■薬物療法

│セロトニン受容体関連薬│

　←→　発痛物質/伝達物質/受容体/抑制系/raphe/抗うつ薬

作用機序	薬	臨床適応	副作用
5-HT1A受容体作動薬	タンドスピロン	不安、うつ状態
5-HT1B/1D受容体作動薬	トリプタン製剤	片頭痛、群発頭痛
5-HT1F受容体作動薬	ditan系薬	片頭痛
5-HT1非選択的作動薬	エルゴタミン 麦角アルカロイドなど	片頭痛、群発頭痛
5-HT2A/2C受容体拮抗薬	塩酸サルポグレラート ケタンセリン メチセルギド シプロヘプタジン	抗血小板 片頭痛 カルチノイド ダンピング症候群	眠気、脱力感 精神症状、胃腸症状
5-HT2A受容体拮抗薬	リタンセリン リスペリドン	統合失調症、うつ状態
5-HT2A/2C受容体拮抗薬	シクロベンザプリン	中枢性筋弛緩薬
5-HT3受容体拮抗薬	オンダンセトロン グラニセトロン ラモセトロン	抗がん薬による嘔吐 過敏性腸症候群	胃腸症状、頭痛 顔面潮紅
5HT トランスポーター阻害	抗うつ薬	うつ病	譫妄、幻覚 セロトニン症候群
小胞モノアミン トランスポーター阻害	レセルピン テトラベナジン	高血圧	うつ状態 錐体外路症状
SDA	クロザピン リスペリドン	非定型抗精神病薬
気分安定薬	リチウム	高血圧	そう状態 うつ状態

●5-HT1A作動薬　←→5-HT1A受容体

ブスピロン buspirone（®） セロトニン5-HT1A受容体作動薬、アザピロン（azapirone）系の抗不安薬、本邦未発売 米国のブリストル・マイヤーズ社は1968年に、ドーパミン受容体に拮抗する新しい抗精神病薬としてブスピロンを開発した。抗精神病効果よりもむしろ抗不安効果に優れていることが明らかとなり、類似物質のイプサピロン等と共に、アザピロン系抗不安薬と分類した。 その後の研究でジアゼパムと同等の抗不安効果があることが明らかになり、最初のベンゾジアゼピン受容体に作用しない抗不安薬として1985年に西ドイツ、1986年に米国で承認された。 1985年、初めて西ドイツで医薬品として認可された。 ブスピロンの投与は単回投与では効果は現れず１〜２週間してから効果が現れる。 アザピロン系抗不安薬はベンゾジアゼピン系抗不安薬でみられる乱用、依存、耐性、退薬症状などを引き起こさない。 日本で行われた臨床試験では、ブスピロンは抗不安効果においてプラセボを上回ることができず、導入は断念された。

イプサピロン ipsapirone（®） セロトニン5-HT1A受容体作動薬、アザピロン系の抗不安薬 セロトニン系副作用の多発により脱落

タンドスピロン tandospirone（クエン酸タンドスピロン：セディール Sediel®） セロトニン5-HT1A受容体部分作動薬、アザピロン系の抗不安薬 住友製薬（現、大日本住友製薬）が中国で1996年に開発した。 住友製薬（現、大日本住友製薬）は、ブスピロンを改良し、抗コンフリクト作用を強めたタンドスピロンを開発し、本邦では1996年に上市した。 心身症からくる不安・緊張・抑うつ・睡眠障害および、自律神経失調症や神経症などに適応がある。 効果の発現には時間がかかり、2~4週間程度が必要とされる。 代表的な抗不安薬であるベンゾジアゼピン系薬剤と比較して筋弛緩作用や依存性などの有害事象が少なく、高齢者に使いやすい。 大脳辺縁系に高密度に分布する5HT1A受容体を選択的に刺激し、セロトニン神経系の神経活動を抑制することによって、抗不安作用と抗うつ作用を示す。 セロトニン5HT1A自己受容体と結合し、一時的にセロトニンの放出を抑制し、神経終末の小胞体内に蓄積される。 反復投与により自己受容体数を正常な数まで減少させると同時にタンドスピロンに対する自己抗体の感受性が低下する。これらの結果、セロトニンの放出の抑制が解除され、抗うつ作用を発揮する。

