レター:「患者監視装置」という用語について

愛媛大学医学部救急医学    越智 元郎
プライム法律事務所(弁護士) 藤田 康幸
公立能登総合病院麻酔科    高田 宗明
大阪府立病院麻酔科      森 隆比古
大津市民病院中央手術室    小川 正孝
電気通信大学情報システム学  田中 健次

(日本集中治療医学会雑誌 6: 147, 1999)


 世はまさに「カルテ公開」の時代を間近にし、またインターネットなどを介して、医療従事者と一般市民が直接、意見や情報のやり取りをする機会が増えています。このような時代においては、これまで医療従事者のみが用いていた医学用語などが市民に誤解を招く場合もあると思われます。

 集中治療領域においては、「患者監視装置」がその第一の用語ではないかと考えます。患者監視装置は「patient monitor」の訳語であると思われますが、monitor(監視)は不都合なことが起こらないように見守るという意であり、本来非人道的なニュアンスではありません。ところが、この用語において監視の対象が患者となっていることから、患者の全身の映像や音声を病棟詰所などに送信して、患者が不都合なことをしないかどうか監視をするための装置と受け取る市民も少なくありません。このような誤解を避けるためには、監視の対象を「人格を持つ、全体としての患者」ではなく、呼吸心拍、生体情報(バイタルサイン)、分娩などと明示し、呼吸心拍監視装置、生体情報監視装置、分娩監視装置などの用語として用いるのがよいと思われます。

 なお、医療の現場で用いられる機器の名称の変更については医療機器メーカーの協力が必須であり、また「集中患者監視装置」などが薬事法で定められた用語であることから、厚生省など管轄省庁の対応も必要です。われわれはすでに、日本医療機器関係団体協議会等にも「患者監視装置」という用語の再検討を申し入れており、同協議会からは今後「生体情報モニタ」という用語に統一してゆくとの意向をお聞きしています。

 日本集中治療部医学会会員各位におかれましても、「患者患者装置」から「生体情報監視装置」などへの用語変更について、ご理解を賜りたいと思います。

 なお、以下のインターネット・ホームページにわれわれの主張を詳しく述べているので、ご参照下さい。

  1. http://ghd.uic.net/97/hb25moni.html
  2. http://www.ne.jp/asahi/law/y.fujita/med/index.html

受付日98年10月 5日
採択日98年11月19日


■救急・災害医療ホームページ/ 全国救急医療関係者のペ−ジ