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「室生寺の仏たち」

東日本大震災復興記念特別展「室生寺の仏たち」

                                    (室月 淳 2014年8月9日)

仙台市博物館「室生寺の仏たち」展にいってきました.本尊中尊の薬師如来立像を除く,おもだった仏像のほぼすべてが展示されていたようで,かなり力がはいった企画展でした.

一室には土門拳の室生寺金堂,五重塔の写真パネルが飾られていました.めぼしい仏像が一堂に会していたとはいえ,やはり実際の室生寺をたずねたいという気持がつよくわいてきました.

感じたこと.これまで平安初期のいわゆる貞観仏はいまひとつ好みではありませんでした.神護寺や元興寺などにみる代表的な貞観仏はいかにも重厚かつ苛烈で,その存在感はいかにも現世的です.前時代の天平仏が,写実をきわめるなかに人間の真実を表現するという,いかにも近代人ごのみの理想をめざしていたのときわめて対照的です.

土門拳が「日本一の美男の仏」とたたえたこの釈迦如来像も,よくよくみると顔は丸くて目はちいさく,鞍鼻,二重顎と,まるで寅さんみたいな顔をしています.しかしたしかに美しい.国宝たる名にふさわしい最高の表現を実現しています.

時代や様式にかかわらず,あるいは個人の嗜好をこえて,やはりすばらしいものはすばらしい.そしてそれは実際に実物のまえに立たなければついにはわからないのだ,ということを実感させられました.

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カウンタ 2818 (2014年8月10日より)