症例27

臨床所見

0歳7ヶ月 男性
ロタウイルス性胃腸炎で外来受診中。ベースにミトコンドリア異常症が疑われている。
○月○日から嘔吐あり、ロタウイルス性胃腸炎と診断した。
その2日後からぐったりしており、受診のため車で移動中にCPAとなり、搬送されてきた。挿管し、アドレナリンを使用し、蘇生を試み一度は心拍再開したが、再度CPAとなり、アドレナリンにも反応せず11:29死亡確認。


診断

  • ミトコンドリア異常症を示唆するような、脳内・肝の異常などは、これらのCTでは指摘できない。
  • 長頭傾向は低出生体重児や筋緊張の異常などがある場合にも見られる所見である。頭は大頭なので、代謝性疾患を考えていたのなら、Canavan 病、Alexander 病が鑑別に上がる。
  • 肺は生前の気管支肺炎、気道への吸引を否定しないが、死戦期の急性左心不全の変化でもこのような像になると思われる。
  • 腸管から相当量の空気が門脈系と動脈系に逆流しているのではないかと推定したが、これは死因には関係がなく、逆流が起こるほど動脈血流が低下していたことを示唆するものである。

画像所見

  • 頭は巨頭の可能性がある(ただし、側面像でないと顔とのバランスが分からない)右への向き癖、hypotonia の存在、うつぶせ寝の習慣などの可能性を示す。
  • 頭蓋内出血なし。皮髄コントラストが不明瞭だが、7ヶ月児で生理的にもあまり高くない時期。
  • 基底核視床の低吸収化、萎縮なし。脳溝の描出にも明らかな差なし。
  • 蘇生時には気道は区域枝レベルまで明瞭に内腔が描出される。
  • 右肺のS3、S5に間質性肺気腫あり。
  • AiCTでは気管気管支は水濃度のもので満たされており、肺胞液の出現も著明になっている。蘇生中のCTとの変化は死戦期の急性左心不全を主体とした変化であろうと考えられる。
  • 蘇生中の右室内ガスは胸骨圧迫による心腔内発生のものが考えやすい。
  • 肝静脈にこのガスが逆流を生じている。
  • AiCTでの心筋の厚み、CT値には異常は指摘できない。
  • AiCTでは肝の門脈内、腸間膜動静脈内、下半身の脈管内、左腎内などに相当量のガスがある。一方、心腔内、上半身、脳内にはガスは少ない。
  • 腸管の拡張から腸管血管癆が形成されているのではないかと疑われる所見があり、送気が腸管拡張、腸管血管癆を介して腸間膜動静脈、門脈、下半身の動脈に拡散したのではないかと思われる。下痢もある。
  • 肝臓のCT値は脾臓と同程度に見える。やや低いが明らかな脂肪化は指摘できない。
  • Pearson病など一部のミトコンドリア異常症は膵の脂肪化をきたすが、この症例では肝や腎と内部の濃度に大差はない。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)