メンバー

東京大学医学部附属病院薬剤部 講師

本間 雅
本間 雅  Masashi Honma
博士(薬学)
1975年2月 三代前から江戸っ子
Tel 03-3815-5411 ext.30757
E-mail mhonma-tky@

連絡先は@→@umin.ac.jpに変えてください(※@半角)

略歴

2000年 3月 東京大学 大学院薬学系研究科 修士課程修了
2000年 3月 三共株式会社(現・第一三共株式会社) 生産技術研究所入社
その後、薬剤動態研究所、製品開発研究所など
2005年 3月 東京大学医学部附属病院薬剤部 助手
2007年 4月 東京大学医学部附属病院薬剤部 助教
2014年 10月 22世紀医療センター 薬理動態学講座 特任准教授
2017年 4月 東京大学医学部附属病院薬剤部 講師(現職)

研究テーマと抱負

私は元々製薬会社で創薬研究をしていました。大学に戻ってきた今でも、(ポーズだけでなく本当にガチで)創薬を目指して研究するという姿勢に変更はありません。現在は、苅谷助教池淵助教とタッグを組んで、博士課程の学生や協力研究員(卒業生)5名・修士課程や4年生5名の合計10名の学生たちと一緒に、以下の2つの点にフォーカスして研究を行っています。  1つは、薬物による毒性発現のメカニズムを分子レベルで理解し、創薬段階においてリスクの低い化合物を選択できるような方法論・スクリーニング系を構築することを目指したものです。もう1つは、疾患の発症メカニズムの研究に基づいて、創薬標的を合理的に選択する方法論の構築を目指したものです。創薬が成功するためには、薬効と毒性のバランスが取れた化合物を臨床開発へと上げることが最大のポイントになるはずだ、と思っているからです。

2つのテーマは、一見すると相互の関連性が低いように思われるかもしれません。しかしながら、種々の分子が複雑なネットワークを形成して相互作用し、さらに階層性を持って組み上げられたシステムとして生体を捉えた場合、そのシステムの機能が何らかの理由によって破綻することが疾患の発症であり、また薬物が生体システムの機能を障害することで毒性が発現すると考えることができます。両方の道いずれも、ゴールまでは長い道のりになりそうですが、それでも本質的には同じ場所へ辿りつくと考えています。最終的な目的地は「多階層システムとして生体を理解する」ことで真に効率的な創薬を実現することだと思いますが、千里の道も一歩から。以降では、現在取り組んでいる具体的な課題について、幾つか紹介させていただきたいと思います。

キナーゼ阻害薬による毒性発現メカニズムの解析

キナーゼ阻害薬はがん治療において最も広汎に用いられる薬剤となっており、現在も新しい薬剤の開発が進められています。実際に臨床での使用経験が増えるにつれ、従来の化学療法剤とはスペクトルの異なる副作用が発現することが多く、中には重篤なものも存在することが明らかとなってきました。一方、特定の標的キナーゼを阻害するようにデザインされた阻害剤であっても、網羅的に調べてみると複数のキナーゼと相互作用しており、開発時に標的として想定されていないキナーゼ(オフ・ターゲット)に対しても阻害作用を示す例が多いことが明らかになってきました。私達はこれらのオフ・ターゲットキナーゼに対する阻害効果が毒性発現に繋がっていると考え、毒性標的となるキナーゼを明らかにすることを目標に取り組んでいます。例えば、皮膚障害はEGFRキナーゼ阻害薬に共通する副作用ですが、中でもエルロチニブに関しては頻度も非常に高く、重症化しやすいことが知られています。上述したように臨床用量におけるオフ・ターゲット阻害を網羅的に検証した結果、エルロチニブは臨床用量においてSTK10を比較的強く阻害することが明らかとなりました。その後in vitro / in vivo両面から検討を行った結果、エルロチニブはSTK10の阻害を介してリンパ球のIL-2分泌や遊走性を強く亢進させており、これが皮膚炎症の増悪に繋がっていることを明らかとしました。現在は腎がんの治療に用いられるスニチニブやパゾパニブを対象として、毒性標的となるキナーゼ分子の同定を進めています。スニチニブに関しては、毒性軽減を達成できる併用療法が見出されつつあり、現在東大病院の泌尿器科と共同して臨床試験を開始するところです。

