症例67

臨床所見

0歳 男性
要約)胎児心音低下の為、緊急帝王切開、○年○月○日8時41分出生。常位胎盤早期剥離、自発呼吸、心音無し、Apgar scoreは1分、5分ともに0点。その後、心拍再開したが1時間20分後、ふたたび心拍停止。午前10時57分死亡確認。12時17分Ai-CT撮影(死亡確認から約1時間20分でAi-CT撮影 )


画像所見


両側肺は小さな無気肺と含気を保った肺が混在し、気管支血管束周囲の拡大も伴う。


肝の内部濃度は不均一。                  

診断

  • 頭蓋内出血はなし。脳室拡大・髄外腔の拡大なし。少量の血管内ガス、血液就下による静脈洞の明瞭化、頭蓋骨の重合など通常の死後変化あり(血管内ガスは蘇生術後変化も関与しているかもしれない)。脳の形成異常について詳細な評価は不可能だが、粗大な奇形は指摘できない。
  • 脳内の灰白質・白質コントラストは見分けることができる。脳溝、脳槽の描出も狭小化はなく、脳浮腫の状態ではない。胎内で遷延性の虚血が作用した明らかな所見は指摘できない 。
  • 両側眼窩、副鼻腔、側頭骨、咽頭、喉頭、頸部気、に異常所見指摘できず。両側耳下腺、甲状腺は正常形態。顎下腺は明確に同定できず。
  • 心、胸腺の配列には明らかな異常はなさそう。心内の構造、大血管の分岐の評価は全く困難。中等量心嚢水貯留あり。
  • 両側肺は小さな無気肺と含気を保った肺が混在し、気管支血管束周囲の拡大も伴う。基本的に胎児肺胞液の吸収過程の肺水腫相当の状態に蘇生による過膨張が残ったものか(サーファクタントの使用の有無の記載はない)。ベル型胸郭なので、自力呼吸はなかったようである。間質性肺気腫、気胸などの空気漏出は認められない。
  • 肺の異常、気管の分岐異常などは指摘できない。胸水貯留は認められない。
  • 肝の内部濃度は不均一で、内部に少量の血管内ガスを認める。肝内部の濃度不均一は、実態を反映したものか、描出の問題か(肋骨からのアーチファクトなど)、血管内の低濃度を反映したものか、これらがどの程度関与しているのか不明。積極的な病的意義が付与できるのかも不明。ただし、血管内ガス(蘇生術後変化、早期の死後変化)周辺に肝実質吸収値の不均一が目立ち、これは死後CT上で肝血管内ガスを認める症例の何割かで認めるような所見。
  • 胆嚢は存在し、長軸長は2.5cmは超えており、正常大である。内腔に胆汁貯留あり。胆管拡張は認められない。
  • 膵臓は正常位置に正常形態で存在するように見えるが輪郭が不明瞭。
  • 両側副腎は頭尾長2cm程度、左右幅2.5cm程度、厚みは3.5mm程度で正常範囲内である。過形成を疑わせる脳回状の褶曲はなく正常形態である。脾臓はやや小さいが通常死後変化で納得できる程度。   
  • 腸管は正常径。正常の高吸収の胎便が結腸内にあり。腸管の閉塞を疑わせる所見なし。口径差なし。

考察

  • 生存を困難とするような形態的異常、死亡に至るような出血・損傷などの所見は指摘できず、おそらく臨床的に想定されている常位胎盤早期剥離による循環不全での死亡、という推定に適合する所見が得られている。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)