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厚生大臣   津島雄二殿             平成12年11月22日
健康政策局長 伊藤雅治殿
生活衛生局長 西本 至殿
環境庁長官  川口順子殿              日本フッ素研究会
水質保全局長 遠藤保雄殿              会長 高橋 晄正
                   

フッ素を利用するむし歯予防行政に関する意見具申の件

 日本フッ素研究会は、1981年故東京医科歯科大学柳沢文徳教授が医学・歯学者に呼
びかけて、フッ素によるむし歯予防の有効性・危険性を科学的に検討し、国民の健康
に寄与することを目的として設立(旧名称 フッ素研究会)した(財)国際医学情報
センター、日本の医学会会議録データベース作成委員会に登録された研究団体です。
 今年をもって20周年を迎えるに当たり、その研究業績を総括し、フッ素を利用する
むし歯予防に関しその見解を具申するものです。
 本件に関する歯学会の見解は口腔衛生学会・フッ素化物応用研究委員会編「フッ化
物応用と健康」口腔保健協会、1998)に総括されているところでありますが、フッ素
の害作用は歯科領域の"歯のフッ素症"に限定されるものではなく、骨の発育・骨折、
全身各部位のがん、染色体傷害によるダウン症など広く医学の領域に及ぶものである
上に、疫学的研究論文については厳しい科学方法論の妥当性が問われるものでありま
す。
 こうした視点から、本研究会は上記口腔衛生学会のフッ素の全身作用に関する歯学
的見解を綿密に検討した結果、遺憾ながら必ずしもそれらを是をすることを得ないと
する見解に至っております。
 以下にその概略を記し、上記当会の見解を具申するものです。
 なお資料として次ぎの2部のほか、会員の英文発表論文などのコピー数部を添付し
ます(*印は寄稿中)。

 資料1 水道水フッ素化の問題点
      −歯科フッ素論の方法論的批判(その中のp.11aは*)
 資料2 フッ素入り歯みがきに重大危険 (11月17日発行の学会誌)
      −幼少年を緊急救出しよう
    (作成者:医師 高橋、歯科医師 秋庭、成田)

I.水道水フッ素化についての見解

I−1.水道水フッ素化は1945年以来、アメリカ合衆国、カナダを始めに全世界に拡
大されたものの、重大な害作用の発生(中国広州)、その他の理由によって中止した
国も少なくないのですが、(資料1,p.1)、1990年 米・公衆衛生局の合同研究機関
NTPのラット実験においてオスで骨肉腫の発生が認められ、これにたいして米・公
衆衛生局が緊急に「フッ素レビュー:効用とリスク」(Ad Hocレポート、1991)を刊
行し、1945年以来の「有効・安全」説を変更したことは、なお十分とは言えないもの
の、重大な事実です。
 すなわち。この時点以後、水道水フッ素化は人体実験について規定された「ニュル
ンベルグ綱領」(1947)の要求する諸条件を充足しうるか否かが問われることとなっ
たと思われます。
 なお、当会ではWHOの資料(1978-92の15年間)につき米・3州6都市での全身4
5部位の発がん率と地域フッ素化率の関係を検討し、その2/3において有意の相関を認
めています(英文発表準備中)。
 最近、フッ素化推進団体、一部のマスコミなどにおいてわが国においても水道水フ
ッ素化を推進しようとする主張が伝えられていますが、当研究会は対象地域住民が科
学的に正確な情報を与えられるならとうてい地域住民の自発的合意ではありえないも
のと思考するものであり、国は上記綱領が無視されることのないよう、厳重に配慮さ
れるよう具申するものです。

I−2 現行フッ素の水道基準0.8ppmの問題点
 当研究会の知るところでは、上記水準は1949年神戸大小児科平田正穂教授らの斑状
歯と飲料水中のフッ素濃度に関する調査を基礎として提案されたものであり、フッ素
の全身影響にたいする考慮はされていなかったものであります。
 なお、1962年に京都大学美濃口教授らの山科地区での水道水フッ素化実験では、そ
れよりも低い0.6ppmを用いたにもかかわらず、9年後の口腔衛生学会委員会の調査デ
ータを高橋(1982)が分析したところでは、対照とされた修学院地区よりも2倍ほど
高い斑状歯が発生しております。
 一方、国は1957年に水準基準として平田報告を採用し、1966年に省令によって告示
したものと承知しております。平田報告以後ほぼ半世紀を経ている現在、世界各国で
おこなわれた水道水フッ素化は、上記水準のもとで多数の全身影響がみられることを
明らかにしていることは資料1,2に示すとおりです。
 国はそれらのデータを参照して、早急により安全なフッ素の水質基準を選定すべき
であると思われます。それとともに、国は「0.8ppm以下の水道水フッ素によるむし歯
予防」を合法的でありとして水道水フッ素化を推進する動向にたいし厳しい規制を加
えるべきであることを具申するものです。

