■反応	│ストレス stress│　←→ストレス鎮痛　参考1/2-*

• もともとストレスは、工学・物理学の用語で、物体に力が加わった時に生じる「ひずみ」のことを指す。
  

  1865年	Claude Bernard（P 1813〜1878, フランスの生理学者）は、気温や気象など、人間の体を取り巻く環境の条件を、「外部環境」という言葉で呼んだ。 細胞と細胞間を満たす血液とリンパ液などの体液を「内部環境」と呼んだ。 内部環境は、外部環境が大きく変化しても、一定の状態に保たれているとの考え方を示した。
  1915年 1927年	Walter Bradford Cannon（P 1871〜1945, アメリカの生理学者）はClaude Bernardの考えを「恒常性の維持 homeostasis（homeo＝同一 + stasis＝状態）」と名づけた。 Cannonは、Wilhelm Conrad Röntgen（ドイツの物理学者、1845〜1923）が1895年に発見したＸ線を使ってネコの消化管の動きを観察した。 母ネコのそばにいる仔ネコをどこかに連れ去ると、母ネコは不安（？）な表情をみせると同時に、胃腸の運動が止まってしった。そして仔ネコを戻してあげると、再び胃腸が動き始めることを発見した。 イヌにほえたてられ、恐怖や怒りの状態にあるネコは、毛を逆立て、瞳孔が開き、心拍数が増加していたが、胃腸の運動は抑制されていた。さらに血中濃度を調べると、アドレナリンが多量に分泌が増加していることがわかった。つまりCannonは情動がアドレナリン分泌と消化管活動を変化させることも観察した。 キャノンはストレスに対する身体の反応を見出した。「闘争・逃走反応」の実験から、様々な環境因子（寒冷、低酸素、低血糖、痛み）が身体を襲った時には、視床下部、交感神経、副腎が重要な役割を果たすことを明らかにした。 キャノンは、ここではじめて、医学分野でストレスという言葉を用いた。
  1936年	Hans Selye（P 1907〜1982, ハンガリー出身のカナダの病理学者、生理学者）は、有害な因子によって体に生じた歪みと、それに対する防衛（適応）反応を「生体内の歪みの状態」、すなわちストレス↓と呼んだ。 マウスを使って新しいホルモンを抽出する研究をおこなっていたセリエは、どのような物質をマウスに注射しても、必ず共通して現れる３つの症状を発見した。 　第1：副腎皮質の肥大、第2：胸腺や脾臓の萎縮、第3：胃、十二指腸の潰瘍、出血である。 これらの3つの症状は、「汎（一般）適応症候群」あるいは「ストレス状態」と呼び、外部からの強い刺激が加わった場合にも、身体が同じ反応を示すことを立証した。 このような、外部からの原因で身体が示すゆがみを説明するために、「ストレス」という言葉を使うようになった。

  
  

  ホメオスタシス、恒常性　homeostasis Walter Bradford Cannon↑（P 1871〜1945, アメリカの生理学者）が、主著『人体の知恵』 (1932) の中で提唱した生物学上の重要概念 生体内の諸器官は，気温や湿度など外部環境の変化や、体位、運動などの身体的変化に応じて統一的かつ合目的性をもって働き、体温、血液量や血液成分などの内部環境を、生存に適した一定範囲内に保持しようとする性質があり，内分泌系と神経系による調節がそれを可能にしている。この性質をホメオスタシスと名づけた。体温や血糖値の正常範囲外への逸脱は、生体恒常性の異常すなわち病気を意味する。また自然治癒力は生体恒常性の表われと解される。 身体内部の環境を一定に保とうとする働き

  アロスタシス　allostasis 生命体が生命活動をおこなうための必要不可欠なメカニズムであり、それは生体の恒常性の維持あるいは恒常性を維持するために生体のシステムを変化させることを意味している。 ストレスに過剰に反応したり、反応しないのが長く続くと、元に戻ることができなくなり、ついには病気に至ってしまう。 命維持のために（フィードバック制御で）内的環境の一定性を保つ「ホメオスタシス」に対して、Sterlingの提唱したアロスタシスという概念は、変化を通じた安定性である。 生生存維持のための恒常性とも言えて、例えば血圧、血糖値などが記憶・予測などの高次機能によってフィードフォワード制御を受けることである。アロスタシスは脳の高次機能と関連するストレス応答を想定しているが、むしろ、恒常性との関連で興味深いのはアロスタティック状態やアロスタティック負荷といった概念である。 ストレッサーによる環境からの要求や圧力に対して、それらの状況に対処するためのエネルギーを提供したり、身体の調整機構による変化を通じて環境に適応したりしていく過程をいう。 近年、ストレスが生体にどのような影響を及ぼし、それがどのような生理的変化を介して、最終的に健康病気の結果に反映されるのかについて説明する新しい考え方、アロスタシス理論が提案され、その客観的証拠が集積されている(McEwen & Lasley, 2002)。

  
  

  セリエのストレス学説 Hans Selye↑（P 1907〜1982, ウィーン生まれのハンガリー人→米国→カナダの生理学者）は、「外界からのあらゆる要求に対する生体の非特異的な反応」をストレス↓と定義した。 Selyeは、「どのような時にも、ストレスを生じさせるもの」をストレッサー↓と定義した。 ストレッサーはACTH分泌を増加させる有害刺激をである（1936）」。 外界からの有害作用（ストレッサー）を受けると、下垂体から放出されるACTHの放出の増加、副腎皮質から放出されるコルチゾルの増加し（---HPA系）、セリエの3徴候が出現したと考えた。 ストレッサーに対する生体の適応現象を「汎適応症候群↓」と提唱し、ストレス学説の基礎を築きあげた。

