III、災害に備えた事前の体制整備


A、広域災害.救急医療情報システム

 災害時に迅速かつ的確に人命の救援・救助を行う ためには,まず情報を迅速かつ正確に把握すること が最も重要である。そのためには,おおむねニ次医 療圏単位の情報把握が重要であり,地域の医療機 関医療関係団体,災害医療支援拠点病院,消防機 関,保健所,市町村等間の情報ネットワークの確立 を中心とし,また都道府県間の広域情報ネットワー クの確立が重要である。

 従来の「救急医療情報システム」は都道府県単位 で完結しており,通常の救急医療に限定した情報シ ステムであったが,本研究会が今回提案する「広域 火害・救急医療情報システム」は,災害医療情報に 関し,全国共通の入力項目を設定し,被災地の医療 機関の状況,全国の医療機関の支援由出状況を全国 の医療機関,医療関係団体,消防機関や保健所を含 む行政機関等が把握可能な情報システムとし,災害 時に迅速かつ的確に救援・救助を行うことを日的と するものである。

 本システムでは,医療機関,医療関係団体,消防 横間や保健所を含む行政機関等が端末機器を設置 し,各都道府県毎に都道府県センターを,そして都 道府県センターのデータをバックアップするバック アッブセンターを設けるものであり,一般住民や民 間ボランティア団体にはインターネットを通じて, アクセスできるようにするものである。

 災害医療に関する情報システムの構築にあたっ て,既存の救急医療情報システムを活用する理由 は,日常利用していないものは,使い慣れていない ため,緊急時にはますます利用することが困難であ ろうという点からである。

 医療機関において,傷病者があふれているか否 か,診療が可能か否かは,被災している医療機関自 身でなければ,リアルタイムで的確な情報を知りえ ない。

 すなわち,情報の発信は医療機関からなされなけ ればならないが,ある医療機関から情報の発信が行 われていない場合は,保健所職員がバイクや白転車 で当該医療機関へ行き,安否の確認,情報発信の支 援を行うという万法も考えられよう。また,コン ピュータを用いた情報通信に詳しいボランティアを 平時から確保し,災害時に活用するということも検 討の余地がある。


(資料)広域災害・救急医療情報システムの基本仕様(案)

1、広域災害・救急医療情報システムについて

(1) 全体概要
  1. 災害時に迅速かつ的確に救援・救助を行うため、全国の医療機関の状況を全国の医療機関、消防機関、行政機関等が把握可能なシステムとする。
  2. 通常時は各都道府県の状況に応じた都道府県完結型の救急医療情報システムとする。
  3. 災害時に交換する情報は全国共通化する。
  4. 医療機関、消防機関、行政機関等に、広域災害・救急医療情報交換のための端末機器を置く。
  5. 各都道府県には、広域災害・救急医療情報システムの情報を運用、登録するための都道府県センターを設ける。
  6. 全国の災害・救急医療情報をバックアップセンターにおいてバックアップを行う。
  7. 都道府県センターからバックアップセンターの間はデジタルの一般公衆網(ISDN (INSネット64))で結ぶ。
  8. 情報ネットワーク構成は、おおむね別紙1のとうりとする。
  9. 情報ネットワークの通信プロトコルはおおむねTCP/IPとする。

(2) バックアップセンターについて

  1. バックアップセンターは、全国に1カ所置く。
  2. 通常時は都道府県センターに登録された救急医療情報のうち、災害時情報としても必要な基本的な情報(医療機関等の電話番号、所在地等)を登録する。
  3. 災害時は、都道府県センターを通し災害時情報((1)の3にかかわる情報)を即座に登録する。
  4. 都道府県センターが損壊等により機能しなくなった場合には、端末機器からの情報を直接登録する。(別紙2参考)
  5. 登録した情報は、コンピュ−タウイルスや第三者等に不当に破壊されること等のないよう必要なセキュリティ管理を行う。
  6. 災害時に登録した情報は、国民が有効に利用できるような必要な最低限の情報をインターネットを通じ公開する。
  7. 運用は24時間体制で行い、保守管理はバックアップセンター構築者(NTTデータ通信株式会社)が行う。

2、都道府県センターの機能要件

  1. 都道府県ごとに、都道府県センターを1カ所置く。
  2. 通常時は各都道府県独自の救急医療情報システムのサーバとして、定期的に送信される端末機器からの情報を登録すること。
  3. 災害時は、端末機器から受信した災害時情報を登録すること。また、その情報は即時にバックアップセンターに送信すること。
  4. 登録した情報は、コンピュ−タウイルスや第三者など不当に破壊されること等のないよう必要なセキュリティ管理を行うこと。
  5. 2および3の業務を迅速に行えること
  6. 運用は24時間体制で行い、保守管理は都道府県が行うこと。

3、端末機器の機能要件

(1) 専用簡易端末

(2)災害時における端末機器と都道府県センター間の回線輻輳に対応しうる回線を有すること。

(3)都道府県センターが損壊等により機能しなくなった場合を考慮し,端末機器とバックアップセンターの間を直接結ぶ手段を講じておくこと。

(4)都道府県単位の情報ネットワークを一般公衆回線または専用線等とするかは,各都道府県の裁量とする。ただし,国庫補助は自ずから上限がある。

5.その他

  1. 上記の条件を満たす限り,都道府県の機器選定等は当該都道府県の裁量とすること。
  2. 広域災害・救急医療情報システムの導入は,既に救急医療情報システムを導入している都道府県については,遅くとも旧端末のりース期間満了時または新規買い換え時に新システムへの移行を行うこと。
  3. 救急医療情報システム未導入県は,新規に広域災害・救急医療情報システムを導入すること。
  4. 都道府県に対しては,予算の範囲内で現行の国庫補助方式同様の補助を行っていく予定であること。


