□様々な痛み

│絞扼性末梢神経障害　Entrapment Neuropathy│　←→神経障害性疼痛/末梢神経障害

　　→胸郭出口症候群　→手根管症候群　→脊柱管狭窄症　→ACNES

• 末梢神経が生理的狭窄部位で絞扼されることによって生じる神経障害の総称
• 末梢神経が隣接する組織の機械的刺激（関節運動など）によって限局性の傷害および炎症を生じたもの
• 絞扼性ニューロパシーによって、痛み・しびれ感・感覚過敏・感覚鈍麻・脱力感・筋緊張・筋力低下・筋萎縮・麻痺などをきたす。
• 神経が完全に断裂したり、周膜から外膜にかけて断裂が発生すると、神経線維やシュワン細胞が増殖して球状の神経腫（neuroma）を形成するが、絞扼障害などの場合は再生反応が神経束内にとどまるので、神経幹が全体として腫大し、紡錘状の神経腫を作る。これを「偽神経腫（pseudoneuroma）」といい、部位によっては触診にて硬く触れることができる。




上肢	腕神経叢部〜肩関節周辺部 胸郭出口症候群（主に肋鎖間隙、前・中斜角筋部、烏口突起下にて/腕神経叢・鎖骨下動静脈） 肩甲上神経絞扼障害（肩甲切痕部） 肩甲背神経絞扼障害（中斜角筋貫通部） 四辺形間隙症候群（小円筋と上腕三頭筋長頭と上腕骨と大円筋で囲まれた部位／腋窩神経） 肘関節周辺部〜前腕部 （円）回内筋症候群（円回内筋トンネル入口／正中神経） 前骨間神経症候群（浅指屈筋起始部等／正中神経） 肘部管症候群　遅発性尺骨神経麻痺（尺骨神経溝、肘部管／尺骨神経） 後骨間神経症候群（回外筋近位部にて橈骨神経） 手関節周辺部〜指部 手根管症候群（手根管部／正中神経） 尺骨神経管症候群（尺骨神経管、Guyon 管／尺骨神経） Wartenberg 病（長橈側手根伸筋と腕橈骨筋との間の腱様膜／橈骨神経浅枝） Bowler's thumb（母指尺側基部に／指神経）
下肢	股関節周辺部 感覚性異常性大腿痛（鼠径靭帯部／外側大腿皮神経） 梨状筋症候群（梨状筋部／坐骨神経） 膝関節周辺部 Hunter 管症候群（内転筋管部／伏在神経） 総腓骨神経絞扼障害（腓骨神経トンネル部、腓骨小頭頚部／総腓骨神経） 足関節周辺部〜足蹠部 足根管症候群（足根管部／脛骨神経） 前足根管症候群（上・下伸筋支帯部／深腓骨神経） Morton 病（第3・4趾間 MP 関節部の深横中足靭帯部／固有底側指神経）
脊柱管	頸部脊柱管狭窄症 cervical spinal stenosis:CSS 腰部脊柱管狭窄症 Lumbar spinal stenosis:LSS




1963年

Harvey P. Kopell & Walter A. L. Thompsonが最初に記載した。 (Kopell HP, Walter A L Thompson. Peripheral Entrapment Neuropathies. Baltimore: The Williams & Wilkins Company, 1963)



• 脊髄から出た末梢神経が、走行途上で、筋膜・腱膜・靱帯・骨溝などによって形成されたトンネルが狭くなり、神経に絞扼が生じる。
• そこから先へ向かう順行性の軸索流（神経線維の中を栄養の補給や末梢からの老廃物の処理のために走る輸送の流れ）や末梢から中枢側に向かう逆行性の軸索流が中断されWaller変性へと進む。
• 痛み・しびれ感・感覚過敏・感覚鈍麻・脱力感・筋緊張・筋力低下・筋萎縮・麻痺などをきたす。

　[絞扼性神経障害の一般的な臨床症状]