  
  
  
• 医学で定義している「ストレス」という用語は、一般的に使われているのと少し異なる。
• 生理学用語における「ストレッサー」は、一般的に使われている「ストレス」に近い意味である。
  

  stresser

  Hans Selye↑は、ストレスを引き起こす生体に加えられる外部からの刺激、環境因子をストレッサーと表現した。 物理的ストレッサー、化学的ストレッサー、生物学的ストレッサー、精神的ストレッサーに分けられるが、近年特に問題となっているのは、精神的ストレッサーである。 物理的ストレッサー 温度、光、音、睡眠不足　など 化学的ストレッサー タバコ、アルコール、食事、大気汚染、ホコリ　など 生物学的ストレッサー 細菌、ウイルス、カビ、花粉　など 精神的ストレッサー 不安、不満、怒り、喜び、悲しみ　など 社会的ストレッサー 家庭環境、職場環境　など 急性ストレッサー 痛み、外傷、大出血、急性細菌感染、高熱、寒冷環境、低血圧、低血糖、死の危険、恐怖、大変な驚きや悲嘆、精神的ショックなど 急性ストレッサーは視床下部からCRFとAVPの両者の放出を促進させる。その両者がACTHとグルココルチコイド分泌を促進する方向に作用する。 慢性ストレッサー 急性ストレッサーとしてあげた諸刺激が数週間以上にわたり繰り返される慢性刺激状態：例えば、心理的ストレッサー、慢性炎症、慢性感染症など 視床下部のAVPの増量は認めるものの、CRFは相対的に低下する。 視床下部のCRFは低下するにもかかわらず、ACTH・グルココルチコイドはCRFレベルに不相応に血中に高い状態が出現する。例：神経性食欲不振症、うつ病など CRFに代わってAVPがACTH（やグルココルチコイド）の分泌を刺激する。つまり慢性ストレッサーの加えられている状態はHPA系は正常な相互関係（下位ホルモンによるネガティブ・フィードバック）を失う。 しかも、生体にとって有害な環境因子だけでなく、よい環境因子も「ストレッサー」に含まれる。

  stress 　←→resilience

  ストレスは因子ではなく、生体の状態 生体が外部から刺激を受けて緊張やひずみの状態を起こした時に、これらの刺激に適応しようとして生じる生体の内部に非特異的な反応 Selye↑は「外界からのあらゆる要求に対する生体の非特異的な反応」をストレスと定義した。有害な因子によって体に生じた歪みと、それに対する防衛(適応)反応を「生体内の歪みの状態」と考えた。 ストレス時、体内では環境因子に適応しようとして、脳の視床下部下垂体-副腎皮質系：HPA系によるホルモン分泌が増加し、自律神経系、免疫系が総力をあげて生体防御機構が働く。

　セリエの「汎（全身）適応症候群」General Adaptation Syndrome：GAS

第1期：警告反応期 alarm reaction 身体に有害なストレッサーに対する警報を発し、ストレスに耐えるための内部環境を急速に準備する緊急反応をする時期 生体の抵抗力が低下し、副腎、リンパ系、消化器系に変化が現れる。 内分泌腺からホルモンが出て、瞳孔が散大し、心拍数と呼吸数が増加する。 血糖値があがり、汗が出て、消化作用が遅くなる。 警告反応期は、さらに、突発的なストレッサーの有害刺激を受けて、ショックを受ける“ショック相”とそのショック状態を脱け出して本格的なストレスへの適応反応を始める“反ショック相”とに分けられる。 ショック相 （受動的反応期） 外部環境から突然の刺激を受けて、それに十分対応できずショックを受けている状態であり、自律神経系のバランスが崩れて『心拍低下・血圧低下・体温低下・血糖値低下・筋緊張の弛緩・血液濃度の上昇』などの現象が見られ、いまだ外部環境に適応できていない状態と言えます。 ショック相の持続期間は、数時間〜１日程度。 反ショック相 （能動的反応期） ショック相で受けた突然のショックから立ち直って生体のストレス適応反応が本格化し始める時期。 脳はストレッサーの有害刺激を受けると、視床下部からCRFを下垂体へと分泌して、下垂体のACTHとβエンドルフィンの分泌を促進する。 ACTHを受け取った副腎皮質からはコルチゾルが分泌され、副腎髄質からはアドレナリンやノルアドレナリンが分泌される。 それらの生体ホルモン分泌によって、ストレスへの耐性や自己防衛反応を高める。 コルチゾルは体内の物質代謝を活性化させて、栄養素を吸収し分解するだけでなく、外部の異物やウイルスを排除する免疫系に作用して感染などの危険から身体を守り、抗炎症作用を発揮する。 アドレナリンは交感神経を興奮させて、怒りや恐怖の情動を起こさせるだけでなく、心拍や血圧、体温を高めて筋肉を緊張させ、外敵との戦闘態勢を整える役割を果たす。

第2期：抵抗期 stage of resistance 警告期で見られた症状が消失し、抵抗力も回復し、生体は正常な状態を取り戻したかのように見える。 ストレスが続くと身体は警戒態勢をとったままになり、警告反応期の状態は回復しないようになる。

3期：疲憊期 stage of exhaustion 長期にわたるストレスに生体が適応できなくなり、適応のためのエネルギーが疲憊し、警告反応の症状が再発する。 長期にわたるストレスに生体が適応できなくなり、適応のためのエネルギーが疲憊し、警告反応の症状が再発する。そして、ついには死に至る。死にいたることもある。

