症例71

臨床所見

0歳 男性
要約)20○○年○月14日午前4時頃授乳、7時45分に母親が冷たくなっているのを発見。救急要請、救急隊到着時には鼻腔、口腔より軽度の出血を混じた唾液が見られた。暖かみはあるものの、心肺停止状態で、ドクターカーの要請があり、出動。来院時も心停止の状態で、10倍希釈アドレナリン投与するも、反応無し。心臓マッサージ、人工呼吸、骨髄路から薬剤投与するも反応無く、午前9時17分死亡確認となる。司法解剖。


画像所見


頭蓋内出血なし。脳の形成異常、破壊性変化の痕などは認められず。


両側肺の含気は、右中葉や左上葉舌区の一部を除いて大部分失われた状態。                  


肝内のガス像。                  

診断

  • 頭蓋内出血なし。脳の形成異常、破壊性変化の痕などは認められず。灰白質・白質コントラストは低下しており、中心灰白質も見分けられない。生前からの異常があったかどうか明確な判断は困難だが、脳溝や脳槽の不明瞭化もあまりなく、主に死後変化を見ているのものではないかと思う。   
  • 頭蓋内では髄外腔の狭小化の所見は認められず、頭蓋内圧亢進の明らかな所見はないが、大泉門は外方に凸の形態でやや張った印象を受ける、生後1ヶ月ながら縫合も開大している印象を受ける。
  • 眼窩、鼻腔、副鼻腔、内耳・中耳・乳突蜂巣など側頭骨に異常指摘できず。撮影時、中咽頭レベルでは気道描出なし。分泌物や舌根沈下によるものが考えやすい。
  • 頚部リンパ節腫大なし。甲状腺の濃度は生体に比べてやや低下しているが通常の死後変化で納得できる程度。  
  • 両側肺の含気は、右中葉や左上葉舌区の一部を除いて大部分失われた状態。気管支内腔も途絶して見える部分が多い。肺のCT値は30を少し超える部分が多く、右心系の内腔や肝と同程度で骨格筋(50程度)より低い。新生児や早期の乳児では、生前の異常の有無にかかわらず、死後CTではこの様に高度の含気低下を来す例が多い。死戦期の急性左心不全、血液就下、生後まもなくコンプライアンスが低くて虚脱しやすい幼若な肺の特性が影響した現象である。救急隊到着時には鼻腔、口腔より軽度の出血を混じた唾液が見られたということだが、急性左心不全による肺水腫の浸出物逆流を見ていた可能性がある。輸液もある程度関与しているかもしれない。胸水はない。  
  • 心・大血管に異常指摘できず。右心系の心腔内にガス像あり。輸液などは骨髄針経由であり、蘇生時に心腔内でキャビテーションによって生じた可能性が高いと推測。
  • 胸腺、乳腺、腋窩リンパ節の大きさに異常なし。
  • 右および左の第2肋骨前端の肋軟骨接合部に骨折の可能性が指摘でき、右第3肋骨前方の内側面には明確に座屈骨折が存在する。他の肋骨は全身像で斜断面になっているものが多くよく評価できない。後部骨折と陳旧性のものは指摘できない。骨折の形態としては蘇生の胸骨圧迫で生じる可能性のあるもの。
  • 腸管拡張による腹満が強い。腹腔内遊離ガス像なし。腸管気腫は明確な判断つかない。消化管閉塞を示唆する口径差や配列の異常は指摘できず、蘇生時の送気による拡張が考えやすい。
  • 肝内のガス像は右心系からの逆流の可能性が高いのではないかと推測。肝臓は形態、大きさ、濃度に異常指摘できず。胆道系の異常も指摘できない。膵は存在するが輪郭が明瞭には確認できない。乳幼児では一般的なAiCTの描出であり、ここから何か異常所見を指摘するのは困難。脾臓は小さいが一般的な死後変化の範囲内。   
  • 両側副腎は正常形態。両側腎は横断像で見ると小さめに見えるが、再構成冠状断像では正常大。著しい腹満によりこの様に見えるものと思われる。腎皮質の内部には異常指摘できず。腎盂腎杯の拡張なし。両側陰のう水腫あり。門脈周囲浮腫あり。ダグラス窩少量腹水あり。  

考察

  • 通常の死後変化、蘇生術後の変化があるのみで死因として関わったのではないかという明確な異常所見は指摘できない。感染症、代謝異常など”否定はされない”突然死につながる状態はもちろん多数存在するが、特定のものを提案する根拠に乏しい。
  • 家庭内での予期されていなかった乳児の突然死であり、成育状況などは慎重に精査すべきものであることは勿論である。可能性としては、赤芽球ろうプラス、リンパ球増加があるので、ウイルス感染症、中でもパルボウイルスB19感染症が疑われる。以下の症例より軽かったので、気づかれなかったが、心筋炎か肝機能不全で亡くなったのではないかと思われる。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)