1. 感覚障害：しびれ感、感覚過敏や感覚鈍麻が起こり、他覚的な感覚障害は神経障害の程度と密接な相関関係を示す。
2. 自発痛：ピリピリ､ヒリヒリ、安静時に認められ､四肢の姿勢や動作により増悪・軽減する。 感覚痛みの局在：時に不明瞭で障害部の末梢側や中枢側にも認められる。
3. 運動障害：脱力感、筋緊張や筋力低下、筋萎縮を起こす。
4. 自律神経障害：皮膚の乾燥、表皮の脱落などをきたす。
5. 絞扼点の圧痛と共にTinel 徴候 が陽性となり、特異な肢位による自覚症状の増悪（手関節掌屈テスト、肘関節屈曲テストなど）、阻血およびうっ血試験で陽性になる。
6. double crush syndrome：手根管症候群や肘部管症候群の患者は頸椎神経根障害を合併しやすい。末梢神経の一ヶ所に絞扼障害があると軸索流が障害され､その神経の近位部や遠位部も障害されやすくなる。

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○胸郭出口症候群 Thoracic outlet syndrome

• 胸郭出口部では、骨（頸肋、鎖骨、第一肋骨など）や筋肉（前斜角筋、中斜角筋など）が神経や血管を圧迫する。
• 腕神経叢の下神経幹（C8ーT1）が、絞扼によって生じる頸肩腕痛---絞扼性ニューロパシー？
• 下神経幹と一緒に、鎖骨下動脈や腋窩動脈が、圧迫されたことによって起こる頸肩腕痛---自律神経障害？
• 絞扼部位によって、斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群（過外転症候群）と呼ばれることがある。
  
  

  1821年	Sir Astley Cooperが腕の虚血のある若い女性での動脈性の胸郭出口症候群を初めて記載し、頸肋と鎖骨下動脈の関係を示した。
  1831年	Henry Mayo（ London）が第１肋骨の外骨症 exostosis of the first ribによって引き起こされた胸郭出口症候群による鎖骨下動脈の動脈瘤を初めて記載した。
  1860年	W. H. Willshireにより頸肋が神経・血管の圧迫症状を起こす可能性があることが報告されて以来、同様の症状を起こすものとして第1肋骨症候群・斜角筋症候群・肋鎖症候群・過外転症候群などが提唱されてきた。
  1956年	Peet RMらは上肢の神経血管圧迫症候群に「thoracic outlet syndrome」と言う用語を当てた。
  1958年	Rob CG and Standeven Aはthoracic outlet compression syndromeとして包括することを提唱した。

　[症状]

• 痛みは、損傷を受けた分節に限局することもあれば、肩と腕全体、首、背中に及ぶこともある。
• 頭痛、肩凝り、しびれ、冷感など様々な症状を発生させる。
• 感覚運動障害が生じることがある。
• 自律神経様症状が伴われる。
• 神経性は全上腕神経、尺骨神経、正中神経障害の順に多く、上肢の疼痛、知覚異常、しびれ感、倦怠感・無力感・脱力感（手に持っているものを落とす）などの症状が特徴である。他に菱形筋や僧帽筋の圧痛、疼痛（肩、背中の痛み）、後頭部痛（70％）などを訴える。小胸筋による圧迫では同部に圧痛がある。
• 動脈性は１期では無症状であるが、２、３期になると上肢動脈圧の低下によりレイノー現象が誘発され、半数以上で上肢跛行、指壊疽、急性重症虚血などで発症する。

　[原因]

• 比較的若い女性に好発する。特に首が長く、なで肩の女性に多い。
• 20〜30代、頸部周辺の筋肉の発育が悪い女性：腕神経叢が腕の重さに耐えかねて、胸郭出口部で引っ張られ、神経炎を発生させる。
• 怒り肩で、筋肉質で、首の短い人中高年の男性：腕神経叢や血管が周囲の組織で圧迫され、神経炎や血行障害が生ずる。
• 頸肋、斜角筋痙攣、異常筋膜帯のある患者にみられる。

