□鎮痛法

│硬膜外の治療│

　→硬膜外ブロック　→硬膜外内視鏡手術　→Racz硬膜外癒着剥離神経形成術

○Spinal Endoscopy
硬膜外内視鏡手術 Epiduroscopy（内視鏡下硬膜外腔洗浄癒着剥離術）
　←→硬膜外ブロック/Racz硬膜外癒着剥離神経形成術　参考1/2/3

• 難治性腰下肢痛患者においての新しい治療法
  
  
• 薬物療法、神経ブロックに抵抗性の腰下肢痛に対する治療法
  
  
• 1930年代に開発され、エピドラスコピーとして、精密かつ簡便な機器の開発が進み、1990年代半ばには診断を中心に臨床応用されるようになってきた。
• 1995年Lloyd R. SaberskiとLuke M. Kitahataが診断だけではなく、慢性疼痛の治療に応用した。
  
  
• 硬膜外内視鏡（エピドラスコピー）を硬膜外腔（仙骨裂孔）から挿入し、腰痛の原因を特定する。
• エピドラスコピーを使って、直視下に、痛みの原因と考えられる癒着部位の剥離を行る。
• 硬膜外腔に生理食塩水を注入することによって、炎症物質を洗い流す。
• 炎症部位に局所麻酔薬やステロイド薬を投与する。
  
  

  エピドラスコピーの適応	除外症例
  難治性の腰痛患者 各種神経ブロックを試みるも期待した効果が得られなかった患者 各種薬物療法を試みるも期待した効果が得られなかった患者 心因性疼痛ではない。 患者の同意が得られている。 腰下肢痛の原因が神経根症である 腰仙骨部硬膜外腔に癒着の所見がある	出血素因のある症例 全身的な感染症 穿刺部位の感染症 頭蓋内占拠性病片のため頭蓋内圧が亢進している症例 カテーテルが挿入される仙骨列孔が狭小化している症例

  
  
  
• 痛みが神経根症であること証明するために、責任神経根に対してルートブロックを行い、疼痛が一時的にせよ軽減することを確かめなければならない。
• また仙骨硬膜外造影（ブロック）を行い、責任神経根付近に癒着（造影剤の欠損像）があることを確認しておく。
• これら２つの検査は、適応を決めるために重要であるばかりか、一部の患者においては、これのみで症状が軽減することもある。
  
  
• エピドラスコピーの良い適応となる疾患
  　Failed back症候群や腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症

　[鎮痛機序]

• 癒着剥離による馬尾や神経根の圧迫や牽引の除去による、除痛と血流の改善。
• 疼痛や神経障害に関与する化学物質の洗浄除去による鎮痛と神経回復の促進。
• 癒着剥離後の局所麻酔薬や副腎皮質ステロイドの拡がりが良好となる。

　[施行方法]

エピドラスコピーの適応

直径0.8mmの細径内視鏡と光源に、ダブルルーメンのエピドラスコープ装置のキットを用いる。 キットには、ビデオガイドカテーテルとこの挿入に必要な硬膜外穿刺用のTuohy針、ガイドワイヤー、ダイレーター、イントロデューサーなどが含まれている。 ビデオガイドカテーテルには、内視鏡を挿入するためと生食を注入するための直径1mmのチャネルが２つある。 生食を還流することにより内視鏡で硬膜外腔の所見を直視することと、カテーテルシャフトを左右に振ることにより、癒着剥離をすること、および患部への薬剤投与などが簡便に行われる。



• 腹臥位で、仙骨部の消毒を行った後、仙骨硬膜外ブロックの穿刺部位に局所麻酔薬を浸潤した後、18G Tuohy針を仙骨裂孔から仙骨硬膜外腔に刺入する。
• 造影を行い、針先を確認する。
• さらにTuohy針から仙骨硬膜外腔にガイドワイヤーを挿入し、これをダイレーター、イントロデューサーに通し、仙骨管に挿入する。
• ダイレーター、ガイドワイヤーをイントロデューサーから引き抜き、イントロデューサーからビデオガイドカテーテルを挿入する。
• 生理食塩水を流しながら、硬膜外腔の状態をビデオモニター、透視下に観察しながら腰部まで進める。
• 癒着があれば、ビデオガイドカテーテル先端でこれを貪的に剥離する。
• 強い炎症所見が認められる部位であれば、終了時に局所麻酔薬とステロイドの混合溶液をその部位に注入する。
• 以上の処置が終了したら、ファイバースコープ、ビデオガイドカテーテル、イントロデューサーを抜去し、皮膚切開部を1-2針縫合する。

　[治療効果]

• エピドラスコピーによって腰下肢痛が約1/2程度に減少し、鎮痛薬の使用量が減少する。
• 腰部脊柱管狭窄症では、疼痛の軽減に加え間欠性跛行が改善することが多い。

　[合併症]

• 硬膜外腔に注入する生理食塩水の量が多くなると頭痛が出現する。
• 硬膜穿刺、感染、神経損傷、硬膜外血腫など硬膜外カテーテル挿入の場合と同様の合併症が起こる可能性がある。
  
