2015年4月
◆概要
口唇裂・口蓋裂は我が国では約500人に1人の割合で発現する口腔領域の先天異常です。適切に治療を行えば9割以上の患者さんは全く健常な成人に近い状態まで治癒させることができます。しかし、健常に近い治癒に至るまでには、数回の手術、言語治療、長きにわたる矯正治療など、成人するまでの治療回数、費用など患者さんの負担は依然大きいままです。
歯学部附属病院では、口唇裂・口蓋裂の治療に関係する多方面の診療科を統括した、本センターを設置しました。このことにより、口唇裂・口蓋裂に特化した横断的治療と臨床研究を行うことが可能となり、新たな治療法の開発を行うとともに我が国の口唇裂・口蓋裂治療成績の一層の向上をめざします。
◆設立の背景(治療60年の歴史と伝統):日本の口唇裂・口蓋裂の臨床研究センターとして
大阪大学歯学部は創設より60年来、口唇裂・口蓋裂の研究・治療に取り組んできました。鼻咽腔ファイバースコープの発明など、この治療について数々の業績も上げてきました。海外でもこの分野では大阪大学歯学部附属病院は知られる存在であります。これまでも多くの患者さんが来院され、治療成績は向上してきましたが、治療には長期間にわたる顎顔面の成長のコントロールが必要であるため、治療期間、手術の回数などの面で、改良すべき多くの課題もあります。したがって患者負担を減じる更なる治療法の開発を行い、これらを達成するためには手術・矯正治療・言語治療・口腔衛生管理などを総括的にとらえた口唇裂・口蓋裂に特化した診療を行うことが重要と考えております。そこで本センターを開設し、診療科横断的治療と研究を行うことを推進することにしました。これにより今後新しい展開の治療法が開発できるものと期待しております。