症例26

臨床所見

0歳 女性
要約)胎児ジストレス
肺出血、換気不全、胎児母体間輸血症候群、早産児、低出生体重児
病歴)
在胎36週1日に胎児ジストレスのため緊急帝王切開で出生した。Apgar score 2/8, BW2282g. 出生時Hb4.0g/dl, 母胎HbF5.6%で胎児母胎間輸血症候群と診断しRCC-LR輸血実施。呼吸状態不安定で、努力呼吸あり、生後6時間に気管内挿管をして肺サーファクタント投与、人工呼吸管理を開始。出生時より、乳酸値高値、代謝性アシドーシスあり。輸血、人工呼吸、重炭酸投与でも改善せず。日齢1朝には、Hb10.5g/dlまで上昇し、呼吸状態も安定したため、抜管したが、その後努力呼吸がみられ、n-CPAP管理とした。乳酸アシドーシス同様。同夜21時にHb7.9g・dlまで低下し、酸素化も徐々に低下。再度RCC-LR輸血を実施。酸素化悪化が進行し、翌日齢2日2時45分に気管内挿管このとき気管内より出血有り。蘇生措置に反応せず、4時29分に永眠。


診断

  • 胎児母体間輸血症候群による浮腫と思われる。
  • 気管内からの出血の原因は、最後の挿管時の挿管チューブによる咽頭後壁の損傷によると考えられる。非常に稀ではあるが、挿管困難症例に起きる合併症の一つである。
  • ただし、大脳の低吸収値化の所見がAi-CTで認められる。これは、死亡の最低でも6時間以上前に虚血になったことを表し、最後の挿管時前の酸素化の低下は、大脳の機能が低下したためや肺の浸出物が増加したために起きたと考えられる。最後の挿管が成功したかどうかに関わらず、死亡または重症な脳障害が残ったと考えられる。
  • 肺抹消の含気不良に関しては、CPAPにより肺門付近の含気は保たれていたが、サーファクタントが均一に広がらず、抹消肺胞までは開かなかった可能性がある。

画像所見

  • 大脳白質はびまん性に低吸収となっている(全脳虚血の状態)。
  • 中心灰白質や海馬を腹部側頭葉内側部が相対的に高吸収に見え、いわゆる CT reversal sign を呈する。数時間以上の経過を有する新生児の全脳虚血の状態として矛盾しない。
  • 喉頭蓋谷~上部気管レベルで、これらの右背側軟部組織内にガス貯留あり(挿管チューブによる咽頭後壁損傷疑い)。
  • 甲状腺の低吸収化(胎児の胎盤の血流や栄養などが減ると、合目的に、胎児全身の代謝を減らすために、甲状腺機能が低下することがある)。
  • 両肺広範に気管支透亮像を伴った浸潤影が広がっており、腹側優位に分布する含気のある残肺にもスリガラス様陰影、小葉間隔壁肥厚を認める。
  • 含気を失った肺の吸収値は高く、肺のうっ血を示唆する所見となっている。心横径が大きい印象を受ける。容量負荷の影響や肺高血圧の影響などが考えられる。

担当者名

Ai情報センター(小児死亡事例に対する死亡時画像診断モデル事業登録症例)