存在論

(そんざいろん ontology)


議論の途中に、 突然「それは存在論的問題だな」などと言われると、 わからなくてもうなずかざるをえない状況に追いこまれて しまうことがままありませんか。 もっと性格の悪い人は、 「それはオントロジカルな問題だよ」 などと言って議論を優勢に導こうとします。 こういう言葉は先に言った方が勝ちですから、 議論になりそうな気配を感じたら、 すばやく「それはオントロジカルな問題だよ」 と断言してしまいましょう。

実践的な前置きが長くなってしまいましたが、 存在論とは、何が本当に存在するか、 すなわち何が実在するか、 を研究する学問領域です。

したがって、たとえば、 「神は存在するか」というのは存在論的な議論で、 「われわれはどうしたら神が存在することを 知ることができるか」というのは 認識論的な議論ということになります。 他にも、「空間や時間は、実在する何かなのか、 あるいは、それらは実在するわけではなく、 むしろ実在する事物の関係なのか」という問題や、 「道徳的な正・不正の区別というのは、実在するものなのか、 それとも個々人や社会が勝手に決めるものなのか」 という問題なども実在論的な話です。(04/22/99)


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 28 05:17:54 JST 2000