症例7

臨床所見

症例は50歳代男性。薬物中毒での受診歴あり。高所から転落した状態で発見された。当時、何らかの薬物を摂取していたかどうかは不明。当院救急搬送されたが、蘇生されずCTによるAiが施行された。


診断

転落による多発外傷

画像所見

死後9分後CT。頭蓋内にairを認め、気脳症の所見。頭蓋骨に明らかな骨折所見を認めなかったが、顔面骨折していた(未提示)。多発肋骨骨折があり、皮下気腫や右気胸を認める。上行大動脈は扁平化し、胸部下行大動脈周囲血腫や右血胸(赤→)を認める。未提示であるが、左血胸も認められた。腹腔内にはfree air(青→)を認める。腹部にも少量の皮下気腫を認める。右骨盤骨折を認める。多発外傷の所見である。本症例においては転落による不慮の外因死の診断となった。

ポイント

高所からの転落の場合、高エネルギー外傷となり、多発外傷の場合が多い。所見を1つ1つ丁寧に拾い上げていく必要がある。CTによるAiに慣れていない場合、高橋らによって提唱されている死後CT読影チェックシートを活用することで、所見をもれなくピックアップすることが可能と思われる。また、外傷の場合は、骨折や腹腔内のfree airの存在など見逃さないためにも、適切な階調にCTの条件を変えて所見を確認する必要がある。高橋ら、臨床放射線 Vol 55 No2,2010

担当者名

帯広厚生病院 放射線科
菊池穏香、佐藤幸彦、菊地慶介、真鍋徳子