●5-HT1作動薬

トリプタン製剤 triptan　←→頭痛の治療 →スマトリプタン/ゾルミトリプタン/エレトリプタン/リザトリプタン/ナラトリプタン 脳動脈収縮作用がある5-HT1B/1D受容体（Gi/o共役型受容体）の選択的作動薬である。 片頭痛、群発頭痛の治療薬 1970年代からインドール核（セロトニンの基本骨格）を有する化合物のうち、セロトニン受容体に作用する化合物の合成、スクリーニングが行なわれ、コハク酸スマトリプタンが開発された。 1980年代になり「三叉神経血管説」が提唱されるとともに、5-HT受容体のクローニングが進み、頭蓋内血管には受容体のなかでも1B型と1D型が発現・分布していることが示された。5-HT1B受容体は血管平滑筋に発現していて、血管収縮を抑制させる機能をがあり、5-HT1D受容体は三叉神経終末に発現していて、三叉神経終末の興奮を抑制する機能を有することが明らかになった。片頭痛基本的病態としている「血管拡張」と「神経原性炎症」とを両受容体を活性化させることにより抑制させることができる可能性が示唆された。 GlaxoSmithKlineは1991年に販売を開始し、2000年に注射薬発売、2001年に経口薬発売が発売された。 日本では、群発頭痛には注射トリプタンのみ、片頭痛には、経口・点鼻・注射トリプタンが保険収載されている。 トリプタン系薬剤は、片頭痛発作頓挫薬の第一選択薬。片頭痛が生じた直後に服用すると効果がある。 　頭痛発作時に、セロトニンの枯渇により過度に拡張した頭蓋内外の血管を収縮させることによって、片頭痛を改善させると考えられている。 片頭痛の予兆期、前兆期に使用しても効果は期待できない（前兆期は、セロトニンによる血管収縮期であるので、この時期にアゴニストを増やしても、予防にはならない。） 片頭痛になると、消化管の働きが悪くなって、その結果薬の吸収が悪くなり、効果が現れにくくなる。嘔吐する時期になると飲み薬は無力。 群発頭痛の治療にも速効性が求められる。皮下注射なら効果発現までに15分、経鼻スプレー製剤なら 30分を要する。また、トリプタン系薬剤の1日当たりの使用量は制限（皮下注射なら2回まで、経鼻スプレーなら3回まで）されていて、血管疾患リスクの高い患者には禁忌といった問題もある。トリプタン系薬剤の代替として標準的な治療ガイドラインが推奨しているのは、高流量酸素吸入である。 狭心症や心筋梗塞の既往のある患者には禁忌 新血管性炎疾患や脳血管障害患者やエルゴタミン投与中の使用は禁忌である。 家族性片麻痺性片頭痛や脳底型片頭痛（basilar-type migraine）などの特殊な片頭痛に対してはトリプタン製剤の投与は禁忌 作用機序 拡張した脳内の頸動脈の動静脈吻合 carotid arterio-venous anastomosesのシャントを閉鎖することによって、脳への血流を確保する。　←→血管説/Saxena 血管周囲の神経終末からの炎症誘起性ペプチドの遊離を阻止し、硬膜の神経炎症を抑制する。　←→三叉神経血管説 下行性疼痛抑制系ー延髄大縫線核ニューロンから放出されるセロトニンにより、脊髄後角の侵害受容ニューロンが抑制される。 コハク酸スマトリプタン sumatriptan（イミグラン®） 5-HT1B/1D作動性のトリプタン製剤、第二世代の片頭痛治療薬 1970年代 Patrick PA Humphrey（英国の製薬会社Glaxo）は頭痛薬として血管収縮物質を探索した。インドール核を有する化合物のうち、セロトニン受容体に作用する化合物の合成、スクリーニングを行ない、GR43175（スマトリプタン）を発見し、パテントをとった。エルゴタミンが選択的にarteriovenous anastomoses (vascular connections）の血管を収縮させることを発見したSaxenaの方法も参考にした。 1988年 Humphreyらはスマトリプタンが選択的に5-HT1受容体に作用することを確認した。 1988年 Alfred Doenicke（ルードビッヒ－マクシミリアン大）がスマトリプタンの頭痛への有効性を証明示した。