ユーザ用ツール

サイト用ツール


2025年度正則高等学校_pcr実験

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
次のリビジョン
前のリビジョン
2025年度正則高等学校_pcr実験 [2025/12/16 02:18] oshikane2025年度正則高等学校_pcr実験 [2025/12/16 20:35] (現在) oshikane
行 11: 行 11:
  
 ===学習ポイントについて=== ===学習ポイントについて===
-(1)どの様なものがDNA(または微生物など)を含んでいそうか、班のメンバーとディスカッションしよう\\+__(1)どの様なものがDNA(または微生物など)を含んでいそうか、班のメンバーとディスカッションしよう__\\
 皆さんが今回選んで頂いた試料にはDNAが含まれていると思います。その中で、今回はバクテリアを検出するためのPCRを仕掛けるわけですが、他の班も含めて、どの様な結果になりそうか予想すると共に、結果はどうであったか?考察してみて下さい。\\ 皆さんが今回選んで頂いた試料にはDNAが含まれていると思います。その中で、今回はバクテリアを検出するためのPCRを仕掛けるわけですが、他の班も含めて、どの様な結果になりそうか予想すると共に、結果はどうであったか?考察してみて下さい。\\
  
-(2)一般的に、なぜPCRにかける前にDNAの精製が必要なのか?考えてみよう\\+__(2)一般的に、なぜPCRにかける前にDNAの精製が必要なのか?考えてみよう__\\
 PCRはDNAポリメラーゼと呼ばれる酵素による酵素反応ですので、酵素反応を阻害する物質が試料中に入っていたりすると、検出すべきDNAが存在するにも関わらず、PCRで検出できない、という結果になってしまいます(「**偽陰性**」)。その様に、本来得られるべき結果が実権手技によって得られなくなることを、現場的には**アーティファクト**とか呼びます。\\ PCRはDNAポリメラーゼと呼ばれる酵素による酵素反応ですので、酵素反応を阻害する物質が試料中に入っていたりすると、検出すべきDNAが存在するにも関わらず、PCRで検出できない、という結果になってしまいます(「**偽陰性**」)。その様に、本来得られるべき結果が実権手技によって得られなくなることを、現場的には**アーティファクト**とか呼びます。\\
  
 では、DNAポリメラーゼによる酵素反応を邪魔するものの代表格は何でしょうか?DNAを切ったり貼ったりする酵素として、教科書や資料集にDNAポリメラーゼ以外にも制限酵素やリガーゼなど出てくると思いますが、**DNAを切ったり貼ったりする酵素は一般的にマグネシウムイオンを必要とする**というのは知っておいて良いと思います。したがって、マグネシウムイオンを奪ってしまうもの、例えば**キレート作用**のある物質が混入しているとPCRは上手くいきません。キレート作用のあるもの、化学的にはクエン酸やEDTAなどのキレート剤がありますが、他に土壌に含まれるポリフェノール類(ざっくり表現すると土が黒~茶色い原因)もマグネシウムを奪います。こうしたキレート作用のある物質をDNA精製によって取り除くことによって、アーティファクトによる偽陰性を防ぐことができます。 では、DNAポリメラーゼによる酵素反応を邪魔するものの代表格は何でしょうか?DNAを切ったり貼ったりする酵素として、教科書や資料集にDNAポリメラーゼ以外にも制限酵素やリガーゼなど出てくると思いますが、**DNAを切ったり貼ったりする酵素は一般的にマグネシウムイオンを必要とする**というのは知っておいて良いと思います。したがって、マグネシウムイオンを奪ってしまうもの、例えば**キレート作用**のある物質が混入しているとPCRは上手くいきません。キレート作用のあるもの、化学的にはクエン酸やEDTAなどのキレート剤がありますが、他に土壌に含まれるポリフェノール類(ざっくり表現すると土が黒~茶色い原因)もマグネシウムを奪います。こうしたキレート作用のある物質をDNA精製によって取り除くことによって、アーティファクトによる偽陰性を防ぐことができます。
  