B 災害医療支援拠点病院

 相当数の病床を有し,多発外傷,挫減症候群,広 範囲熱傷筆の災害時に多発する重篤救急患者の救命 医療を行うために高度の診療機能を有するととも に,地域の医療機関への応急用資器材の貸出し,自 己完結型の医療救護チームの派遣機能,傷病省筆の 広域搬送に対応できる「地域災害医療支援拠点病 院を整備し,さらにそれらの機能を強化し,要員 の訓練・研修機能を有する「基幹災害医療支援拠点 病院」を整備することが必要である。

 「地域災害医療支援拠点病院」についてはニ次医 療圏ごとに1カ所以上,「基幹災害医療支援拠点病 院」については各都道府県ごとに1ヵ所整備するこ とが必要である。

 なお,自己完結型の医療救護チームの派遣のため の救急医療用資器材,仮設テント,小型発電機等の 装備多数傷病者の受け入れのためのスペースの確 保・簡易ベッド等の装備,傷病者等の広域搬送のた めのヘリポートの確保が必要である。

 また,災害医療支援拠点病院の災害時の対応に関 しては,地域の医療機関の支援という観点から,地 域レベルにおいては地域の医師会等の医療関係団 体、基幹レベルにおいては都道府県の医師会等の医 療関係団体の意見を聞いておくことが望ましく,応 急用医療資器材の貸出し要件他を事前に決めておく ことが必要である。

 詳細な運営方針,施設および設備の基準について は、以下に示す。

1 運営方針

  1. 災害医療支援拠点病院は,第一線の地域の医 療機関を支援するものであるので,医師会等の 医療関係団体の意見を聞き,応急用医療資器材 の貸出し要件他を事前に決めておくこと。
  2. 災害医療支援拠点病院においては,24時間対 応可能な緊急体制を確保するものとする。
  3. 災害医療支援拠点病院の施設が被災することを想定して,近隣の広場を確保し,仮設の救護所等として使用する場合があることについて地域仕民の理解を得ておくことが望ましいこと。
  4. ヘリコプターの離着陸場については,ヘリコプター運航会社等のコンサルタントを受けけ,航空法上の飛行場外離着陸場の基準を最低満たすこと。なお,飛行場外離着陸場は近隣に建物が建設されること等により利用が不可能となることがあることから,非公共用ヘリポートがより望ましいこと。
  5. 災害発生時における消防機関(緊急消防援助隊)と連携した医療救護班の派遣体制があること。
  6. ヘリコプター搬送の際には,同乗する医師の派遣が望ましいこと。

2、施設および設備

1)医療関係
1、施 設

 病棟(病室,ICU等),診療棟(診察室,検査 室,レントゲン室,手術室,人工透析室等)等救 急診療に必要な部門を設けるとともに,災害時に おける患者の多数発生時(入院患者については通 常時の2倍,外来患者については通常時の5倍程 度を想定)に対応可能なスペースおよび簡易ベッ ド等の備蓄スペースを付するものとする。

 また,施設は耐震構造を有するとともに,水, 電気等のライフラインの維持機能を有するものと する。

 基幹の災害医療支援拠点病院については,災害 医療の研修に必要な研修室を有すること。

2、設備

 災害医療支援拠点病院として,必要な診療設備等 を有するものとする。

  1. 広域災害・救急医療情報システムの端末
  2. 多発外傷,挫減症候群,広範囲熱傷等の災害時に多発する車篤救急患者の救命医療を行うために必要な診療設備
  3. 患者の多数発生時用の簡易ベッド
  4. 被災地における自己完結地の医療救護に対応できる携行式の応急用医療資器材,応急用医薬品,テント,発電機,飲料水,食料,生活用品等
  5. トリアージ・タッグ

2)搬送関係

1、施設

 原則として,病院敷地内にヘリコプターの離着 陸場を有すること。

 やむなく病院敷地内に雛発着場の確保が困難な 場合は,病院近接地に非常時に使用可能な離着陸 場を確保するとともに,患者搬送用の緊急車両を 必ず有すること。

2、設備

 医療救護チームの派遣に必要な緊急車両を有す ること。その車両には,応急用医療資器材,テン ト,発電機,飲料水,食料,生活用品等の搭載が 可能であること。


C、病院防災マニュアル作成ガイドライン

1 病院防災の意義とその実施

 病院防災を実効あるものとするためには,各病院 内に設けられた災害対策のための委員会により,病 院防災マニュアルが作成され,このマニュアルに基 ついて防災訓練が行われることが望ましい。なお, 病院防災マニュアルとは,病院防災計画(災害に対 処する方針もしくは基準)を遂行するための手順も しくは手法のことである。

1)病院防災マニュアルの作成

(1)病院防災マニュアルは,緊急時に用いること  から,誰がどのような状況下に見ても何をなす  べきか一目瞭然であるように,箇条書き,  チャートなどの手法を用い,シンプルかつ具体  的なものにすべきである。

(2)病院防災マニュアルを作成するにあたって  は,都道府県や市町村の作成する地域防災計画  の中での白病院の位置付けを確認したうえで,  地域の関係機関ともよく協議して,作成するこ  とが必要である。

(3)地域の関係機関として,医師会,歯科医師  会,薬剤師会,看護協会,病院団体等の医療関  係団体,消防機関,警察機関,保健所,市町村  等の行政機関、水道,電気,ガス,電話等のラ  イフライン事業者,自治会等の住民組織などを  考慮する。また,都道府県を通じ,自衛隊に派  遣要請することも考慮する必要がある。

(4)また,作成するというプロセスも重要であ  り,作成の際は病院内の全職種,全部門の参加  を得ることが必要である。

(5)病院の機能は,病床規模や地域によって様々  であり,それぞれの病院の事情を踏まえたもの を独自に作成する必要がある。

2)災害対策委員会

(1)病院長を委員長とする災害対策委員会を設け  て,常に現状に即した昼夜休日に対応できる病  院防災マニュアルを作成する必要がある。ま  た,災害対策委員会は,災害発生時は災害対策 本部として機能する。