ストレスに反応する生体システム

ストレス刺激は末梢から感覚神経を介して脳に送られ、情報処理が行われた後、内分泌系、自律神経系、運動系を通してストレス反応が表出される。 内外環境からのストレス刺激に反応する脳構造 青斑核のノルアドレナリン神経 室傍核のCRF細胞（HPA系の起点となる細胞） 扁桃体中心核や中脳中心灰白質（恐怖反応を仲介） 中脳皮質DA路 大脳辺縁系では、ストレス刺激に対する評価を行う領域である。 　大脳辺縁系への感覚入力は 大脳感覚野と連合野から 視床非特殊核から 延髄孤束核から室傍核や扁桃核への直接の入力系はペプチド作動性であり、エンケファリン、ソマトスタチン、NPY、ニューロテンシン、ダイノルフィン、ボンベシン、インヒビンｰβの存在が明らかにされている。 視床下部や他の辺縁脳から 体液性情報の直接感受部位からなどの入力系が考えられる。 ストレス刺激に関する情報は大脳辺縁系で処理された後、神経伝達物質等を介して視床下部へと伝えられる。

　　　↓
• 視床下部室傍核はストレス応答の司令塔であり、SAM系とHPA系の2つのシステムで担われてる。　→参考

  SAM axis

  視床下部〜交感神経〜副腎髄質系 sympathetic-adrenal-medullary axis 　---情動性ストレス刺激→交感神経系 副腎髄質や交感神経末端からアドレナリンとノルアドレナリンが分泌される。 視床下部 室傍核 mpd →→→ 　 脊髄側角 　 ACh →→→ 副腎髄質 交感神経節 アドレナリン →→→→→→→→ ノルアドレナリン 　 標的器官 　 ストレス反応での心拍数の増加、血圧上昇、発汗、血糖上昇、覚醒、闘争反応等の基礎反応の原因となる。 →SAM系による行動制御

  HPA axis

  視床下部〜下垂体〜副腎皮質系：hypothalamic-pituitary-adrenal axis 　---情動性ストレス刺激→神経内分泌系　 視床下部 室傍核 CRF →→→ 下垂体 前葉 ACTH →→→ 副腎皮質 　 グルココルチコイド →→→→→→→→→ 標的器官 視床下部 CRF-ACTH-グルココルチコイドはヒエラルキーを形成している。 視床下部がHPA axisの制御に主要な役割を果たすという概念は、Geoffrey Harris（1913〜1971, 神経内分泌学の父）によって初めて提唱された。 視床下部抽出物を用いてRoger Charles Louis Guillemin（1924/1/11〜, Selye↑の弟子、1977年ノーベル医学・生理学賞受賞）とRosenbergおよび、SaffranとAndrew Wiktor Schally（1926/11/30〜, 1977年ノーベル医学・生理学賞受賞）の2つのグループがそれぞれ視床下部抽出物に含まれる因子がin vitroで下垂体前葉細胞から副腎皮質ホルモンの放出を刺激できることを観察していたが、CRFを単離することはできなかった。 CRF分泌にはサーカディアンリズム（血中濃度が朝方に高く、夜間に低下す）やパルス変動の機序で分泌変化を生じると、そのまま下位のACTH、グルココルチコイドも同様の変化を二次的、三次的に起こす。 ACTHを介して反応するグルココルチコイドの作用こそストレス時には重要である。 グルココルチコイドの作用は血圧上昇、血糖上昇（糖新生の増加）、心収縮力の上昇、心拍出量の上昇、さらにはカテコールアミンの作用に対しては補助作用を示すなど多方面にわたっています。 ストレス状態におかれた個体にとってグルココルチコイドはカテコールアミンとともに重要な生体防御ホルモンである。 ストレス時に、視床下部から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン（CRF）が分泌され、CRFによって下垂体前葉からACTHとβエンドルフィンは1:1の割合で放出される。←→ストレス鎮痛 　　　↑↓ ストレスによって分泌されるCRFは過敏性腸症候群IBSの消化管運動を亢進させる。 →HPA系による行動制御

  
  
• 長い間の心理的ストレスや一時的な強いストレスは、ホメオスタシスを低下させ、そこから器質的病変、そして痛みも発生する可能性もあるだろう。

ストレスホルモン　stress hormone

• ストレス刺激によって体内に放出され、ストレス反応を引き起こすホルモンの総称
• ストレスホルモンには、下垂体前葉ホルモンである副腎皮質刺激ホルモン、プロラクチン、下垂体後葉ホルモンであるバソプレッシン、オキシトシン、副腎皮質から分泌されるコルチゾール、レニン、そして副腎髄質から分泌されるアドレナリン、ノルアドレナリンなどがある。

ストレスに対する自己防衛行動　←→マウスの行動/痛みの行動学的研究/侵害受容行動/ストレスに対する自己防衛行動/情動行動

• ストレス反応に対処する戦術に２つの選択肢がある。

  SAM系↑による行動制御→攻撃または闘争・逃走反応 Walter Bradford Cannon（P 1871〜1945, アメリカの生理学者）の｢fight or flight response」の緊急反応として知られたシステムである。 ネコに犬を見せて情動性ストレス刺激を与えると､その脅威に対処する防御反応が直ちに現れ、同時に副腎髄質からのアドレナリン分泌が起こり、自律神経系もそれに適した方向に変化する。 このタイプのストレス反応は個体が積極的に対処できるという意味で、心理的にポジティブなものである。 この防御反応の中枢は、PAGの外側部であるとされる｡

