症例76

臨床所見

0歳5ヶ月 男性
要約)来院時心肺停止


病歴)双胎のため38週5日で選択的帝王切開術で出生。出生体重3100kg、身長50cm、Apgarスコア 8(1’),9.周産期、発達歴に異常の記載はない。○月3日、日中は無症状。普段と変わらず。○月4日午前4時45分母親が、呼吸停止している児に気がつき、救急車要請。5時3分救急隊到着JCS-300、呼吸なく心静止。その後、心拍再開せず。 午前7時死亡確認。午前10時所轄警察が検視。午前10時37分Ai-CT実施(死亡確認から3時間37分でAiCT施行)。司法解剖施行。


画像所見


粗大な出血なし。


                   心肥大?。                  


                   両側肺の著名な含気低下。                  


                   左下腿の腫脹は骨髄針を刺したためか。                  

診断

  • かなりの低線量撮影で実質のコントラスト、髄外腔への出血の評価などは困難、シルビウス裂などの大きな脳溝、基底槽、迂回槽、椎前槽などの脳槽、脳室の狭小化はなく、生前の脳浮腫の発生を示す所見は指摘できない。この条件で指摘できる頭蓋内出血はない。脳室拡大、形成異常、破壊性変化の痕も指摘できない。頭蓋骨折指摘できず。   
  • 眼窩、副鼻腔、聴器、中耳に異常指摘できず。気道:咽頭・喉頭・頸部気管レベルでは気道の狭窄や内腔の閉塞所見はない。唾液腺、甲状腺:異常指摘できず。
  • 気管中央付近から内腔確認できなくなる。分泌物等による気管内の空気消失に見えるが、ここも相当の低線量撮影であり、気管壁の分界や内腔を充満するものの性状判断が困難。
  • 胸腺は正常大。縦隔に余分な造はなく気管。大血管の圧迫はない。  
  • 両側肺は重力依存性に背側肺に濃度上昇が著明で含気を失っている。気管支血管束周囲では腹側でも肺野濃度上昇が強い。  
  • 血液就下の像や死戦期の急性左心不全による肺水腫の状態として解釈できる状態であるが、生前の心不全や肺の感染症などの存在は否定はできない。
  • 心拡大なし。右心系の拡大は死後の平均充満圧を反映した通常の変化に見える。心内奇形の有無は分からないが、右心系と左心系でそれぞれ異なったレベルで液面形成が生じており、少なくとも大きな心房間・心室間交通はないのではないかと思われる。
  • 大血管の分岐等の異常は指摘できない。動脈管索の石灰化あり。右房、右室の自由壁直下にガス粒あり(蘇生術後変化)。胸腺は年齢相応の平均的な大きさ。
  • 低線量の撮影でコントラストの評価が困難だが、肝、胆道系、膵、両側腎、両側副腎、脾にはこの条件で明らかな異常は指摘できない。
  • 腸管の配列、分布などに異常はない。 腸管内のガスは多い。腹腔内遊離ガス像、腸管気腫像なし。腹水なし。左陰嚢内に正常精巣よりやや低吸収な領域あり。CT値は30程度で脂肪濃度ではない。鼠径管の左右差はなく鼠径ヘルニアではない。何を描出しているかは不明だが通常見られる所見ではない。   
  • 骨折は指摘できない。 右鼠径部軟部組織の混濁あり。ライン確保などの痕であろうか。左下腿の腫脹は骨髄針を刺したためか。  
  • デバイス等は認められない。すでにエンゼルケア後と思われる。  

考察

  • 直接死因を示唆する所見は指摘できない。肺は重度の肺水腫とも考えられる像であるが、死戦期の変化としてもよく見られるものであり、生前の状態を画像所見のみから推定することが困難であり、臨床情報等を合わせ た総合的な判断が必要である。
  • 上気道閉塞による陰圧性肺水腫、心停止後症候群などでもこの様な所見となり、矛盾はしないが、死因となるような窒息・上気道閉塞が存在していたことの陽性所見となるものではない。
  • 右室は大きく、心室中隔はやや後ろにある。大動脈は前側から出ている。動脈管は閉じている様で、ファロー症か、両大血管右室起始症の様にも見えるとの意見もあった。存命中の同胞の状態を念のため確認して欲しい。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)