　[治療]---保存的治療が原則

• 日常生活動作の注意点：腕を下げて行う作業や首の不良姿勢で行う作業を出来るだけ避ける。
  　重たい物を持ったり、挙げるような作業を避ける。
• 不安感の除去
• リハビリテーション：温熱療法、ストレッチング、筋力強化訓練
• 装具療法：肩甲帯支持バンドを着用し、腕神経叢の緊張を取り除く。
• 痛み
  • 非ステロイド系抗炎症剤、筋弛緩剤、ビタミンＢ製剤
  • 自律神経様症状に対して：抗不安薬
  • 頑固な症例に対して：神経ブロック療法（星状神経節ブロック、肩甲上神経ブロック、腕神経叢ブロック）
• 外科手術：頸肋の切除、斜角筋の切離術、第1肋骨の切除、小胸筋の切離など

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○手根管症候群 carpal tunnel syndrome：CTS　←→足根管症候群/正中神経麻痺

• 手根管症候群：正中神経が手根管の部分で慢性的に圧迫されて起こる絞扼性ニューロパシー、mononeuropathy。
• 正中神経の絞扼によって、親指、示指、中指にしびれ（感覚脱失、異常感覚）や灼熱痛、筋萎縮が生じる。
• 中年女性の利き手に多い。



手根管 　carpal tunnel	手関節の骨、屈筋支帯 および横手根靱帯が作る空間 tunnelである。 　その中に、正中神経、浅指屈筋腱、深指屈筋腱がおさまっている。
屈筋支帯 　Retinaculum flexorum	手根骨の弧状配列を維持するとともに、浅・深指屈筋腱が滑動する時の滑車の役割をする。屈筋支帯は硬い線維組織であるため、手根管は柔軟性に乏しく、屈筋腱群は腱鞘に覆われたまま正中神経とともに走行している。




1854年	James Paget（P 1814/1/11〜1899/12/30, 英国Royal Collegeの外科医、病理学者）が「Lectures on Surgical Pathology」で、橈骨骨折後に正中神経をしばる絞扼た手根管症候群を報告した。
1880年	James Jackson Putnam（1846〜1918, マサチューセッツ総合病院の臨床神経部門、ハーバード大の教授）が37例を報告（Arch Med NY）。
1913年	Pierre Marie（1853〜1940, フランスの神経学者）とCharles Foixが80歳の男性の手根管症候群の剖検例を報告し、開放術が有効と考察した（Rev Neurol）。
1915年	Jules Tinel（P 1879〜1952, フランス人サルペトリエールの神経外科医）が、手根部を叩いた時の放散痛を報告した（Presse Med）。　←→ティネル徴候
1933年	James R Learmonth（1895〜1967, メイヨークリニック）が手根管開放術を始めた（Surg Clin North Am）。
1951年	George S. Phalen（1911/12/2〜1998/4/14, 米国クリーブランド病院の整形外科部長）が、１分間手首を屈曲することの診断価値を述べた（JAMA）。　←→ファレンテスト（Phalen maneuver）

　[症状]

• 一側あるいは両側の親指、示指、中指に、ピリピリする疼痛が現れる。
• 患者の8〜9割にしびれ（感覚脱失、異常感覚）が存在し、約2割に灼熱痛が存在する。

  しびれ	┳感覚脱失
  	┗異常感覚	┳刺激が加わったときに感じる異常感覚
  		┗自発性に現れる異常感覚

• しびれや痛みが朝方や特に深夜に増強し、目が覚めることがある。
• 手を強く振ると、手根管内圧の一時的減少によって（？）、症状が軽減することがある---flick sign
• 母指に筋萎縮が現れることもある。
• 正中神経麻痺→短母指外転勤の萎縮（拇指球萎縮、猿手）
• 正中神経の運動神経伝導速度、感覚神経伝導速度の低下

　[病期]

初期	夜間、正中神経支配領域に現れるしびれ感、灼熱感、痛み、感覚鈍麻を特徴とする。 夜間に症状が現れる理由 横になると、立っている時下肢に溜まった体液が上肢に再配分される。 筋肉の活動が落ちて、静脈血を心臓に還流する筋肉ポンプの働きがなくなる。 睡眠時、手を屈曲させるので、手根管内の組織圧が上昇する。 睡眠時、手を屈曲させるので、手根管内の組織圧が上昇する。 睡眠時交感神経の活動が落ちて、全身血圧が下がると、外からの圧力によって、正中神経の血流が阻害される。
中間期	異常感覚と感覚鈍麻が夜間だけでなく、日中にも現れる。 この時期、神経上膜と神経束内の浮腫が持続し、神経内膜の組織圧が恒常的に上昇する。 神経上膜が浮腫に陥ると、繊維芽細胞が浸潤し、痕跡組織を作る。 髄鞘部の形態が崩れ、脱髄がみられる。
進行期	神経上膜、神経周膜、神経内膜のすべての線維化が進んで、痕跡が作られ、正中神経の感覚運動機能が失われる。 神経線維は、伝導を停止するだけのニューロプラキシーと、形態学的連続性を失う軸索離断を示す。