34人の片頭痛患者に投与したところ、23人の患者の発作の頻度と程度を劇的に抑えた。 1992年 12月に米国FDAで承認され、現在のGlaxo SmithKline社が販売を開始した。 tryptamine受容体に作用すると言うことと、化学構造に5-sulfonamide groupがあることから、sumatriptanと命名された。 片頭痛の第１選択薬、群発頭痛の治療薬 作用時間　錠剤：30分、点鼻薬：15分、注射薬：10分 有効性　錠剤：71%、点鼻薬：63%、注射薬：79% 注射薬は速効性で、注射後に胸部絞扼感や悪心・嘔吐の副作用が現れるが、一過性で重篤ではない。悪心・嘔吐に対しては、制吐剤のメトクロプラミド（プリンペラン®）やドンペリドン（ナウゼリン®）の錠剤や坐薬を併用することにより、容易に解決できる。 点鼻薬は注射剤に次いで速効性を有志、口腔内に流入するとやや苦味を呈することがある。 薬物血中濃度が初期と中期に２峰性のピークを示すため、立ち上がりと持続性が良く、外出先でも服薬のタイミングを逃すことなく服用できる。 片頭痛にスマトリプタン-ナプロキセン合剤が有効 代謝酵素：MAO-Aによる。CYPの代謝を受けない。 ゾルミトリプタン zolmitriptan（ゾーミック®） 5-HT1B/1D作動性のトリプタン製剤 アストラゼネカが開発した第二世代トリプタン製剤 1997年に英国で承認された。 口腔内速溶錠（RM錠）、崩壊錠 生体利用率が40%代と高く、脂溶性に富み、血液脳関門を通過して脳幹の三叉神経核にも作用して鎮痛効果を高めると言われている。 中枢性副作用（眠気、めまい）が多い。 代謝酵素：主として肝臓においてCYP1A2により活性代謝物に代謝され、さらにMAO-Aにより不活性代謝物に代謝され、尿中及び便中に排泄される。主な代謝物は、N-脱メチル体、N-酸化体、インドール酢酸体（血漿中及び尿中の主代謝物）の3種。 （ゾーミッグの名称の由来：zo（主成分がzolmitriptan）＋mig（migraine）を組み合わせて命名された。） エレトリプタン eletriptan（シルパックス®） 5-HT1B/1D作動性のトリプタン製剤 ファイザー社中央研究所（英国）が合成した。 脂溶性や消化管における吸収率が比較的高い。 5-HT1B/1D受容体に対する結合親和性と選択性がより高められ、最高血中脳度到達時間Tmaxが早く、T1/2が長い。 代謝酵素：CYP3A4の代謝を受ける。 リザトリプタン rizatriptan（マクサルト®） 5-HT1B/1D作動性のトリプタン製剤 米国メルク社が開発した経口片頭痛治療薬 1995年5月から本邦において臨床開発に着手し、2003年7月に片頭痛治療薬として承認された。 経口錠、口腔内速溶錠（RPD錠）、崩壊錠 Tmaxが約1.0時間と早く、生物学的利用率も40%と良好であるため、内服後速やかな吸収と効果の発現が期待できる。 効果が迅速であるため、脳血管周囲の神経炎症の立ち上がりが早い。 前兆のある片頭痛や小児期から思春期の片頭痛への安全性も確認されている。 代謝酵素：MAO-Aによる。CYPの代謝を受けない。 ナラトリプタン naratriptan（アマージ®） 5-HT1B/1D作動性のトリプタン製剤 2008年1月25日　製造承認を取得 半減期が長い（約5時間）点が最大の特徴 代謝酵素：CYP1A2、CYP2C9、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4/5などの複数のCYP分子種で代謝される。 ナラトリプタンは各CYP分子種（CYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4/5）の代謝活性を阻害しない。 ナラトリプタンはMAO-A、MAO-Bの代謝活性を阻害しない。 主な副作用：悪心、嘔吐、痛みなど 　悪心、嘔吐が強い場合には、制吐薬のメトクロプラミドやドンペリドンを積極的に併用する。

