大会長挨拶

第47回国立大学リハビリテーション療法士学術大会 大会長
旭川医科大学病院 リハビリテーション部 呂 隆徳

 


 国立大学リハビリテーション療法士学術大会は、今回で47回目を数えます。このたび初めて、北海道旭川の地で開催する運びとなりました。旭川は自然豊かな都市で、上野ファームをはじめ北海道が誇る有数のガーデンがあります。また、私も毎年年間パスポートを購入している旭山動物園や、車で少し足を延ばせば美瑛町、富良野市などで北海道らしい景観を望むことができます。食では、ジンギスカン、スープカレー、旭川ラーメン、海の幸(旭川は北海道の真ん中あたりに位置するため北海道じゅうの新鮮な海の幸が集結します)、北海道の野菜(北海道では広大な土地と気候条件を生かした多くの野菜が生産されています。馬鈴薯、玉ねぎ、とうもろこし、かぼちゃ、にんじん、ブロッコリー、大根、長芋、アスパラガス、ゆり根など)と枚挙にいとまがございません。旭川は、日ごろ患者さんのために身を粉にして働いていらっしゃる皆様がリフレッシュするために、最適な地かと思います。
 さて、本学術大会では「リハビリテーションの来歴を知る」をテーマに掲げました。来歴という言葉は私が敬愛する下條信輔氏(カリフォルニア工科大学教授、生物・生物工学部計算神経系)が用いる言葉で、物理学の「ヒステレシス(履歴効果)」という概念を基にした氏独自の用語法です。履歴効果とは、ある時点である物理的(例えば電磁場の)状態が、その時点での環境パラメータが同じであっても、過去の履歴によって変わってくる事態を指します。これを受けて「来歴」とは、遺伝子と環境、身体と脳の世代にまたがる(また過去数秒のマイクロスケールも含めた)相互作用の痕跡、その総体、といった意味で使います(参考:日本ロボット学会誌、Vol. 39、2021年)。リハビリテーション医療においても同様のことが言えます。すなわち、これまでのリハビリテーションが辿ってきた道(履歴)はこれからの道に相互作用をもたらします。したがって、来歴を知ることは過去・現在のリハビリテーション医療を理解することのみならず、未来のリハビリテーション医療を創造する手助けになると考えます。
 特別講演は、旭川医科大学病院リハビリテーション科教授 大田哲生先生にお願いいたしました。大田先生は慶應義塾大学医学部をご卒業後、同大学リハビリテーション医学教室に入局された生粋のリハビリテーション専門医です。米国ペンシルベニア州立大学運動学教室留学時は姿勢制御の研究に従事し、帰国後は筋電図学的研究、Functional Independence Measure、Brain Machine Interface、ボツリヌス療法、遠隔リハビリテーション医療など幅広い領域でご活躍されており、まさにリハビリテーションのメインストリームと言える講演を聴けると思います。教育講演は、同リハビリテーション科助教 及川欧先生にお願いいたしました。及川先生は北海道大学医学部をご卒業後、神経難病、心身症、バイオフィードバック療法、東洋医学(漢方)、救急医学、災害医療、リハビリテーション医学、アニマルセラピー(動物介在療法)を専門とされ、TOKYO2020で6種目のメディカル担当をしたスポーツドクター兼障がい者スポーツ医でもあり、第56次南極地域観測隊(越冬隊)では医療担当として南極・昭和基地に1年4か月間にわたって赴任されました。新しいリハビリテーションの潮流を感じることのできる講演を聴けると思います。
 一般演題では、国立大学リハビリテーション療法士協議会の理学療法分野、作業療法分野、言語聴覚療法分野で活躍する先生方に座長の内諾を得ることができました。毎年、本学術大会の一般演題発表では白熱したディスカッションが交わされます(建設的な意見が多く、研究初心者でも安心して発表できる学術大会です)。皆様が日ごろおこなっている研究について、発表してみませんか?
 北海道旭川の地で、多くの皆様のご参加を心よりお待ちしております。皆様にとって実りある学術大会を開催できますよう旭川医科大学病院リハビリテーション部一同、万全の準備を進めてまいります。