(2)病院防災マニュアルは,防災訓練および災害 対策委員会により定期的に改善されなければならない。

3)防災訓練の必要性

(1)防災に対する日常からの心構えが重要であ  り,訓練を通じて,病院防災マニュアルの職員  への徹底が必要である。訓練頻度は,年2回の  防火訓練に加え,年1回以上の防災訓練が望ま  れる。

(2)日常から,通信設備や防災設備の設置場所.  使用方法および搬送手段の確保方法の把握が必  要である。

(3)また,地域の関係機関および地域住民との共 同の防災訓練が望まれる。


2、病院防災マニュアル作成の際の留意す べき事項

1)シミュレーションによる防災マニュアルの作成の必要性

 病院防災にあたっては,災害により病院が陥る 様々な場合分けに応じて,適切な対応が行われる必 要がある。そのためには,以下の各々の場合におい てシミュレーションを行いマニュアルを作成するこ とが望まれる。

1.災害の種類別

 病院の所在する地域で頻度が高いと考えられる 災害から,シミュレーションをしていくことが望 まれる。

 〇自然災害・・・・・・地震,津波,火山噴火,風水 害,十石流,雪崩,山林火災等。

 〇人為災害・・・・・・航空機事故,列車事故,白動車 事故,工場爆発,有毒ガス噴 出,原子力発電所事故,テロ行 為等。

2.病院の被災の有無

 〇病院が被災した場合(病院からの出火および 地震等)

 〇病院が被災していない場合

3.病院へ患者が殺到した場合

2)病院防災マニュアルに特に盛り込むべき事 項

 病院防災マニュアルでは上記のシミュレーションを行うことが望ましいが,以下に述べる項目については、いずれの災害においても必要である頻度が高いと考えられることから,病院防災マニュアルに盛りこむことが必要である。

1.防災体制に関する事項
  1. ライフラインの確保方策:ライフラインの確保には万全を期す必要 があるため,関係事業者との協議・協定作成,貯水槽,白家発電装置等の検討。
  2. 備蓄等の方策
    • 緊急用簡易ベット,担架,緊急用医療機器,医薬品,医療用具等の備蓄。
    • 食料品,飲料水,携帯用ガスコンロ等の備蓄。
    • 医薬品卸売団体,医療用具等卸売業者,衛生検査所・給食業者・医療機器会社等の医 療関連サービス業者との協議・協定作成。
    • 患者に対する避難の指示や誘導方法は簡潔・確実さが求められるため,ハンドス ピーカー,メガホン等の備品を用意しておくことが望まれる。

  3. アイソトープ等の病院の所有する危険物質に対する方策

    支援協力病院の確保:たとえば,医師会立病院,大学附属病院,系列病院等が考えられ,県外の医療機関も考慮しておく必要がある。

  4. 搬送依頼先および搬送手段の確保:後方搬送を要する患者の臨時収容場所,後方搬送のための連絡方法と手段,ドクターズカー,運転手等の確保,緊急ヘリポートの確保。

2.災害時の応急対応策に関する事項

  1. 病院内の連絡,指揮命令系統の確立:「特に,災害発生時の時間帯別(たとえ ば,昼間と夜間あるいは休日等)の連絡場所や指揮命令系統を区分して作成する。
  2. 緊急時の職員の確保・連絡網の確立
  3. 情報の収集(自病院内と自病院外)および情報の発信(目病院の状況)
    • 院内の優先電話を活用した広域災害・救急医療情報システムの活用。
    • 携帯電話,パソコン通信等複数の情報手段の検討。
    • 自転車・バイク筈非常連絡手段の確保。
    • 院内の被害状況の把握,患者の受入れ可能・不可能等の応諾状況の発信。

  4. ガス栓等の火元,院内の被告や危険物の確認などによる二次災害の予防 3. 自病院内の既入院患者への対応策に関する事項
    1. 自病院が火災または震災等を受けた場合,既入院患者に対する対応が先決である。
    2. 重症者の状況の把握,点滴や人工呼吸器等の状況の把握に努める。
    3. 患者の移送については,重症患者から軽症患者まで,様々なパターンがあることから,それぞれの対応(移送手段,移送先等)を検討し,訓練をしておくことが必要である。
    4. 病院に患者を受け入れる場合の対応策に関する事項
      1. トリアージ・入院システムの確立
         トリアージの担当者および場所の検討・確保,入院を要する被災者の収各場所,入院ベッドの確保,入院させた患者に対する治療の円滑化を図るための特別治療チームの編成,治療不要な避難者の扱い,トリアージ・入院の記録(トリアージ・タッグの活用)。

      2. マンパワーの確保
        近隣に住み他院に勤務する医師,歯科医師,薬剤師,看護婦等の受入れ態勢の検討,地域の自治会の応援態勢の検討。

3)病院から救護班を派遣する場合に考慮すべき事項
  1. 地域防災計画上の位置づけを確認。
  2. 救護班の編成(集合場所,医薬品等の確保, 交通手段など)の検討。
  3. 自己完結型の援助の必要性(医療機器,医薬品,医療用具等に加え,寝袋,保存食,飲料 水,携帯用ガスコンロ等の準備の必要性)。
  4. 救護所でのカルテの様式の作成。

4)その他病院防災マニュアル作成に関連して 留意すべき事項

  1. 医療設備や薬品棚・力ルテ棚等の備品の転倒落下防止の対策が必要である。
  2. 近隣の緊急ヘリポートの確認とその確保方法,及びヘリコプター依頼の連絡先の確認が必 要である。
  3. 医療用具等の更新の際,停電時に活用できる手動式等の医療用具等は,緊急用資器材として保存することが望まれる。
  4. 自家発電装置の運用法と配電経路の確認が必要である。


3、防災訓練の実際

 防災訓練の手順を検討する場合,以下に挙げる項目が含まれることが望まれる。
  1. 情報収集・発信訓練(患者の安否の確認,救急医療情報システムの活用等)
  2. 避難訓練(搬送経路,搬送順位,連絡先,連絡方法等)
  3. 防火訓練(消火訓練,防火扉,連絡先,連絡方法等)
  4. 設備・機器の点検(転倒落下防止策の確認等)
  5. 備蓄物資の備蓄場所・調達手段の確認
  6. 緊急車両,ヘリコプター等の発着誘導,依頼方法
  7. 患者の受け入れ体制と対応方法
  8. 非常勤医師,委託業者等への病院防災マニュアルの徹底

