症例44

臨床所見

2歳1ヶ月 男性
要約) 鞍上部原発原始神経外胚葉腫瘍、脊髄播種と診断後、化学療法6コース施行。
20〇〇年2月10日day0として自家末梢血幹細胞移植併用大量化学療法実施。3月に移植合併症である肝中心静脈閉塞症を発症、腹腔ドレーン留置。5月脳脊髄に多発する再発病変を認める。再発後治療として、全脳照射、髄腔内注射による化学療法実施。コントロール不良で20〇×年1月より臥床状態。水頭症を発症、19日より呼吸障害が進行、1月24日午後4時8分呼吸不全から心停止。


画像所見


延髄も正常の輪郭を失い、延髄自体よりも周辺の extra-axial space の方が高吸収化


腰椎レベルでも周辺の extra-axial space の方が高吸収化。


L1レベルでウインドウ値を110 レベル40ほどにすると、脊髄膨大部が低吸収に、周囲が高吸収に見える。播種病変が腰椎レベルでも、脊髄周囲に存在する。

診断

  • 臨床経過で明らかにされているように腫瘍の脳幹浸潤、広汎な髄液播種等により脳幹機
  • 能が失われ死亡に至ったものであると考えられる。
  • 脊椎硬膜嚢も播種と思われる高吸収に充満されている。

解説

  • 両側基底核、視床、中脳、橋、延髄は腫大と内部に一部の高吸収化を示し、細胞密度の高い腫瘍浸潤が起こっていることを推測させる。脳室表面も高吸収の結節が散在して広汎な播種巣が存在する。左小脳背側に播種に裏打ちされた液体貯留があり、脳実質の圧排効果を持っている。延髄も正常の輪郭を失い、延髄自体よりも周辺の extra-axial space の方が高吸収化しており、広汎な脊髄播種を示している。この状態は腰仙椎レベルの thecal sac 末端まで同様であり、脊髄播種がクモ膜下腔を埋めるように存在していることが判る。鞍上部には石灰化した腫瘤があり、治療による壊死を示している。左側脳室にはオンマイヤーリザーバーとカテーテルが入れられている。右側脳室には、皮下に連続するドレナージチューブが入っている。両側側脳室の後角内に水平面が形成されており、出血の存在を疑う(貧血があるためか通常の血液貯留よりは低吸収)。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)