5–HT1F受容体作動薬（ditan系薬） ラスミディタン lasmiditan、ラスミジタンコハク酸塩（レイボー®） 選択的5–HT1F作動薬、経口5-HT1F受容体刺激薬 5%の患者は併存疾患や副作用のため経口トリプタンの恩恵を受けることができない。このような問題に対して選択的5–HT1F作動薬であるラスミディタンが開発された。 ラスミディタンはトリプタンと比較すると血管への影響が少ないため、特殊型片頭痛の症例や心血管疾患やコントロール不良の高血圧を合併する片頭痛患者にも安全に使用できるという利点がある。 ラスミディタンは欧米で行われた心血管疾患の既往歴のある患者を含む一般化可能な片頭痛患者の集団を対象とした第三相試験で有効性が認められ、2019年10月11日に米国食品医薬局（FDA）で承認を取得した。 2022年1月20日　日本イーライリリー、片頭痛治療剤「レイボー錠50mg/100mg」（一般名＝ラスミジタンコハク酸塩）について、「片頭痛」を効能・効果として、同日付で国内製造販売承認を取得したと発表した。。片頭痛の病態には、中枢での疼痛シグナル伝達、及び末梢での三叉神経系の過活動が関係していて、セロトニン 1F 受容体が視床、大脳皮質、三叉神経系の神経細胞やシナプスに発現していることから、セロトニン 1F 受容体の片頭痛の病態への関連性が指摘されてきた。本剤は、血液脳関門通過性を有し、セロトニン1F受容体に選択的に結合することにより、中枢での疼痛情報の伝達を抑制し、末梢では三叉神経からの神経原性炎症や疼痛伝達に関わる神経伝達物質（CGRPやグルタミン酸など）の放出を抑制することで、片頭痛発作に対する作用を示すことが期待されている。

●5-HT2受容体拮抗薬

塩酸サルポグレラート sarpogrelete hydrochloride（アンプラーグ®） 5-HT2A/2C受容体拮抗薬 1993年７月に錠剤が、1999年３月に細粒剤が承認され，末梢循環改善作用を有する抗血小板剤として慢性動脈閉塞症に伴う虚血性諸症状の改善に用いられている。 血小板や血管平滑筋に作用 抗血小板薬 血小板凝集抑制作用、抗血栓作用、微小循環改善作用、血管収縮抑制作用 血液脳関門を通過しないので、中枢作用はない。 　[適応] バージャー病に伴う潰瘍、冷感および疼痛 交感神経依存性疼痛に伴う冷感および疼痛 レイノー症候群

ケタンセリン ketanserin 5-HT2A/2C受容体拮抗薬 気管支平滑筋収縮抑制 血小板凝集抑制作用、抗血栓作用、微小循環改善作用、血管収縮抑制作用 Hanna MH（ロンドンKing's College Hospital麻酔科）らは1989年に、ケタンセリンを用いて、RSDに対する二重盲検試験を行い、その有効性を初めて報告した。

リタンセリン ritanserin 長時間作用性5-HT2受容体拮抗薬 統合失調治療のための定型抗精神病薬 Paul Janssen（P 1926〜2003, ベルギーのヤンセン社の薬理学者）は、ピパンペロンとクロザピンが5-HT2受容体拮抗作用を持っていることに着目し、リタンセリンを開発した。 リタンセリンは単剤では著しい臨床効果を示さないが、従来のハロペリドールのような定型抗精神病薬と併用すると、陽性症状、陰性症状への効果のほか、錐体外路症状が軽減される。 D2受容体遮断作用と5-HT2受容体拮抗作用を持った薬を開発すれば良いのではないかと、2つの作用を持った薬剤としてリスペリドンの合成に成功した。 リタンセリン服用により、ノンレム睡眠が増える。