4、病院防災マニュアルのサンプル

 病院防災マニュアルのサンプル集(チェック・リスト,フロー・チャート等)について,中小規模病院用(53〜70頁),大規模病院用(71〜91頁)と分けて次に示す。なお,これらは実際に病院防災マニュアルを作成する場合のイメージとして示すもの であり,そのままで活用できるサンプルとできないものとがあるので,留意されたい。


中小規模病院用病院防災マニュアルのサンプル集

消防・防災活動相互応援協定書

第1条(目的)

 この協定は000町会(以下「甲」という。)と000病院(以下「乙」という。)の地域内で震災,火災等(以下「災害等」という。)が発生した場合,相互に協力して人命救助,救護活動を重点とした消防活動の相互 援助について必要な事項を定めることを目的とする。

第2条(応援方法等)

1 甲又は乙の災害等が発生した場合の応援等は次のとおりとする。
  1. 甲又は乙は,応援を必要とする場合に非常ベル又は電話等により,応援側に災害等の発生を速やかに通報するものとする。
  2. 応援側は,(1)の通報を受けたとき又は他の方法で災害等を覚知した場合,被応援側の責任者の要請又は応援側責任者の状況判断により応援するものとする。
  3. 応援側の活動は,原則として被応援側最高責任者の指揮に従い活動するものとする。

2 応援要請のための甲,乙間の通報方法は,別紙細部協定書によるものとする。

第3条(資器材等の提供)

 甲又は乙は,災害等を覚知し応援にあたる場合,それぞれが所有,管理又は占有する建物,敷地等の施設及 び担架,毛布等応援,救出,救護に必要な資器材を可能な範囲で提供するものとする。

第4条(活動内容)

応援側の活動は,救出・救護活動を主眼とし原則として避難誘導,傷病者の搬送,現場救護所の支援を行うものとする。なお,甲及び乙の責任者は,応援者の安全等を十分確認し任務の指示を行うものとする。

第5条(警戒広域内の立ち入り)

甲及び乙の応援者が救急隊及び消防隊到着後に現場に駆けつけた場合は,付近の隊員にその旨報告し,指示に従って行動するものとする。

第6条(経費の負担)

応援に要した経費のうち,人件費は応援側の負担とし,応援のために要した物的経費は被応援者の負担とするものとする。細部については相互の話し合いにより決定するものとする。

第7条(災害補償)

 この協定に法づく防災・消防活動又は訓練により,万−負傷の人身事故が発生した場合は,労働者災害補償 保健法,消防法又は東点都震災予防条例に基づいて申請を行うものとする。

第8条(訓練)

甲及びCは,第1条の目的を達成するため,相互連絡をとり合同でつとめて年一回以上訓練するものとする。

第9条(連絡協議)

 甲及び乙は、災害等の発生時の応援対策に係る情報交換等連絡協議の場を適宜設けるものとする。

第10条(協議)

 この協定の運用について疑義が生じた場合は,その都度甲及び乙両者間において協議決定するものとする。

第11条(協定書の保管)

 この協定を証するため正本4通を作成し,甲の各会長及び乙それぞれ1通を保管するものとする。

 付則

この協定は,平成〇年〇月〇日から効力を生ずる。

協定締結日 平成〇年〇月〇日

(甲)

             町会 会長 〇〇〇〇

(乙)

             病院 理事長 〇〇〇〇


(別紙)細部協定書

1.協定書第2条2に定める応援要請の伝達先は次のとおりとする。

 (1)〇〇〇病院から各町会への伝達先

   町会長     〇〇−〇〇〇〇−〇〇〇〇
   防災担当者   〇〇−〇〇〇〇−〇〇〇〇

 (2)町会からの緊急連絡先

   〇〇病院事務局 〇〇−〇〇〇〇−〇〇〇〇
   災害時優先電話 〇〇−〇〇〇〇−〇〇〇〇
   災害事対策本部長〇〇−〇〇〇〇−〇〇〇〇(携)

2.応援を要請するときは災害の内容,場所,応援人員,必要器材を通報するとともに,集結場所を指示するものとする。

3.甲,乙ともに応援要請を長けたときは,それぞれの応援協力者に対し,あらかじめ定める緊急連絡網により伝達を行うものとする。

4.甲及び乙の応援者は,火災等の発生した現場付近の活動しやすい場所に集結し被応援側の指示に従い活動するものとする。

5.各町会長及び施設長は,氏名,電話番号等に変更があった場合は,遅滞なく事務局(〇〇病院事務局長)に連絡するものとする。

6. 事務局は,変更事項の連絡を受けたときは,すみやかに他の町会長にその旨を連絡するものとする。


中小規模病院用病院防災マニュアルのサンプル集

I、火災対策

1.火災発生時の行動規準  まずすべての職場に共通した一般的な行動規準 を示す。ただし病棟は多くの患者,特に担送,護 送患者を収容している特殊な職場で,患者の安全 な避難という重要な使命をおびているので,別個 に,より具体的な行動規準を記載した。

(1)全職場に共通の行動規準

1)出火場所では

  1. 火災発見者は大声で,周囲に「火事だ」と叫んで知らせ,周囲の応援を求める。
  2. 手近の消火器や消火ホースで初期消火にあたる。(火が壁面にまわっていたら初期消火はむりであるから,火災報知器を押し,患者避難に入る)
  3. 火災報知器のボタンを押し,消火栓やナースステーションの非常電話で防火管理者へ出火場所などを通報する。自動通報がなければ,直ちに消防署へ通報する。
  4. 防火責任者へ通報する。
  5. 防火責任者は状況を把握し,職員に情報を伝達し,非常召集など指示を与える。
  6. 廊下など通路にある避難や消火作業の妨げになるものを片づける。
  7. 危険区域に患者がいる場合は避難させる。
  8. 非常持出し物品をとりまとめ,安全な場所へ持出す。
  9. 引火性薬品などの危険物を安全な場所へ移し,酸素配管があれば元栓を閉める。
  10. 必要があれば排煙口の紐を引く。

