症例29

臨床所見

0歳6ヶ月 男性
要約)自宅でうつぶせ寝で母親が発見
○月○日 朝嘔吐数回あり、翌9日も朝嘔吐有り。12時30分頃母親がうつぶせでぐったりしている児を発見。
救急隊到着時、心肺停止状態。ER入院し、脳保護療法を行ったが、蘇生後脳症の状態。入院後は、水様下痢が出現。ロタウイルス陽性。
約2か月後徐脈となり心停止。
18:35 死亡確認


診断

  • Ai画像は終末像を反映している。臨床経過、生前の一連の画像を考え合わせると、ロタウイルス感染性胃腸炎から高度の脱水、循環不全から心停止を来し、高度の低酸素虚血性脳損傷を来し、生命維持が困難な状態になったと思われる。
  • 生前の画像には両側基底核の低吸収化が記録されているが、これもロタウイルス脳炎・脳症の所見にしては、所見が激しく、ロタウイルス感染によるショック等による呼吸停止が起因となった低酸素虚血性脳 損傷の所見と思われる。
  • 肝臓がびまん性に低吸収化、萎縮している。ロタウイルス感染が契機になってライ様症候群となる可能性が知られているが、その場合感染後2ヶ月も経過している場合は後変化には乏しいはずで、栄養不良による脂肪沈着を見ているものではないかと思われる。

画像所見

  • 両側大脳半球、大脳基底核、視床は融解壊死が著しく、菲薄化した実質を残して多嚢胞性脳軟化症の状態となっている。小脳、延髄・橋・中脳の脳幹部は相対的には組織の残存が見られるが、やはり嚢胞性の脳軟化をしめしている。
  • 胸腺は高吸収化し萎縮を示す。ストレスによる萎縮を示すと思われる(ステロイドが使用の可能性もあり)。遠位気管~右主気管支、中間気管支幹は浸出物が充満しており内腔描出されず。両側肺には無気肺、肺浮腫の像が混在している。2ヶ月半という経過からは肺炎も合併して、最終的には呼吸不全となっていたと考える。
  • 右室と左室が同程度の内腔を示しており、通常のAiよりは左室内腔は大きく、左室拡大や左室壁の菲薄化を示している可能性が考えられる。
  • 心内腔の凝血塊を示すような高吸収は不明瞭で、貧血があった可能性がある。
  • 肝はびまん性低吸収化と萎縮あり。栄養不良による脂肪肝や肝壊死後の変化が考えられる。代謝異常の存在を否定はできない。胃、小腸、大腸の壁肥厚あり。これらの粘膜は高吸収となっており、出血性壊死の状態を思わす。
  • 全身性浮腫の状態である。皮下組織は腰背部など重力依存性に背側がより強い浮腫を示す。
  • 縦隔、肺門間質、両側胸水、腹水、腹壁、腸間膜、後腹膜腔の浮腫性変化もあり。これらは入院患者の終末期にしばしば認めるサードスペースへの液体貯留であり、心、腎を始めとする多臓器不全、炎症による膜の透過性亢進、低蛋白血症などの複合要因による。
  • 気管内チューブの先端は第6、7頚椎椎間レベルの気管内にあり適正な位置である。
  • PICCカテーテルが右前腕から挿入され上大静脈内に先端がある。適正な走行経路と先端位置である。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)