  HPA系↑による行動制御→フリージング Hans Selye（P 1907〜1982, ウィーン生まれのハンガリー人→米国→カナダの生理学者）↑の研究で明らかとなってきたHPA系である｡ ストレスが強すぎたり、長く続く場合、あるいは、個体がストレスに対処できない場合には、受動的ストレス反応が現れる。闘わずにじっと動かなくなり（フリージング）、行動意欲も減退する。 この時、HPA系が活性化されて、いわゆるセリエの3徴候が出現する｡ このタイプのストレス反応では、不安や抑うつなど心理的にはネガティブな面が現れ、さまざまのストレス性疾患が発生する。 ただし、この受動的ストレス反応は個体の存続という意味では大切であり、進化の過程で獲得された重要な適応機構である。 この防御反応の中枢は、PAGの腹外側であるとされる｡

• 個体や種のちがい、状況的脈絡により生存率を高めるほうが選択されている。

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ストレスの緩和　参考1

• ストレスを緩和させるには、HPA系↑およびSAM系↑を逆転させる必要がある。
• ストレス回避や安静・睡眠は消極的な方法である。
• 積極的な制御系の逆転は、涙を流すことである。

  流涙 lacrimation (tearing) ジェームズ・ランゲ説---悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい ドラマを見たりして、涙が溢れるときの神経経路：共感に関与する内側前頭野が興奮し、その下行性の情動信号が脳全体を副交感神経優位状態にする。 予兆としての内側前頭野における緩やかな血流増加と、それに続く一過性の急峻な血流増加がある。後者が出現すると、激しい涙と泣きが継続し、一時的に自己制御できなくなる。自律神経のバランスは、覚醒状態にありながら、極端な副交感神経の興奮状態にシフトする。 情報は脳幹の上唾液核に伝達され、激しい流涙を発現させる。 内側前頭野　→　上唾液核　→　中間神経　→　大錐体神経→　翼口蓋神経節　→　頬骨神経　→　涙腺 号泣状態の後は、心理的には、混乱などの情動を消失・低下させてスッキリとする爽快感をもたらせてくれるようです。 William H. Freyは、「人はなぜ泣くのか」を研究した。涙が流れる時、コルチゾール、ロイシン-エンケファリンが分泌され、涙の中に入る。フレイは、涙に精神的なストレスを解消する働きがあるのではないかと考えた。 群発頭痛やTACには流涙が伴われる。

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ストレス関連疾患
　→心身症/うつ病性障害/不安障害/機能性消化管障害

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　→ストレスモデル
　→SARTストレス

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□心的外傷後ストレス症候群　Post Traumatic Stress Disorder：PTSD　←→恐怖/恐怖条件付け文脈学習/記憶

心的外傷、トラウマ　psychological trauma　←→トラウマセラピー ピエール・ジャネ（Pierre Janet, 1859/5/30〜1947/2/24）が1887年に心的外傷の意味で「トラウマ（trauma）」という述語を作り、研究を行った。 外的・内的要因による肉体的及び精神的な衝撃（外傷的出来事）を受けた事で、長い間それにとらわれてしまう状態で、また否定的な影響を持っていることを指す。 その心の反応は不安、イライラ、抑うつ、不眠などの症状として現れるが、ほとんどは一過性で時間とともに改善する。 心的外傷が突如として記憶によみがえり、フラッシュバックするなど特定の症状を呈し、持続的に著しい苦痛を伴えば、急性ストレス障害であり、一部は1か月以上の持続によって、心的外傷後ストレス障害：PTSDともなりえる。

フラッシュバック、心理現象　flashback 強いトラウマ体験受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、同様に夢に見たりする現象 PTSDや急性ストレス障害の特徴的な症状のうちの1つである。



• PTSDとはトラウマ体験が起因となって発生するストレス障害
• 心に加えられた衝撃的な傷が元となり、後になって様々なストレス障害を引き起こす疾患
• ベトナム戦争からの帰還兵に多くみられて問題になり、日本では地下鉄サリン事件や阪神大震災後でもPTSDが注目された。
• 米国にはPTSDに苦しむ兵士は少なくとも250,000人いると言われている。
• トラウマには事故・災害時の急性トラウマと、児童虐待など繰り返し加害される慢性の心理的外傷がある。
• 強烈なストレッサーに心と身体の両方が襲われ、激しい無力感や持続する恐怖感、興奮状態に悩まされるほか、うつ病などの精神的な症状や、アルコールや薬物依存を招く心の後遺症である。

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• PTSDやパニック障害などの不安障害の患者では、海馬や前頭前野による恐怖記憶の消去学習過程や抑制制御機構が機能不全に陥っている可能性が示唆されている。
• 恐怖体験により恐怖記憶が形成された後に発症するPTSDの発症の原因は、恐怖記憶が益々強くなる「過度の記憶再固定」や、恐怖記憶からの恐怖感から脱することができない「記憶消去の異常」と捉えることも可能である。　参考1
• 脳内タンパク質の一種であるアクチビンの活性化が恐怖記憶の再固定化に関与する。
• PTSDの治療：持続エクスポージャー療法（長時間暴露療養）、ストレス免疫訓練、認知療法、認知処理療法、眼球による脱感作：EMDR、再処理など
• PTSDの治療のエクスポージャー療法（行動療法）は消去学習の基づいていると考えられる。
• エクスポージャー療法にD-サイクロセリンを処方すると、消去が促進される？
• マウスPTSDモデル：社会的敗北ストレス
  社会的敗北ストレスマウスにトラウマ体験後にメマンチンを投与すると、トラウマ記憶忘却と、トラウマ体験による病的症状(不安の亢進)が改善される。社会回避記憶の忘却はPTSDの治療につながる可能性がある。＠　←→高架式ゼロ迷路テスト　2/3