    〔注意〕以上は一連の行動として行い,順序には関係ない。

  11. 病棟など患者がいる部署では避難開始の指示を待ち,その確認を行い,患者避難対策(避難準備リスト)に従い避難開始する。
  12. 避難にはエレベーターを使用しない。
  13. 電話は緊急用以外みだ仇こ使用しない。
  14. 避難場所の確認を行ってから行動する。

2)出火場所以外の職場では

  1. 外部に面した窓・ドアを閉める。
  2. 廊下などの通行の妨げになるものを片づける。
  3. 非常持出し物品を確認する。
  4. 電話,エレベーターをみだりに使用しない。
  5. 患者には,必要があれば正確な情報を伝え,冷静を呼びかける。
  6. 各人は白分の職場にとどまり指示を待つ。
  7. 職場を離れていた者は,用が済み次第白分の職場にもどる。
  8. 防火管理者(対策本部)からの指示があれば,出火場所へ応援に行く。
  9. 自衛消防組織表に指定された各班担当者は,速やかに防火管理者のもとに集合する。

(2)休日夜間における行動規準

1)出火病棟(夜勤ナースのみ)の場合

  1. 最寄りの消火器,消火ホースを使用し,初期消火につとめる。(火が壁面にまわっていたら初期消火はむりであるから,火災報知器を押し,患者避難に入る)
  2. ナースコールにて患者に知らせる。「〇〇〇から出火しましたが,看護婦の指示に従って下さい」
  3. 選任された当日の夜間院長(当直医師),夜間婦長は対策本部長(理事長または院長)が到着するまで,防火管理者を代行する。
  4. 院内の応援者がきた場合は消火はまかせ患者避難態勢に入る。
  5. 応援者がかけつけたら責任ナースは「責任番は〇〇です」と大声で名のりをあげ,応援者を指揮する。
  6. 護送・担送患者は応援者にナースが指示をし,搬送してもらう。避難は患者避難対策に従い行動する。(誘導員,最後尾確認者の確認)
  7. 避難終了後ナースは手わけをし,各部屋に残留者のいないことを確認後,非常持出し袋を肩にかけ避難する(避難準備リスト)。
  8. 責任番は病棟状況を本部へ報告する。

2)夜間出火病棟以外の場合

  1. 火災ベルが鳴り,他の病棟からの出火を知ったら,その部署に止まり避難準備をお こない,指示を待つ。
  2. 自分の部署を離れている場合は,警報が鳴ったら階段を使い,職場にもどり,指示を待つ。
  3. 窓およびドアを閉める。
  4. 出火の通報は放送を通して自動放送,あるいは院内放送により流される。「患者さんは次の指令が出るまで病床を離れないで,貴重品と,タオルを濡らして絞ったものを1枚用意して下さい」と伝える。
  5. 必らず責任番はナースステーションに止まり,何時でも連絡指揮がとれる態勢でいること。他の当直者は出火場所へ急行する。
  6. 出火場所へ急行する場合は,出来れば消火器・防災用品を携行し,またヘルメットなどを着用する。現場での行動は,初期消火または患者の避難誘導が主であるが,状況により臨機応変に行動する。
  7. 避難命令が出たら患者避難対策に示された要領で速やかに避難する。避難経路は別表の避難経路図に示す通りだが,下記の諸点に注意すること。

     各非常口のロックを開け,1階まで階段を下りる。ただしこの上下避難は本部の指示によること。この時の避難先を確認する。(雨天などの条件もあるので,最終的に指 示された場所が変更されることがある。)

     1階で戸惑うことがないようにする。状況によっては被害を妥ける恐れのない病棟な どを使用する。1階まで下りることが困難な場合は,再度対策本部の指示に従って行 動する。

    なお避難の際は,・エレベーターは使用しない。・上下避難は本部よりの指示による。・必要に応じロープを使い誘導する。・煙りが充満している時は,身をかがめ,水で濡らし,絞ったタオルを口・鼻にあてて避難する。

3)各病棟の報告事項

 火災発生時は,昼夜を問わず,避難終了後下記の通り病棟の状況を本部へ報告すること。

 火災時病棟状況報告書
  病床定数
  病棟名
  報告者
  避難収容状況

 なお,消火・避難誘導などの具体的方法については,マニュアルを読み,平素より身に つけておく。また,職員数が極端に少ないので,職種などにこだわらず,協力して防災活 動に当ること。


2.初期消火の注意事項

 火を見たらあわてず何が燃えているか見定める。ふつう火はゆっくり燃えひろがり,やがて壁などの立ち上がり材を伝って天井へひろがる。この間の数分間が初期消火のチャンスで,火が天井へまわったら初期消火は困難である。

 火災の種類により消火方法が相違する事もあるので,以下に簡単に記す。

普通火災

電気火災

油火災


II、地震対策

1.地震発生時の行動

 大地震の時には,過去の多くの実例に見られる ように,火災が多発する。地震の恐しさは,地震 そのものもさることながら,むしろニ次的におこ る災害特に火災の発生にあるといわれている。

(1)出火防止のための措置

 各自は声をかけあって手近の火を消すこと。

 防火責任者(リスト作成し,災害本部長とな る責任省も常時手元に配布する),火元責任者 は火気使用設備,器具の使用を停止し,必ず確 認すること。

 危険物設備(ボイラー)の各バルブを操作 し,停止を確認する。

(2)消火活動

 全力をあげて消火にあたる(火災発生時の行 動参照)。院内に火災がなく,被害が少ない場  合は,病院開設者(院長)の指示に従い周辺地 域の火災の消火に協力する。

(3)入院患者の避難誘導

 院内に火災が発生または災害による危険が追っていると判断されたら,

  1. 火災発生時の行動規準および愚者避難対策に従って,避難を開始する。

  2. 他区域に火災発生の場合は避難通路,階段などの避難に支障となる物品(ストレッ チャー,ワゴンなど)を排除し,非常口の鍵を開けて,本部の指示を待つ。患者避難,被害状況確認などが終わったら速やかに本部へ 報告する。(被害状況報告書参照)

