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2025年東京都立青山高等学校_等電点電気泳動

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2025年東京都立青山高等学校_等電点電気泳動 [2025/09/05 03:35] – 作成 oshikane2025年東京都立青山高等学校_等電点電気泳動 [2025/09/05 03:59] (現在) oshikane
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 MRSSKNVIKE FMRFKVRMEG TVNGHEFEIE GEGEGRPYEG HNTVKLKVTK GGPLPFAWDI LSPQFQYGSK VYVKHPADIP DYKKLSFPEG FKWERVMNFE DGGVVTVTQD SSLQDGCFIY KVKFIGVNFP SDGPVMQKKT MGWEASTERL YPRDGVLKGE IHKALKLKDG GHYLVEFKSI YMAKKPVQLP GYYYVDSKLD ITSHNEDYTI VEQYERTEGR HHLFL MRSSKNVIKE FMRFKVRMEG TVNGHEFEIE GEGEGRPYEG HNTVKLKVTK GGPLPFAWDI LSPQFQYGSK VYVKHPADIP DYKKLSFPEG FKWERVMNFE DGGVVTVTQD SSLQDGCFIY KVKFIGVNFP SDGPVMQKKT MGWEASTERL YPRDGVLKGE IHKALKLKDG GHYLVEFKSI YMAKKPVQLP GYYYVDSKLD ITSHNEDYTI VEQYERTEGR HHLFL
  
 +----
 ====タンパク質の理論的な等電点(pI)を求める==== ====タンパク質の理論的な等電点(pI)を求める====
 各アミノ酸配列を[[https://web.expasy.org/protparam/|Expasy ProtParam]]に放り込むと計算してくれます。\\ 各アミノ酸配列を[[https://web.expasy.org/protparam/|Expasy ProtParam]]に放り込むと計算してくれます。\\
行 27: 行 28:
 ☞未変性・変性によって泳動結果に違いが出たとしたら、何故未変性・変性によって異なるのだろう? ☞未変性・変性によって泳動結果に違いが出たとしたら、何故未変性・変性によって異なるのだろう?
  
-===タンパク質の等電点はどうやって求めている?=== +---- 
-【アミノ酸の等電点】\\+====タンパク質の等電点はどうやって求めている?=== 
 +===【アミノ酸の等電点】===
 先ず、アミノ酸の等電点についておさえておきたいと思います。\\ 先ず、アミノ酸の等電点についておさえておきたいと思います。\\
 アミノ酸における等電点では、例えばアラニンであれば主鎖のカルボキシ基とアミノ基の電荷の状態を考えればOKです。\\ アミノ酸における等電点では、例えばアラニンであれば主鎖のカルボキシ基とアミノ基の電荷の状態を考えればOKです。\\
行 45: 行 47:
 が理論的な等電点と計算できます。\\ が理論的な等電点と計算できます。\\
  
-【タンパク質の等電点】\\+===【タンパク質の等電点】===
 タンパク質についてもアミノ酸の時と同様に、「タンパク質全体として電荷がゼロになるpH」を求めるという作業を行います。\\ タンパク質についてもアミノ酸の時と同様に、「タンパク質全体として電荷がゼロになるpH」を求めるという作業を行います。\\
-タンパク質を構成するアミノ酸のpKa値については文献によっても違うのですが、ここでは[[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8125050/|Bjellqvistらによる値]]で議論を進めます。+タンパク質を構成するアミノ酸のpKa値については文献によっても違うのですが、ここでは[[https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8125050/|国際的によく用いられている値]](B. Bjellqvist, //et al.// (1993))で議論を進めます。
   * α-COO⁻: 3.55   * α-COO⁻: 3.55
   * α-NH₃⁺: 7.50   * α-NH₃⁺: 7.50
行 69: 行 71:
 となります。このとき、それぞれの官能基1, 2, 3, 4の電荷状態を(1, 2, 3, 4)=(++++)という風に書くと、酸性側からアルカリ側へ: となります。このとき、それぞれの官能基1, 2, 3, 4の電荷状態を(1, 2, 3, 4)=(++++)という風に書くと、酸性側からアルカリ側へ:
  
-(++++)⇔(-+++)⇔(--++)⇔(---+)⇔(----)+  (++++)⇔(-+++)⇔(--++)⇔(---+)⇔(----) 
 + 
 +と電荷が変化し、全体的な電荷としてはそれぞれ足し算をして: 
 + 
 +  +4⇔+2⇔0⇔-2⇔-4 
 + 
 +となることが分かります。\\
  
-と電荷が変化し得ることが分かります。\\ 
 このとき、電気的に中和しているのは(--++)の状態ですので、**その両脇の⇔におけるpKaの相加平均**を取ればOKです。\\ このとき、電気的に中和しているのは(--++)の状態ですので、**その両脇の⇔におけるpKaの相加平均**を取ればOKです。\\
 (-+++)⇔(--++)のpKaは「グルタミン酸の側鎖のカルボキシ基」で4.07\\ (-+++)⇔(--++)のpKaは「グルタミン酸の側鎖のカルボキシ基」で4.07\\
行 78: 行 85:
  
 GFPの様な実際のタンパク質においても上でペプチドで行った議論を拡張すれば良く、「タンパク質全体として電荷がゼロになるpH」、もう少し正確にいうと**「電荷がゼロになる両脇のpKaの相加平均」を見付けにいけば良い**、ということになります。 GFPの様な実際のタンパク質においても上でペプチドで行った議論を拡張すれば良く、「タンパク質全体として電荷がゼロになるpH」、もう少し正確にいうと**「電荷がゼロになる両脇のpKaの相加平均」を見付けにいけば良い**、ということになります。
 +
 +ただ、タンパク質ほど大きくなると、この例の様に手計算で「電荷がゼロになるpH」を探しにいくのは大変なので、上で紹介したExpasyの様に計算プログラムに放り込むのが研究現場的に実用的、ということになります。
 +----
 +
 +====入試ポイント・出題者の観点====
 +以下、大学教員=出題者的な観点を述べます。\\
 +pIの計算問題は、生物で出そうとするとリード文が長くなりすぎるので、**化学**で出題されると思います。\\
 +化学で出題するにしても、現課程ではpKaがカリキュラム内になく「発展学習」としての扱いになっているので、「教科書に記載されていない事項は出題しない」という入試の大前提からすると、pKaについてのリード文があっての出題になるはずです。\\
 +しかし、2次試験レベルではpKaは頻出と思いますし、理解も難しい箇所ですので、是非おさえておきたい所と思います。\\
 +
 +因みに、それぞれのpKaについては値は与えられますので、覚える必要はありません。\\
 +ただ計算や考え方の流れについては、恐らく一度経験しておかないと太刀打ちできないとは思いますので、今回の実習をキッカケとしてpKaや等電点に対する考え方・解き方をマスターして頂ければと思っています。
2025年東京都立青山高等学校_等電点電気泳動.1757010930.txt.gz · 最終更新: 2025/09/05 03:35 by oshikane