赤外線センサーの歴史 参考
- 赤外線センサーの歴史は、ハーシェル(W.Herschel,英)が赤外線の存在を証明する実験(1800年)に用いた水銀温度計に始まる。しかし、水銀温度計は熱容量が大で応答速度が遅いため、その後の赤外線センサは熱容量を小さくするための工夫が積み重ねられていった。
- 赤外線センサーは、熱(赤外線)を検知する「熱型赤外線センサー」と、光を検出する量子型「赤外線センサー」に大別できる。「熱型赤外線センサー」は、熱起電力効果を利用したサーモパイル、焦電効果を利用したPZT、LiTaO3、熱電対効果を利用したサーミスタ、ポロメータなどに分類できる。「光を検出する量子型赤外線センサー」の量子型赤外線センサは、光起電力効果を利用したフォトダイオード、フォトトランジスタ、光導電効果を利用したCdSセル、光電子放出効果を利用した光電子倍増管などに分類できる。
- 初期の赤外線センサーの開発は、受光素子の開発を中心として進められた。L.Nobili(イタリー)が1829年に、2つの接点を用いた温度差測定に成功したのを受け、その弟子のM.Melloni(イタリー)が1833年に、熱電堆を発明した。
- 熱によって表面電荷が発生するメカニズムを利用する焦電型は、チノーヴエス(A.G.Chynoweth,米)の容量測定法の発明(1955年)によって測定が簡便になり、用途が大きく拡大するきっかけをつくった。抵抗体の電気抵抗値が熱により変化する性質を用いる抵抗変化型素子として、ラングレイ(S.P.Langley,米)は白金線を用いたが(1880年)、ベッカー(J.A.Becker,米)らは半導体を(1945年)、アンドリュース(D.H.Andrews,米)らは超電導体を用いた(1942年)。遅れて登場した熱膨張型はゴーレイ(M.J.E.Golay,米)の発明によるもので(1939年)、赤外線を吸収し、温度が上昇して起こる熱膨張を利用したものである。この素子は赤外線の全波長領域で使用できる。
- ケイス(T.W.Case,米)による酸硫化タリウムの光導電性発見(1917年)を端緒に、測定感度・応答速度共に優れた量子型赤外線センサの発明が数多くなされた。pn接合型は、トランジスタ技術の進歩と共に集積化できる高度なものになった。1950年以降は検知する波長を特定した赤外線検知素子専用の半導体材料開発が進められ、InSb、HgCdTeなどが実用化になっている。その中で注目されるものはPt-Siショットキー接合素子で、この素子はシリコン基板を用いているので多機能の回路を一体として組み込み、小型化することが出来る。新しい素子構造をもつクーン(D.D.Coon,米)らによる量子井戸型(1986年)や、グリムス(C.C.Grimes,米)らによるトンネル接合型(1968年)についても今後の発展が期待されている。
- ラングレイが1901年に、ボロメーター bolo-meter (抵抗変化型)を考案し、400m離れた牛からの輻射線測定に成功し、人々を驚かせた。
- ベアード(英)が1926年に、は暗視管による赤外線TVを発明した。暗夜でも見ることができる赤外線センサは、相次ぐ世界大戦の時代に重要な軍事情報を提供した。
サーモグラフィーの歴史 参考
- 1954年にアメリカで初めてのサーモグラフィーが商品化された。温度センサーとして熱型検出器であるサーミスタボロメーター thermistor bolo-meter(温度により抵抗値が変化する阻止)を用いていたため、感度や応答性に難があった。また、センサーは単一素子であったため、メカニカルスキャナーを用いて、光路をX-Y方法に走査することにより、温度画像を構成する必要性があった。そのため、1画面のデータを得るのに数分を要するものであった。
- その後、半導体技術の急速な進歩により、量子型赤外線センサーが開発され、感度や応答性が飛躍的に向上した。このタイプのサーモグラフィーは単一センサーを用いているため、同一画面内における相対的な温度分布測定特性が優れている。また、センサーの選択も比較的自由なので、目的に応じた観測波長範囲を選ぶことができる。しかし、量子型センサーの問題点として、狭いバンドギャップで赤外線を検出するため、液体窒素などを用いてセンサーを-200℃程度に冷却して素子自体の熱雑音を提言する必要があるという欠点があった。また、最近まで素子の二次元アレーかが困難であったため、従来と同様に、メカニカルスキャンによっても温度画像を得る必要があった。
- 1980年代後半になると、赤外線検出素子として、SiPtショットキバリア FPA (focal plane array)センサーやInSbなどを用いたFPAセンサーが実用化され、CCDカメラのように画像の電子走査が可能となった。これらのセンサーを用いたサーモグラフィーにより、ビデオレート (1/30秒)以上の高速測定が可能となったが、これらのFPA素子も量子型であるため冷却が必要不可欠である。
- 1996年に、スターリングクーラーを用いた電子冷却型サーモグラフィーが開発された。センサは、サーミスタボロメータを2次元アレー化した、 非冷却FPAである。マイクロボロメータの2次元アレーを真空封止することによって、非冷却サーモグラフィが実現できるようになった。液体窒素などの冷却剤を機械を使用するたびに注入する必要がなくなり、このためコンパクトでコストや使い勝手に非常に優れたもとなった。
- メローニが1883年に、人間の体温によって輻射される赤外線を初めて測定した。
- Raymond Lawson(外科医)は、サーモグラフィーでcancerous breast tumorsが発生する熱を検出できるだろうと考え、1959年に最初の医学用のサーモグラムを開発した。1982年に米国FADはmammography などを補足する診断として、サーモグラフィーの利用を承認した。
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