囚人のジレンマ

(しゅうじんのじれんま prisoner's dilemma)


ゲーム理論で用いられる用語。 A・W・タッカーによって定式化された。 いろいろな状況設定がなされるが、 言いたいことは、 「合理的な決定が、 自分にとって最善の結果をもたらすとはかぎらない」ということである。 以下でさらに詳しい説明がなされている。 (11/17/99)


囚人のジレンマ

Aは自白しない Aは自白する
Bは自白しない 二人とも無罪--(2) Aは無罪の上、賞金をもらえる
Bは懲役10年--(1)
Bは自白する Bは無罪の上、賞金をもらえる
Aは懲役10年--(4)
二人とも懲役2年--(3)

[数字はAにとっての選好の順位]

容疑者A、Bは別々の取り調べ室で尋問されており、 自分の意思をもう一人に伝えることができない。 警察は少なくともどちらか一人からの自白がなければ 有罪にできない。 警察はAとBに次の三つの条件を出す。

  1. A、Bのいずれも自白しなければ、二人とも無罪になる。
  2. A、Bの二人とも自白すれば、二人とも懲役2年を課せられる。
  3. A、Bのどちらか一方が自白し、他方が自白しなければ、 自白した方は無罪になった上、賞金をもらえる。 自白しなかった方は、懲役10年を課せられる。

さて、Aはどのように考えて意思決定をするか。

Bが自白しないと考えた場合、 Aは(2)よりも(1)を選好するから、自白することを選ぶ。

Bが自白すると考えた場合、 Aは(4)よりも(3)を選好するから、やはり自白することを選ぶ。

そこで、Bがどちらの行為にするにせよAは自白することを選ぶ。 しかし、Bも同様に考えて自白することを選ぶ。 すると、二人とも懲役2年を課せられることになるのである。

もし二人が協力してどちらも自白しなければ、 二人とも無罪になっていたのに、 二人は協力しないことを合理的に選んだのである。 それゆえ、 合理的な決定は必ずしも最善の結果をもたらさない
(11/17/99)


いろいろ参考にしたが、図や状況設定を含め、 特に参照にしたのは次の辞書の'prisoner's dilemma'の項。

Thomas Mautner ed., Penguin Dictionary of Philosophy, Penguin Books, 1996.


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Wed May 10 14:46:46 2000