骨代謝疾患に対する新たな治療標的の探索

日本における骨粗鬆症の患者は既に1,000万人を超えており、高齢化に伴って患者数はさらに増加していくと予測される一方で、臨床における治療満足度は必ずしも高くはないのが現状です。そこで私達は骨代謝バランスを中心的に制御するシグナルであるRANKL-RANK経路に着目し、骨粗鬆症治療の新たな標的分子を見出す可能性を探っています。破骨細胞に発現し、その成熟・活性化に中心的に関与する受容分子であるRANKに関しては、その下流伝達経路に着目して膨大な研究がこれまで行われてきています。一方リガンド分子であるRANKLに関しては、シグナル入力強度を決定する主要因であるにも関わらず、その細胞内挙動と制御機構に関して十分な研究が行なわれていませんでした。私達はこの点に着目した分子論的研究を進めてきた結果、骨芽細胞において、通常RANKLの大部分は細胞内の分泌型リソソームに蓄積されており、細胞膜表面には僅かに発現しているのみであること、およびこの細胞膜表面に局在する少量のRANKLは、破骨前駆細胞内にシグナルを入力するリガンド分子としてだけでなく、RANKとの相互作用に伴って骨芽細胞内に逆シグナルを伝達する受容分子としても機能し、この逆シグナルによって分泌型リソソームからのRANKL放出がトリガーされること、などを見出してきました。さらに、骨芽細胞に発現するRANKLのデコイ受容体OPGは従来、細胞外に分泌された後に細胞膜表面のRANKLと結合することでシグナル伝達を阻害していると考えられてきたが、実は大部分のRANKLはゴルジ体でのタンパク質合成段階で既にOPGと相互作用しており、OPGと複合体を形成したRANKLが分泌型リソソームへの選別輸送を受けていることなども見出しています。現在は、RANKLの骨芽細胞内逆シグナルが創薬標的となる可能性を想定して検討を進めています。

ここに挙げたもの以外にも、薬物性肝毒性の発症機序解明を目指した研究や、スティーブンス・ジョンソン症候群の発症機序解明を目指した研究なども行っています。また、最近では樋坂特任准教授と共同してアルツハイマー病の病態記述モデルを数理的に構築する研究も開始するところです。

キーワード

創薬・骨代謝・がん・薬物毒性

主要業績

研究費

  • 基盤研究(A) 「システム的理解に基づく医薬品副作用予測法の構築(鈴木洋史代表)」(分担)(平成24年度~平成27年度)
  • 基盤研究(B)「骨恒常性維持におけるRANKL逆シグナルの役割の解析」(代表)(平成24年度~平成27年度)
  • 挑戦的萌芽研究 「骨形成低下を生じない抗RANKL抗体の開発」(代表)(平成24年度~平成25年度)
  • 基盤研究(B)「MHC発現量を考慮した薬剤性肝障害の増悪・劇症化予測のための基盤研究(伊藤晃成代表)」(分担)(平成24年度~平成26年度)
  • 若手研究(B)「RANKLリバース・シグナル阻害による骨粗しょう症治療の可能性検証」(代表) (平成22年度~平成23年度)
  • 厚生労働科学研究費補助金(創薬基盤推進研究事業)「大規模生体内分子測定による薬物誘発性肝障害バイオマーカーの探索研究(曽我朋義代表)」(分担)(平成20年度~平成24年度)
  • 若手研究(B)「細胞内トラフィッキング制御に基づいた骨粗鬆症治療の可能性検証」(代表) (平成20年度~平成21年度)

業績一覧

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