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!!!東北,あまりにも東北

東北,あまりにも東北な

                           (室月 淳 2015年2月17日)

東北歴史博物館・特別展「みちのくの観音さま」.東北地方はもともと観音信仰の篤いところですが,ふだんはあまり拝観できない像を集めています.見終わったいま,そのあまりに特異な像容の集積に,正直いってわたしはかなり混乱しています.

実はこのおなじ時期に,東京国立博物館では「みちのくの仏像」展をやっていて,勝常寺や黒石寺,天台寺といったいわゆる有名どころの仏像名品はそちらに行っています.だからこのタイミングでおこなわれる企画展にどのような意義づけがなされているのか興味深々でした.

東京国博では,東北地方にもこれだけすばらしい平安仏がありますよ,そしてそのなかには東北特有の特徴もかなり感じられます,といった,まあ教科書的なメッセージが感じとられ,それなりに納得して帰ることができました.それにくらべ今回の仏像展は,あまりにも異相,あまりにプリミティブで,混乱したイメージが頭のなかを渦まいています.図像的にも破格のものが多く,全体としてあきらかなパースペクティブがまとまって結ばれないのです.

これまでだいぶ仏像を見てきたせいか,いつもならば仏像を一目みればだいだいの製作年代が見当つくようになってきたのですが,今回だけはほとんどがとても判断つきません.それだけ「中央」のものさしからははずれたものが多い.これが東北のほんとうの生の姿なのか.

展示されている仏像のほとんどが平安〜室町時代のもので,格からいえば市町村指定かせいぜい県指定のものです.それがこれほどのパワーをもってわたしをかき乱す.そのパワーの正体が見当つきません.国宝や重文といったって,しょせんは「中央」の価値観,好みにすぎないことが腑に落ちました.

東北の仏像史を整理するとしたら,様式や像容,そしてその精神の変遷をどのような形でまとめられるか,そういったことを考えています.おそらく「中央」とはかなり異なるものになりそうです.

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カウンタ 1307 (2015年2月17日より)