メチセルギド（メチセルジド） methysergide（Sansert®） 5-HT2A/2C受容体拮抗薬 日本では臨床使用されていない。 血管収縮抑制、血圧上昇抑制、平滑筋収縮抑制 欧米では、片頭痛や血管性頭痛の予防薬として使用されてきた。片頭痛時の発作には徐痛の効果がない。 カルチノイド、ダンピング症候群の治療

v cyproheptadine（Sansert®） 抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、抗セロトニン薬（5-HT2A受容体拮抗薬）、カルシウムチャネルのブロック アレルギー反応（花粉症、痒みを伴う皮膚炎、アレルギー性鼻炎など）を抑える。 PTSD関連の悪夢の治療に有効 セロトニン症候群の管理に用いられる。 小児、青年期の片頭痛の予防薬として用いられる。 SSRI-induced sexual dysfunctionやdrug-induced hyperhydrosis (発汗過多)の治療に用いられる。 ミアンセリンと同様に寿命を延ばす効果が期待されている。

→シクロベンザプリン：中枢性筋弛緩薬

●5-HT3受容体拮抗薬

塩酸オンダンセトロン ondansetron（ゾフラン®） 5-HT3受容体拮抗薬、制吐薬 適応症：抗がん剤（シスプラチンなど）投与に伴う消化器症状（悪心・嘔吐） 抗がん薬投与による悪心・嘔吐 抗がん剤が消化器粘膜に蓄積し、腸クロム親和性細胞に作用して、5-HTを遊離させ、これが嘔吐中枢または、迷走神経終末を刺激する。 抗がん剤が直接化学受容器引き金帯（CTZ）を通して嘔吐中枢を刺激し、嘔吐を誘発させる。 デキサメタゾンとの併用が推奨されている。

グラニセトロン granisetron（カイトリル®） 国内初の5-HT3受容体拮抗型制吐薬 セロトニンと5-HT3受容体との結合を選択的に阻害することで求心性迷走神経と化学受容器引き金帯（CTZ）に作用して嘔吐を抑制する。 適応症：抗がん剤（シスプラチンなど）投与に伴う消化器症状（悪心・嘔吐） デキサメタゾンとの併用が推奨されている。

ラモセトロン塩酸塩 ramosetron（ナゼア ®、イリボー®） 男性向け下痢型下痢型の過敏性腸症候群治療薬 女性では副作用が表れる確率も高い。

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●5-HT非選択的作動薬

• 麦角アルカロイド ergot alkaroidsは、5-HT作用、アドレナリンα作用、ドーパミン作用を含む。（←→アルカロイド/LSD/聖アントニウスの火）
  （麦角アルカロイド性のドーパミン作動薬もある）

