症例54
臨床所見
0歳 男性
要約 )超低出生体重児、敗血症
病歴)
在胎28W1d、経腟分娩、体重882g、32.5cm ◯月◯日出生。Apgar1/1, 6/5 気管内挿管により蘇生。肺サーファクタント投与、人工換気療法。下気道狭窄が疑われた。低血圧あり、DOA投与、心機能は比較的良好。尿量も保たれていたが血圧が上がらず。動脈管開存あり、血培よりent.cloacae検出、脳実質出血、消化管穿孔。◯月◯日 午前6時16分死亡。午前6時38分Ai-CT撮影。
処置)胸骨圧迫なし
画像所見
左気管支は確認出来ない。
左室後壁付近の高吸収は心筋虚血などが生じていた可能性を示す。
診断
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輪状気管軟骨を伴う気管狭窄が認められる。気管内チューブより内径は狭く、挿管不能であったことに整合する所見。
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右の上葉気管支は直接気管から起始し、気管気管支となっている。右中間気管支幹、中葉、下葉は欠損しており、右肺は過膨張した上葉のみを認める状態。
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左気管支は確認できない。右胸腔内から渡っていくものも認めない。
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右肺の気管支内径は拡張しており、気道にはかなりの陽圧がかけられたことを示唆する。
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縦隔は強く左に寄っている。左肺らしき構造が左胸腔内にあるが含気は全く認められない。左肺の無発生・低形成そしてこれに合併してサーファクタントの産生障害による肺の伸展障害があったのではないかと推測する。ただし新生児で死後の肺の状態から生前の状態を推測することは困難なので、生前に左肺に明確な含気が認められていたのであれば、少なくとも左肺無形成という可能性は否定される。
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左室後壁付近にそって断面が円弧状の高吸収層あり。心筋損傷、出血などの可能性も考えるが、CT値が90程度に達している部分があり、出血だけとは思えない濃度である。心筋や心膜の石灰化の可能性を考える。心筋の石灰化とすると冠動脈の起始・走行・内腔の異常などの可能性を考える。
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門脈周囲、後腹膜の低吸収が目立つ。28週出生では生理的な低吸収と区別しがたいが、腹水も目立ち、胎生期・生前からか死線期のものかわからないが、右心不全の関与があると思われる。
解説
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気管狭窄があることは確実。右中下葉欠損があり、左肺の形成異常があることも可能性が高い。AiCTでも右肺は含気が得られており、air leak も生じていないが、HFOで胸郭の振動が得られておらず、気管狭窄は換気不全を引き起こし、原死因になっている可能性がある。
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左室後壁付近の高吸収は、石灰化を思わせ心筋虚血などが生じていた可能性を示す。正確な位置・性状・原因は不確定にとどまらざるをえない。
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28週出生となった母体側の要因は、たとえば感染などは当然本児に影響を及ぼし得るが、具体的な特異的異常所見は指摘できない。
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全身の皮下組織が少なく、浮腫状である。DIC、敗血症によると思われる。左水晶体が小さく見える。先天感染の結果の可能性もある。
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脳は線量不足もあり判定は難しいが、はっきりとした出血は同定できないが、全体的に低吸収になっており、右大脳側頭部のみが正常?とすると、エコーで出血と判断された部分のみが正常で、全体が浮腫状になっている可能性もある。
骨幹端の骨化が乏しく、低吸収となっており、胎児感染があったものと思われる。
担当者名
Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)