  脆弱性　vulnerability　←→記憶の脆弱性 もろくて弱い性質または性格 コンピュータのOSやソフトウェアにおいて、プログラムの不具合や設計上のミスが原因となって発生した情報セキュリティ上の欠陥 ストレス脆弱性モデル Diathesis-stress model 精神疾患の発症を説明する標準的な理論 日本語では、脆弱性ストレスモデル、素因ストレスモデルとも呼ばれる。 ストレス脆弱性モデルによれば、発症しやすい素質と、その人の限界値を超えるストレスが組み合わさった場合、人間は精神疾患を発症する。 ストレスに対するレジリエンスのある人は、強いストレスを受けても精神疾患を発症しないが、脆弱性のある人はそれによって発症する。 ストレス脆弱性モデルは心理学の多くの分野で、とくに精神病理の発症の研究に用いられている。生まれつきの特徴と養育環境が相互作用して、生涯にわたる精神疾患の発症しやすさ (susceptibility, 感受性) となることを理解するために、このモデルは有用である。 ストレス脆弱性モデルは、誰が発症し、また誰が発症しないかを判別する補助にもなる。例えば、うつ病においては、同じストレッサーにさらされた場合でも、Aという人がうつになる一方で、Bという人がそうならないことを説明する助けになる。

  ストレス耐性　stress tolerance ストレス反応を抑制することによって不適応状態に陥らないようにする「強固さ」を意味する。

  レジリエンス　回復力　resilience　参考1/2 「脆弱性」の反対の概念であり、自発的治癒力の意味である。 「精神的回復力」「抵抗力」「復元力」「耐久力」などとも訳されるが、訳語を用いずそのままレジリエンス、またはレジリアンスと表記して用いることが多い。 元々はstressとともに物理学の用語である。ストレスは「外力による歪み」を意味し、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」として使われ始め、精神医学では、ボナノ（Bonanno,G.）が2004年に述べた「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」という定義が用いられることが多い。 resilienceの語の初出はイギリスであり、1600年代から「跳ね返る、跳ね返す」という意味で使用され，1800年代になると「圧縮（compression）された後、元の形、場所に戻る力、柔軟性」の意味で使用されるようになった。 Charneyは2004年に「アロスタシス」という」という概念を提唱し、それを構成する要素としてコルチゾールに始まり、セロトニンを含む11の生理学的ファクターをあげている。しかし、レジリエンスは生理学的ファクターだけではない。 心理学におけるレジリエンスとは、社会的ディスアドバンテージや、己に不利な状況において、そういった状況に自身のライフタスクを対応させる個人の能力と定義される 。それら不利な状況やストレスとは、家族、人間関係、健康問題、職場や金銭的な心配事、その他より起こり得る 。 1970年代には貧困や親の精神疾患といった不利な生活環境（adversity）に置かれた児童に焦点を当てていたが、1980年代から2000年にかけて、成人も含めた精神疾患に対する防衛因子、抵抗力を意味する概念として徐々に注目されはじめた。 2007年にAhmedが、目に見えやすい性格的な特徴を「脆弱因子」と「レジリエンス因子」にまとめたが、「レジリエンス因子」は「脆弱因子」のネガではない。「脆弱因子」を持っていたとしても、「レジリエンス因子」が十分であればそれが働き、深刻なことにはならない。 「メンタルヘルス」と「レジリエンス」の違いは、「メンタルヘルス」が精神疾患に対する予防的な観点から考えられているのに対して、「レジリエンス」は心をどう鍛えるか、折れない心を日々どう育てていくかを考えていく対策である。 「ストレス耐性」と似ているが、ストレス耐性がストレス反応を抑制することによって不適応状態に陥らないようにする「強固さ」を意味するのに対して、レジリエンスは、一時的に不適応状態に陥ったとしても、状況に応じて自らを柔軟に変化させて回復していく「しなやかさ」を意味するところに両者の違いがある。 大地震に被災したといったような共通の外傷体験があったとして、ある人はPTSDになり、ある人はPTSDにならないといった現象が起こる。 これまでの精神医学は疾患の原因や危険因子、脆弱性を明らかにしようとする立場からの研究によって発展を続けてきた。 これまでの精神医学では、なぜこの人がPTSDになったのかという観点に基づく病因・病態研究がほとんどであったが、同じ外傷体験を有しながら、なぜPTSDに至らなかったかというところに注目していくのが、レジリアンスの概念である。 レジリアンスの概念は病因論に立脚するものでなく、回復論的な立場から眺めるところが特徴であり、同じ外傷体験を有しながらなぜPTSDに至らなかったのかというところに注目していくというものである。 レジリアンス概念に規定するものとして、二つの要素が必要であるといわれている。一つはストレスや外傷体験といった個人にとってのリスク要因があることであり、もう一つはその状況から最終的にはプラスの結果（positive outcome）に至るということである。

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動物のストレスモデル　←→動物のストレスモデル
　→拘束ストレス/間欠寒冷ストレス/強制遊泳ストレス/水浸ストレス/社会的敗北ストレス/飼育密度によるストレス/長期間社会的隔離/幼少期ストレス/母子分離ストレス
←→刺激豊かな環境/自発運動

