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専門specialty

小児神経チーム

診療内容treatment

小児神経専門医療機関として、幅広い小児神経疾患を診療しています。当院は総合周産期母子医療センター、東京都こども救命センターの指定を受けており、出生時から治療が必要な神経疾患(脳の先天異常、二分脊椎症など)、集中治療が必要な神経疾患(急性脳炎・脳症など)の治療も担っています。

月曜から金曜まで専門外来を行っています。初診外来は木曜午後に開設しています。受診を希望されるかたは、紹介状をお持ちのうえ予約をお取りください。ほか、神経グループ内で以下の専門外来を開設しています。

てんかんセンター

てんかんセンター の小児担当として、小児てんかんの診断、精密検査、内科治療を行っています。脳神経外科と連携した外科治療、ケトン食療法に積極的に取り組んでいます。 小児の患者さんで受診を希望される場合は、てんかん外来小児(第4月曜)、または神経初診をご案内しています。

結節性硬化症

結節性硬化症 は、多診療科によるチーム医療を行っています。小児の患者さんで受診を希望される場合は、神経初診をご案内しています。

二分脊椎症

二分脊椎症 は、多職種によるチーム医療を行っています。脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫など二分脊椎症の診断がされている小児の患者さんで受診を希望される場合は、二分脊椎症初診(第1水曜)をご案内しています。
腰仙部皮膚洞について、二分脊椎症を心配して乳児健診などから受診をすすめられるかたは、神経初診ではなく【小児科初診】をご案内しています。

当科が提供すべき医療を一人でも多くの子供に届ける使命を果たすため、患者さんが希望する診療を他の医療機関へお願いしなければならないことがあります。ご理解のほどよろしくお願いします。

  • もとの病気と関係しない体調不良は、地域の医療機関や訪問診療医による診療をお願いしています。
  • 知的障害や発達障害に関係する受診は、当科では原因となる病気があるかの検査を主に行っています。発達障害として専門的な対応を希望する場合は、適切な施設をご紹介しています。
  • 療育やリハビリは、地域の発達センターや療育施設をご利用ください。
  • 家庭で医学的ケアを必要とする場合は、その管理は原則として訪問診療医や訪問看護へお願いしています。
  • レスパイト入院には対応していません。ご希望の場合は、他施設をご利用ください。

成人した患者さんの医療的問題は、小児科では対応できない成人特有のものが多くなります。そのような患者さんの外来・入院・在宅医療は、患者さん本人の利益を最優先に考えて成人診療科と協力し、あわせて成人移行を積極的に勧めています。

診療実績(2019年、のべ表記)results

入院患者数298人(うち緊急118人)
ICU入室54人(うち主治医として診療34人)
長時間ビデオ記録脳波61人
てんかん精密検査10人
急性脳症10人
外来患者
結節性硬化症50人(成人含む)
二分脊椎症・脊髄脂肪腫75人(成人含む)
主な検査
  1. 画像検査:CT、MRI、SPECT、PET
  2. 脳機能検査:脳波、長時間ビデオ記録脳波(入院)、脳磁図
  3. 誘発電位:聴性誘発電位、視覚性誘発電位、体性感覚誘発電位
  4. 神経筋検査:末梢神経伝導検査、反復刺激試験、針筋電図、表面筋電図
  5. 睡眠検査:簡易ポリソムノグラフィー(外来)、睡眠ポリグラフ検査(入院)

主な対象疾患target disease

てんかん
先天異常症候群

結節性硬化症、神経線維腫症、スタージ・ウェーバー症候群、アンジェルマン症候群、レット症候群

神経感染症・神経免疫疾患

急性脳炎/脳症(AESD、MERS、AERRPS、ANEなど)、先天性感染症(サイトメガロウイルスなど)、急性散在性脳脊髄炎、多発性硬化症、視神経脊髄炎

脳の先天異常

水頭症、脳回形成異常(滑脳症、多小脳回、厚脳回)、裂脳症、孔脳症

神経変性疾患

大脳白質変性症(アレキサンダー病など)、脊髄小脳変性症(歯状核赤核淡蒼ルイ体萎縮症(DRPLA)など)、 進行性ミオクローヌスてんかん、ペリツェウス・メルツバッハー病

先天代謝異常症

ミトコンドリア異常症(MELASなど)、ピルビン酸脱水素酵素複合欠損症、ポンペ病、ファブリー病、ゴーシェ病

その他の神経疾患

頭痛(片頭痛など)、睡眠障害(夜驚症、ナルコレプシー、不眠症、過眠症など) レストレスレッグス(むずむず脚)症候群

末梢神経などの病気

脊髄性筋萎縮症、Guillain-Barre症候群(フィッシャー症候群等を含む)、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、遺伝性運動感覚ニューロパチー(Charcot-Marie-Tooth病、Dejerine-Sottas病)、重症筋無力症

筋肉の病気

デュシェンヌ型/ベッカー型筋ジストロフィー、筋強直性筋ジストロフィー(先天性を含む)、先天性ミオパチー

脊髄の病気

二分脊椎症(キアリ奇形を含む)、脊髄脂肪腫、急性弛緩性麻痺、横断性脊髄炎、痙性対麻痺

発達の問題

自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、知的障害など

研究内容studies

先天性母子感染症の診断治療

TORCH症候群とも呼ばれる先天性母子感染症は、脳障害や難聴の原因となります。近年、実は診断されていない軽症患者が多いこと、先天性サイトメガロウイルス(CMV)感染症では、診断時は聴力が正常でも後から難聴になることなどが分かってきました。