  
• 疾患的性格より数ヶ月後に再癒着を起こしやすいのが問題である。
• エピドラスコピーは簡便で侵襲が少ない処置であるが、まれに下肢の脱力やしびれ、膀胱直腸障害も出現することがある。適応と効果を十分検討説明し、患者の納得を得られた上で行うことが望ましいと考えられる。

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○Racz硬膜外癒着剥離神経形成術 Percutaneous epidural neuroplasty (Racz procedure）　→参考1/2/3

• Raczカテーテルによる硬膜外 neuroplasty：神経剥離術と神経癒着溶解とを合わせたもの
• 1989年からGabor Raczを中心に普及し、米国ではエピドラスコピーよりも標準的な治療法
• 保存的治療に反応しない疼痛を伴った神経根症に行うinterventional techniqueの一つであり、目的神経椎間孔または疼痛部位近辺にカテーテルを留置し、カテーテル自体による少しの癒着剥離と薬液の集中投与による化学的癒着剥離神経形成術である。
• スプリントカテーテルのような機械的剥離はできない。
• 適応：Failed Back Surgery Syndrome 、epidural fibrosis、lumbar radiculopathy、spinal stenosis、herniated disks、back pain and radiculopathy、parastradiation neuropathy、postmeningitis epidural scarring

　Raczカテーテル（＝Raczスプリングガイドカテーテル）

• ステンレス製の連続スプリングコイルで形成されたカテーテルで、先端部は硬膜や神経根を傷つけないような鈍な形態になっている。中にスタイレットを挿入することで操作性が安定する。
• 硬膜外腔内視鏡治療は内視鏡で覗きながら剥離用のビデオガイドカテーテルを挿入しないといけないが、RACZカテーテルは内腔も細く、RACZカテーテルのみの作業で手技が終了するので、皮膚の創は針の刺入だけであり、日帰り治療で行っている施設も多い。
• RACZカテーテルは細く、しかもフレキシブルなので、腰髄・仙髄レベルなどの剥離用のビデオガイドカテーテルが挿入できない狭い空間でも挿入でき、胸髄・頚髄レベルの硬膜外腔に癒着がある症例にも治療可能。

  プロトコール 1%リドカイン10ml、Iohexol（造影剤）による硬膜外造影（RK硬膜外針から） カテーテル留置後、0.0%生理食塩水10mlとヒアルロニダーゼ↓1,500単位注入 RK硬膜外針抜去後カテーテルから0.2%ロピバカイン10mlとステロイド薬（デキサメタゾン：デカドロン®） 注入 カテーテル固定、無菌フィルター装着後10%高張食塩水↓10mlフラッシュ 2日目、3日目に0.2%ロピバカイン10ml、10%高張食塩水を注入 ＊ヒアルロニダーゼ：癒着組織のヒアルロン酸を分解し、局所麻酔薬、ステロイド薬の拡散や組織浸透性を増大させる。癒着瘢痕組織内に薬物拡散促進を行う。又、神経周囲の線維化を軟化させる目的で使用される。　←→ヒアルロニダーゼ ＊高張食塩水：硬膜外腔癒着のメカニカルな分解と、瘢痕化または炎症を起こした神経の浮腫を減少させる。硬膜外腔の組織液を増やし、留置カテーテルのマニピュレーションによる剥離や交感神経に対するブロック効果を持つ？

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○経皮的椎間板髄核摘出術 Percutaneous discectomy : PD
　←→IDET/経皮的高周波椎間板減圧術

• 保存療法と手術の中間に位置する療法
• 椎間板ヘルニアのブロック療法が奏効しなかった症例に対して行う
• 局所麻酔下で、X線透視下、ヘルニアのある椎間板に、直径４ミリ程度の管を刺し、鉗子を入れて椎間板の一部（髄核）を摘出方法


• 1975年に土方貞久（慶應大学整形外科）らがはじめ、1985年にGary Onikらによって欧米で発展した。

  ┏土方ら　　髄核摘出パンチを用いる方法 ┣Onikら　ピストン吸引式 ┗酒匂ら　回転吸引式シェーバーを用いる方法

  ┏腰部経皮的椎間板摘出術 ┗頸部経皮的椎間板摘出術

• 手術室　X線透視下

　[鎮痛の機序]

• 髄核を摘出することによって、椎間板内圧が減少し、刺激状態にある神経根や椎間板周囲の神経終末の異常発射をおさまる。
• 線維化などが生じることによる椎間板の変性を促すことで症状を緩和する。

　[合併症]

• 神経の損傷、感染、血管例えば腸骨動脈の損傷、頸部も出血による頸部腫脹の可能性がある。
• PD直後の椎間板の間接的な減圧のほかに、椎間板変性による減圧などが生じるまで数ヶ月以上を要すると考えられるので、症例によっては速効性のない点が欠点である。
  
  

  DEKOMPRESSORを用いた経皮的髄核摘出術　参考1/2//3 DEKOMPRESSOR：経皮的髄核摘出術における髄核の吸引用プローベ 椎間板の中の髄核にガイド針を通してDEKOMPRESSORを挿入し、約2分間らせん状のチップを回転させ髄核を抽出する。

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Pain Relief