□拘束ストレスモデル immobilization stress, restraint stress

• 動物を拘束し動けなくするストレス
• 拘束するための方法はいろいろあり、円筒形のプラスチックや金網に包み込む方法、動物を仰向けにして板の上に絆創膏などで固定する方法など
• 井辺 弘樹先生

□間欠寒冷ストレスモデル　Specific Alternation of Rhythm in Temperatur：SARTストレス
　=repeated cold stress：RCS 　=intermittent cold stress：ICS　　参考2/2/3/4/

• SARTストレス動物は自律神経失調症や線維筋痛症のモデル動物
• 動物を昼間、1時間毎に室温と寒冷に交互に暴露し、夜間は寒冷にて飼育するストレス
• 低温（4°C）と常温（22°C）の2つのコンパーメント間でラットを往復させることで、温度差によるストレスをラットに繰り返し与える。
• IBSやFMSのモデル
• ノイロトロピンの薬効はSARTストレスで判定している。

□強制遊泳ストレス　forced swim stress　　←→ポーソルト強制水泳テスト

• 強制遊泳ストレスは古くから用いられていた
• Porsolt　直径18cm,高さ40cmの透明な円筒形のシリンダーに25°Cの水を15cmの高さまで入れ、その中にラットを入れる。

□水浸ストレス　water immersion stress　参考1/

• ラットのケージの底1cm にを水入れる。足首までの高さ
• うつ病モデル、慢性疲労モデル、線維筋痛症ストレスモデル

□社会的敗北ストレス　social defeat stress：SD　参考1/2/3/1
　chronic social defeat stress：cSDSモデル

• オスマウスの縄張り本能を利用したもので、うつ病モデル
• マウスPTSDモデル
• ラット：Wistarラットをより大きなLong-Evansラットのいるケージで共存させることにより、社会的回避（引きこもり）や快感消失などの抑うつ関連行動を起こさせる方法
• マウス：Sam A Goldenらにより、プロトコールが発表された。1/2
• ICR(CD1)マウスのホームケージにC57BL/6Jマウスを侵入させると、ICRマウスはC57BL/6Jマウスを攻撃する。５分間攻撃させたのち、仕切板の反対側へC57BL/6マウスを移し、24時間おく。翌日ペアを変えて、同様に精神的ストレスをC57BL/6Jマウスに与え、この作業を10日間繰り返す。最初は、C57BL/6Jマウスは、ICRマウスから攻撃を避けるために、逃げ回るが、数日繰り返すうちに、すぐに前脚をあげ、負けを認めるポーズ（服従）をとるようになる。
• 高架式十字迷路テスト/高架式ゼロ迷路テスト/やソーシャル・インタラクション試験で評価する。
  
  
• C57BL/6Jマウス（約30グラム）に、体が大きく周囲を威嚇するICRマウス（約40グラム）を1日10分間、10日連続で近づけて、恐怖体験を覚えさせるとPTSD様の不安行動が認められた。オープンフィールド内に設置した筒の中に入れた大型マウスに対する回避行動を測定し、大型マウスを記憶しているか評価した結果、社会性相互タスクではトラウマ体験マウスは大型マウスに近寄らず、距離をおく。高架式ゼロ迷路テストで不安行動を評価すると、高所を怖がり、壁のない通路を避けた。メマンチン投与が社会回避記憶の忘却と、PTSD様の不安行動を改善する。　←→慢性疼痛の恐怖ｰ回避モデル　参考1/2/3

□代理社会的敗北ストレス　chronic vicarious social defeat stress：cVSDS、VDS　

• 社会的敗北ストレス↑では、攻撃性の高いマウスと直接接触させるので、身体的ストレスも負荷されるが、実際に攻撃を受けるのではなく、他の個体が攻撃を受けている現場を目撃させることで、精神的ストレスのみが与えられる。
• 代理社会的敗北ストレスによる精神的ストレスのみが負荷されたマウスで、海馬における神経新生が低下し、その新生神経細胞生存率の低下はフルオキセチンの慢性投与で回復　参考1

□飼育密度によるストレス　crowding stress, aggregation stress

□長期間社会的隔離モデル　Social isolation　参考1

社会的孤立、ソーシャルアイソレーション　social isolation 家族や地域社会との関係が希薄で、他者との接触がほとんどない状態。単身世帯の増加、婚姻率の低下、若者の社会的自立の遅れなどが背景にある。 客観的に見て、その社会の中で居場所、社会的な安定性を持たない社会的集団についていわれる。 たとえば、若者、寡婦、高齢者、独居生活者、学生、婚外子、マイノリティに属する外国人、失業者、リストラ退職者、AIDS、ハンセン病など社会の中で脇に追いやられがちな疾患を抱えている人たち、被差別集団に属する人たちなど。 独居生活を送っていても、家族や友人・知人との交流が保たれていれば社会的孤立とは呼ばれない。対して、同居する家族がいても他人との交流が乏しければ、社会的孤立に陥る場合もある。 若者が社会的孤立する主な原因としては、人間つきあいの希薄化が存在していて、この原因としては近年悪化してきている雇用情勢が考えられている。 米国が深刻な社会問題となっている無差別殺人、オピオイドクライシスなどの背景にも社会的孤立が存在すると言われている。

