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厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
医療における安心・希望確保のための専門医・家庭医(医師後期臨床研修制度)のあり方に関する研究

第4回班会議 議事要旨


日時:平成20年11月18日(木)17:00-19:00
場所:国立がんセンター研究所 セミナールーム
出席:土屋(進行)、有賀、海野、江口、岡井、川越、阪井、外山、山田、渡辺
    小川 彰先生(全国医学部長病院長会議会長、岩手医科大学学長)
    嘉山孝正先生(全国医学部長病院長会議専門委員会委員長会委員長、山形大学医学部長)


1.開催挨拶
 土屋班長より、本研究班の発足の経緯、第3回までの議論の概要が報告された。

2.全国医学部長病院長会議の医師後期臨床研修制度のあり方についての考え
 同会議 小川 彰先生よりご講演をいただいた。
(1)日本の医療体制と臨床研修制度による医師不足の顕在化
日本の医療レベルはWHO参加国中1位で、これを少ない医師数で達成している。
  岩手県では病院数が少ないため、救急患者を総合病院で収容、必要な場合は2〜3時間かかる高度救急救命センターに搬送するシステムになっている。
  昭和57年以降、日本では医師養成削減政策がとられ、人口あたり医師数がOECD平均の3分の2と少ない。推移をみると、医師数は少しずつ増えてきたが、臨床研修制度のため医師不足が顕在化し社会問題を引き起こしたと考えられる。
  (2)理想の地域の医師像
  「すべての医師にプライマリケアに対応できる幅広い臨床能力を習得させる」という研修制度の理念はすばらしいが、一方で国民には専門医に診てもらいたい期待もある。
  各二次医療圏にすべての専門医を用意することは不可能であり、社会資源の浪費にもなる。専門医にとっては患者数が少なければ診療能力の低下につながる。
  「理想の地域の医師像」とは、(1)一般診療、(2)緊急時の救急処置、(3)専門医の診療の必要性の判断ができ、(4)自身も専門性を持っていること、である。
  (3)医学生涯教育、臨床研修制度の問題点
  卒前教育の所管が文部科学省、卒後教育の所管が厚生労働省で、これまで両者に一貫性が欠如していた。「臨床研修の見直しのあり方検討会」が文科省と厚労省合同で開催され、今後改善が期待される。
  臨床研修制度の負の影響は、医師不足を加速させ地方の医療を崩壊させ、地域偏在と診療科間偏在が顕著になったことである。
  初期研修2年間は各診療科のマンパワーにならず実働医師数の概算は人口千人あたり1.5人でありOECDの中で最下位である。
  大学で所属医師が過疎地、地域医療を担ってきたが、臨床研修制度以後、入局者が減少し、過疎地医療のサポート体制が完全に崩壊した。外科医の減少も著しい。
  全国医学部長病院長会議は研修制度に対して、平成16年に提言を行った。地域格差拡大、医療荒廃、研究体制弱体化、競争力低下、国民福祉の低下を懸念した。
  若手の医師が専門を選ぶとき、自由になる時間が得られることを求める傾向がある。
  基礎医学者の減少も危惧される。
  (4)日本の低医療費政策と、医師の労働問題
  日本は低医療費政策により、高齢化が進んでいるが医療費は増加していない。
  日本の脳外科の医師はほとんどが過剰労働となっている。大学病院の労働時間が長く最も長い。在院日数短縮のため、医師の負担が増えている。
  (5)医学の生涯教育の重要性と、全国医学部長病院長会議の提言
  平成17、18年に臨床教育制度の迅速な見直しを求める声明を出した。
  医師自らが最新の知識・技術を生涯学習として学び続けられる医学教育が重要。
  臨床実習、生涯医学研修を含む一貫性ある教育システムを構築する必要がある。
  臨床実習前共用試験の確立、診療参加型臨床実習充実、国家試験見直し、研修制度の見直し、マッチング見直し、大学院教育への生涯教育の組み込みを提案した。
  研修病院と大学病院の連携が医師不足の解消につながるのでは。
  (6)家庭医の必要性について
  アメリカの専門医を巡る社会的な基盤が日本と異なる。家庭医が国民に求められているかどうか議論が必要。
  (7)医療医育制度の改革の視点
  医師養成削減政策の見直し、臨床研修制度の見直しと同時に、医療費削減政策の見直しの3点セットが同時に実施されることが不可欠である。
     
 引き続いて、嘉山孝正先生もまじえて、質疑応答が行われた。
  (8)大学医局制度・大学教育の問題点
  医局は臨床研修制度以前には医局員の臨床技能評価を含めたローテーション、地域医療支援を行っていたが、専門外の分野のトレーニングは不十分であった。
  卒前医学教育は総合医の教育にシフトしつつあるが、卒後研修教育が現状では不十分である。一方で医療機関の集約化も必要。地域での医療を担う「理想の地域の医師像」のために卒後の研修プログラムが必要である。
  大学院教育も教育・臨床研究含め見直しが必要である。
  (9)「理想の地域の医師像」と地方の地域医療の問題について
  家庭医に近いが、米国のファミリープラクティスと同じではない。定義が異なり混乱するので、議論の前提として定義づけが必要である。
  提案のような家庭医あるいは総合診療ができる医師が必要。加えて大学がこれまで果たしてきた医師派遣の役割を、地域でどういう形で再現していくか議論が必要。
  (10)医療費
  米国では心臓外科医が減少したため教育制度変更の議論がなされているが、国が費用を拠出している。日本では国の関与がない点が課題である。
  (11)専門医の数・専門性の考え方、専門医の質について
  外科医数、施設の集約化、外科医が担当する診療範囲、診療の質の議論が必要。
  専門医教育制度が、地域医療に大きな影響を与えるため、慎重な議論が必要。
  専門性は技術を評価する外科系分野と、内科系分野の専門性は別個である。専門医の質の評価は科により異なる。

3.事務局連絡
以上


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