症例53

臨床所見

2歳4ヶ月 女性
要約 )肺炎を契機に拡張型心筋症による心不全が悪化し、カテコラミン依存状態になり、長期入院していた。◯月◯日に房室ブロックに対してペースメーカー埋め込み術を施行。 ◯月◯日に左気胸、胸腔ドレナージを留置。 20:23 意識レベルが急に低下。心室細動が出現した。蘇生の甲斐なく0:02死亡。0:42 Ai-CT撮影。 処置など) ラシックス、アルダクトン、レニベース、フルイトランなど心肺蘇生実施、メイロン、カルチコール、ボスミン、アトロピン、電気的除細動。解剖なし。


画像所見


脳室拡大があり、小さな石灰化が大脳に散在。


左気胸があるが、肺はある程度拡張し、緊張性ではない。



左心室の拡大


診断

  • 脳室拡大があり髄液循環障害の存在を考える。ただし脳室周囲白質の体積減少、脳溝の拡大もあり、脳体積の減少もある。早期に高度の循環不全を来した既往があり、脳の発育不良が生じた可能性が考えられる。 両側基底核、両側大脳半球に点状の石灰化が多数認められる。非特異的であり、先天感染などでも見られるものではある。ただし分水嶺領域と基底核領域に多く、心停止、低灌流などのによる低酸素虚血性変化の可能性は考えられる。 AiCTとしては左室拡張が強く、左室壁や乳頭筋に石灰化がある。心筋虚血の既往を示すものと推測出来る。臨床的な、原死因が拡張型心筋症、直接死因が心不全、という診断を支持する所見である。 左気胸の状態であるが、撮影時は左から右への縦隔の偏位はなく、緊張性気胸には見えない。この状態では死因となるような重篤なものに見えない。 動脈管索石灰化あり。肝部下大静脈内に石灰化あり。壁在血栓の石灰化と思われる。門脈周囲、胆嚢床、後腹膜の浮腫性変化あり。非特異的所見ではあるが心不全による静脈圧の上昇があったのではないだろうか。他に、炎症の存在や膠質浸透圧低下による浮腫性変化などでもこの様な像となる。 肝臓と甲状腺には一様に高吸収化している。輸血や鉄剤の影響も考えられる。またアミオダロンは両者を高吸収化させる代表的な薬剤であり、投与歴があるか調べる必要がある。

解説

  • 心拡大、心筋虚血の所見があり臨床的な、原死因が拡張型心筋症、直接死因が心不全、という診断を支持する所見が認められる。 脳萎縮や比較的広範な無気肺、気胸などが見られるが、直接死因となるようなものではない。大量出血、外傷性変化などは見られない。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)