• 長期間社会的に隔離されていたげっ歯類は、不安障害や、満足を感じとる機能の不全を示す。このうつ状態に似た症状は抗うつ薬で治療でき、薬物療法で不安症状が抑えられる仕組みについて新たな情報が得られている。
• E Nestlerらは、ケージに単独で飼育され、社会的相互作用を断たれているラットやマウスが、異常な性行動をとったり、砂糖水を好まなくなったり、不安行動をとったるするなど抑うつ行動をあらわすことをみつけた。この長引くストレスは、側坐核shellのCREBの活性を低下させる。側坐核shellは、ヒトの動機づけ刺激や情動刺激に応答する脳領域として知られる。三環系抗うつ薬で長期間治療したところ、このような行動を回復でき、CREB濃度が元に戻ったが、短期間の治療は有効ではなかった。
• この研究は長期の社会的隔離に基づくうつ状態の動物モデルとなるだけでなく、抗うつ薬治療により不安症状が緩和される過程の新たな機構を与えるものである。

□幼少期ストレス　Early life strss：ELS　←→愛着障害
□母子分離ストレス　Maternal separation：MS　参考1

• 幼少期の虐待や育児放棄によるストレスが、HPA axis系などのプログラミングに影響を及ぼし、成長過程及び成長後の脳の機能・構造に重大かつ継続的な諸問題を引き起こし、成長後にうつ病、心的外傷後ストレス障害（PTSD)、薬物依存などに罹患する確率が上昇することなどが報告されている。
• 「幼少期の養育環境が、DNAのメチル化やヒストンの修飾といったエピジェネティックな機構により特定の遺伝子の発現を長期にわたり変化させ、生育後の脳の神経回路形成や可塑性、内分泌の調節機構などに影響を与える」可能性が考えられている。
  
• 母子分離実験はラットやマウスで行われるが、さまざまな母子分離法・表現がある！　参考1
  
  

  対照群 ○Control ＝NH:Non-Handling ＝SRR:Standard facility rearing ＝AFR: Animal facility rearing

  標準的？な母子分離： ●MS:Maternal separation ＝NMS:Neonatal maternal separation ＝RMSR:epeated maternal separation ＝HMS 180:Handling maternal separation 180 PND1(or 2)~PND14　の連続の母子分離（：RMS） 1日3時間　の母子分離（：HMS 180）

  母子分離マウスを1匹1匹隔離 ●MD:Maternal deprivation ＝ED:Early deprivation

  生後1日だけの母子分離： ●SMS:Single time Maternal separation　←→RMS 生後1日だけ 24時間

  時間の短いの母子分離： ●HMS 15:Handling maternal separation 15　←→HMS 180 PND1(or 2)~PND14 1日15分

  仔マウスの交換： ●Cross -fostering

  
  
• 母子分離によりneurosphere　増加
  
• 母子分離ストレスで、神経新生は亢進するか？
  
  
• 母子分離ストレスによりコルチコステロンの放出が増加するか？（1/1）
• 海馬がHPA axisを抑制的に作用するのに対し、扁桃体が促進作用を示すことが知られている。
• 母子分離ストレスにより、成体の海馬のグルココルチコイド受容体遺伝子のプロモーター領域のDNAメチル化はが亢進し、グルココルチコイド受容体の発現量が低下する。その結果、HPA axisのネガティブ・フィードバックが障害される。
  　←→Stress hyporesponsive period：SHRP　ラットやマウスでは生後2週目頃まで、ストレスに対してHPA 系が反応しないストレス低反応期　参考1
• HPA axisを上昇させる母子分離と、下降させる母子分離とがある。1匹1匹隔離する母子分離とHandlingはHPA axisを下降させる。　1
• 母子分離ストレスにより、成体の視床下部室傍核のアルギニンバソプレッシン遺伝子のプロモーター領域のメチル化はが低下している。その結果、HPA系のネガティブ・フィードバックが障害される。
  
  
• 里親哺育法　クロスフォスタリング　cross-fostering

  里親哺育法　クロスフォスタリング　cross-fostering* 出生前および出生後投与による出生後の影響は、児動物における出生前もしくは出生後、またはその両者に障害としてあらわれる。 発育上の変化は、出生前および出生後の発育中の動物に対する化学物質の影響によるばかりでなく、母動物に対する影響を介して生じることがある。 授乳または母動物の管理が影響を受ければ、母動物の生理または行動の変化が児動物の行動に影響を与える可能性がある。この点の調整を図るため、里親哺育 法（cross-fostering）を用いて、出生前曝露を受けた児動物と非曝露群の母動物、またそれぞれの母動物および児動物とを交差するように組み合わせて哺育させる実験手法が開発された。この試験法には明らかにより多くの動物および資源が必要であり、それゆえスクリーニング試験としては用いられない。しかし、追跡試験など、初期スクリーニング試験で認められた作用についてさらに調べるような場合には有用である

  • ラットのCross -fostering　参考　北大/PLoS One 2014/Biol. Psychiatry 2015
    
  • HPA axis過活動により、恐怖条件付けテストのfreezing level上昇
    
  • 扁桃体におけるニューロテンシンNTSR1のmRNA発現が減少、NTSR1遺伝子プロモーター領域を含むDNAメチル化は亢進　←→参考1
    
  • ADP細胞培養の神経分化能低下、レチノイン酸受容体RARαの遺伝子発現低下、RARαプロモーター領域のDNAメチル化が亢進
  
  

