決疑論

(けつぎろん casuistry)


(以下は辞典の翻訳です)

一般的道徳規則の解釈に対する事例分析的手法。 決疑論はまず、 ある所与の一般的道徳規則がいつどのように適用されるべきか についての模範的な事例から出発し、 次に、その規則の然るべき適用の仕方がそれほど明らかでない事例―― たとえば、嘘をつくことが、 僧侶が懺悔によって知らされた秘密を守るための手段であるような事例―― に対し、類推を用いて推論する。一連の事例を考慮することの意義とは、 諸事例の持つ、道徳的に重要である類似点や相違点を明確にすることである。 決疑論の盛んだった時代は、17世紀の前半である。パスカルは、 イエズス会士の間での決疑論の流行や、決疑論の持つ、 一般的道徳規則を制限する傾向に反発して、決疑論に対する反論を著し、 そのためにこの言葉は二度と復活することがなかった (彼の『プロヴァンシャル』、1656年を参照)。 しかし、この言葉が指しているような種類の推論は、 現代の実践倫理において盛んである。 (The Cambridge Dictionary of Philosophy, p. 107) (05/13/99)


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Fri Jan 28 03:36:55 JST 2000