愛媛大学医学部 新1年生に対する
応急処置の講義と実習(1998年)

写真:愛媛大学医学部キャンパスと石鎚山脈の遠景


4/10 オリエンテーション

4/17 蘇生の基礎知識1(呼吸と循環)

生命を維持するために片時も休めない呼吸と循環の原理を学ぶ。

4/24 蘇生の基礎知識2(脳保護、脳死)

蘇生の最終目標は脳障害を防ぐことにある。その原理や概念を学ぶ。

5/01 致命的な循環器・呼吸器疾患

突然死に結びつく可能性のある循環器・呼吸器疾患について学ぶ。

5/08 頭部外傷

外傷性脳障害を中心に学ぶ。

5/15 四肢・体幹の重度損傷

日常的に最も多い整形外科的損傷について、とくに重度のものを中心に学ぶ。

5/22 蘇生法実技の解説

一般市民として知っておくべき心肺蘇生法の実技を具体的に解説し、蘇生法 実習が効率よく行えるように準備する。

5/29 蘇生法実習 (1・2限、第1班のみ)

6/05 蘇生法実習 (1・2限、第2班のみ)

6/12 救急処置法実習(1・2限、2交代で)

6/19 急性中毒

中毒の概念と、多くの中毒に共通した応急処置について学ぶ。

6/26 野外活動およびスポーツでの危険

7/03 集団災害

集団災害における医療の問題を概観し、医学生としてできることは何かを考 える。


参考:

入学直後の医学部学生への救急処置法教育

愛媛大学医学部救急医学
越智元郎、前川聡一、白川洋一

―第14回日本救急医学会中国四国地方会(980530)・抄録―

【スライド原稿】
スライド1


(お断り:抄録集に収載された内容を一部改変いたしました)

 医学部学生に早期に心肺蘇生法を含む救急処置法を習得させるべきことは論を待たないが、その実現は必ずしも容易ではない。幸い愛媛大学では平成7年度より、入学直後の医学部学生に救急処置法の実習を含む救急医学の初期教育を行っている。

 実際には、講義形式の指導の後にまず心肺蘇生法の実習を、次いで止血法、包帯法などの救急処置法の実習をそれぞれ90分実施した。

 心肺蘇生法では1学年90名余りを3グループに分け、3回のうち1回はマネキン等を用いた実習、もう1回はビデオによる教育、残り1回は自習とした。実習に際しては、日赤愛媛県支部の救急処置法指導員や愛媛救友会所属の救急隊員に協力を要請し、学生4人にマネキン1体、本学教官を含む指導員1名をあてた。救急処置法については、1学年を2グループに分け、1回を指導員による実技指導、もう1回をビデオによる教育にあてた。全課程終了後には筆記試験とアンケート調査を実施し、これまでの経験の有無、実習に対する興味などを答えさせた。

 アンケートの回収率(1問でも回答した者)は8年度が93.8%、9年度が100%であった。

 それまでに心肺蘇生法を学ぶ機会が全くなかった者は8年度が58.9%、9年度が52.7%を占めた。また蘇生法に興味を持ったと答えた者は8年度が91.1%、9年度が55.9%を占め、うち半数は強い興味を持ったと答えた。一方、蘇生法についての受講が有用であったと答えたものは、8年度が93.4%、9年度が87.1%を占めた。

 一般救急処置法については、それを学ぶ機会が全くなかった者は8年度が68.1%、9年度が51.6%を占めた。救急処置法に興味を持ったと答えた者は同様に87.1%、および53.8%を占め、やはり約半数は強い興味を持ったと答えた。また一般救急処置法受講が有用であったと答えたものは、8年度が93.0%、9年度が84.9%を占めた。

 本学では「early exposure」の方針のもとに、入学直後の医学生に医学概論などを受講させてきた。さらに今回の心肺蘇生法を含む救急処置法の実習を導入したことにより、市民に率先して救急処置法を実施できるようになると考えられ、同時に医学を学ぶ上での自覚を促すものと評価できる。


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