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  養育行動　parental behavior　参考1/ 「子（offspring）の生存可能性を高めるような親（parent）の行動」の総称 maternal care　参考1/2/3/4/5 high maternal care high-LG-ABN　：LG (licking & grooming) -ABN (arched-back nursing) 母ラットから多く毛づくろいを受けたり、舐められたりした仔ラットは成長後にストレス耐性が高まり、不安行動が低下する。あまり毛づくろいされなかったラットと比較して海馬のグルココルチコイド受容体の発現量が多い。 不遇な養育環境で育った仔ラットが成長後に複数のストレス脆弱性を示すことを報告している。最近の彼らの低養育・高養育母親ラットに養育された仔ラットの比較研究では、低養育環境で育ったラットの海馬グルココルチコイド受容体遺伝子のプロモーター領域のメチル化が、高養育環境群と比べて亢進していて、このため成長後のストレス負荷に反応した受容体数の増大が導かれストレスに伴うコルチコステロン分泌過剰に対するnegative feedbackの減弱を示す。（McGill大学のMichael Meaney Lab） LG-ABNの頻度が高い親に育てられた子ラットでは、海馬のグルココルチコイド受容体：GRの発現が高い。これによって，ストレス時に活性化したHPA軸を抑制するためのネガティブ・フィードバックが強くかかり，ストレス反応が低くなる。 LG-ABNの頻度が高いと、仔の海馬ではグルココルチコイド受容体の遺伝子プロモーターのDNAメチル化にエピジェネティックな変化がみられた。この変化は生後一週間を超えた頃に出現し、成体になるまで維持された。 母からの接触刺激が海馬のグルココルチコイド受容体発現を高める機構としては，接触刺激によって子の海馬でセロトニン（5HT）が放出され，それによりグルココルチコイド受容体のCpG配列領域が脱メチル化されるというエピジェネティックな機構の存在が示されている。 DNAメチル化はヒストンアセチル化の変化と関連し、転写因子NGFI-A (nerve growth factor inducible protein A) のGRプロモーターへの結合の変化と関連した。 HDAC阻害剤は、ヒストンアセチル化の変化とDNAメチル化の変化を取り除き、NGFI-Aの結合/GR発現/ストレスへのHPA応答の変化も消失した。 これらはエピゲノム状態とGR発現との因果関係、そしてストレス応答への母親の影響を示唆する。 1 maternal careなどの生後直後の経験におけるL1レトロトランスポゾンのコピー数が海馬のDNA配列に影響を及ぼす。　参考1/2 ←→low maternal care　＝ low-LG-ABN maternal care behavior　←→マウスの行動 licking 仔を舐める行動　←→学習によらない疼痛関連行動 グルーミング、毛繕い　grooming グルーミングはβエンドルフィンの放出を促進し、これがグルーミングに緊張緩和の効果があるように見える生理学的な理由の1つである。 母親によるグルーミングが増加すると、それに比例して新生ラットの標識組織のグルココルチコイド受容体が増加する。 セロトニンと甲状腺刺激ホルモンの双方の濃度が変化することによって受容体数が変わるのであるということも発見された。受容体数の増加は、副腎皮質ステロイドの分泌への負のフィードバックに影響し、異常な生理学的ストレス反応の望ましくない副作用を防ぐものと考えられる。 arched back nursing：ABN　参考1 背が弓状に見える保育姿勢を取る行動 active nursing retrieving nest-building

  mother-infant interaction　参考1/2/3/4/5 赤ちゃんを抱っこして歩くと、泣き止んでおとなしくなり、同じような反応はライオンやネズミなど動物の仔でも見られる。乳児と仔マウスの比較研究から、親に運ばれておとなしくなる時、乳児も仔マウスも同じ行動・生理変化を示す。 仔マウス輸送反応に対する前帯状回のCRFシグナルの関与

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□刺激豊かな環境　Environmental Enrichment　←→恐怖回避モデル/恐怖条件付けテスト 参考1

• さまざまな物体や廻し車のある飼育ケージ（豊富環境）でマウスを飼うと、通常の飼育ケージで飼育されたマウスに比べて神経新生が促進される。　参考1/2
• 1997年にGerd Kempermann（Dresdenの神経科学者 1/2）らはFred H. Gage（ソーク研究所の遺伝学研究室の教授, 第13回慶應医学賞受賞）のlabで、刺激豊かな環境ではマウスの海馬歯状回の神経新生ニューロンが増加することを発見した。　参考1/2
  

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• 刺激豊かな環境での生育は痛みを緩和する。　1

□適度な運動、自発運動　voluntary exercise　参考1/1

• 自発走運動により神経新生が促進される。
• 1999年にHenriette van Praagの研究では、BrdU陽性細胞は刺激豊かな環境よりも自発走運動の方が多かった。　参考1
• 自発運動によって促進される歯状回の神経新生は恐怖条件付け文脈記憶の忘却を促進させる。　1@Frankland
  • hM4Diを発現させたAAV virusをCA1に注入し、恐怖条件付けの１日後にCNOを腹腔内注射するとフリージングが減少するが、28日後では差が見られない。
  • 恐怖条件付け後のランニングホイールを入れると、歯状回のDCX陽性細胞が増え、フリージングが減少する。
  
  

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• 自発走運動による疼痛緩和のメカニズム　参考1/2/3/4/5/6
  • exercise-induced hypoalgesia：EIH
  • microglia and maintained GABA synthesis in the spinal dorsal horn may contribute to EIH.
  • 自発運動は脳報酬系を活性化する。
  • 腹側被蓋野：VTAに投射する神経経路のなかで視床下部外側野(LHA)オレキシン(Orex)ニューロン
  • ①自発運動はDAとOrexニューロンの活性化を高め、②自発運動量の増加は活性化Orexニューロンの割合を高め、さらに③自発運動により活性化したDAとOrexニューロンは有意な正の相関関係を示すこと、④自発運動により活性化したOrexニューロンがVTAに投射する。
  • 自発運動により活性化したLDTのACh/非AChニューロンやLHAのOrexニューロンが、VTAのDAニューロンの活性化を促すことで脳報酬系が活性化される。

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