• 中間期以後、末梢神経線維の脱髄と変性、再生が痛みの基礎病変になる。

　[原因]

Sunderland 1991 不明の特発性のもの 局所性病変によるもの 全身疾患によるもの

Bora & Osterman 外傷性 手根骨折、特に橈骨下端のColles骨折と、 橈骨下端が骨折して、 末梢骨片が掌側に転移したSmith骨折 手根脱臼 手根の変性関節炎 手関節の使いすぎ 掌背屈 把握 指運動 タイプ打ち 炎症性 非特異的屈筋腱鞘炎 リウマチ性屈筋腱腱鞘炎（約20％が合併） 痛風、偽痛風 アミロイド症 急性石灰沈着性腱炎 血腫 内分泌性 甲状腺機能低下症（粘液水腫） アクロメガリー 妊娠 （妊娠6ヶ月以降に多い) 糖尿病 閉経 腎不全、透析 腫瘍 ガングリオン 神経腫 良性潰瘍、脂肪線維腫 悪性腫瘍 その他 Dupuytren拘縮 心不全 筋肉の形成異常 正中動脈の形成異常

• 中年女性の利き手に多い。男女比：32:68
• 好発年齢は女性の場合、妊娠出産期と更年期に多く、更年期が6割占めていると報告されている。
• 利き手の発症率が高いが、患者の約1/3が両側性に罹患している。
• 妊娠の18-31%に手根管症候群を疑わせる自覚症状があり、7-10%に正中神経の伝導速度の低下がみられる。妊娠による浮腫によって、手根管の結合組織が腫脹して、手根管症候群が現れると考えられる。出産してから数ヶ月も続くことがある。
  
  
• 手関節を反復して動かす職業（マッサージ、タイピスト、コンピュータープログラマー、研磨、床磨きなど）に従事している人に送りやすい。

　[メカニズム]

手根管内圧の上昇→→→→→→→→→→→ 200mmHg 軸索の構造変化、機能喪失 32mmHg 虚血 30mmHg 手根管狭窄患者での実測値 2mmHg 正常値 初期と中期以降のメカニズムは異なる。

手根管内圧の上昇 ↓ 静脈圧上昇 ↓ 血管透過性亢進 ↓ 浮腫 初 　 期 浮腫 ↓ 神経内膜圧の上昇 ↓ ↓ 局所性虚血 ↓ ↓ 浮腫 ↓ 線維芽細胞の進入 ↓ 瘢痕組織 ↓ 神経線維の脱髄／変性／再生 ↓ 中 間 期 ・ 進 行 期 神経線維の機能異常

　[治療]

• 初期には、副子固定による局所安静や、ステロイド局所注射
• 筋萎縮や筋力低下のもの、電気生理学的に異常所見が見られるものでは、掌側手根靱帯を縦切あるいは、内視鏡的に正中神経の徐圧

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○ギヨン管症候群（尺骨神経管症候群）Guyon's canal syndrome　←→手根管症候群/足根管症候群

• ギヨン管（尺骨神経管）とは、小指球（手の平の小指側にある肉の盛り上がり）にある尺骨神経の通り道
• ギヨン管で尺骨神経が圧迫を受けて障害される。
• 小指と環指尺側（小指側）のしびれが出現するが、肘部管症候群と異なり背側のしびれはない。
• 肘部管症候群との違い、手背尺側のしびれ、感覚鈍麻と尺側手根屈筋の萎縮を生じない。

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○足根管症候群症候群 tarsal tunnel syndrome：TTS　←→手根管症候群/Guyon管症候群

