症例11

臨床所見

未治療の早期胃癌・慢性腎不全・心房細動がある70代男性。突然の腹痛・下血が出現したため救急要請。来院時、血圧測定不能のショック・右心負荷・低酸素血症が認められた。下血からの出血性ショックが考えられ輸液・昇圧剤開始するが死亡された。


診断

腹痛・下血後ショックとなり死亡した症例

画像所見

図a)骨盤底の小腸に高度な浮腫が認められる。腸管虚血が疑われる。図b,c)上腸間膜動脈内,右大腿静脈内の吸収値は他の血管内と比し低吸収を呈する。図d)右肺動脈内、左室に低吸収を呈する陰影が認められ血栓と思われる。臨床経過と合せ、深部静脈内血栓・肺動脈血栓塞栓、心室内血栓・上腸間膜動脈塞栓と考えられた。

ポイント

CT上血栓は高吸収・低吸収のどちらも呈する場合があり慎重に判断する必要がある。担癌患者に後天性凝固異常が生じることが知られている1)。脳塞栓症を発症することもありTrousseau症候群として知られている。本症例では動脈系・静脈系にそれぞれ血栓の存在が疑われ、凝固異常が基礎にある可能性が示唆された。

1.Thrumurthy SG,Anuruddha AH,De Zoysa MI,et al.: Unexpected outcome from Trousseau syndrome. BMC Surg. 2011 6;11:1

担当者名

亀田総合病院
伊藤憲佐 中山恵美子 葛西猛