■基礎の基礎

│関節　joint│

　←→関節痛/受容器/関節リウマチ/治療/関節内注射法/シャルコー関節/関節の拘縮/徒手的理学療法

◇関節の基本

• 関節は関節腔　joint space＋Fascia（関節包、靭帯などの線維性結合組織）で構成される。
• 関節とは、２つ以上の骨を連結するものである。
• 相互間を固定して骨の支持性を増すとともに、多くの場合可動性があって、一方の骨の運動を他方へ伝達し、四肢、体幹の可動域を広げる作用を持っている。

　[関節の種類]　←→椎間関節

癒合関節 synarthroses	骨と骨を結びつける構造で、動きがない関節。頭蓋縫合など
半関節	ほとんど動かない関節。恥骨結合など
可動関節 diathroses	よく動く可動関節




• 向かい合った２つの骨の片方が凹面、他方が凸面の時、前者を関節頭、後者を関節窩という。
  
  
• 関節は関節包に包まれている。

  関節包 joint capsule、capsula articularis 関節周囲を覆っている結合組織性の滑膜組織 関節包と関節の間には滑液が存在し、この滑液は骨同士の摩擦を軽減したり、関節を滑らかに動かすのに役立っている。 関節包内の空間を関節腔という。 関節包は、外側の線維膜と内側の滑膜とからできている。 線維膜は骨膜の続きで丈夫で神経に富んでいて、関節の安定化と脱臼防止に働いている。 内層の滑膜では滑液を分泌している。

  関節腔 articular cavity、cavitas articularis 関節腔は関節軟骨と関節包の滑膜層によって囲まれる閉鎖された腔である。 正常状態では腔内に少量の滑液ある。 関節腔内は陰圧で関節を強める作用がある。

  滑液、関節液　synovial fluid、joint fluid 関節腔の中に存在する無色透明の液体 滑膜で産生されている。 滑液の粘度は温度によって変化する。温度が上がればその粘度は少なくなり関節自体の動きもスムーズになる。 関節軟骨自体には血管が通っていないので、滑液を通して栄養分を補給したり、老廃物を排出したりしている。 ヒアルロン酸やタンパク質などを含み、粘り気があり、ヒアルロン酸とタンパク質の複合体が関節表面を覆って潤滑油の働きをし、関節の動きを滑らかにしている。 滑液内に糖タンパク質が存在していることは古くから知られていたが、1980年代になってその分子構造が明らかになり、潤滑性に寄与していることがわかった。この糖タンパク質は「ルブリシン」と呼ばれ、その後、軟骨表面に存在するSuperficial Zone Protein（SZP）やMegakaryocyte Stimulating Factor （MSF）と同一の、ムチン性糖タンパク質であることが見いだされた。これらムチンは、滑液内から軟骨の表面に移動し、自己組織化によって膜（プロテオグリカン層）を形成すると考えられていて、2000年以降さらに詳しく構造解析され、現在ではこれらを集約してProteoglycan 4(PRG4)と呼ばれている。その成分は、ヒアルロン酸と相補的に関節の摩擦を軽減し、潤滑を促進する働きを持つと考えられている。

  滑膜 synovial membrane、synovium 正常な滑膜は厚さ約25μm 膜といっても基底膜のように細胞が隙間なく並んでいるわけではなく、結合組織の中に、様々な滑膜細胞と少数のリンパ球が存在する。 滑膜細胞は関節液を産生し、軟骨へ栄養を供給している。 滑膜そのものがひだを形成し、関節を滑らかに動くようにしている。 軟骨には神経や血管がなく、軟骨細胞への栄養は関節液に依存している。そのため滑膜には血管が豊富に分布している。 関節リウマチでは滑膜微小血管に障害が起こり、滑膜組織に好中球、マクロファージ、T細胞、B細胞が集積する。

  滑膜細胞 synoviocytes 滑膜には、マクロファージ様の滑膜A細胞、線維芽細胞様の滑膜B細胞などと少数のリンパ球が存在する。 滑膜細胞は関節液を産生し、軟骨へ栄養を供給している。 関節に炎症が続くと、滑膜細胞が異常に増殖し、関節の軟骨や骨だけでなく、周囲の靭帯や筋肉にまで損傷を与えていく。 変形性関節症では病期の進行につれ、遊離した変性軟骨片が滑膜A細胞にとりこまれ、増殖した滑膜B細胞が淡色透明な粘度の高い液を分泌し、これが多量の非炎症性関節液の貯留となると想定されている。 関節リウマチは、滑膜に持続性の炎症が起こる：新生血管が増加し、リンパ球（T細胞が優位）が浸潤し、滑膜を構成する滑膜細胞が増殖する。 滑膜A細胞 type A synoviocytes macrophage-like synoviocytes, macrophage-like synovial cells マクロファージ様の滑膜細胞 骨髄由来 貪食能を有する細胞 滑膜B細胞 type B synoviocytes fibroblast-like synoviocytes (FLS) cell, fibroblast-like synovial cells 滑膜に分布する線維芽細胞様の滑膜細胞 間葉系由来 ヒアルロン酸を分泌する細胞といわれている。 滑膜C細胞 A細胞とB細胞の中間型 滑膜D（M）細胞 樹状細胞様の滑膜細胞