• 足関節の足根骨と屈筋支帯に囲まれたトンネル内にて、脛骨神経が圧迫されて起こる絞扼性神経障害をいう。
• 症状：足底部痛が主症状であり、拇指の屈筋力の低下によって拇指の底屈が障害される。
• 足底部痛 burning foot

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○モートン病、趾間神経痛
Morton's neuralgia, Morton's neuroma, Morton's metatarsalgia, plantar neuroma and intermetatarsal, Interdigital perineural fibrosis neuroma　参考1/2

• 第3・4趾間 ＭＴＰ関節（metatarsophalangeal joint)の深横中足靭帯部による固有底側指神経の絞扼によって生じる痛み

  1845年	Louis Durlacher(英国女王の手足治療医chiropodist)が最初に神経の障害として鑑別した。
  1876年	Thomas G. Morton（Philadelphiaの内科医）が 第4中足指(趾)節関節（metatarsophalangeal joint：ＭＴＰ関節)の炎症による損傷として記載した。

• 3 指（中指）と 4 指（薬指）の間の足底の神経痛様の痛み
• 痛みは非特異的で、灼熱痛もしくは電撃痛であるか、または異物感覚を生じることがある。
• 中年の女性に多く歩行や運動で増強する中足骨頭部より足趾に及ぶ神経痛様の疼痛で、特に爪先立ちやしゃがみ込みで増悪する。
• ハイヒールや足先の細い靴で前足部に負担がかかることが原因とも言われている。
• 後脛骨神経から枝分かれした内側足底神経の外側に分岐した趾間神経（plantar interdigital nerve）が圧迫されたことにより発症する。
• または神経周膜の持続性良性腫張（神経腫）により痛みを生じることがある。
• 絞扼性神経障害害であるが、神経障害性疼痛に見られる真性のneuroma（神経腫）ではなく、靭帯に圧迫されて変形して腫れて発生する「偽神経腫（pseudoneuroma）」、「持続性良性腫張」、あるいは神経の「良性肥厚」である。

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○梨状筋症候群 piriformis syndrome

• 梨状筋間で坐骨神経を絞扼して生じる坐骨神経痛？
• 通常、坐骨神経は梨状筋と上双子筋の間を走っているが、梨状筋を貫くように走っている場合、梨状筋をはさむように走っている場合もある。
• ランニングなどのトレーニング中や山登りをしたなどに現れることが多い症状
• 臀部やハムストリングス hamstrings（下腿後面にある大腿二頭筋 biceps femoris、半腱様筋 semitendinosus、半膜様筋 semimembranosus）、ふくらはぎなどにしびれや鈍い痛みがでる。
• 梨状筋症候群は比較的緩徐に発生し、通常はラセーグ徴候が陰性となる。
• 比較的稀な疾患とされていますが、約10％の頻度で坐骨神経のバリエーションが存在することから、見過ごされていることも少なくないと思われる。
  
  

  梨状筋 piriformis muscle 股関節の外旋を行う筋肉 数個の筋尖で仙骨の前面、前仙骨孔の外側および坐骨の大坐骨切痕の縁から起こり、大坐骨孔を通って骨盤内を通過し、大転子先端の内側面で終わる筋肉 梨状筋と上双子筋、下双子筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、大腿方形筋はあわせて深層外旋六筋あるいは六外旋筋と呼ばれる。 いずれも骨盤帯に付着しており、股関節を外旋させる。 これらの筋は深層に位置するため触診はできない。 通常、坐骨神経は梨状筋と上双子筋の間を走っているが、梨状筋を貫くように走っている場合、梨状筋をはさむように走っている場合もある。 神経支配は第5腰椎神経〜から第２仙骨神経

○脊柱管狭窄症 Spinal canal stenosis←→脊椎関連の痛み　参考1

┏頸部脊柱管狭窄症 Cervical spinal canal stenosis
┣腰部脊柱管狭窄症 lumbar spinal canal stenosis：LCS
┗広範脊柱管狭窄症---頸椎、胸椎および腰椎のうち、少なくとも２か所以上の部位で脊柱管が狭窄して神経障害を呈するもの。