  麦角アルカロイド↓		セロトニン5-HT1受容体	アドレナリンα受容体	ドーパミンD2受容体
  アミノ酸型	エルゴタミン↓ 　ergotamine	5-HT1A,B,D,E,F、5-HT2A,C	α、β	D2,3,4
  		血管平滑筋：部分アゴニスト 平滑筋：アンタゴニスト 中枢：弱いアンタゴニスト 　／アンタゴニスト →頭痛薬	血管平滑筋：部分アゴニスト 　／アンタゴニスト 神経：アンタゴニスト	CTZ：アゴニスト
  	ジヒドロエルゴタミン↓	平滑筋：部分アンタゴニスト 　　／アンタゴニスト	静脈：アンタゴニスト 血管平滑筋：アンタゴニスト 中枢：アンタゴニスト	交感神経節： 　特異的アンタゴニスト
  アミン型	エルゴメトリン メチルエルゴタミン	臍帯、胎盤血管： 　部分アゴニスト 平滑筋：強力アンタゴニスト 中枢：部分アンタゴニスト 　／アンタゴニスト	血管：弱い部分アゴニスト	脳血管：弱いアゴニスト 中枢：部分アンタゴニスト 　／アンタゴニスト
  エルゴタミン ergotamine　↑ 最も古いセロトニン作働性血管収縮薬：1925年に片頭痛の治療薬として導入された。 麦角アルカロイド：麦角菌 Claviceps purpurea の産生するインドールアルカロイド 主骨格部分はインドール骨格を有するリゼルグ酸である。 交感神経α遮断作用があり血管収縮作用が強いので、片頭痛治療薬として使われきたが。トリプタン製剤の発売後はあまり処方されなくなった。 前兆期、あるいは頭痛発作の初期の服用でしか効果がない。 服用のタイミングが難しく、タイミングがずれると効果はなく，しばしば悪心嘔吐を誘発することもある。 全身の動脈に作用し、長期に服用することにより、末梢動脈炎を併発することがある。 頭痛発作に対する不安から頻回の服用がしばしばみられ、片頭痛慢性化、薬物乱用頭痛の原因となる。 エルゴタミンは各種セロトニン受容体、アドレナリン受容体、ドーパミン受容体に作用するため副作用が多く、薬剤依存性が大であった。 特にドーパミン受容体への作用は悪心・嘔吐を招き、また5-HT2A,Cに対する作用は脳血管を刺激して、片頭痛を悪化させる。 心血管系の副作用がある。 カフェルゴット® cafergot® （酒石酸エルゴタミン・無水カフェイン） 頭痛の急性期治療薬 Sandoz（スイス、現ノバルティスファーマ社）が1948年に発売した。エルゴタミンの経口投与は注射に比べて薬効が充分に得られなかったが、カフェインを配合することにより、エルゴタミン注射に匹敵する効果が得られた。 日本では1964年に発売されたが、トリプタン製剤の出現によって､カフェルゴットの存在価値が低下したことから、販売中止（2009年）。 短所：各種トリプタン製剤と比較すると､効力は弱く､血中濃度の安定性に欠ける。悪心・嘔吐が多く、四肢冷感などが生じやすい。 長所：血中濃度の維持が長いので、再発性頭痛が現れにくい。
  エルゴメトリン ergometrine 麦角アルカロイド 1935年にHarold Ward Dudley（1887〜1935, ロンドンの国立医学研究所：NIMR）とJohn Chassar Moir（P 1900〜1977, オックスフォードの産科教授）らが麦角からエルゴメトリン ergometine」または「エルゴノビン ergonovine」の分離に成功した。 エルゴタミンと比べると交感神経α受容体遮断作用はごく軽微なので、血管収縮作用は弱い。 子宮の平滑筋を収縮させる陣痛促進や分娩後の子宮出血抑制のための、子宮筋収縮薬として用いられた。 エルゴメトリンを加水分解して得られるインドール母核部がリゼルグ酸であり、そのジメチルアミドが幻覚薬LSDである。LSDは強力な幻覚作用、精神分裂症状を起こすので、麻薬指定にされている。
  ジヒドロエルゴタミン dihydroergotamine　↑（ジヒデルゴット®） メシル酸ジヒドロエルゴタミン dihydroergotamine mesilate 1943年 Arthur Stoll↑（P 1887〜1971, スイス・サンドSandoz製薬の化学者）とAlbert Hofmann↑（P 1906/1/11〜2008/4/29 スイスバーゼルのSandoz研究所、現 Novartis研究所）はジヒドロエルゴタミン（DHE-45, Sandoz）を合成し、Horon, Peters and Blumnthal（Mayo Clinic）が片頭痛の治療に使った。 血管収縮剤／植物系／起立性低血圧・血管性頭痛用剤 頭痛治療薬： 頭痛間歇期（予防薬） 血管収縮作用よりも神経細胞への直接作用によって抗片頭痛効果を発揮する。 5-HTlA、5-HTlD、5-HT2、ドーパミンD2、α-あるいはβ-アドレナリン受容体に作用する。 血液脳関門を通過する。

  
  

  □痛みと鎮痛の歴史年表

  →

  鎮痛2 麦角↓

  
  