  
  
  
• 関節内で相対する２つの骨の表面を関節軟骨が覆っている。

  関節軟骨 articular cartilage　←→軟骨 関節軟骨は硝子軟骨からなり、白色で光沢があり、粘弾性に富んでいる。 一種の緻密結合組織で、内部には多数の軟骨小腔を有す。 表層−中間層-深層（放射層）-（tide mark）-石灰化層　の4層の層状構造をとる。 関節軟骨組織の最表層　superficial zone of articular cartilage：SFZ SFZ細胞はルブリシン（Prg4）など潤滑成分を多く分泌して関節の滑動性を担保し、その深層の関節軟骨全体を保護する作用がある。 SFZ細胞の破綻が変形性関節症：OA発症のトリガーである。 tide mark 関節軟骨の深層と石灰化層の間のhematoxylin染色で濃染する線状に見える部分 関節軟骨の厚さは1mm位から、最大の膝蓋軟骨で5mm 軟骨には神経や血管がなく、軟骨細胞への栄養は関節液に依存している。 関節軟骨は80%の水分、20%のマトリックスとわずかな軟骨細胞により構成される。 マトリックスはコラーゲン（乾燥重量の60％）とプロテオグリカン（乾燥重量の10％）で構成される。 構造性たんぱくであるコラーゲンが、軟骨の形を維持し、軟骨特有の硬さや弾性などの物理的特性を決定している。 関節軟骨の変性とは、プロテオグリカンの変動と軟骨細胞の変化である。 関節軟骨に主にみられるプロテオグリカン集合体は、長いフィラメントのヒアルロン酸ポリマーの真に、枝となる多数のプロテオグリカンモノマーが付着したもの。 このプロテオグリカンモノマーの細かい枝の間に80%の水分子を引き寄せ、保持する作用がある。これによって、水分を含み、軟骨に弾性と硬さを与える。

  軟骨下骨　subchondral bone 軟骨直下の海綿骨のこと

• ２つの骨の間の腔所が関節腔で、その中に滑液（関節液）がある。
• 滑液にはヒアルロン酸、ルブリシン（lubricin、糖タンパク質の一種）が豊富に含まれる。

　[関節にある受容器と神経線維]　←→侵害受容器/侵害受容線維

• われわれは、目を閉じていても関節の曲がり具合や動きを知ることができる。これに役立っているのが運動感覚 kinethesiaで、これと深部痛 deep painを総括して deep sensationという。
• 運動感覚は、肩関節や股関節が鋭敏であるが、四肢の末梢へ移るにしたがって鋭敏になる。触覚が末梢に行くほど鋭敏になるのとは対照的である。
  
  
• 関節囊に局所麻酔薬を注入すると、四肢の空間における位置やその他動的な動きの認識が損なわれる。このことから運動感覚は関節囊の受容器に依存していると示唆される。しかし、人工関節で弛緩しても四肢を認識する能力は残っているので、筋紡錘と皮膚の機械受容器も運動感覚に寄与している。
  
  
• Barry Wyke（Neurological Laboratory, Royal College of Surgeons of England） Articular neurology
  　FreemanとWyke（1964, 1967）は関節の受容器終末を形態的に４つのタイプに分けた。

  I型 Ruffini type receptor 遅順応受容器 低閾値機械受容器 II型 Pacini form reecptor 速順応受容器 低閾値機械受容器 III型 Golgi腱器官に似た構造 関節靱帯の表面に分布している。 機械刺激の閾値が高く順応も遅い。 VI型 侵害受容器

  Ruffini type receptorにつながる線維は、それぞれに固有な興奮角 excitatory angleを持っていて、狭い範囲の関節にしか応じない。関節の中間位にこれを持つ者は少なく、関節が極限近くまで伸ばされたり、曲げられたり、回転させられたりすると初めて興奮するトルクの受容器とみられるものがある。 Ruffini type receptorは一般に張力受容器とみられている。 Pacini form recpetorはPacini小体と似ているが、薄い層板を持つのが特徴である。Pacini小体のように働くが、きわめて低い閾値を持つ。この受容器がきわめて順応が早く、関節の定常な位置を認識するのに役立つ可能性はない。多分関節の動きを検知する受容器であろう。

  
  
• 関節を他動的に動かして、屈伸運動を課すると、Type I, II, IIIの求心性線維のすべてが生理的範囲内の他動的屈伸運動に反応する。
• Type I, IIの求心性線維は、わずかな動きに反応する。
• Type IIIは、閾値が高く、大きな屈伸運動に反応する。
  
