示説発表)
示説発表Hでは、立場の異なる6施設から研究、調査、事業の報告があった。岐阜大学からは一般住民を対象としたコホート研究において、糖尿病罹患者の死亡リスクが高まることが報告された。続いて、名古屋市立大からは、ウルトラマラソン参加者を対象に、運動の耐糖能に対する改善効果が示された。両発表は、公衆衛生を実践する上で、その根拠に当たると考えられる。静岡県総合健康センターからは、静岡県における生活習慣病等のSMRの特徴が報告され、その詳細な分析から得られた有益な情報は、既存資料を用いた地域診断の重要性を示すものであった。多治見市民病院・同保健センターから発表された日本緑内障学会疫学調査は、疫学調査と地域住民の眼疾患スクリーニングを同時に行うという先駆的なもので、その手法及び調査結果は、今後、保健事業を展開する上で示唆に富むものであった。最後の2題は、多治見市保健センターからヘルスアップ教室の効果、土岐市保健センターから転倒予防参加者の意識調査について発表がなされた。いずれも綿密に計画された保健事業の効果を示したもので、評価をもとにさらなる事業の展開の意図が感じられた。異なる立場、視点を持った演者、参加者の間で活発な意見交換がなされたことで、研究と行政の連携の必要性を強く認識させる示説発表であった。