症例47

臨床所見

2歳 男性
病歴) 総動脈幹症、部分肺静脈還流異常症、肺動脈絞扼術後で今回の入院でラステリ手術を施行されたが、右室が機能せず、右心不全症状が著しく、グレン手術、フォンタン手術が施行された。その後も血行動態は成立せず、重度の大動脈弁逆流を認めたため、2月4日に大動脈弁置換術を施行。2月15日にECMOより離脱したが、その後肺の状態が悪化し、ARDSを来したためVVECMO, CHDFを開始した。補助循環、CHDFのアシストを行いながら、肺の回復を待ったが、回復せず、次第に代謝性アシドーシスが進行。徐々に血圧が低下し、末梢足背動脈は波形が出ず、右総頚動脈送血のシースより圧測定をすると10台であった。著明な循環不全のため、多臓器不全、DICを来した。3月14日心臓ペーシングに反応せず、心静止の状態となり、心エコー上も心臓の動きがなく、3月14日11時35分に永眠された。


画像所見


> 視床は相対的に高吸収化している。


心筋の石灰化が見られる


含気を失った肺はところどころ高吸収化している。

診断

  • 心筋の石灰化が見られることから心筋壊死・心筋梗塞が存在し、心機能に重大な障害が生じていたことは画像上も裏付けられる。心不全を死因と考えるのが妥当であると判断する。生前の手術後の冠動脈状況が重要であろう。
  • 著しいうっ血性の肺水腫の存在を示唆する所見、重篤な脳障害、肝、腎障害を示す所見も存在する。
  • 直接的な死因は心不全ということで臨床的な判断と整合すると思うが、ただしさらにその原因をさらに明確に示す所見は認められない。

解説

  • 強い脳組織全体の障害の存在が示され、臨床的には脳死に近い状態となって、呼吸など生命維持が不可能な状態になっていたと考えられる。脳組織の障害の機序は形態としては特異的なものでなく、臨床診断に頼ることになるが、終末期に観察されていた全身的な低血圧、低灌流による低酸素性虚血性障害とはよく整合するものであると思う。障害が発生した時期も確実な推定は行えないが、視床に dystrophic calcification が生じており、また脳の輪郭が不明瞭化し脳軟化の過程が生じ、萎縮から硬膜下水腫の拡大が始まっていることから、少なくとも障害が加わってから最低でも1週間以上で1ヶ月以内程度の変化を見ているのではないかと推測する。大量の頭蓋内出血を疑わせる所見は認めない。
  • すでに脳実質が低吸収化し診断力に制限があると思われるが、脳腫瘍や脳の形成異常、年余にわたる以前に起こった破壊性変化の痕などは認めない。頭蓋骨骨折の所見は認めない。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)