I−3 水道水フッ素化率とフッ素の各種害作用の関係をフッ素の1日総摂取量(TD
I)との関係に変換することについて
 −フッ素の口腔内使用時の摂取量の害作用評価のために
 米・ヘイロート(1954)、ソ連・ガボウィッチ(1951)、米・ジンジャー(1985)
らは水道水中のフッ素濃度とフッ素の1日摂取量の関係を分析・報告しています。
 フッ素の害作用はすべて飲料水中のフッ素濃度との関係として報告されていますが
、高橋らがそれをフッ素とTDIの関係に変換してみたところ、少年男子の骨発育遅延・
骨質欠損率、30歳以下の母親でのダウン症出生率、少年の骨肉腫発生率その他一部の
がん発生率が両対数グラフ上でTDIに対して原点を通る回帰直線上にあることを知るこ
とができました。
 このことは、フッ素の害作用の多くに許容量が存在しないことを示すものであり、
むし歯予防用に利用される各種の形態のフッ素利用時の体内摂取量が計測できている
なら、それがどれ程の慢性毒性を招来するかを定量的に推定することが可能となった
ことを意味しております。
 なお、最近わが国では全国にわたる国民のフッ素の1日摂取量に関する調査がおこ
なわれていないので、国は保健行政の基礎として、早急にこれを行われるよう具申い
たします。
 なお、上記口腔衛生学会フッ素部会編の著書に採用されている新潟大学(当時)境
脩氏の各国民フッ素摂取量についての研究は、方法論的に重大な誤りのあるものであ
り、使用に耐えないものであることを申し添えます。

II.フッ素の口腔内局所適用について

 最近の文献から予測される重大な問題として、フッ素の口腔内適用とフッ素関連性
発がんが指摘されております。その要旨は次のとおりであります。
1.口腔がん発生の可能性
 1)NTP・ラット実験で口腔がん
 2)WHO・データの分析で多発の口腔がんにフッ素関連性証明
   (日本フッ素研究会、資料2)
 3)歯垢内に高度のフッ素濃縮!
   (米・ゼロらの論文)
    酸性歯垢内でNaF→HF(プロトン型)、Fイオンの100万倍のスピー
    ドでミュータンス菌の細胞膜通過(グーネクヒト、1982)
 4)フッ素の口腔粘膜細胞にたいする傷害性 (10-20ppmで)
   (小黒論文)(詳細は資料2)
2.フッ素入り歯みがき剤・洗口液の飲み込み量の推定法の問題
 1)従来の吐き出し量からの推定は正確とは言えず、尿中フッ素量の定量に   
   よるべきと考えます。
 2)飲み込まれたフッ素による全身の長期毒性 (I-3による)
    これまで、フッ素の口腔内適用時に飲み込まれたフッ素の長期毒性に    
   関する調査報告が全く見られないということは驚くべきことであります。  
   これについてはI−3で述べた方法によって推定できますので、それに
   必要な条件をととのえ、その慢性毒性の程度を推定し、局所適用に伴う
   慢性毒性の質と程度によってその利用の当否を判断すべきであると考え
   ます。
 3)幼少年のフッ素の1日摂取量にたいする局所利用時の飲み込み量の大き
   さに注目すべきであると考えます。
3.フッ素塗布の問題
   これについては、それによるエナメル質溶解がラルセンその他によって報告されて
  いるところであり、WHO・テクニカル・レポート846(1994)は、
  「1.矯正治療中の者 2.頭部および頸部の照射療法または長期薬物使用に伴う
  口腔乾燥症のためにむし歯多発の見られる者」の2者に個別的使用を認めると限定
  しているのでありますところから、少なくともその方向の指示をおこなうべきである
  と考えます。
4.フッ素の局所的適用に関する行政的対応
 1)歯みがき剤に対するフッ素添加
   1961年に薬事法で「人体に対する作用緩和であるもの」として医薬部
  外品として認めたことによるものであり、「健康日本21」では目標値90%
  とされているところでありますが、上記の諸事実に基づいてこれを医薬
  部外品から削除し、それなりの対応をすべきであると考えます。
 2)自己による(学校等での)フッ素洗口および健保適用
   前者は同上理由によって禁止すべきものであり、また平成12年度重度
  を対象の健康保険導入の根拠も再検討の必要があるものと考えます。
 3)フッ素塗布
   現行・弗化物歯面塗布実施要領(昭和24年制定、昭和41年5月改正)
  は少なくともWHOの方針に従って改正すべきであり、平成10年4月健
  康保険導入の根拠および「健康日本21」において3歳児経験者50%以上
  を目標としたことの再検討とともにフッ素以外の方法の有無の検討もおこ
  なうべきであると考えます。
 なお、資料についての御説明の機会を与えて下さるなら、医師、歯科医師2-3名にて
喜んでお伺いすることを申し添えます。
 また、これはお願いですが、フッ素塗布、フッ素洗口が健康保険に採用されたこと
はフッ素が薬事法の適用をうけたことによると思われますが、発がん性、生殖毒性な
どについてどのようなデータに基づいておこなわれたかをお伺いしたいと存じます。
 以上の通り意見具申いたします。

              要 請

 日本フッ素研究会の上記具申に基づき、速かにむし歯予防のためのフッ素に関する
行政を全面的に再検討し、事実に対応した是正を早急におこなうことを要請します。
 なお、本年度末ごろまでに、本要請にたいする御見解をお伺いできれば幸いと存じ
ます。
 平成12年11月22日           日本フッ素研究会

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