  3. 物的被害について(停電,断水,電話不 通,その他)  災害時チェックリストを用い報告する。

  4. 情報の収集と伝達

     震災直後は正確な情報を収集するのは極め て困難であるが,ラジオまたは消防機関から 積極的に情報を収集し,院内の全職員および 患者に正確な情報を伝達すること。また院内 の被害状況,患者の状況などを正しく把握し て,患者に不安感または恐怖心をいだかせぬ よう,落着いた言動をもって情報を伝え,ま たは指示し,パニック防止に全力をあげる。

  5. 地震後の設備,器具の点検整備

     二次災害防止のため,建物や火気使用設 備,器具の占検を行い,安全を確認した後に 使用を開始する。

  6. 震災時の患者の避難場所

     予め指定した場所とするが,他の場所に変 更することもある。

  7. 患者の帰室

     避難患者はニ次災害の恐れがなく,安全が 確認されてから現病棟へ復帰すること。


III、救急医療体制

1.大規模災害への対応

 地震などの大規模な災害が発生すれば,多大の 被害が予想されるので,当院でも入院患者および 職員を牛命の危険から守り,物的被害を最小限度 にとどめて,施設の機能を維持,発揮することが 必要である。

 大規模な災害としては地震,火災,風水害など があり,また広範囲ではないが,爆発,交通事 故,ガス中毒,化学薬品による事故なども救急診 療の対象となることがあると思われる。このよう な災害の場合,当院は地方自治体,区市町村から の要請にもとづいて医師会が救急診療体制をとる ことになる。災害発生後,ただちに対策本部を設 置し,当院の被害状況の把握を速やかに行い(チェックリスト),その報告に基づき理事長(対策本部長)が医療継続か避難かの判断を行う。(フローチャートを用い全員が行動する)。

(1)避難
 入院串者搬出
  「患者避難対策」参照
   応急救護所の確認
   避難先の確認

(2)医療の継続

 病院の建築物の損壊が無く,または損壊程度 が軽微で建物の使用に際し危険がないと判断され,ライフラインの確保,さらにマンパワーの確保がなされた場合継続する。(対策本部の判断)

1)院内対応

  院内入院患者の対応
   軽症者,退院予定者など退院が可能な患者を退院させる。

2)外来対応

 具体的には救急外来患者の該崎が考えられる。

 救護班の派遣など力対ミ筈時には,建築物の 損壊,物品の落下,火災の発生などによって 骨折,創傷,熱傷などの救急患者が多数来院 し,相当混乱することが予想される。この事 態に備えて,いつでも救急診療体制がとれる よう,救急救護所の設置,衣薬品の確保,診 療担当者の任務分担を明確にしておくことが 必要である。特に夜間,休日は診療担当者が 不足するので,職員非常招集計画にもとづい て,人員の確保に全力をあげねばならない。 なお,災害の種類によっては,救急医薬品の 種類が異ってくることもあり注意を要する。 外部から,災害の連絡が入った場合は災害の 種類,被害人員概数,場所,通報者名,電話 番号,病院へ送ってくる負傷者の概数など必 要事項を確認,記録しておく。また,多数の 負傷者を院内に受入れる場合は,収容場所は 臨機応変に考えることが必要である。


2.災害時の外来救急患者の診療

 災害時に救急患者が自発的に,自力で,外来へ 受診した場合の取扱いは,平常時の急患と同様に 扱う。ただし患者が多数来院し,通常の体制では 処理しきれない場合は増員して診療にあたる。患 者の取扱いについては一方向の流れとし,入口, 出口を明確にする。

 診療を行う場所は救急外来であるが,大規模な 災害で,患者が多数殺到した場合は,その状況に 応じて,本部の指示により,別の場所に応急救護 所を設置し,救護にあたる。この場合の救護要員 は自衛消防組織に定める救護班が担当する。また 夜間、休日は自衛消防組織に定める救護班の他, 非常招集により来院した職員がこれにあたる。


3.救護班の派遣

 災害救助法により市区町村長より,知事を経由 して医師会に救護班の派遣要請があった時,医師 会長の指令によって救護班を派遣する。ただし状 況によっては,病院長が必要と認めた時,地元市 区町村長より直接要請があった場合は,了解を得 て,即時派遣することもある。なお,医師会より 指令される時は,出動先の状況や派遣予定期間な どは,必ず通報されることとする。

(1)業務内容

 医師は薬剤師,看護婦(士),コメディカルなどに活動内容を指示する。人員が確保困難な場合は,住居が病院に近く,緊急出動可能な職員をもって編成する。この場合,職種別にあらかじめ数名ずつ,本救護班要員として指名し,公表しておくものとする。救護班編成は,医師,看護婦,その他の職種などで組織する。

(2)救護班の医療用器材

 地方自治体,区市町村単位で用意された医療器材を使用する。

(3)出動時の服装など

 制服,帽子,靴,ヘルメット,腕章など,地方自治体,区市町村単位で支給されたものを使用し,各サイズを出動要請に見合って用意しておくこと。

 医師,看護婦は制服に必ず腕章を着用し,職種が明らかになるようにする。


大規模病院用病院防災マニュアルのサンプル集

■院外にいる職員

震度5以上ならば電話連絡無しに来院する(電話は混乱のもと,時間の浪費となる)。

■病棟(看護職員・病棟勤務者)