  
• Type IV (Aδ線維とC 線維)は、侵害刺激に反応する。
  （Type IIIがAδ線維、Type IVがC 線維と書いてある本もある。）
  
  
• 関節に原因があって生じる痛みは、侵害受容器が刺激されたときに起こる。
• この受容器は、関節包、関節靱帯および関節脂肪パッドに分布している。軟骨は神経支配を受けない。
• 関節包に分布するAδ線維とC 線維は、関節包の内面から、神経線維の自由終末が存在する点状部位を細いガラス棒で圧迫すると興奮する。
• 関節に他動的屈伸運動をかすると、生理的運動範囲で最大に興奮するもの、関節包を痛めるか、痛める可能性を持った侵害性関節運動の両方に反応するもの、および侵害性関節運動を課しても反応しないもの（求心性線維）がある。
• 関節腔にカラゲナンの混合溶液を注入して急性関節炎を発症させると、ほとんどすべての求心性線維が、生理的運動範囲内の関節運動に反応するようになる。つまり、関節炎がないとき、侵害性関節運動に反応しなかったものまでが、中等度の動きに反応する。
• 関節炎がないときの運動による関節痛は、侵害性関節運動に反応するAδ線維とC 線維の興奮によって生じる。
• 関節炎患者は、健常者が痛いと感じない生理的運動範囲内の関節運動を痛くてつらいと感じる。
• 健常者では侵害性関節運動にしか反応しなかった求心性線維が非侵害性関節運動に反応して興奮すると、非侵害性および侵害性関節運動の両方に反応した線維の興奮が増強すること、そして休止線維の興奮参加などが関節炎による痛みの発現に関わっている。特に休止線維の興奮参加が重い意味を持つ。この痛覚過敏にPGが関わっていて、NSAIDsがこの発現を抑える。
  
  
• 関節を支配する求心性神経は、基本的には、関連した筋を支配する求心性神経と同じ高さで脊髄に入る。
  
  

  肩関節を支配する求心性神経	C6を中心とした C4-C8 に入る。 肩関節には交感神経も分布している。約80% は星状神経節の節後線維
  肘関節を支配する求心性神経	C7-T1 を中心に C4-T4 の神経が分布している。
  膝関節を支配する求心性神経	神経支配は内側膝神経、後膝神経節から成る。 内側膝神経は L5-L6（Rat, Mouse etc） に入る。 後膝神経は L6-L7（Rat, Mouse etc）、S1 に入る。 中枢側の神経終末は I 層の先端と V から VI 層、VII 層の背側部に終末する。

  
  
  
• 関節からの求心性線維と関節周囲の皮膚からの求心性線維は同一の脊髄後角ニューロンに収束するから関連痛が説明できる。関節からの求心性線維は、脊髄に入った後に、前後の分節にも枝を伸ばす。
  
  

  一次関節神経	独立した枝として関節および近くの骨膜に分布している。
  副関節神経	筋神経から枝分かれした神経
  	足関節、肘関節および肘関節には、皮膚神経から枝分かれした神経も分布している。

[関節]

→椎間関節

仙腸関節 Articulatio sacroiliaca, Sacro-iliac joint　　←→障害　参考1 骨盤の骨である仙骨 Sacrumと腸骨 Iliumの間にある関節 自由度の大きいか多関節や股関節とは構造が異なり、前方の関節腔部分と後方を、強靱な骨間仙腸靱帯および後仙腸靱帯で結合されている。 仙腸関節は仙骨の耳状面と腸骨の耳状面によってつくられる関節で、両関節面は軟骨をかぶり、両者の間に滑液を含んだせまい関節腔が存在する。 関節面は凸凹があり、また関節包強い靱帯によって包まれるから可動性はほとんどない。 仙骨と腸骨の耳状面は著しく不平胆であるが、この面を関節軟骨が被った状態では極端な凹凸はなく、従って、運動制止の主要因にはならないと思われる。 概括的には、仙骨耳状面の上２／３は縦軸方向に溝状に凹み、寛骨耳状面はそれに対応した隆起をして両者が咬み合う。 関節軟骨の深層は硝子軟骨であるが、その表層は線維軟骨性である。 年令が進むと、特に弾性では、関節腔が部分的に消失するという。 付属する靱帯に次のものがある。 前仙腸靱帯：関節包の前面にあって仙骨外側部の前面と腸骨の耳状面の辺縁につく。 骨間仙腸靱帯：関節包の後方で、腸骨の腸骨粗面と仙骨の仙骨粗面とを結ぶ強い短い靱帯で、仙骨と腸骨の間隙を埋めている。 後仙腸靱帯：前者の表層にあって腸骨と仙骨の後面を結ぶ。上部の線維束は、ほぼ水平に横走して仙骨粗面と外側仙骨稜から腸骨粗面へ走り、下部の線維は斜め上外方へ箸って、外側仙骨稜と上後仙骨棘へ達する。 AKA-博田法は仙腸関節ほぐす徒手的理学療法である。

Pain Relief