-(3)酵素反応液を調製する際は、一般的に氷冷することが多いがそれはなぜか?PCR反応液調製においては室温で行ったが、なぜ室温でも良いのか?\\+__(3)酵素反応液を調製する際は、一般的に氷冷することが多いがそれはなぜか?PCR反応液調製においては室温で行ったが、なぜ室温でも良いのか?__\\
 教科書に**タンパク質の失活**という言葉があると思いますが、一般的に酵素を扱う際には、失活を防ぐために酵素は必ず氷冷します。\\ 教科書に**タンパク質の失活**という言葉があると思いますが、一般的に酵素を扱う際には、失活を防ぐために酵素は必ず氷冷します。\\
 また酵素を入れた酵素反応液を氷冷しておくのも、反応を進めさせないためです。バイオ分野で用いる酵素の最適温度は37℃程度のものが多いですが、氷冷しておけば**最適温度(至適温度)**から離れますので、実質的に反応が進まないという状態を作ることができます。一般的に酵素反応液は複数本仕掛けると思いますので、反応液仕掛けている間に先に仕掛けた反応液で酵素反応が進んでしまっては「ヨーイドン」が出来ず、正確な計測が出来なくなるといった不都合なケースも考えられます。したがって、通常は酵素反応液も氷冷(4℃)で調製します。\\ また酵素を入れた酵素反応液を氷冷しておくのも、反応を進めさせないためです。バイオ分野で用いる酵素の最適温度は37℃程度のものが多いですが、氷冷しておけば**最適温度(至適温度)**から離れますので、実質的に反応が進まないという状態を作ることができます。一般的に酵素反応液は複数本仕掛けると思いますので、反応液仕掛けている間に先に仕掛けた反応液で酵素反応が進んでしまっては「ヨーイドン」が出来ず、正確な計測が出来なくなるといった不都合なケースも考えられます。したがって、通常は酵素反応液も氷冷(4℃)で調製します。\\
行 26: 行 26:
 では、今回のPCRでは何で室温で調製して良いか?というと、(2)で出てきた**DNAポリメラーゼの最適温度が72℃と高温だから**です。したがって、室温(20℃くらい)はDNAポリメラーゼにとってかなりの低温であり、実質的に反応が進まないと考えて良いから、となります。ただし、DNAポリメラーゼも構造的に強い酵素とはいえ「失活」は目に見えない現象で、最悪アーティファクトに繋がりますので、酵素は4℃で氷冷して使用して下さい。\\ では、今回のPCRでは何で室温で調製して良いか?というと、(2)で出てきた**DNAポリメラーゼの最適温度が72℃と高温だから**です。したがって、室温(20℃くらい)はDNAポリメラーゼにとってかなりの低温であり、実質的に反応が進まないと考えて良いから、となります。ただし、DNAポリメラーゼも構造的に強い酵素とはいえ「失活」は目に見えない現象で、最悪アーティファクトに繋がりますので、酵素は4℃で氷冷して使用して下さい。\\
  
-(4)PCRを30サイクル行うことで、目的DNAは何倍に増幅されるだろうか?\\+__(4)PCRを30サイクル行うことで、目的DNAは何倍に増幅されるだろうか?__\\
 PCRは倍々になりますので、2×2×…を30回、要するに2<sup>30</sup>倍が正解です。 PCRは倍々になりますので、2×2×…を30回、要するに2<sup>30</sup>倍が正解です。
  
-↓(5)以降は最初から答えを提示しても良くないと思ったので、実習終了後に解説を提示します。\\ +__(5)アガロースゲル電気泳動+ミドリグリーンによる染色では、10 ng程度が検出限界である。逆算すれば、サンプルDNAの中にどの位の目的DNAがあれば検出できるか、計算してみよう。__\\ 
-(5)アガロースゲル電気泳動+ミドリグリーンによる染色では、10 ng程度が検出限界である。逆算すれば、サンプルDNAの中にどの位の目的DNAがあれば検出できるか、計算してみよう。\\+今回のPCRサイクル数である30回として計算してみます。(4)で記載の様に2<sup>30</sup>倍に増えますので、ざっくり計算にするために2<sup>10</sup>=1024≒1000=10<sup>3</sup>と近似すると、2<sup>30</sup>≒10<sup>3</sup>×10<sup>3</sup>×10<sup>3</sup>=10<sup>9</sup>となります。30サイクルPCRを行った後の目的DNA量が10 ngに到達するには、目的となるDNAは10 ng÷10<sup>9</sup>=10×10<sup>-9</sup> ng=10×10<sup>-18</sup> gが必要。つまり10 attoグラム(attoは10<sup>-18</sup>の意味)あれば、計算上は30サイクルで検出・可視化できることになる。
  