脊椎は前方部分と後方部分とで構成される。 　┏前方部分：椎体と椎間板、ルシュカ関節、横突起 　┗後方部分：椎弓根と椎弓、椎間関節、棘突起 脊柱管：前方部分と後方部分とで囲まれるトンネル状の部分 脊柱管の中に脊髄が通っている。





1803年	Antoine Portal（1742/1/5〜1832/7/23, フランスの解剖学者）がくる病 ricketsに高度の脊柱変形を合併し、四肢麻痺と痛みを伴った症例を報告した。
1911年	Joseph Jules Dejerine (P 1849〜1918, パル大学教授）は、血管性の跛行と神経性の跛行を区別した。
1949年	Jean Verbrugge Henk Verbiest (1909〜1997)*は特発性発育性狭窄（idiopathic developmental stenosis）という概念を提唱し、先天奇形などによる病的な狭小化がなくても脊柱管の狭小化は起こるとし、腰部脊柱管狭窄症の概念を確立した。
1954年 1955年	Henk Verbiest↑が馬尾の圧迫による間欠性跛行が存在し、これはdevelopmentalな脊柱管の狭小化と退行性変化や椎間板ヘルニアが関与して発生すると報告した。
1968年	Joseph Schatzkerらはこれまでの報告を整理して，脊柱管狭窄症の分類を行った。
1974年	William Kirkaldy-Willis（1914/2/26〜2006/5/7）はさらに病理学的見地から脊柱管狭窄症を分類した。
1976年	William Kirkaldy-Willisの呼びかけで、Arnoldi、栗原ら専門家22人が集まって国際シンポジウムが開催され、腰部脊柱管症の国際分類国際分類を決定された。

・頸部脊柱管狭窄症　Cervical spinal stenosis　←→頸肩腕痛

• 頸部の脊柱管狭窄によって生じる絞扼性ニューロパシー
• 頸部脊柱管の狭窄によって、手や肩の強い痛みやしびれが生じる。


• 加齢とともに、頸部脊柱管が細くなる、あるいは生まれつき、脊柱管が狭いと、トンネルの中で脊髄が圧迫されやすくなる。
• 治療方法：星状神経節ブロック、腕神経叢ブロック、神経根ブロックなど。
• 症状が強く、筋力が低下して手が自由に使えないレベルになると、手術適応

・腰部脊柱管狭窄症 Lumbar spinal stenosis : LSS　←→腰下肢痛　参考1/2/3

• 腰部の脊柱管が狭窄し、その内部にある馬尾神経や神経神経根に圧迫障害が生じる疾患。絞扼性ニューロパシー
• 腰部脊柱管の狭窄によって、下肢の神経痛（坐骨神経痛）やしびれ、麻痺（脱力）が発生する。
• 馬尾性間歇性跛行を引き起こす。
• 狭窄を起こしている腰椎と、症状との関連がはっきりしないことが多い。
• 軽度な慢性的圧迫により硬膜外腔にはほとんどの場合癒着が存在する。
• 時には、両下肢のしびれの他に、股間のほてり、残尿感、便秘などの膀胱・直腸症状が発生する。
• 好発年齢：老人に多いが、先天的に脊柱管が狭い人では、比較的若年の30歳-40歳代で発症することもある。



脊髄は第１〜第２腰椎までしかない。 馬尾神経：第２腰椎より下の脊柱内では、脊髄神経が１本１本馬のしっぽのように分かれて、束になっている。

　[症状]

• 腰椎の脊柱管周辺の骨および軟部組織の肥厚によって、脊柱管が狭小化するため、神経根や馬尾神経が圧迫されて、腰痛や下肢の痛み、しびれを引き起こす。
• 重だるい、突っ張るような痛み
  
• 馬尾神経が傷害されると、馬尾性間歇性跛行 cauda equina intermittent claudication
  　歩いていると足先から上行するしびれが出現して歩行困難となる。腰を前に曲げたり、しゃがんだり、しばらく休むと再び歩けるようになる。
  　歩行では腰椎の前弯が強まるために馬尾神経の絞扼が増すために生じる。
  　閉塞性動脈硬化症などで見られる間歇性跛行との鑑別が必要。脊柱管狭窄症では前屈で症状が軽快し、足背動脈の拍動に問題がないという点が鑑別に有効である。
  （腰椎椎間板ヘルニアは、前屈で痛みが悪化する。）
  