  1. 職員自身が自らの安全確保を行う。
  2. 二次災害の予防
    • ガス栓・電気系統の確認
    • 落下物・倒壊物の除去

  3. 患者の安全確認
  4. 被害状況を確認
  5. 被害状況の報告
    • 患者の状態・建物の損壊状況
    • チェックリストへの記入
    • FAXで防災センターへ報告(FAX使用不能時は手で届ける)

  6. 患者への対策
    • ベッドを窓際から離しストッパーをかける。
    • ベッド柵をあげる。
    • オーバーテーブルで頭部防御を行う
    • 毛布をかける
    • 酸素ボンベへの切り替え準備
    • ボンベのベッドへの固定
    • 点滴ラインをへパリンロックにする
    • 点滴台は足もとの吊り下げ式にする
    • コンセントを白家発電電源に入れ替える
    • 患者の不安を除去する

  7. 入口のドアの開放
  8. 通路の障害物の除去

■防災センター

■薬剤科職員

  1. 医薬品の確保の確認・補給
    在庫不足数をチェックリストに記入
  2. 緊急医薬品の準備(病棟・外米用)
  3. 地域薬局・業者・薬剤師会・地区管理センターに依頼する
  4. 破損した薬品を処理する

■資材課職員

  1. 医療資器材の確保の確認・補給
    在庫不足数をチェックする
  2. 緊急医癖資器材の準備(病棟・外来用)
  3. 業者に依頼する(連絡先:      )
  4. 後方ベッドの設置

■災害対策本部

災害対策委員会構成員が災害発生時下記任務に当 たる

  1. 災害対策計画の指揮をとる
  2. 情報を収集し早急に避難の必変の有無につき決定する
  3. 避難決定時には合わせて避難経路・順序・搬送手段・搬送先を決定する
  4. 情報の職員・病棟患者への提供
  5. 消防,警察,地方白治体,国と連絡し協調して行動する
  6. 報道関係責任者の選出をする
  7. 本院・他関連病院へのマンパワーの依頼
  8. 全国規模での後方病院の依頼(各白治体・日本救急医学会等)
  9. 入院患者の後方病院転送の決定
  10. 転院搬送方法の決定・緊急車両運転手の依頼
  11. 被害状況の集計(患者・職員・施設)
  12. 職員・勤務者の業務再配分およびローテ−ンョン決定
  13. 職員・勤務者の食事・生活の場の確保
  14. ボランティァセンターと連絡を取りマンパワーの配分決定
  15. 不足物品の集計と供与の依頼
  16. 来院患者の集計
  17. ヘリコプターの依頼(自治体・消防・民間)

■トリアージセンター

救命救急部医師(2名)
ICU看護職員(2名)
医事課職員(カルテの管理,トリアージタッグの管理)
資材課職員(後方ベッド設置後・搬送要員)
看護学校学生(搬送要員)
ボランティア(搬送要員)

場所:正面玄関前

  1. 机・椅子・「受付」の看板の設置
  2. トリアージタッグ記載,災害用カルテの記載
  3. 軽症者は応急救護所(喫煙室)に行かせる
  4. 中・重症者のみ院内に入れる
  5. 死体は検死せず遺体安置所(看護学校体育館)に搬送
  6. 患者の軽・中・重症者・死亡者数を災害対策本部に報告

■応急救護所(軽症者用)

医師(内科系)
外来看護職員
医事課職員(2名)

場所:〇〇〇〇

  1. 入口に緑の地の「応急救護所」の看板を広てる
  2. 間仕切にて最低限の患者のプライバシーを保護する
  3. 応急処置用包交車・軽症者対策用医薬品を準備
  4. 患者は応急処置後速やかに帰宅させる
  5. 投薬は最低限のものとする
  6. カルテ作成を必ず行う

■遺体安置所

医事課職員
病理部医師

場所:看護学校体育館
  但し上記が避難所となった場合
  直接公民館へ移動させる

  1. トリアージセンター・病棟から搬入する
  2. 速やかに検死を行う
  3. 検死後速やかに公民館に移動させる
  4. 警察による身元確認

■ 応急救護所(中・重症者用)

医師(外科系)
外来・病棟看護職員
医事課職員(2名)

場所:〇〇〇〇外来(重症者用)
   〇〇〇〇外来(中症等者用)

  1. 入口に「応急救護所」の看板を設置(重症者は赤,中症等者は黄色の地)
  2. 応急処置用包交車を準備
  3. 処置後速やかに病棟・後方ベッドへ移動
  4. カルテ作成を必ず行う

■救急外来

救命救急部医師(2名)
救急外来看護職員(2名)

  1. 救急車で来院した患者の処置
  2. 後方搬送患者の処置
  3. ヘリコプターで来院した患者の処置

■中央画像検査室・中央検査室・ 血液透析室・中央手術室・中央材料室

各職員

  1. 被害状況・現状を確認
  2. 各部所のチェックリストに記入後、FAXまたは手渡しで防災センターに連絡

■避難手順

  1. 避難開始の報告を受けたら避難経路・順序の確認をし速やかに行動を開始する
  2. 落ち着いて状況を把握をしつつ避難誘導する ことを第−とする。
  3. 決定された避難所へ誘導・避難する
  4. 避難中も患者・職員の安全に留意する
  5. 患者の状態にあった避難方法を選択する
  6. 応急救護所を設置し避難患者の応急処置を行う
  7. 非常持ち出し物品の搬送準備と管理を行う
  8. 後方病院への搬送を行う

軽症者(独歩患者)

  1. 拡声器,メガフォンなどを使用し混乱防止に留意し勝手な行動を慎ませる
  2. 必要に応じロープを使い誘導する
  3. 事務職員が中心となり誘導する

中等症者(担送患者)

  1. 階段にて避難する
  2. 牽引中の態者は牽引をはずしシーネ固定とする
  3. 点滴はへパリンロックとする

重症者(護送患者)

