アナクシメネス

(あなくしめねす Anaximenes)


ミレトス三人衆の最後の一人。 タレスが万物は水から生じたと言い、 アナクシマンドロスが万物は「不定形のもの」 から生じたと述べたのに対し、 最後のアナクシメネスは万物は空気から生じたと主張した。

死んだ人は息をしないことから、 ギリシアにおいては息(プシュケー、魂)は生命そのものと考えられており、 そこでアナクシメネスは、ちょうど息が生命を作るように、 空気が世界を作るものと考えた。

彼によれば、空気は薄くなるにつれて熱くなり、最も薄くなると炎になる。 逆に、空気は濃くなるにつれて冷たくなり、最も濃くなると土や石となる。 彼はこのことの証明として、手に息を吹きつけるとき、 口を大きく開けて「ハー」とやると暖かい(空気が薄い)が、 唇をすぼめて「フー」とやると冷たい(空気が濃い)という経験的事実を挙げた。

神を持ちださないこの論証は非常に科学的だが、 実際には間違えている(「フー」の方が「ハー」よりも冷たいのは、 空気が濃いからではなく、空気の流れが速いからである。 扇風機のことを考えてみるとよい)。

また、タレスが地球は水に浮んでいると述べたのに対し、 アナクシメネスは地球は木の葉のように空気によって持ち上げられていると考えた。 このように三人の自然哲学者たちはあらゆる出来事の背景にある原理を 見つけだそうとしたのである。

14/Jan/2002


参考文献


KODAMA Satoshi <kodama@ethics.bun.kyoto-u.ac.jp>
Last modified: Wed Jan 16 05:57:27 2002