物自体

(ものじたい thing in itself)

物自体とは、われわれの知覚とは独立して存在するもの、 実際に存在するもののことを指す。 デモクリトスにとっては、物自体は物質であった。 根本的には、ロックにとってもそれは物質であった。 カントにとっては、物自体は=xであった。 わたしにとっては、それは意志である。

---ショーペンハウアー


カントの用語。 「モノジタイっていったい何? それ日本語?」と叫びたくなるが、 Ding an sichというドイツ語の直訳と思われる。 したがって日本語だとは思わない方がよい。

カントによれば、 モノジタイとは、事物のホントの姿のことであり、 われわれの頭の中に現われる事物の姿(現象) と対比される。 当然ながら、事物のホントの姿である物自体は決して認識されることがないが、 認識が成り立つためにはそういうものがあると仮定しなければならない、 とカントは唱えた。

認識論における重要な区別。 形而上学の項も参照せよ。

(12/Oct/2000追記; 15/May/2001更新)


(上のショーペンハウアーの引用は、以下の本から翻訳した。 Arthur Schopenhauer, Essays and Aphorisms, Penguin Books, 1970, p. 55.)


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 28 06:58:05 JST 2000