ロールズ

(ろーるず Rawls, John)

正義っつうのはやなあ、社会制度における第一の徳や。 ちょうど真理っつうのが思想体系における第一の徳みたいなもんやがな。 ある理論がどんだけうつくしゅうて経済的やったとしてもや、 もしそれが真理に反しとったらゴミ箱に捨てるか変更を加えるかせなあかんやろ; それとおんなじで、 法律や制度がどんだけ効率的でうまく整備されとったとしてもや、 もし正義に反しとったら改革するか廃止せなあかん。 一人一人の人間は正義にもとづいた不可侵性を持っとってやなあ、 社会全体のうぇるふぇあ(福祉)でさえそれに優先することはまかりならんのや。 せやからやな、正義は認めへんねんで、 ある人たちが自由を失なうことが、 他の人たちがよりおっきい善を共有することによって正当化されるなんてことは。 正義は許さへんねんで、 少数者に押しつけられる犠牲よりも、 多数者によって亨受される利益の総計がよりおっきくなることの方が 重要やなんてことは。 せやから、正義のある社会ではやな、 平等な市民権を持った人の自由権(りばてぃーず)はや、 もういごかへんもんとみなされるわけや; 正義によって守られてる権利はやな、 政治の取り引きとか社会の利益の計算の対象なんかにはならへんのんや。 われわれが間違っとる理論に甘んじんのが許されんのは、 それよりましなんがない場合だけやわな; それとおんなじでやな、不正義が大目に見られんのは、 その不正義がそれよりもっとごっつい不正義を避けんのに必要な場合だけやがな。 真理と正義は人間の活動の第一の徳やから妥協は許されへんのんや。

---John Rawls

At some point in the 1980s, I think, the Liberal Democrats had a discussion at their conference about whether they should accept Rawls' principles of justice, but it was voted down on the ground that most people couldn't understand Rawls' writings.

---Jonathan Wolff


米国を代表する思想家(1921-2002.11.24)。 現ハーヴァード大学名誉教授。 主著『正義論』(A Theory of Justice, 1971) で熱く正義を語り、規範倫理学の興隆に一役買ったと言われる。 とくに反省的均衡という考えは多大な影響を 及ぼし、今や米国の哲学者や倫理学者はみなこの方法論を用いている。

原初状態正義の二原理善に対する正の優越の項も参照せよ。

(06/06/99)


2002年11月24日に心臓発作で死亡。合掌。


上の引用は以下の著作から。


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Tue Apr 10 17:18:29 JST 2018