症例45

臨床所見

3歳2ヶ月 男性
要約) 総肺静脈還流異常症のため、日齢1より〇〇病院小児科へ入院。同日、緊急手術を実施。術後、浮腫、肺欝血が出現、増悪しPVOを指摘され、20〇〇年4月11日にPVO解除術を施行。その後退院。再度肺欝血、心不全の増悪を認めたため、再入院。11月6日、PVO解除術を再度施行。20〇×年1月18日に左肺静脈にステント留置。2月18日にASDのバルーン拡張術、7月15日にステントおよびASDのバルーン拡張術。しかし、肺静脈狭窄は解除できず。右室圧は左室圧の7-8割程度。酸素投与、高血圧治療薬開始、増悪時はステロイドで対応。症状改善していた。
20〇△年3月9日から咳嗽、10日明け方から微熱、救急外来受診。インフルエンザは陰性。WBC20400, CPR24.5と著明な高値。呼吸障害もあり同日入院。入院後1時状態は安定していたが、3月11日午前8時11分死亡。心停止時に心肺蘇生を実施。


画像所見


右の S2 と下葉、左で S1 の背側部分と下葉の含気が消失。


左肺で静脈の怒張は見られない。

診断

  • 肺は上葉の背側部分、下葉の大部分で含気を消失している。また腹側の肺もすりガラス状に透過性低下し、慢性うっ血や肺炎の存在を示唆する。肺うっ血、肺炎等により呼吸不全が急速に進行したことが死因となったのではないかという可能性が考えられる。なお、両側肺は胸膜直下に微小な嚢胞構造が多発する。ダウン症で見られることが有名であるが、心大血管奇形を有する患者にも発生することが知られている所見である。

解説

  • 両側基底核、視床、中脳、橋、延髄は腫大と内部に一部の高吸収化を示し、細胞密度の高い腫瘍浸潤が起こっていることを推測させる。脳室表面も高吸収の結節が散在して広汎な播種巣が存在する。左小脳背側に播種に裏打ちされた液体貯留があり、脳実質の圧排効果を持っている。延髄も正常の輪郭を失い、延髄自体よりも周辺の extra-axial space の方が高吸収化しており、広汎な脊髄播種を示している。この状態は腰仙椎レベルの thecal sac 末端まで同様であり、脊髄播種がクモ膜下腔を埋めるように存在していることが判る。鞍上部には石灰化した腫瘤があり、治療による壊死を示している。左側脳室にはオンマイヤーリザーバーとカテーテルが入れられている。右側脳室には、皮下に連続するドレナージチューブが入っている。両側側脳室の後角内に水平面が形成されており、出血の存在を疑う(貧血があるためか通常の血液貯留よりは低吸収)。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)