-(6)ゲル向きを逆てしまどうなるかDNAのアガロス電気泳動原理を考えながら考えてみよう\\+しかし実際反応では、サイクル数よっ反応効率が異なることが知られており、序盤は90~100%(ほぼ2倍ずつ)増幅ていきすが、サイクル数が増えていくと、当然鋳型となるDNA量が増えていき、鋳型DNA濃度>>プライマー濃度となっていきます。PCRはプライマーによってDNAを増幅させる反応ですら、プライマーが鋳型DNAに結合する率が減っていけば、増幅反応が段々鈍ってくることが分かると思います。\\ 
 +他、PCRに用いるDNAポリメラゼは耐熱性といっても、95℃に曝されるは過酷であり、徐々に変性・失活していくことも考えられます。\\ 
 +これら複合的要因により、サイクル数るにつれ倍々でなくなっいく(プラトーに達する)と説明されます
  
-予想しなか位置バンド観察されること多くあるが、このなバンド(DNA産物)はなぜ増幅れただろか?\\+__ゲルの向きを逆にてしまうとどう?DNAのアガロースゲル電気泳動の原理を考えながら考えてみよう。__\\ 
 +DNAはマイナスに帯電しており、生体分子の中でもマイナスがかなり強いです。しがって、電気を通すとプラスの方向吸い寄せられていく。これDNA電気泳動の大まかな原理になります。\\ 
 +では電気泳動において何故わざわざゲルを用意するかというと、原理は資料集などに記載されてい通りです、DNAを大きさによって振り分けたいからです。DNAはプラスの方向に流れと分かっていますので、マイナスの部分にウェルを用意してサンプルを入れ、プラスの方向に展開するの理に適っているというとになります。ゲル向きを逆にしてしまと、展開できるゲルの長が余りありませんで、最悪ゲルの外にDNAが漏れ出てしま、と予想できます。
  
 +__(7)予想しなかった位置にバンドが観察されることが多くあるが、このようなバンド(DNA産物)はなぜ増幅されたのだろうか?__\\
 +これはちょっと難しいですが、色んなパターンが考えられます。\\
 +主要なものの1つとして、**非特異的なDNA増幅**です。教科書を見ていると、目的となるDNAにプライマーが特異的に結合することによって増幅されている絵を良く見ますが、プライマー配列と「似ている」配列があったとしたらプライマーがそのDNA部位に結合し伸長反応を始めてしまう可能性もあります。勿論、ミスマッチがあればあるほど、Tm値(2+4+...という考えで良いです)の計算でいうところ**「歯抜け」**が出ますので、ミスマッチの場合のTm値は、プライマーの全ての残基が結合に参加する場合と比べて下がると考えられます。したがって、PCRサイクルの真ん中のステップである「アニーリング」の温度を下げれば下げるほど、ミスマッチも許してしまい、結果的に非特異的なDNA増幅が多くみられる傾向になります。DNA増幅が特異的か?非特異的か?は、アガロースゲル電気泳動をすれば大体分かることで、非特異的の場合は目的残基数とは全然違うところに出てしまうものです。\\
 +実験的な対処法としては、アニーリング温度を高くすることで解決を図ることが多いです。\\
 +
 +その他、**プライマーダイマー**というパターンもあって、プライマー同士が結合・伸長反応を起こしてしまうことで、雪だるま式に長くなってしまう現象も知られています。プライマーダイマーのパターンもアガロースゲル電気泳動から判別でき、例えば100, 200, 400, 800塩基対...と、階段状に倍々のパターンで見えるのが特徴です。FwとRvプライマーの設計において、勿論お互いが結合しないように設計するのですが、それでも上の「非特異的なDNA増幅」でも議論した様に、ミスマッチを許してしまう条件であればプライマーダイマーが形成されてしまう可能性もある、ということになります。
 +プライマーダイマーに対しての実験的な対処法としては、アニーリング温度を変えたり、またプライマー濃度を1/2, 1/4などにして解決を図ることが多いと思います。
  
 ====アガロース電気泳動==== ====アガロース電気泳動====
 +手技について動画にまとめていますので、良かったら参考にして下さい。
 {{youtube>p3zf-dZDmVg}} {{youtube>p3zf-dZDmVg}}
 {{youtube>cnxdOklDJwE}} {{youtube>cnxdOklDJwE}}
 {{youtube>U3Q0cBAc3Ug}} {{youtube>U3Q0cBAc3Ug}}
2025年度正則高等学校_pcr実験.1765819117.txt.gz · 最終更新: 2025/12/16 02:18 by oshikane