症例87

臨床所見

0歳 女性
要約)超低出生体重児、超早産児、SGA児、敗血性ショック。 病歴)母体の加重型妊娠高血圧腎症、HELLP症候群のために、緊急帝王切開で出生した在胎 24 週 0 日、408g の超低出生体重児。気管挿管、人工換気、人工肺サーファクタント投与。生後 48 時間までは呼吸状態、循環動態は安定。動脈管は太く開存したまま。日齢2、口腔内出血、胃出血、その頃より、血圧低下。半日後、血小板低下。日齢3、低血圧が持続、代謝性アシドーシスが進行。日齢4、7永眠。死亡確認5時間後に Ai-CT 撮影。


解剖)なし。


診断

  • (生前:○月24日13時44分、X線撮影)サーファクタント投与前の撮影と思われる。両側肺の volume 低下、透過性低下があり、RDS の状態にあると思われる。上腕骨の骨端線の骨濃度が骨幹部と不釣り合いに高く見える。非特異的所見ではあるが、すでに胎内で一定期間の侵襲が加わっていたことを示唆する。 この時点では carina での左右主気管支の分岐角は大きくなく、その後の撮影と対照をなす。この後心拡大が進行していったことを示している。   
  • (生前:○月25日10時19分、X線撮影)サーファクタント投与後の撮影と思われる。右肺は一定の含気が得られたが、肺野には微細な粒状影が蜜に分布し、依然として RDS 相当の状態にあると推測させる。 左肺はより末梢肺の拡張が不良で white out している状態。気管支の断面が大きく陽圧呼吸下にあることを示すが、空気漏出は生じていない。 気管内チューブ、右下肢からの PI カテーテル、胃管などのデバイス類の走行経路には異常なし。
  • (生前:○月25日22時52分、X線撮影)右肺は前日より伸展し、air entry が得られている。肺紋理の血管断面が、いわゆる white dots として増強しており、肺の高血流状態を示す。左肺の air entry は昨日よりは良くなっているが、上葉の一部に留まっており右に比べて含気不良である。
  • (生前:○月26日11時20分、X線撮影)両側肺は透過性が前日より高まっているが、25 日 10:19 時点のような RG パターン様の微細粒状影があるように見える。  
  • (生前:○月26日11時20分、X線撮影)両側肺の含気低下進行。左肺はほとんど含気を失っている。右肺でも斑状影が癒合するように拡大している。臨床的に観察された肺出血の際の胸部所見としては整合する所見で ある。気管の断面は拡張しており、陽圧がかけられていることを示唆しているが、この時点でも明らかな気道系からの空気漏出はない。食道内の空気が頸部に見える。  
  • (以下、AiCTについて)デバイス類は外されており、手を胸の前で組んでおり、エンゼルケアの後の撮影ではないかと思われる。全身皮下浮腫あり。
  • 脳溝はシルビウス裂が形成されており在胎 24 週相当として平均的。両側側脳室壁には germinalmatrix が高吸収に描出されているが、これも在胎24週で出生直後として平均的。左側脳室の germinal matrix から出血しており、左側脳室内に血腫を形成し、第三脳室、 第四脳室、マジャンディ孔を介して脳槽に流出している。
  • 脳実質の濃度は在胎 24 週で出生直後として平均的である。形成異常の所見、上記 IVH 以外の破壊性変化は認められない。
  • IVHは存在するものの、頭蓋内には直ちに生命維持を困難とさせるような所見は認められない。
  • 両側肺の含気は CT 上は全く認められない。気管・気管支を見分けることも困難。肺の CT 値は 60 程度に達している部分が広範に認められる。液面形成を示している心内腔で、血清に近い状態の腹側が CT 値 40 程度、血球成分が豊富な背側で CT 値 75 程度であることを考えると、肺出血により肺内が高吸収化しているのであろうと思われる。   
  • 右房内の腹側にガス粒あり(胸骨圧迫は施行されておらず、死亡確認 5 時間後 に撮影された死後 CT なので、腐敗の出現し始めかもしれない)。  
  • 腹部臓器は輪郭の把握も困難である。肝、両側腎が通常位置に存在している、ということが推測できるぐらい。  
  • 胃内にはガスと、凝血塊を思わす索状高吸収がある。積極的に腸管の虚血や壊死を疑うような腸管浮腫や壁内ガス、腹水は認めない。結腸内に相対的に高吸収の胎便が残存している。日齢 4 日目なので、消化管の動きが悪かったものと思われる。  

考察

  • 在胎 24 週という強い未熟性を基礎とした RDS、その治療後に増悪した PDAによる肺出血、二次性 RDS による呼吸不全により死亡に至った、と臨床的には推測されているのではないだろうか。
  • 生前画像の胸部単純 X 線写真は、上記の推測に整合する、未熟性、RDS、PDA 増悪による肺の高血流・心拡大進行、肺出血による二次性 RDS も含めた肺含気の悪化という経過を反映している。
  • AiCT は、IVH の発生を示しているが致死的なものとは考えられない。肺の高吸収は肺出血に整合する所見と解することができる。臨床的に想定されていない大量出血などは発生していなかったことが示された。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)