  麦角 　ergot	天候不順などのために、成長のよくないライ麦に麦角菌が寄生することがある。 麦角菌がライ麦・小麦などに寄生すると、麦の小穂花の子房を浸食し、麦粒になりすまして、麦の穂の先に黒っぽい角が形成される。 「argot（フランス語）」＝「悪魔の角（爪）」と呼んで恐れられていた。 麦角菌の存在は古代から知られていた。BC600年頃の古代アッシリア人の古文書にもすでに「穀物の耳（角）の有毒な小結節」という記述がある。
  麦角菌	バッカクキン科バッカクキン属（Claviceps）に属する子嚢菌の総称で、ライ麦をはじめ小麦、大麦、エンバクなど多くの穀物に寄生する。 麦角菌が作る菌核は黒い角状なので、麦角と呼ばれるようになった。悪魔の爪などとも形容される。 特によく知られる種 Claviceps purpurea　：Clavices（＝カニの頭） + purpura（＝紫） 麦角菌の胞子は昆虫や風によって、幼弱なライ麦の穂状花に運ばれる。菌核は土壌の中で越冬し、春に熟すと発芽して、微細な胞子を放出する。胞子が熟したライ麦の小穂花の子房を浸食すると、ライ麦の穂に菌核と呼ばれる湾曲した紫色の固い突起を形成する。つまり麦粒になりすまして、麦の穂の先に黒っぽい角を形成する。 ヨーロッパでは、麦角抽出液は分娩促進剤として使われていた。
  麦角アルカロイド↑ ←→アルカロイド	麦角菌が寄生した麦角にはいろいろなアルカロイドが含まれており、麦角は薬理活性物質の宝庫である。 麦角は活性アルカロイドとして、エルゴトキシンがえられる。これはエルゴクリスチン、エルゴコルニン、エルゴタミンなどの混合物。 リゼルグ酸を共通骨格とするが、アミノ酸型とアミン型がある。 麦角アルカロイドには、アドレナリンα受容体、ドーパミンD2受容体作用、セロトニン受容体に部分的作用薬および拮抗薬の作用がある。 一般に麦角アルカロイドには血管や子宮を収縮させる作用がある。血管収縮作用を持つ麦角アルカロイドは、毛細血管を損傷させる。その結果、血流停滞、血栓形成、壊疽をもたらす。麦角の集団中毒でみられた流産は、麦角アルカロイドの子宮収縮作用によるものである。 聖アントニウスの火は麦角中毒 ergotismである。麦角アルカロイドには血管や子宮を収縮させる作用がある。血管収縮作用を持つ麦角アルカロイドは、毛細血管を損傷させる。その結果、血流停滞、血栓形成、壊疽をもたらす。麦角の集団中毒でみられた流産は、麦角アルカロイドの子宮収縮作用によるものである。中世の魔女狩りは、産婆が分娩を早めるために麦角を用いていたことと関係があるのかもしれない。 アメリカの植民地時代には、産婆 midwivesは、麦角を陣痛促進薬として用いたり、またさまざまな薬草を利用して心身の病を取り除いていた。原因不明の病気が流行したときには、産婆が疑われ、魔女狩りの被害者となった。 Hofmannが1938年に、麦角菌に含まれるリゼルギン酸からLSD-25を合成した。主として知覚、ことに視覚領域を主とする多彩な幻覚、陶酔感や陽気な気分、逆に不安な抑うつをきたす。乱用により脳障害をおこし、精神病症状や自殺傾向を生じる場合がある。オウム真理教（現・アレフ）はロシアからエルゴタミン5kgを購入し、精製してLSDを作っていたという。

セロトニン症候群 serotonin syndrome　←→悪性症候群/セロトニン/セロトニン関連薬

• 脳内の5HT機能の異常亢進による中枢神経系および自律神経系を介した症状を呈する症候群
• セロトニン症候群は通常、セロトニン作動系の薬剤との相互作用によって発生する。

  MAO阻害剤とSSRI デキストロメトルファンとSSRIの組み合わせ SSRIの過量摂取 SSRI/SNRIとトリプタン系薬剤の併用 などによって発生する。高齢者は特に注意を要する。

  
  
• 症状は軽いものから、頭痛、めまい、嘔吐、昏睡、そして死亡である。
• 症状は3つの主要な神経系に影響を与える。

  自律神経系	体温上昇、異常発汗、悪寒、緊張、高血圧、心拍数の増加、吐き気、下痢
  体性神経系および筋肉	焦燥（運動不穏、アカシジア）、ミオクローヌス、腱反射亢進、筋肉の痙攣、緊張と緩和の繰り返し（例: 歯をがちがちさせる）、硬直、振戦、協調運動障害
  脳認識機能	見当識障害、精神状態の変化（錯乱、軽躁状態、混乱、興奮、昏睡）、頭痛

Pain Relief