  1. 十分な酸素ボンベを用意し気管内挿管中の患者に酸素投与しつつ避難する
  2. 患者に挿入してあるカテーテルはクレンメするか体に密着させる
  3. モニター類は必要なものだけ携帯用のものに切り替える
  4. エレベーター使用可能時はベッドで避難するが,使用不能時は担架に移し階段で避難する
  5. 主に医師と看護職員で避難させる
  6. 当病院の被災が大きく処置不能の場合は速やかに本部の指示を仰ぎ後方病院へ転送させる方法を取る

■後方ベッド確保

資材課職員
防火センター職員
場所:〇階ロビー(〇〇床)
   〇階廊下 (〇〇床)
   〇階会議室(〇〇床)

  1. ベッド・布団の準備を行う
  2. 床頭台は段ボールを代用し用意する
  3. 点滴棒を用意する(無ければ壁にフックを貼る)

■ボランティアセンター

医事課職員
場所:〇階〇〇〇〇

  1. ボランティァセンターの看板を出す
  2. ボランティア登録用紙に記載をしてもらい集計する
  3. 直ちに活動場所を決定する
  4. ボランティアの依頼(役場、〇〇消防署,看護学校など)
  5. 人の派遣の手配(村役場,保健所と連絡を取る)
    (医師,看護婦,薬剤師,一般ボランティア)
  6. 物品給与の受付(食料,毛布,ガスコンロ,医薬品)
  7. 供与の依頼(医薬品業者,食品業首,医療資材業者等)
  8. 直通回線開設の依頼(電話事業者)

■ ヘリポート開設

庶務課職員
場所:〇〇〇〇空地

  1. 石灰にて目印となるHマークを記す
  2. 救急外来までラインを引く
  3. ヘリコプターの発着・誘導を行う

■災害対策本部

  1. 救護班おの派遣決定
  2. 地元消防・警察・自治体と協調
  3. 情報収集確認
  4. 派遣人員の決定・救護班の編成(医師・看護 職員・薬剤師・事務職員)
  5. 供与医薬品・医療資横材,構成員の食事・水・毛布・ガスコンロ等,自己完結型援助に必 要な物品調達を行う
  6. 派遣時の通常業務に対する補填
  7. 災害現場への派遣手段の決定
  8. 派遣場所・日程の決定(交代・撤退時期)
  9. 次期派遣救護班の編成・次期供与物品の調達

■救護班

  1. 現地対策本部への連絡・組織体系の把握
  2. 活動場所・宿舎の決定
  3. 他の救援チームの活動の把握
  4. 当救護班の役割の位置づけ
  5. 活動計画・体制・業務分担・スケジュール決 定
  6. 医療・保健衛生活動
  7. 力ルテの作成
  8. 次救護班に対し不足物品を報告
  9. 救助撤退時地元医師会・病院への引継ぎ
  10. 援助撤退後取扱い患者数・疾病統計・感想を含めた報告書を提出する


D、トリアージ・タッグの標準化

 トリアージは,災害発生時等に多数の傷病者が同 時に発年した場合,傷病者の緊急度や重症度に応じ て適切な処置や搬送を行うためのものであり,その 際に用いるタッグ(識別票)をトリアージ・タッグ という。

 また,トリアージ・タッグは,被災地内の医療機 関においては,簡易カルテとして利用することも可 能なものであり,本研究会では「広域災害・救急医 療情報システム」の構築について提言しているが, この情報項目の「既受入患者数」の的確な把握にお いても,同タッグの活用が期待される。

 一方,トリアージ・タッグは,現在,医師会,消 防機関,日本赤十字社,自衛隊等でそれぞれ異なっ た様式・形式のものが使用されており,複数の機関 が参集する大規模災害においては標準化を図るべき との意見が多い。

 そこで,本研究会では,トリアージ・タッグの規 格の標準化を図る必要があるのは,1.大震災等の広 範囲の大規模災害で,2.複数の救急救助機関が関わ る場合として,その標準化の内容として次のとおり に提言するものである。

1 タッグの形状および寸法

 23.2cm(縦)×11cm(横)とする。

2 タッグの紙質

 水に濡れても字が書ける等,丈夫なものと し,本体はやや厚子のもの,複写用紙は本体 より薄手のものとする。

3 タッグ用紙の枚数

 3枚とし,1枚目は『災害現場用』,2枚 目は『搬送機関用』とし,本体は『収容医療 機関用』とする。

4 タッグの形式

 モギリ式としモギリの幅は1.8 cmとする。

5 タッグに用いる色の区分

 軽処置群を緑色(III),非緊急治療群を 色(II),最優先治療群を赤色(I),死亡 よび不処置群を黒色(0)とする。

 モギリ片の色の順番は,外側から緑色, 黄色,赤色,黒色で,両面印刷とし,ローマ 字のみ記載し,模様や絵柄は記載しない。

6 傷病者の同定および担当機関の同定等 に係る記載内容

 傷病者の同定の項目については,「氏名」「年齢」「性別」「住所」「電話」とし,外国人の家族や本人が記載することも想定し、こらの項目については英語を併記する。

 担当機関の同定等の項目については「(タッグの)No.」「トリアージ実施月日」「時刻」「トリアージ実施者氏名」「搬送機関名」「収容医療機関名」とする。また,3枚目の『収容医療機関用』の裏面の上部に「特記事項」の記入できるスペースを設けことが望ましい。

 次に,タッグ製作主体(都道府県衛生主管部局,医師会,消防機関,日本赤十字社,自衛隊等)の裁量で追加できる項目としては, 1.傷病者のバイタルサイン,人体図等の当傷病者の傷病状況に関する記載内容,2.タ グ製作主体の名称,マークなどが考えられる。

なお,夕ッグ製作主体の裁量部分を残す理由は、

  1. 地域において想定される災害の頻度や種類が異なることなどから,たとえば,近隣に空港 があれば航空機事故,石油コンビナートがあれば化学爆発事故などを想定しての傷病に関連,内容を工夫することが考えられること
  2. 医療機関で作成する場合は,院内力ルテとしても利用することが可能なものが考えられ ること

などの状況を配慮する必要があることから、タッグの製作主体の実状に応じて作成する部分が必要であると考えるものである。


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