  
• 坐骨神経痛---神経根圧迫が本態ではないので、ラセグテストは陽性とはならないことが多い。
• 病気が進行すると、膀胱や直腸の機能が損なわれ、残尿や残尿感などの排尿障害や排便症を伴う。

　[原因]

• 加齢による退行変性---脊椎の老化などにより、椎間板、椎間関節、椎体が変形し、厚みを増すために脊柱管が狭められる。
  • 後縦靭帯骨化症
  • 椎間関節肥厚
  • 黄色靭帯骨化症
• 脊椎すべり症

　[治療]

• 治療---本症は加齢を背景とした変性疾患であるため、原則として保存的に治療される。
• 薬物療法
  • カルシトニン製剤
  • 消炎鎮痛薬
  • 血管拡張薬---ニコチン酸誘導体、プロスタグランジン製剤、シロスタゾール
• 保存療法
  • 装具---軟性コルセット・ウィリアムス装具を装着
    　腰椎前穹を少なくさせることが目的。コルセットを装着することで、前かがみの状態にし、神経への圧迫を軽減させる。
  • 体操療法--腹筋・背筋などの強化
    
    
  • 神経ブロックの適応---仙骨硬膜外ブロック

    手術を希望しないまたは全身合併症で手術が困難な場合 適応症状は腰痛、下肢痛、下肢の痺れ、異常知覚、間欠跛行 適応ではないが脱力、下垂足、膀胱直障害、持続性勃起 治療法の選択には自覚症状が他覚的な重症度より優先される。

  • 温熱療法---暖めることで、患部の血行を改善させて、筋肉の緊張を取り除き、痛みを緩和する？
• 外科療法
  　みのもんたさんは脊柱管狭窄症のため、紅白出場後の2006年元旦に入院し、4日に手術を受け、13日に無事退院し、16日のレギュラー番組復帰!（主治医：国際医療福祉大学三田病院・福井康之副院長）。第4腰椎と第5腰椎の間を削る。「痛みが消しゴムで消された」「痛みは消え、強靭な腰を手に入れた。」
   

  内側椎間関節切除術　MF	関節を形成している下関節突起と上関節突起の一部を削ることで、神経圧迫を解除。
  椎間孔部開窓術　LF fenestration	低侵襲：術後の脊椎変形の進行を最小限にする方法が第一に選択。 隣接する椎弓の一部を切除して、窓をあけるようにする。椎弓を取りきらない。 幅15-18mm前後の筒を神経が損傷している部位に挿入し、内視鏡あるいは手術用顕微鏡で神経の圧迫をとる。
  椎弓切除術	脊柱管狭窄症などで下肢痛や歩行障害が著しい場合に行う。 椎弓を全て切除する広範囲椎弓切除術。 手術後3〜5日程度で歩行可能。 手術後はコルセットを1〜数ヵ月程度着用する。 椎弓切除術は、椎間固定術と併用される。
  後側方固定術　PLF	不安定性を伴う腰椎に対して行う固定術。 比較的不安定性の程度の軽い場合に適用される。 ペディクラースクリューシステムという金属を用いて腰椎を初期固定する。この金属を使うことで術後のリハビリが早期に可能になりました。この金属は一般的にはそのまま入れっぱなしで、後で抜く必要がない。

  
  
• エピドラスコピー
  　エピドラスコピー後には、疼痛の軽減に加え間欠性跛行も改善することが多い。
  
  
• 腰部脊柱管狭窄症の漢方治療
  　狭小化した脊髄腔に少しでも余裕を持たせるために浮腫や瘀血を軽減し、虚血による脊髄神経の被刺激性の亢進を鎮静するような戦略

  基本：牛車腎気丸＋四物湯 瘀血が強い 牛車腎気丸＋四物湯＋桂枝茯苓丸 水毒症、浮腫傾向 牛車腎気丸＋四物湯＋当帰芍薬散 or 牛車腎気丸＋四物湯＋防已黄耆湯 冷えが強い 牛車腎気丸＋四物湯＋附子末
  難治例	大防風湯＋桂枝茯苓丸 or 大防風湯＋当帰芍薬散

Pain Relief