神経グループでは厚生労働省研究班(藤井班)のもと、先天性CMV感染症の患者さんを前向きに追跡し、どのような経過をたどるかを明らかにしてきました。治療が必要な患者さんには、倫理委員会承認のもと抗ウイルス薬治療を行ってきました。
2020年4月からは、先天性CMV感染症の治療薬として抗ウイルス薬バルガンシクロビルの治験をはじめます。

先天性感染症の情報はこちら
バルガンシクロビル治験の情報はこちら

急性脳症の病態に関する研究

インフルエンザや突発性発疹に感染した後にけいれん、意識障害をきたす急性脳症は、日本を含む東アジアの小児に多くみられます。麻痺やてんかん、知的障害など後遺症を残すことも少なくなく、早期診断や治療の確立が求められています。

発達医科学教室 では急性脳症の患者さんの検体を集めて遺伝子解析を行い、これまでにカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、アデノシン受容体A2A、電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子などの遺伝子多型、遺伝子変異を発見しました。 現在は、急性脳症の発症メカニズム、診断に役立つバイオマーカーの発見、有効な治療薬の探索などに取り組んでいます。

発達障害の病態に関する基礎研究

自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如多動症(ADHD)は、社会の関心や治療のニーズが高まっています。ASDは一部の病気に合併しやすい、出生前にさらされた一部の薬物と関連するなど、発症のメカニズムにつながる事実が知られています。

神経グループでは東京都医学総合研究所 依存性物質プロジェクト と共同研究を行い、マウスで病気や薬物への暴露を再現して、発達障害と同じ症状がみられるか検討しています。ASDを合併する代表的な病気である結節性硬化症では、マウスにもASDに相当する症状が現れ、mTOR阻害剤という種類の薬でマウスの症状が改善することを突き止めました。バルプロ酸、脳内伝達物質のセロトニンとASDの関連や治療についても、同じように明らかにしています。

遺伝性疾患・先天異常の分子病理・病態の研究

発達医科学教室 と共同で、結節性硬化症(mTOR系)、Rett症候群などてんかん、知的障害、自閉症をともなう遺伝性疾患のモデル動物を用いた分子病理学的解析、Noonan症候群(RAS/MAPK系)、Ellis-van Creveld症候群(SHH系)などの先天異常の遺伝学的解析などを行っています。

ミトコンドリア病の病態研究

ミトコンドリア病は、細胞内のエネルギー産生を担うミトコンドリアが正しく働かないために起きる先天性の病気です。体内の物質を適切に代謝できない先天代謝異常症の中では、ミトコンドリア病の頻度が最も高いとされています。

ミトコンドリア病の原因は非常に多様であり、エネルギー産生に直接かかわるミトコンドリア呼吸鎖複合体のタンパクの解析(Blue native PAGE、酵素活性測定)や遺伝子検査によって診断が確定することも増えていますが、原因が特定できない症例もまだ多く存在します。

神経グループでは帝京大学小児科 、国立精神・神経医療研究センターと連携して、ミトコンドリア病の診断と病態の解明に取り組んでいます。

亜急性硬化性全脳炎の全国患者サーベイランス調査

麻疹(はしか)に感染すると、ごくまれに数年後に亜急性硬化性全脳炎という慢性進行性の病気を発症します。神経グループでは、患者数の把握と実態調査を定期的に行っています。

脳室周囲白質軟化症の病態生理に関する研究

脳性麻痺の患者さんに多くみられる原因として、未熟な脳に発生する脳室周囲白質軟化症が重要であることが知られています。脳の血液循環の障害だけでなく、感染や炎症の重要性がわかっています。神経グループの研究でも、患者さんの臍帯血で炎症があったことを示すサイトカインの上昇が見出されています。脳の血液循環の障害がはっきりしない脳性麻痺の患者さんでは、妊娠中から出生時の感染や炎症が脳性麻痺の発生に関わっている可能性が高いと考えられます。どのような障害が脳に起きているかを明らかにするため、感染モデルラットを用いた未熟脳障害を検討しています。

乳児期ダイオキシン摂取による神経発達の影響

乳児のダイオキシン摂取の主な経路は母乳中のダイオオキシンであるため、母乳中のダイオキシン濃度を測定し、その影響調査を行っている。神経発達および行動面への影響調査をコホート研究として行っている。

大学院postgraduate

神経グループでは大学院生による研究について、東京大学内外の研究室と連携して行っています。神経グループ以外でも、神経関連の研究を希望する学生の受入れや研究施設との連携をしています。

過去の大学院生の研究テーマ

2018年
柏井洋文:結節性硬化症モデルマウスの自閉症様症状に対する行動薬理学的解析および遺伝子発現解析

2017年
星野愛:日本人急性壊死性脳症の遺伝的素因

2015年
星野英紀:脳波-MRI同時計測を用いた中心部脳律動の自発変動に関わる神経機構の研究

2013年
佐藤敦志:Behavioral pharmacological research on the autism-like behavior in mouse models of tuberous sclerosis complex.

2012年
百瀬(大澤)麻記:Product of TSC1, causative gene of tuberous sclerosis, regulates intracellular distribution of actin cytoskeleton according to cell polarity.

2011年
阿部裕一:転写調節因子EYA4の全前脳胞症への関与についての検討

スタッフstaff

  • 特任講師 佐藤敦志
  • 助教 下田木の実
  • 助教 内野俊平
  • 助教 柿本優

神経グループの業績achievement